【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、通信衛星を用いて移動体の測位を行う伝送
システムに関する。
〔発明の概要〕 本発明は、通信衛星を用いて移動体の測位を行う伝送
システムにおいて、移動体からの1個の衛星を介した1
回線の固定局への伝送と、固定局からの2個の衛星を介
した2回線の移動体への伝送とで、測位ができるように
し、移動体が1回線用だけの送信装置を搭載する簡単な
構成で測位ができるようにしたものである。
〔従来の技術〕 従来、自動車,船舶等の移動体の位置を測位するとき
に、通信衛星を用いて測位することが行われている。こ
の場合、例えば3個以上の衛星を使用すれば、それぞれ
の衛星からの信号を移動体で受信し、受信タイミングよ
り得られる情報に基づいて4元の一次方程式を解くこと
で、移動体の位置が算出される。この測位システムは、
数多くの衛星を必要とすると共に、それに対応した数の
受信装置が移動体側に必要で、さらに測位のための正確
な演算を移動体側で行う必要があった。
 これに対し、2個の静止衛星だけを使用すると共に、
地上の固定局で測位のための演算を行うようにした移動
体の位置測位システムが、特開昭61−48781号公報等に
記載されているように提案されている。
 この位置測位システムは、ジオスターシステム等と称
され、例えば第3図に示す伝送システムにより測位が行
われる。即ち、トラック等の移動体(1)の現在位置を
測位する場合、この移動体(1)に、第1の静止衛星
(2)からの電波の受信装置と、この第1の静止衛星
(2)への電波の送信装置と、第2の静止衛星(3)へ
の電波の送信装置とを設ける。そして、地上の固定局
(4)には、第1の静止衛星(2)への電波の送信装置
と、第1の静止衛星(2)からの電波の受信装置と、第
2の静止衛星(3)からの電波の受信装置とを設ける。
また、固定局(4)とは離れた位置に位置校正用固定固
定局(5)を設ける。この位置校正用固定固定局(5)
は、第1の静止衛星(2)からの電波の受信装置と、こ
の第1の静止衛星(2)への電波の送信装置と、第2の
静止衛星(3)への電波の送信装置とを備える。
 次に、このシステムにより測位する手順を第4図を参
照して説明すると、まず固定局(4)からは、正確に時
間管理された同期信号を第1の静止衛星(2)に向けて
送出する。この同期信号は、測位を行うときに、第1の
静止衛星(2)で中継されて、移動体(1)に搭載され
た受信装置により受信される。ここで、同期信号の固定
局(4)から第1の静止衛星(2)への伝送に要する時
間をt1とし、第1の静止衛星(2)から移動体(1)へ
の伝送に要する時間をt2とする。
 そして、移動体(1)では、この同期信号を受信して
から所定時間t0が経過すると、第1の静止衛星(2)に
向けて、この移動体(1)の端末のID番号と受信信号に
含まれる情報を含むパケット信号を送出する。また、同
期信号を受信してから所定時間t0が経過して、第2の静
止衛星(3)に向けて、同様のパケット信号を送出す
る。この場合、信号を送出するまでの時間t0は、常に一
定の値とされ、固定局(4)にこの時間t0の情報が記憶
されている。ここで、移動体(1)から第1の静止衛星
(2)へのパケット信号の伝送に要する時間をt2′と
し、移動体(1)から第2の静止衛星(3)へのパケッ
ト信号の伝送に要する時間をt3とする。
 このそれぞれのパケット信号は、第1の静止衛星
(2)及び第2の静止衛星(3)で中継されて、固定局
(4)で受信される。ここで、第1の静止衛星(2)か
ら固定局(4)へのパケット信号の伝送に要する時間を
t1′とし、第2の静止衛星(3)から固定局(4)への
パケット信号の伝送に要する時間をt4とする。
 そして、固定局(4)では、第1の静止衛星(2)と
第2の静止衛星(3)から受信したそれぞれのパケット
信号の受信時刻と、固定局(4)自身が送出した同期信
号の送信時刻と、固定局(4)と各静止衛星(2)及び
(3)との距離から、各静止衛星(2)及び(3)と移
