以下、添付図面を参照して本発明をその例示的な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定しない。また、実施形態には複数の特徴が記載されているが、その全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
  なお、以下では本発明をデジタルカメラのEVF表示に適用した構成について説明する。しかし、本発明は表示用画像を生成可能な任意の電子機器でも実施可能である。このような電子機器は撮像装置に加え、コンピュータ機器(パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、メディアプレーヤ、PDAなど)、携帯電話機、スマートフォン、ゲーム機、ドライブレコーダ、頭部装着型表示装置(HMD)などが含まれる。これらは例示であり、本発明は他の電子機器でも実施可能である。
■デジタルカメラの構成
  図1は本発明の実施形態に係る画像処理装置の一例としてのデジタルカメラ(以下、カメラ)100の機能構成例を示すブロック図である。
  操作部101は、ユーザがカメラ100に各種の指示を入力するために設けられた入力デバイス(ボタン、スイッチ、ダイヤルなど)の総称である。操作部101を構成する入力デバイスは、割り当てられた機能に応じた名称を有する。例えば、操作部101には、レリーズスイッチ、動画記録スイッチ、撮影モードを選択するための撮影モード選択ダイヤル、メニューボタン、方向キー、決定キーなどが含まれる。
  レリーズスイッチは静止画記録用のスイッチであり、制御回路104はレリーズスイッチの半押し状態を撮影準備指示、全押し状態を撮影開始指示と認識する。また、制御回路104は、動画記録スイッチが撮影スタンバイ状態で押下されると動画の記録開始指示と認識し、動画の記録中に押下されると記録停止指示と認識する。
  なお、同一の入力デバイスに割り当てられる機能は可変であってよい。また、入力デバイスはタッチディスプレイを用いたソフトウェアボタンもしくはキーであってもよい。また、操作部101は、音声入力や視線入力など、非接触な入力方法に対応した入力デバイスを含んでもよい。
  レンズユニット102は、1つ以上の可動レンズを含む複数の光学レンズと、絞りとを有する。可動レンズはフォーカスレンズ、防振レンズ、ズームレンズなどである。レンズユニット102はまた、モータ、アクチュエータなど、可動レンズや絞りを駆動するための構成を有する。なお、本実施形態ではレンズユニット102がカメラ100と一体化されており、レンズユニット102の動作は制御回路104が制御するものとする。
  レンズユニット102が着脱可能な交換レンズの場合、レンズユニット102に制御回路が設けられる。そして、レンズユニット102の動作は、制御回路104がレンズユニット102内の制御回路との通信を通じて制御する。
  撮像素子103は例えば原色ベイヤ配列のカラーフィルタを有する公知のCCDもしくはCMOSカラーイメージセンサであってよい。撮像素子103は複数の画素が2次元配列された画素アレイと、画素から信号を読み出すための周辺回路とを有する。各画素は光電変換によって入射光量に応じた電荷を蓄積する。露光期間に蓄積された電荷量に応じた電圧を有する信号を各画素から読み出すことにより、レンズユニット102が撮像面に形成した被写体像を表す画素信号群(アナログ画像信号)が得られる。
  制御回路104はプログラムを実行可能な1つ以上のプロセッサを有する。制御回路104は例えば不揮発性メモリ107に記憶されたプログラムを作業用メモリ108にロードして実行して各機能ブロックの動作を制御することにより、カメラ100の機能を実現する。なお、以下の説明において制御回路104が実行する動作の一部をASICなどの専用回路で実行してもよい。
  制御回路104は、撮像素子103から読み出されたアナログ画像信号に対して予め定められた画像処理を適用し、表示用や記録用の画像データを生成したり、特徴領域を検出したり、各種の評価値を取得および/または生成したりする。
  ここで、制御回路104が適用する画像処理には、前処理、色補間処理、補正処理、検出処理、データ加工処理、評価値算出処理、特殊効果処理などが含まれる。
  前処理には、A/D変換、信号増幅、基準レベル調整、欠陥画素補正などが含まれる。
  色補間処理は、撮影時に得られない色成分の値を補間する処理であり、デモザイク処理とも呼ばれる。
  補正処理には、ホワイトバランス調整、階調補正、レンズユニット102の光学収差に起因する画像劣化の補正(画像回復)、レンズユニット102の周辺減光の影響の補正、色補正などの処理が含まれる。
