上述したように、アクティブマトリクス基板に設けられたTFTには、その用途ごとに求められる特性が異なっている。以下、液晶表示装置に使用されるアクティブマトリクス基板を例に、好適なTFT特性の一例を説明する。
  SSD回路に使用されるSSD回路用TFTには、比較的大きいオン電流を流す必要があり、高い電流駆動力が求められる。電流駆動力の小さいTFTを用いると、所定の時間でソースバスラインを充電することが困難な場合がある。また、所望の電流駆動力を確保するためにTFTのチャネル幅を大きくすると、TFTのサイズが増大し、狭額縁化を実現できない可能性がある。このため、SSD回路用TFTにおいては、閾値電圧を低くして、オン電流をさらに高めることが好ましい。SSD回路用TFTは、例えば、負の閾値電圧を有するデプレッション特性を有してもよい。
  これに対し、ゲートドライバなどの駆動回路に用いられる駆動回路用TFTでは、その閾値電圧をSSD回路用TFTの閾値電圧よりもプラス方向にシフトさせて、オフリーク電流を低減することが好ましい。オフリーク電流が大きいと、消費電力の増大や、駆動回路の動作不良、誤動作などの要因となり得る。駆動回路用TFTは、例えば、正の閾値電圧を有するエンハンスメント特性を有してもよい。
  また、液晶表示装置に使用される画素TFTとしては、オフリーク電流の小さいTFTを用いることが好ましい。画素TFTは、デプレッション特性を有してもよいし、エンハンスメント特性を有してもよい。
  また、有機EL表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板においては、1つの画素内に、駆動用TFTおよび選択用TFTを少なくとも含む画素回路が設けられる。駆動用TFTは、エンハンスメント特性を有することが好ましい。また、多階調表示を好適に行うためには、駆動用TFTのVg(ゲート電圧)-Id(ドレイン電流)特性がある程度なだらかである(つまり急峻でない)ことが好ましい。このため、駆動用TFTには、サブスレッショルド係数(S値)が大きいことが求められる。閾値電圧をプラス方向に大きくし、かつ、S値を大きくするために、例えば、移動度の低い酸化物半導体を用いてもよい。一方、選択用TFTは、高い移動度を有する(すなわちオン電流が大きい)ことが好ましい。選択用TFTの閾値電圧は負(デプレッション特性)であってもよい。また、選択用TFTでは、S値は大きくなくてもよい。むしろS値が小さく、スイッチング速度が高いことが求められる。
  なお、TFTの用途および求められる特性は、上述した例に限定されず、多様化している。
  しかしながら、同じ酸化物半導体膜を利用して、特性の異なる複数のTFTを形成することは困難である。例えば、SSD回路用TFTや画素TFTには、高い移動度を有する酸化物半導体を用いることが好ましいが、酸化物半導体の高移動度化に伴って、TFTの閾値電圧がマイナス方向にシフトし、デプレッション特性になる傾向がある。このため、高移動度の酸化物半導体は駆動回路用TFTには適さない場合がある。一方、駆動回路用TFTには、エンハンスメント特性を得るために、比較的低い移動度の酸化物半導体を用いることが好ましい。しかし、エンハンスメント特性を有するTFTでは、オン電流をさらに高めることは難しいことから、例えばSSD回路などの他の周辺回路には向かない可能性がある。
  本発明者は、上記知見に基づいて、同じ酸化物半導体膜を利用し、かつ、互いに特性の異なる複数のトップゲートTFTを作り分ける方法を見出した。
  (第1の実施形態)
  以下、図面を参照しながら、液晶表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板を例に、第1の実施形態のアクティブマトリクス基板を説明する。
  <アクティブマトリクス基板1000の基本構成>
  図1は、本実施形態のアクティブマトリクス基板1000の平面構造の一例を示す概略図である。