動体(1)との距離を算出する。即ち、固定局(4)と
各静止衛星(2)及び(3)との距離は、不変であるの
で予め固定局(4)で判断できる。このため、各静止衛
星(2)及び(3)を介して行われる移動体(1)と固
定局(4)との間の伝送時間t1,t2,t1′,t2′,t3,t4の
内、固定局(4)と各静止衛星(2)及び(3)との間
の伝送時間t1,t1′,t4は距離から判断できる。この場
合、時間t1とt1′及び時間t2とt2′は、同一時間(距
離)である。そして、残りの伝送時間t2,t2′,t3は、移
動体(1)の位置により変化するが、時間t2とt2′とは
同一距離の伝送なので同一時間であり、固定局(4)が
同期信号を送出してから第1の静止衛星(2)からのパ
ケット信号を受信するまでに要した時間taから、既知の
時間t1,t1′,t0を減算することで、伝送時間t2(t2′)
が算出される。そして、この伝送時間t2が判ると、固定
局(4)が同期信号を送出してから第2の静止衛星
(3)からのパケット信号を受信するまでに要した時間
tbから、既知の時間t1,t2,t4,t0を減算することで、伝
送時間t3が算出される。
 このようにして伝送時間t2,t3が算出されると、伝送
速度からこの時間情報t2,t3が距離情報に換算でき、移
動体(1)と各静止衛星(2)及び(3)との距離が求
まる。そして固定局(4)では、さらにこの2つの距離
と各静止衛星(2)及び(3)の正確な位置情報に基づ
いて、移動体(1)の2次元的な位置を算出する。
 そして、この算出した2次元的な位置情報と、固定局
(4)が備える地勢図のデータベースを用いて、移動体
(1)の3次元的な位置を算出する。
 ここで、この固定局(4)での演算により移動体
(1)の位置が算出される状態を、第5図を参照して説
明すると、所定の静止衛星軌道上にある各静止衛星
(2)及び(3)と移動体(1)との距離を、それぞれ
d1及びd2とすると、第1の静止衛星(2)から距離d1だ
け離れた地球E上の点は、円c1を描く。また、第2の静
止衛星(3)から距離d2だけ離れた地球E上の点は、円
c2を描く。そして、この円c1とc2との交点は、北半球と
南半球とに1箇所ずつ存在し、地勢図のデータベースよ
りこの交点e1の座標位置が判る。
 なお、この座標位置の検出を行う場合に、各サービス
エリア内に位置校正用固定局(5)を設け、固定局
(4)と位置校正用固定局(5)との間で、各静止衛星
(2)及び(3)を介して信号の伝送を行い、返送され
る信号に基づいて検出した座標位置の校正を行うように
しても良い。
〔発明が解決しようとする課題〕 ところで、この伝送システムによる移動体(1)の位
置検出は、移動体側から固定局に伝送する所謂インバウ
ンドの2回線の伝送と、固定局から移動体側に伝送する
所謂アウトバウンドの1回線の伝送とが必要で、移動体
(1)が、第1の静止衛星(2)への電波の送信装置と
第2の静止衛星(3)への電波の送信装置との2組の送
信装置を備える必要がある。この場合、静止衛星への電
波の送信装置は比較的大きな送信アンテナ等の大掛かり
な装置が必要で、自動車のような比較的小型の移動体に
2組の送信装置を備えるのは、容易ではなかった。ま
た、静止衛星自体も、移動体からの比較的小電力の電波
を中継するものが2個必要で、システムの構成にコスト
がかかる不都合があった。
 本発明の目的は、移動体からの1回線の送信による簡
単なシステム構成により測位ができるようにすることに
ある。
〔課題を解決するための手段〕 本発明は、例えば第1図に示す如く、移動体(11)か
ら第1の衛星(12)を介して固定局(14)に測位開始信
号を伝送し、固定局(14)がこの測位開始信号を受信す
ると、第1及び第2の基準信号を伝送し、移動体(11)
が第1の衛星(12)を介した第1の基準信号と第2の衛
星(13)を介した第2の基準信号とを受信し、移動体
(11)で、測位開始信号を伝送してから第1の基準信号
を受信するまでの時間と、測位開始信号を伝送してから