  検出処理には、特徴領域(たとえば顔領域や人体領域)やその動きの検出、人物の認識処理などが含まれる。
  データ加工処理には、合成、スケーリング、符号化および復号、ヘッダ情報生成(データファイル生成)などの処理が含まれる。
  評価値算出処理には、自動焦点検出(AF)に用いる信号や評価値の生成、自動露出制御(AE)に用いる評価値の生成などの処理が含まれる。
  特殊効果処理には、ボケ効果の付加、色調の変更、リライティングなどの処理などが含まれる。
  なお、これらは制御回路104が適用可能な処理の例示であり、制御回路104が適用する処理を限定するものではない。
  制御回路104はまた、生成した評価値に基づいてAF処理やAE処理を実行することができる。
  不揮発性メモリ107は電気的に書き換え可能である。不揮発性メモリ107には、制御回路104が実行するプログラム、カメラ100の設定値、GUI(Graphical User Interface)データなどが記憶されている。
  作業用メモリ108はいわゆるRAM(Random Access Memory)である。作業用メモリ108は制御回路104が実行するプログラムをロードしたり、プログラムの実行中に変数値などを一時的に記憶したりするために用いられる。作業用メモリ108はまた画像データのバッファとして用いられたり、表示装置105のビデオメモリとして用いられたりする。
  表示装置105は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどであってよい。表示装置105は電子ビューファインダ(EVF)として機能する。表示装置105はカメラ100の筐体内部に設けられても、筐体表面に設けられても、両方に設けられてもよい。表示装置105がカメラ100の筐体内部に設けられる場合、カメラ100は表示装置105を覗くための接眼部を有する。
  なお、表示装置105はカメラ100の外部装置であってもよい。表示装置105が外部装置である場合、カメラ100は接続された表示装置105が表示可能な形式の信号またはデータを出力する。
  記憶部106は例えば半導体メモリカードである。記憶部106には、制御回路104により記録用画像データ(動画データまたは静止画データ)が、所定形式のデータファイルとして記録される。
  制御回路104は、動画の撮影と、撮影によって得られた動画から表示用画像データを生成し、表示装置105に表示する動作を継続的に実行することにより、表示装置105をEVFとして機能させる。
  本実施形態ではEVFの表示モードとして、表示用画像データに現在の設定を反映させる加工を適用する設定優先モードと、表示用画像データに撮影シーンの視認性を向上させるための加工を適用する視認性優先モードとが選択可能であるものとする。表示モードは例えば操作部101を通じてユーザが選択可能であってもよいし、制御回路104が条件に応じて自動的に選択してもよい。
  設定優先モードは、撮影により得られた画像に適用される処理(例えばコントラスト補正、露出補正、彩度補正など)に関する現在の設定を反映した画像をEVF表示するモードである。設定優先モードは、現時点で指示を与えた場合に記録される画像の状態を事前にEVFで確認することを可能にする。
  また、視認性優先モードは、撮影により得られた画像に適用される処理に関する現在の設定を反映せず、被写体を直接目で見た場合と近い視認性の画像をEVF表示するモードである。視認性優先モードは、光学ファインダーや目でシーンを観察する代わりにEVFを使用することを可能にする。
  EVFの表示モードは、例えば操作部101の操作を通じてユーザが任意のタイミングで変更可能である。したがって、ユーザは、EVFを見ながら意図に応じて表示モードを適宜変更することができる。なお、EVFの表示モードとして他の表示モードが含まれてもよい。
  制御回路104は、表示モードに応じて、RAWデータから表示用画像データを生成するための処理を制御する。なお、RAWデータとは、各画素の信号またはデータがカラーフィルタに応じた1つの色成分の値を有するデータである。撮像素子103から読み出されたアナログ画像信号や、アナログ画像信号をA/D変換して得られるデジタル画像信号(画像データ)はRAWデータに該当する。
  撮像素子103が原色ベイヤ配列のカラーフィルタを有する場合、RAWデータを構成する各画素の信号またはデータは、R(赤)、G(緑)、B(青)のいずれか1つの色成分の値を有する。RAWデータから、各画素の信号またはデータがカラー画像を表現するための複数の色成分の値を有する状態に変換する処理を現像処理という。現像処理には色補間処理が含まれる。