  アクティブマトリクス基板1000は、表示領域DRと、表示領域DR以外の領域(非表示領域または額縁領域)FRとを有している。表示領域DRは、マトリクス状に配列された画素領域PIXによって構成されている。画素領域PIX(単に「画素」と呼ぶこともある)は、表示装置の画素に対応する領域である。非表示領域FRは、表示領域DRの周辺に位置し、表示に寄与しない領域である。
  非表示領域FRには、例えばゲートドライバ、SSD回路として機能するデマルチプレクサ回路などが一体的(モノリシック)に設けられている。ソースドライバは、例えば、アクティブマトリクス基板1000に実装されている。
  表示領域DRには、行方向(x方向)に延びる複数のゲートバスラインGLと、列方向(y方向)に延びる複数のソースバスラインSLとが形成されている。各画素領域PIXは、例えばゲートバスラインGLおよびソースバスラインSLで規定されている。ゲートバスラインGLは、それぞれ、ゲートドライバの各端子に接続されている。ソースバスラインSLは、それぞれ、ソースドライバの各端子に接続されている。
  各画素領域PIXは、画素トランジスタ(画素TFT)Tpと、画素電極PEとを有している。画素トランジスタTpのゲート電極は、対応するゲートバスラインGLに電気的に接続され、ソース電極は、対応するソースバスラインSLに電気的に接続されている。ドレイン電極は画素電極PEに電気的に接続されている。アクティブマトリクス基板1000を、FFS(Fringe  Field  Switching)モードなどの横電界モードの表示装置に適用する場合には、図示しないが、アクティブマトリクス基板1000に、複数の画素に対して共通の電極(共通電極)が設けられる。
  アクティブマトリクス基板1000の非表示領域には、周辺回路を構成する複数の回路TFTが形成されている。回路TFTは、ゲートドライバを構成する駆動回路用TFT、SSD回路を構成するSSD回路用TFTなどを含む。
  <アクティブマトリクス基板1000におけるTFT構造>
  次いで、アクティブマトリクス基板1000に含まれる複数のトップゲートTFTの構造を説明する。
  酸化物半導体層を活性層とするトップゲートTFTの特性は、例えば、酸化物半導体層のうちゲート絶縁層を介してゲート電極で覆われた領域の構造によって変わり得る。本明細書では、酸化物半導体層のうちゲート絶縁層を介してゲート電極で覆われた領域を「第1領域」呼ぶ。第1領域は、チャネルが形成される領域を含む。また、酸化物半導体層における第1領域の構造を「活性層構造」と呼ぶことがある。
  本実施形態では、アクティブマトリクス基板1000は、トップゲート構造を有する複数の酸化物半導体TFTを備える。複数の酸化物半導体TFTは、互いに異なる活性層構造を有する第1のTFTおよび第2のTFTを少なくとも1つずつ含む。第1のTFTおよび第2のTFTの活性層は、同一の酸化物半導体膜(ここでは高移動度酸化物半導体膜)を用いて形成されている。
  第1のTFTでは、酸化物半導体層の第1領域の少なくとも一部は、高移動度酸化物半導体膜と、高移動度酸化物半導体膜の上に配置された低移動度酸化物半導体膜とを含む積層構造を有する。ここでいう「高移動度酸化物半導体膜」とは、相対的に高い移動度を有する酸化物半導体膜であり、「低移動度酸化物半導体膜」とは、相対的に低い(つまり高移動度酸化物半導体膜よりも低い)移動度を有する酸化物半導体膜である。一方、第2のTFTでは、酸化物半導体層の第1領域の全体は、上記の高移動度酸化物半導体膜および低移動度酸化物半導体膜のうちの一方を含み、他方を含まない。
  第1のTFTと第2のTFTとは、互いに異なる活性層構造を有するので、異なる特性を有し得る。例えば、第2のTFTの第1領域の移動度は、第1のTFTよりも低いので、第2のTFTは、第1のTFTの閾値電圧をプラス方向にシフトさせた閾値電圧を有し得る。