第2の基準信号を受信するまでの時間とを計測し、この
計測したそれぞれの時間情報を移動体(11)から固定局
(14)に伝送し、固定局(14)で伝送されるそれぞれの
時間情報に基づいて移動体(11)の位置を測位するよう
にしたものである。
〔作用〕 このようにしたことで、移動体からの1個の衛星を介
した1回線の固定局への伝送と、固定局からの2個の衛
星を介した2回線の移動体への伝送とで測位ができ、移
動体が1回線用の送信装置だけを搭載する簡単な構成で
測位ができる。
〔実施例〕 以下、本発明の一実施例を、第1図及び第2図を参照
して説明する。
 本例においては、第1図に示す伝送システムにより測
位が行われる。即ち、第1図において(11)はトラック
等の測位を行う移動体を示し、この移動体(11)は、第
1の静止衛星(12)からの電波の受信装置と、第2の静
止衛星(13)からの電波の受信装置と、第1の静止衛星
(12)への電波の送信装置とを設ける。この場合、移動
体(11)から第1の静止衛星(12)への送信は、例えば
1.6GHz帯の周波数で行われ、各静止衛星(12)及び(1
3)から移動体(11)への送信は、例えば4GHz帯の周波
数で行われる。そして、地上の固定局(14)には、第1
の静止衛星(12)への電波の送信装置と、第2の静止衛
星(13)への電波の送信装置と、第1の静止衛星(12)
からの電波の受信装置とを設ける。
 次に、このシステムにより測位する手順を第2図を参
照して説明すると、まず移動体(11)が現在位置を測位
したいときには、移動体(11)から第1の静止衛星(1
2)に測位開始信号を送出する。このとき、移動体(1
1)は測位開始信号を送出した時刻を記憶する。ここ
で、移動体(11)から第1の静止衛星(12)への測位開
始信号の伝送に要する時間をt11とする。
 そして、第1の静止衛星(12)により中継されたこの
測位開始信号を、固定局(14)で受信させる。ここで、
第1の静止衛星(12)から固定局(14)への測位開始信
号の伝送に要する時間をt12とする。この測位開始信号
を固定局(14)が受信すると、所定時間t13後に、所定
の識別信号が含まれた第1の基準信号を第1の静止衛星
(12)に送出する。また、測位開始信号を固定局(14)
が受信してから所定時間t14後に、所定の識別信号が含
まれた第2の基準信号を第2の静止衛星(13)に送出す
る。ここで、固定局(14)から第1の静止衛星(12)へ
の測位開始信号の伝送に要する時間をt12′とし、固定
局(14)から第2の静止衛星(13)への測位開始信号の
伝送に要する時間をt15とする。
 そして、第1の静止衛星(12)により中継された第1
の基準信号を、移動体(11)で受信させる。また、第2
の静止衛星(13)により中継された第2の基準信号を、
移動体(11)で受信させる。この場合、移動体(11)で
は、受信した基準信号に含まれる識別信号より、どの衛
星で中継された基準信号かが判別される。ここで、第1
の静止衛星(12)から移動体(11)への第1の基準信号
の伝送に要する時間をt11′とし、第2の静止衛星(1
3)から移動体(11)への第2の基準信号の伝送に要す
る時間をt16とする。
 そして、移動体(11)では、測位開始信号を送信して
から第1の静止衛星(12)からの第1の基準信号を受信
するまでに要した時間txと、測位開始信号を送信してか
ら第2の静止衛星(13)からの第2の基準信号を受信す
るまでに要した時間tyとを計測する。
 そして、移動体(11)はこの計測したそれぞれの時間
tx,tyの情報を、第1の静止衛星(12)を介して固定局
(14)に伝送する。そして、固定局(14)では、計測し
たそれぞれの時間tx,tyから各静止衛星(12)及び(1
3)と移動体(11)との距離を算出する。即ち、固定局
(14)と各静止衛星(12)及び(13)との距離は、不変
であるので予め固定局(14)で判断できる。このため、
各静止衛星(12)及び(13)を介して行われる移動体
(11)と固定局(14)との間の伝送時間t11,t12,t11′,