■EVF表示用画像データの生成処理
  EVF表示用の画像データを生成するために制御回路104がRAWデータに適用する現像処理について、図2を用いて説明する。図2では、制御回路104が適用する一連の現像処理を、複数の機能ブロック202~204および206によって実現される処理として表現している。
  上述のとおり、RAWデータ201を構成する個々の画素データは、撮像素子103が有するカラーフィルタの色配列に応じた1つの色成分の強度を表す値のみを有している。本実施形態では撮像素子103に原色ベイヤ配列のカラーフィルタが設けられているものとする。この場合、RAWデータ201の個々の画素データは、R(赤)、G(緑)、B(青)のいずれか1つの色成分の強度を表す値を有し、残り2つの色成分については値を有していない。
  ホワイトバランス部202は、白い被写体が画像で白く見えるようにするため、光源による色かぶりを補正するホワイトバランス調整を行う。具体的にはホワイトバランス部202は、RAWデータ201を構成する各画素のRGBデータを、所定の色空間(例えばxy色空間)の座標にプロットする。そして、ホワイトバランス部202は、その色空間において光源色の可能性が高い、黒体輻射軌跡付近にプロットされた画素データのR,G,B値を色成分ごとに積分する。
  ホワイトバランス部202は、色成分ごとの積分値から、R成分に適用するホワイトバランス係数G/Rと、B成分に適用するホワイトバランス係数G/Bを求める。ホワイトバランス部202は、R成分とB成分にホワイトバランス係数を適用することによりホワイトバランス調整を行う。
  色補間部203は、ノイズリダクション処理や、色補間処理により、個々の画素データが有していない色成分の値を補う。色補間処理により、個々の画素データがR、G、Bの3成分を有するようになり、画像データがカラー画像を表すようになる。
  その後、画像データはマトリクス変換部204でRGB形式からYUV形式に変換される。さらに、色輝度調整部206により、色輝度調整パラメータ205に基づく色成分および輝度成分が調整される。色輝度調整パラメータ205は、例えば操作部101を通じたユーザ設定に基づいて決定される。
  ノイズ調整部307は、EVFの表示モードや撮影シーンに応じたノイズ低減処理やシャープネス処理を適用し、画像データのノイズ感や解像感を調整する。ノイズ調整部307の動作の詳細については後述する。
  階調変換部309は、階調特性取得部308が取得した階調特性調整用カーブ(ガンマカーブ)307を用い、画像データに階調変換を適用して、表示用画像データを生成する。階調変換部309は、EVFの表示モードや撮影シーンに応じて異なる階調変換特性を適用する。階調変換部309が適用する階調変換特性の詳細については後述する。
  表示用画像データ207は表示装置105の種類に応じて必要に応じてRGB形式に戻された後、表示される。
  日中晴天時などの明るいシーンを撮影する場合、表示装置105の最高表示輝度を高輝度とした方が、表示装置105(EVF)の見え方と、被写体を直接目で見た時との差が小さくなる。一方、夜景などの暗いシーンを撮影する場合、表示装置105の最高表示輝度を低輝度とした方が、表示装置105(EVF)の見え方と、被写体を直接目で見た時との差が小さくなる。
  このため、本実施形態では、撮影するシーンの明るさに応じて制御回路104により表示装置105の最高表示輝度を自動的に変更し、EVFとの見え方と被写体を直接目で見た時の差を軽減する。シーンの明るさは制御回路104が生成するAE処理用の輝度評価値に基づいて判定することができる。あるいは、シーンの明るさを検出するためのセンサを別途設け、このセンサから得られる明るさに基づいて制御回路104が判定してもよい。
■表示モードによる見え方の違い
  次に「設定優先モード」と「視認性優先モード」とで見え方の差が生じることについて説明する。ここでは操作部101において、図3示した入出力特性L41を選択し、表示用画像データ207を表示装置105で表示する場合を考える。ここでは、RAWデータが14ビット値であり、階調が8ビット値であるものとする。
  図4A~図4Cはそれぞれ、横軸に入力となるRAWデータの対数値を、縦軸に出力となるI値(詳細は後述する)を取った入出力特性を示している。なお、RAWデータの対数値は、適正露出に対応する信号値で正規化し、適正露出に対応する信号値を0段とした段数によって表記している。
  I値は、ITU-R  BT.2100で規定される知覚均等色空間であるICtCp色空間の座標値のうち、輝度成分Iの値である。ITU-R  BT.2100に規定されているように、RGB値からICtCp値への変換の過程で光電気伝達関数(OETF)が適用される。