  本明細書では、酸化物半導体層のうち、高移動度酸化物半導体膜および低移動度酸化物半導体膜を含む積層構造を有する部分を「積層部pa」と呼ぶ。また、酸化物半導体層のうち、高移動度酸化物半導体膜を含み、低移動度酸化物半導体膜を含まない部分を「下層部p1」、低移動度酸化物半導体膜を含み、高移動度酸化物半導体膜を含まない部分を「上層部p2」と呼ぶ。下層部p1は、高移動度酸化物半導体膜のみからなる単層構造を有してもよいし、他の半導体膜をさらに含んでいてもよい。同様に、上層部p2は、低移動度酸化物半導体膜のみを含んでもよいし、他の半導体膜をさらに含んでいてもよい。
  以下、図面を参照しながら、各TFTの構造をより具体的に説明する。
  図2は、アクティブマトリクス基板1000に形成された第1のTFT100および第2のTFT200を例示する断面図である。ここでは、TFT100は、電流駆動力が求められる一部の回路TFT(例えばSSD回路用TFTとして用いられ、TFT200は、画素TFTまたは駆動回路用TFTとして用いられる例を説明する。アクティブマトリクス基板1000は、複数のTFT100および複数のTFT200を有し得るが、単一のTFT100および単一のTFT200のみを図示し、説明を行う。
  TFT100、200は、基板1に支持され、かつ、酸化物半導体膜を含む活性層を有する、トップゲートTFTである。
  TFT100は、基板1上に配置された酸化物半導体層4Aと、酸化物半導体層4Aを覆うゲート絶縁層5Aと、ゲート絶縁層5A上に配置されたゲート電極7Aと、ソース電極8Aおよびドレイン電極9Aとを備える。ゲート電極7Aは、ゲート絶縁層5Aを介して、酸化物半導体層4Aの一部を覆うように配置されている。
  酸化物半導体層4Aは、ゲート絶縁層5Aを介してゲート電極7Aに覆われている第1領域4Acと、基板1の法線方向から見たときゲート電極7Aに覆われていない領域(以下、「第2領域」と呼ぶ。)とを含む。
  酸化物半導体層4Aにおける第1領域4Acの全体は、高移動度酸化物半導体膜41と、高移動度酸化物半導体膜41の上に配置された低移動度酸化物半導体膜42とを含む積層構造を有する積層部paである。
  酸化物半導体層4Aの第2領域は、第1領域4Acよりも比抵抗の低い低抵抗領域であってもよい。低抵抗領域は、例えば、酸化物半導体層4Aに対して、ゲート電極7Aをマスクとして低抵抗化処理を行うことで形成され得る。
  第2領域(低抵抗領域)は、基板1の法線方向から見たとき、第1領域4Acの両側にそれぞれ配置された、第1コンタクト領域4Asおよび第2コンタクト領域4Adを含む。第1コンタクト領域4Asは、ソース電極8Aに電気的に接続される領域であり、第2コンタクト領域4Adは、ドレイン電極9Aに電気的に接続される領域である。第1コンタクト領域4Asおよび第2コンタクト領域4Adも、積層部paであってもよい。例えば、図示するように、酸化物半導体層4A全体が、高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42を含んでいてもよい。なお、この例では、酸化物半導体層4Aの第1領域4Acが全体に亘って積層部paであるが、酸化物半導体層4Aの第1領域4Acの少なくとも一部が積層部paであればよい。後述するように、第1領域4Acの一部または第2領域が下層部p1または上層部p2を有してもよい。
  ゲート絶縁層5Aは、第1領域4Acを覆い、かつ、第1コンタクト領域4Asおよび第2コンタクト領域4Adを覆っていなくてもよい。図示する例では、ゲート絶縁層5Aは、基板1の法線方向から見たときにゲート電極7Aに重なる領域にのみ形成されている。ゲート絶縁層5Aのエッジは、ゲート電極7Aのエッジと整合している。
  ゲート電極7Aは、ゲート絶縁層5A上に、基板1の法線方向から見たとき、第1領域4Acに重なり、かつ、第1コンタクト領域4Asおよび第2コンタクト領域4Adに重ならないように配置されている。
  酸化物半導体層4A、ゲート絶縁層5Aおよびゲート電極7Aは、層間絶縁層10で覆われている。層間絶縁層10は、酸化物半導体層4A、4Bの上面の一部に接していてもよい。