t12′,t15,t16の内、固定局(14)と各静止衛星(12)
及び(13)との間の伝送時間t12,t12′,t15は距離から
判断できる。そして、残りの伝送時間t11,t11′,t
16は、移動体(11)の位置により変化する。ここで、時
間t11とt11′とは同一距離の伝送なので同一時間であ
り、移動体(11)が測位開始信号を送信してから第1の
静止衛星(12)からの第1の基準信号を受信するまでに
要した時間txから、既知の時間t12,t12′,t13を減算す
ることで、伝送時間t11(t11′)が算出される。
 また、移動体(11)が測位開始信号を送信してから第
2の静止衛星(13)からの第2の基準信号を受信するま
でに要した時間tyから、既知の時間t12,t14,t15と算出
した時間t11とを減算することで、伝送時間t16が算出さ
れる。
 このようにして伝送時間t11,t16が算出されると、伝
送速度からこの時間情報t11,t16が距離情報に換算で
き、移動体(11)と各静止衛星(12)及び(13)との距
離が求まる。そして固定局(14)では、さらにこの2つ
の距離と各静止衛星(12)及び(13)の正確な位置情報
に基づいて、移動体(11)の2次元的な位置を算出し、
この算出した2次元的な位置情報と、固定局(14)が備
える地勢図のデータベースを用いて、移動体(11)の3
次元的な位置を算出する。このときの位置算出は、従来
と同様に行われる。また、この座標位置の算出を行う場
合に、各サービスエリア内に位置校正用固定局(図示せ
ず)を設け、固定局(14)と位置校正用固定局との間
で、各静止衛星(12)及び(13)を介して信号の伝送を
行い、返送される信号に基づいて検出した座標位置の校
正を行い、より正確な測位を行うようにしても良い。
 このように本例によると、移動体(11)から静止衛星
を介した1回線の伝送と、固定局(14)から静止衛星を
介した2回線の伝送とで、移動体(11)の測位ができ
る。このため、移動体(11)は静止衛星への送信装置と
して1回線分だけ装備すれば良く、移動体(11)が備え
る測位のための装置が小型化できる。特に、衛星への送
信装置は送信アンテナ等の大型の装置が必要で、自動車
のような小型の移動体(11)への測位装置の設置が少な
いスペースで出来る。この場合、測位のための演算は固
定局(14)側で行うので、測位の精度が落ちることはな
い。なお、移動体(11)が搭載する受信装置は、比較的
大電力の信号を受信するので、送信装置に比べて小型に
構成でき、2回線分の設置でもスペースを取らない。ま
た、静止衛星自体も、移動体(11)からの比較的小電力
の信号を中継するものは第1の静止衛星(12)だけで良
く、第2の静止衛星(13)は固定局(14)からの大電力
の信号を中継する機能だけで良く、第2の静止衛星(1
3)として汎用の通信衛星が使用でき、測位のための専
用の衛星として第1の静止衛星(12)だけを用意すれば
良い。
 なお、上述実施例においては、トラック等の自動車の
測位を行う伝送システムとしたが、船舶等他の移動体の
測位を行う伝送システムにも適用できる。また、上述実
施例に示した送信周波数は、一例を示したもので、使用
条件に応じて各種周波数を選定すれば良い。さらにま
た、本発明は上述実施例に限らず、その他種々の構成が
取り得ることは勿論である。
〔発明の効果〕 本発明によると、移動体側が1回線用の送信装置だけ
を搭載する簡単な構成で測位ができると共に、移動体側
からの信号を中継する衛星も1個で良く、簡単な構成で
正確な測位ができる。
【図面の簡単な説明】 第1図は本発明の一実施例を示す構成図、第2図は一実
施例の説明に供するタイミング図、第3図は従来例の構
成図、第4図は従来例の説明に供するタイミング図、第
5図は位置の算出状態の説明図である。 (11)は移動体、(12)は第1の静止衛星、(13)は第
2の静止衛星、(14)は固定局である。
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