  本実施形態では、OETFとしてSMPTE  ST2084で規格化されているPQ(Perceptual  Quontization)方式のEOTF(電気光伝達関数)の逆特性(Inverse  EOTF)を使用する。つまり、図におけるI値は表示装置105での表示輝度に対応した値であり、PQ EOTFを適用することによって表示装置105の表示輝度に変換することができる。
  図4Aは「設定優先モード」におけるRAWデータ(RGB値)とI値との変換特性の例を示す図である。L51は日中晴天時の特性、L52は夜景時における特性の例を示す。なお、本実施形態では表示装置105の最高表示輝度に対応したI値として、日中晴天時約680、夜景時約450とする。なお、これらは例示であり、日中晴天時の方が夜景時よりも大きな値である他の値の組み合わせとしてもよい。
  図4Bは「視認性優先モード」におけるRAWデータ(RGB値)とI値との変換特性の例を示す図である。L63は日中晴天時の特性、L64は夜景時における特性の例を示す。特性L63は、適正露出におけるI値が特性L51と概略同じ値となる傾きが約75の直線L61の傾きを暗部ならびに飽和部で緩やかにしたものである。また、特性L64は、最高表示輝度のI値が特性L52と概略同じ値となる傾きが約75の直線L62の傾きを暗部ならびに飽和部で緩やかにしたものである。
  特性L63およびL64が線形に変化する部分(直線L61およびL62がそのまま用いられている部分)の傾きは約75であり、2つの特性に共通している。人間の感覚特性は、一般的に特定の刺激値の対数強度に比例することが知られている。このため、同じ傾きを有する直線L61、L62に基づいて作成されている特性L63およびL64は、知覚的に均等なコントラスト感を満たしているといえる。なお、直線L61およびL62の傾きは約75としたが、例えば65~85の範囲で選択することができる。
  階調変換部309は、EVFの表示モードが設定優先モードの場合には特性L51またはL52に従った階調特性を画像データに適用する。また、階調変換部309は、EVFの表示モードが視認性優先モードの場合には特性L63またはL64に従った階調特性を画像データに適用する。
  特性L63は適正露出時のI値が特性L51とほぼ同じであり、適正露出を挟んだ輝度域についても特性L51とI値に大きな差がない。そのため、日中晴天時の特性が用いられる状況では、EVFの表示モードが切り替えられても画像の明るさはほぼ変化しない。
  図4Cに、「設定優先モード」と「視認性優先モード」の夜景時における特性L52とL64を示す。「視認性優先モード」の夜景時における特性L64は、「設定優先モード」の夜景時の特性L52より、適正露出(0段)におけるI値が100程度低い。これは、視認性優先モードでは実際の見え方に近い表示を行うためである。仮に適正露出におけるI値を同じにした場合、視認性優先モードでの表示が実際の見え方より明るいという印象を与えてしまう。
  このように、他の表示モードよりも画像が暗くなるような階調特性を適用する場合、表示モード間で見た目の明るさ以外にも視覚的な違いが生じうる。この点についてさらに説明する。
■「視認性優先モード」におけるノイズ量および解像感の調整動作
  本実施形態では、現像処理後に適用する階調特性により、「視認性優先モード」の夜景時における表示輝度を下げている。これは、現像処理において画像を暗く調整すると、現像処理後の画像に基づく評価値や検出値の精度、ひいてはオートフォーカスや自動補正処理などの精度が低下する要因となり得るためである。
  一方で、現像処理後に画像を暗くすることにより、ノイズやシュートの振幅が小さくなるため、画像のノイズ感・解像感が変化する。具体的には、夜景時に「設定優先モード」と「視認性優先モード」を切り替えると、「視認性優先モード」のEVF表示の解像感が悪く感じられたり、マニュアルフォーカス(MF)時にピントのピークが分かりづらくなったりする恐れがある。また、「視認性優先モード」では実際の見え方に近いEVF表示が求められるが、夜景時は直接目で見たときよりも表示の解像感が悪いと感じられる恐れがある。
  このような点に鑑み、本実施形態では、ノイズ調整部307により、視認性優先モードにおけるEVF表示の解像感やノイズ感が、設定優先モードにおけるEVF表示と近くなるようにする。具体的には、「視認性優先モード」の夜景時にのEVF表示において、ノイズ処理またはシャープネス処理によって画像のノイズ量を調整する。