  ソース電極8Aおよびドレイン電極9Aは、例えば、層間絶縁層10上に配置されている。この例では、層間絶縁層10には、酸化物半導体層4Aの第1コンタクト領域4Asを露出する第1開口部10Asと、第2コンタクト領域4Adの一部を露出する第2開口部10Adとが設けられている。ソース電極8Aは、層間絶縁層10上および第1開口部10As内に配置され、第1開口部10As内で第1コンタクト領域4Asに接続されている。ドレイン電極9Aは、層間絶縁層10上および第2開口部10Ad内に配置され、第2開口部10Ad内で第2コンタクト領域4Adに接続されている。
  TFT100は、酸化物半導体層4Aの基板1側に、遮光層として機能する下部導電層2Aを有していてもよい。下部導電層2Aは、下部絶縁層3で覆われている。TFT100の酸化物半導体層4Aは、下部絶縁層3上に配置されている。下部導電層2Aは、基板1の法線方向から見たとき、酸化物半導体層4Aのうち少なくとも第1領域4Acと重なるように配置されていてもよい。これにより、基板1側からの光(バックライト光)に起因する酸化物半導体層4Aの特性劣化を抑制できる。なお、下部導電層2Aは、電気的にフローティング状態であってもよいし、GND電位(0V)に固定されていてもよい。あるいは、下部導電層2Aを、図示しない接続部によってゲート電極7Aに電気的に接続することで、下部ゲート電極として機能させてもよい(ダブルゲート構造)。これにより、TFT100のオン電流をさらに高めることができる。ダブルゲート構造を適用したTFT100は、例えばSSD回路に好適に用いられる。
  一方、TFT200は、TFT100と同様に、酸化物半導体層4Bと、酸化物半導体層4Bの一部上にゲート絶縁層5Bを介して配置されたゲート電極7Bと、ソース電極8Bおよびドレイン電極9Bとを有する。TFT200は、酸化物半導体層4Bの基板1側に、遮光層として機能する下部導電層2Bを有していてもよい。
  酸化物半導体層4Bは、酸化物半導体層4Aと同様に、基板1の法線方向から見たとき、ゲート電極7Aに重なる第1領域4Bcと、ゲート電極7Aに重ならない第2領域とを含む。第2領域は、第1領域4Acよりも比抵抗の低い低抵抗領域であってもよい。
  酸化物半導体層4Bは、また、基板1の法線方向から見たとき、第1領域4Bcの両側にそれぞれ配置された第1コンタクト領域4Bsおよび第2コンタクト領域4Bdを含む。第1コンタクト領域4Bsおよび第2コンタクト領域4Bdは、第2領域(低抵抗領域)に設けられている。第1コンタクト領域4Bsはソース電極8Bに電気的に接続される領域であり、第2コンタクト領域4Bdは、ドレイン電極9Bに電気的に接続される領域である。
  TFT200では、酸化物半導体層4Bの第1領域4Bcは、低移動度酸化物半導体膜42を含むが、高移動度酸化物半導体膜41を含まない上層部p2である。図示する例では、酸化物半導体層4B全体(第1コンタクト領域4Bsおよび第2コンタクト領域4Bdを含む)が上層部pである。なお、本実施形態では、酸化物半導体層4Bにおける第1領域4Bcが全体に亘って上層部p2であればよく、後述するように、酸化物半導体層4Bの第2領域(例えばコンタクト領域)は高移動度酸化物半導体膜41を含んでもよい。
  TFT200は、酸化物半導体層4Bの構造を除いて、TFT100と同様の構造を有してもよい。ただし、TFT100およびTFT200の各層の平面形状、サイズ、チャネル長、チャネル幅などは互いに異なっていてもよい。
  TFT200を、図1に示す画素トランジスタTp(画素TFT)として用いる場合、ゲート電極7Bは、対応するゲートバスラインGLに電気的に接続される。ゲート電極7Bは、ゲートバスラインGLと同じ導電膜を用いて、対応するゲートバスラインGLと一体的に形成されていてもよい。ソース電極8Bは、対応するソースバスラインSLに電気的に接続される。ソース電極8Bは、ソースバスラインSLと同じ導電膜を用いて、対応するソースバスラインSLと一体的に形成されていてもよい。ドレイン電極9Bは、対応する画素電極PEに電気的に接続される。