  以下、ノイズ調整部307および階調変換部309の動作の詳細について、図5のフローチャートを用いて説明する。
  S801でノイズ調整部307は、EVFの表示モードが「設定優先モード」と「視認性優先モード」のいずれであるかを確認する。現在のEVFの表示モードは例えば不揮発性メモリ107または作業用メモリ108を参照することによって確認することができる。ノイズ調整部307は、設定優先モードであればS802を、視認性優先モードであればS806を実行する。
  設定優先モードである場合、ノイズ調整部307は、S802でNR強度AのNR処理、S803でシャープネス強度Aのシャープネス処理、S804でピーキング閾値Aを用いたマニュアルフォーカスピーキング検出処理を画像データに順次適用する。S802~S804で適用する処理の強度や閾値は露出や感度などの撮影条件に応じて定まり、画像の表示条件(EVFの表示モードや表示輝度など)には影響されない。
  S805では階調変換部309が、画像データに階調変換Aを適用する。階調変換Aは例えば図4Aに示した特性L51やL52に従った階調変換である。階調変換部309は、例えば画像データから得られるシーンの明るさの評価値(例えばBv値)が閾値より高い場合には日中晴天時の特性L51を、閾値以下であれば夜景時の特性L52を選択することができる。評価値はノイズ調整部307で、階調変換部309で、もしくは制御回路104が実行する他の処理で求めることができる。
  S806でノイズ調整部307は、シーンの明るさが閾値を超えるか否かを判定する。ここでは一例として、ノイズ調整部307は、上述のBv値が閾値より大きい場合にシーンの明るさが閾値を超えるものと判定してS807を実行し、Bv値が閾値以下の場合にはS811を実行する。
  ここでは、日中晴天時のシーンか夜景時のシーンかを判別することが目的であるため、これらのシーンが判別できるような閾値を決定しておく。必要であればシーンごとに異なる閾値を用いてもよい。
  明るいシーンの場合、ノイズ調整部307は、S807でNR強度Aのノイズ低減(NR)処理、S808でシャープネス強度Aのシャープネス処理、S809でピーキング閾値Aを用いたMFピーキング検出処理を画像データに順次適用する。これらの処理は設定優先モードにおけるS802~S804と同じである。つまり、明るいシーンの場合、ノイズ量や解像感の調整は視認性優先モードと設定優先モードとで共通である。
  S810では階調変換部309が、画像データに階調変換Bを適用する。階調変換Bは例えば図4Bに示した特性L63やL64に従った階調変換である。階調変換部309は、S805でBv値が閾値より大きいと判定された場合には日中晴天時の特性L63を、閾値以下と判定された場合には夜景時の特性L64に従った階調変換を適用する。
  S806でBv値が閾値以下と判定された場合、ノイズ調整部307は、S807でNR強度BのNR処理、S808でシャープネス強度Bのシャープネス処理、S809でピーキング閾値Bを用いたMFピーキング検出処理を画像データに順次適用する。
  ここで、S807におけるNR処理では、明るいシーンの場合よりもノイズ感を残すとともに、ノイズ低減処理による解像感の低下を抑制するために、NR強度BをNR強度Aよりも弱くする。また、S808におけるシャープネス処理では、明るいシーンの場合よりも解像感を高めるため、シャープネス強度Bをシャープネス強度Aよりも強くする。
  また、S809におけるピーキング処理では、明るいシーンの場合よりも合焦度合いのピークが分かりやすくなるように、ピーキング閾値Bをピーキング閾値Aよりも高く設定し、ピークと判断される値の範囲を狭くする。
  このように、EVFの表示モードが「視認性優先モード」であり、かつ適正露出時の画像が暗くなる階調特性が適用される場合には、適正露出時の画像が暗くならない階調特性が適用される場合よりもノイズ感や解像感を上昇させる処理を適用する。これにより、ユーザが表示モードを設定優先モードから視認性優先モードに切り替えた際に、EVF表示の解像感が悪化したように感じたり、ピントのピークが分かりづらくなったと感じることを抑制できる。
  なお、視認性優先モードにおける、S811およびS812で適用するNR強度Bおよびシャープネス強度BでのNR処理とシャープネス処理を適用するのは、特定の表示輝度域に限定することができる。
  NR強度BのNR処理の適用について説明する。図6(a)のL91は、撮影シーンが明るくないときに用いられる「設定優先モード」の特性L52と「視認性優先モード」の特性L64との差分を示している。
  そして、L91が表す表示モード間のI値(すなわち、表示輝度)の差分が閾値以上の輝度域にNR強度BのNR処理を適用し、他の輝度域はNR強度AのNR処理を適用するようにすることができる。