  TFT100およびTFT200の酸化物半導体層4A、4Bの低移動度酸化物半導体膜42は、同一の酸化物半導体膜から形成されている。各TFTのゲート絶縁層5A、5Bは同じ絶縁膜から形成され、ゲート電極7A、7Bは同じ導電膜(ゲート用導電膜)から形成され、ソース電極8A、8Bおよびドレイン電極9A、9Bは、同じ導電膜(ソース用導電膜)から形成されてもよい。これにより、TFT100およびTFT200を共通のプロセスで製造できる。
  TFT100およびTFT200の構造は、図2に示した構造に限定されない。例えば、ソース電極および/またはドレイン電極を、酸化物半導体層よりも基板側に設けてもよい。後述するように、TFT200のソース電極8Bを、下部導電層2Bと同じ導電膜を用いて形成し、下部絶縁層3に形成された開口部内で、酸化物半導体層4Bとソース電極8Bとを接続させてもよい。
  <効果>
  本実施形態によると、共通の酸化物半導体膜(ここでは低移動度酸化物半導体膜42)を用いつつ、互いに特性の異なるTFT100およびTFT200を作り分けることが可能である。
  図3は、TFT100およびTFT200のVg-Id特性を例示する図である。グラフの横軸は、ドレイン電極の電位を基準としたゲート電極の電位(ゲートードレイン間電圧)Vdgを表し、グラフの縦軸はドレイン電流Idを表す。
  図3から、TFT200は、TFT100よりも高い閾値電圧を有することが分かる。これは、TFT200では、酸化物半導体層4Bの第1領域4Bc(チャネル領域)は高移動度酸化物半導体膜41を含まないので、高移動度酸化物半導体膜41を含む酸化物半導体層4Aよりも、第1領域全体としての移動度が低くなり、閾値電圧がプラス方向にシフトしたからと考えられる。
  TFT100は、例えば、SSD回路用TFTなどの回路TFTに好適に用いられる。TFT100は、TFT200よりも高い移動度を有しており、電流駆動力(オン電流)に優れる。また、短チャネル化が可能であり、回路面積を低減できる。
  TFT200は、オフリーク電流が小さいことから、画素TFTとして好適に用いられる。画素TFTは、閾値電圧が正であるエンハンスメント特性を有してもよいし、閾値電圧が負であるデプレッション特性を有してもよい。また、TFT200がエンハンスメント特性を有する場合、駆動回路用TFTなどの回路TFTに好適に用いられ得る。これにより、回路誤動作を抑制でき、歩留まりの低下を抑制できる。さらに、検査用TFTやESD保護用のTFTとしてTFT200を用いてもよい。
  または、駆動回路に、TFT100およびTFT200を混在させてもよい。例えばゲート駆動回路に含まれる複数のTFTのうち少なくとも「出力トランジスタ(バッファトランジスタともいう)」(図18を参照して後述)と呼ばれるTFTとして、移動度の高いTFT100を用い、他のいずれかのTFTとしてTFT200を用いてもよい。
  液晶表示装置における画素TFT、駆動回路用TFTおよびSSD回路用TFTの好適な特性を表1に例示する。表1に記載の特性および数値範囲は例示であり、各TFTの特性を限定するものではない。
  <高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42について>
  各酸化物半導体膜の組成、厚さ、結晶構造、形成方法などは特に限定されない。高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42は、それぞれ、単層膜でもよいし、複数の酸化物半導体膜を含む積層膜であってもよい。高移動度酸化物半導体膜41の移動度(高移動度酸化物半導体膜41が積層膜である場合には、その積層膜全体の移動度)が低移動度酸化物半導体膜4の移動度よりも高ければよい。