  図6(b)は、階調特性のI値差分の値が50以上の輝度域についてNR強度Bを、それ以外の輝度域についてNR強度Aとした場合の、輝度とNR強度との関係例を示す図である。ここで、L101は「設定優先モード」の夜景時に用いるNR強度Aの特性を示す。また、L102は「視認性優先モード」の夜景時において、NR強度Bを用いる輝度域の特性例を示す。
  図6(a)に示す特性L91が50以上となる輝度域は、横軸のRAWデータの対数値ではおおよそ-3段から+2.5段までの区間である。そのため、NR処理の特性も、同様の輝度域においてNR強度を特性L101に示すNR強度Aのおおよそ0.8倍程度に弱めたNR強度Bの特性L102を用いる。
  シャープネス処理についても同様に、階調特性のI値差分の値が閾値以上の輝度域についてのみシャープネス強度Bとし、それ以外の輝度域についてはシャープネス強度Aとすることができる。
  なお、ここではRAWデータ(画像データの輝度)とI値(表示輝度に対応する値)との入出力特性間におけるI値の差分が閾値以上の輝度域に限定してノイズ感や解像感を調整する例について説明した。しかし、ノイズ感や解像感を調整する輝度域は、他の方法で定めてもよい。例えば、平均値±標準偏差のI値に対応する輝度域とするなど、I値に基づく他の方法で対象の輝度域を決定してもよい。あるいは、シーン輝度や表示輝度など、I値以外に基づいて決定してもよい。
  なお、S811でのNR強度BによるNR処理および、S812でのシャープネス強度Bによるシャープネス処理は、全輝度域に対して適用してもよい。
(変形例)
  図5のフローチャートでは、視認性優先モードが設定されている場合、撮影シーンの明るさに応じてNR処理およびシャープネス処理の強度、ならびにMFピーキング検出処理で用いる閾値を変更するものであった。しかし、他の条件に応じてこれらの変更を行うようにしてもよい。
  例えば、S806で、EVF表示において解像感が求められる状況であるか否かを判定し、EVF表示において解像感が求められる状況であると判定されればS811を、判定されなければS807を実行するようにしてもよい。EVF表示において解像感が求められる状況とは例えばフォーカスモードがマニュアルフォーカス(MF)に設定されている場合である。
  この場合、EVF表示において解像感が求められる状況であると判定された場合にS810で適用される階調特性は、必ずしも特性L64のように画像を暗くする階調特性でなくてもよい。例えば、EVF表示において解像感が求められる状況であると判定される場合と判定されない場合で同じ階調特性を適用し、NR処理およびシャープネス処理の強度だけを異ならせてもよい。
  また、図5のフローチャートでは、「視認性優先モード」で撮影シーンが明るくない場合に、NR強度、シャープネス強度、ピーキング閾値の3つを変更した。しかし、常にこれら全てを変更しなくてもよい。
  例えば、NR強度のみを変更するなど、これらの1つ以上を変更することで本発明の効果は得られる。図7は、NR強度のみを変更する場合のノイズ調整部307および階調変換部309の動作の詳細について、図5と同様に示したフローチャートである。図7において、図5と同じ処理を行うブロックには図5と同じ参照数字を付してある。
  ノイズ調整部307は、S806でBv値が閾値以下と判定された場合、S811でNR強度BのNR処理を実行する。その後、ノイズ調整部307はS808、S809を実行し、S806でBv値が閾値以下と判定されなかった場合と同様のシャープネス処理およびMFピーキング検出処理を適用する。
  このように、NR強度、シャープネス強度の一方のみを変更する場合についても、適用する輝度域は全体としても特定の一部としてもよい。
  以上説明したように、本実施形態によれば、表示モードに応じた階調特性を適用して表示用画像データを生成する画像処理装置において、画像の解像感が低下する階調特性を適用する場合には、画像の解像感を高める処理を適用するようにした。そのため、表示モードの差による画像の解像感の違いを抑制することができ、表示モードによる使い勝手の変化を抑制することができる。
(その他の実施形態)
  本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
  本発明は上述した実施形態の内容に制限されず、発明の精神および範囲から離脱することなく様々な変更及び変形が可能である。したがって、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。