  高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42の組成は互いに異なっていてもよい。「組成が異なる」とは、各層に含まれる金属元素の種類または組成比が異なることをいう。一例として、高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42は、それぞれ、Inおよび/またはSnを含み、高移動度酸化物半導体膜41における全金属元素に対するInおよびSnの原子数比の合計は、低移動度酸化物半導体膜42における全金属元素に対するInおよびSnの原子数比の合計よりも大きくてもよい。
  例えば、高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42は、いずれもIn-Ga-Zn-O系酸化物半導体層であり、低移動度酸化物半導体膜42におけるInの原子数比は、高移動度酸化物半導体膜41におけるInの原子数比よりも小さくてもよい。または、低移動度酸化物半導体膜42におけるGaの原子数比は、高移動度酸化物半導体膜41におけるGaの原子数比よりも大きくてもよい。
  また、高移動度酸化物半導体膜41はSnを含み、低移動度酸化物半導体膜42はSnを含んでいなくてもよい。または、低移動度酸化物半導体膜42は、高移動度酸化物半導体膜41よりも低い濃度でSnを含んでいてもよい。つまり、低移動度酸化物半導体膜42における全金属元素に対するSnの原子数比は、高移動度酸化物半導体膜41におけるSnの原子数比よりも小さくてもよい。
  低移動度酸化物半導体膜42として、例えば、In-Ga-Zn-O系半導体膜(In:Ga:Zn=1:1:1等)を用いることができる。高移動度酸化物半導体膜41として、例えば、In-Ga-Zn-O系半導体膜(In:Ga:Zn=5:1:4等)、In-Sn-Zn-O系半導体膜、In-Al-Sn-Zn-O系半導体膜、In-W-Zn-O系半導体膜、In-Sn-O系半導体膜、In-Zn-O系半導体膜、In-Ga-Sn-O系半導体膜、In-Sn-Ti―Zn―O系半導体膜などを用いることができる。
  また、低移動度酸化物半導体膜42および高移動度酸化物半導体膜41は、互いに異なる結晶構造を有してもよい。例えば、これらの酸化物半導体膜の一方が非晶質酸化物半導体膜、他方が、結晶質部分を含む結晶質酸化物半導体膜であってもよい。
  さらに、各金属元素の比率が同じ場合でも、成膜方法または成膜条件を異ならせることで、酸化物半導体膜の移動度を異ならせることが可能である。例えば、酸化物半導体膜をスパッタ法で形成する際のチャンバー内の雰囲気(例えばチャンバーに供給する酸素およびArの流量比)を異ならせてもよい。具体的には、低移動度酸化物半導体膜42の形成時には、Arに対する酸素の流量比を大きく(例えば80%)設定し、高移動度酸化物半導体膜41の形成時には、Arに対する酸素の流量比を低移動度酸化物半導体膜42よりも小さく(例えば20%)設定してもよい。
  低移動度酸化物半導体膜42および高移動度酸化物半導体膜41の厚さは、略同じでもよいし、異なっていてもよい。高移動度酸化物半導体膜41は、低移動度酸化物半導体膜42よりも薄くてもよい。高移動度酸化物半導体膜41を薄くすることで、高移動度酸化物半導体膜41を用いたTFTの閾値電圧を0V付近に設定できる。これにより、エンハンスメント特性を有しつつ、オン電流の高いTFTが得られる。高移動度酸化物半導体膜41の厚さは、例えば5nm以上30nm以下であってもよい。低移動度酸化物半導体膜42の厚さは、例えば、20nm以上100nm以下であってもよい。
  酸化物半導体層4A、4Bは、高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42以外の酸化物半導体膜をさらに含んでもよい。例えば、図4に示すように、TFT100の酸化物半導体層4Aは、高移動度酸化物半導体膜41と基板1との間に、高移動度酸化物半導体膜41よりも移動度の低い他の酸化物半導体膜43をさらに含み、TFT200の酸化物半導体層4Bは、他の酸化物半導体膜43を含まなくてもよい。他の酸化物半導体膜43として、例えば低移動度酸化物半導体膜42と同様の組成を有する低移動度酸化物半導体膜を用いてもよい。酸化物半導体膜43の厚さは、例えば、5nm以上30nm以下であってもよい。
  <アクティブマトリクス基板1000の製造方法>
  図5A~図5Nおよび図6は、それぞれ、アクティブマトリクス基板1000の製造方法を説明するための工程断面図である。
  ここでは、FFSモードのインセルタッチパネル型液晶表示装置に適用されるアクティブマトリクス基板を例に説明する。このようなアクティブマトリクス基板は、画素電極および共通電極に加えて、複数のタッチセンサ用の電極(以下、「タッチセンサ電極」)と、タッチセンサの駆動用および/または検出用の複数の配線(以下、「タッチ配線」)とをさらに備える。
  この例では、アクティブマトリクス基板1000の非表示領域FRに、周辺回路を構成する第1回路トランジスタTc1および第2回路トランジスタTc2を形成し、表示領域DRにおける各画素領域PIXに、画素トランジスタTpを形成する。第1回路トランジスタTc1は、第1のTFTであり、例えばSSD回路に用いられる。第2回路トランジスタTc2は、第2のTFTであり、例えば駆動回路に用いられる。画素トランジスタTpは、第2のTFTである。なお、各TFTの用途は図示する例に限定されない。以下の説明では、第1回路トランジスタTc1が形成される領域を「TFT形成領域Rc1」、第2回路トランジスタTc2が形成される領域を「TFT形成領域Rc2」、画素トランジスタが形成される領域を「TFT形成領域Rp」とする。
  ・STEP1:下部導電層の形成(図5A)
  基板1上に、例えばスパッタリング法で、下部導電膜(厚さ:例えば50nm以上500nm以下)を形成する。次いで、公知のフォトリソ工程により、下部導電膜のパターニングを行う。このようにして、図5Aに示すように、TFT形成領域Rc1に下部導電層2Aを形成し、TFT形成領域Rc2、Rpに下部導電層2Bを形成する。
  基板1としては、透明で絶縁性を有する基板、例えばガラス基板、シリコン基板、耐熱性を有するプラスチック基板(樹脂基板)などを用いることができる。
  下部導電膜の材料は、特に限定されず、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)等の金属又はその合金、若しくはその金属窒化物を含む膜を適宜用いることができる。また、これら複数の膜を積層した積層膜を用いてもよい。
  ここでは、下部導電膜として、CuまたはAlを含む金属膜(合金膜を含む)の単層膜を用いる。または、CuまたはAlを含む金属膜を最上層とする積層膜を用いてもよい。
  ・STEP2:下部絶縁層3の形成(図5B)
  次いで、図5Bに示すように、下部導電層2A、2Bを覆うように、下部絶縁層3(厚さ:例えば200nm以上600nm以下)を形成する。
  下部絶縁層3は例えばCVD法で形成される。下部絶縁層3としては、酸化珪素(SiOx)層、窒化珪素(SiNx)層、酸化窒化珪素(SiOxNy;x>y)層、窒化酸化珪素(SiNxOy;x>y)層等を適宜用いることができる。下部絶縁層3は単層であってもよいし、積層構造を有していてもよい。例えば、基板側(下層)に、基板1からの不純物等の拡散防止のために窒化珪素(SiNx)層、窒化酸化珪素層等を形成し、その上の層(上層)に、絶縁性を確保するために酸化珪素(SiO2)層、酸化窒化珪素層等を形成してもよい。
  ・STEP3:高移動度酸化物半導体膜41の形成(図5C)
  次いで、図5Cに示すように、下部絶縁層3上に、高移動度酸化物半導体膜41を形成する。
  高移動度酸化物半導体膜41は、例えばスパッタ法で形成され得る。ここでは、高移動度酸化物半導体膜41として、厚さが10nmのIn―Ga-Zn-O系半導体膜(例えばIn:Ga:Zn=5:1:4)を形成する。代わりに、厚さが10nmのIn-Sn-Zn-O系半導体膜(例えばIn2O3-SnO2-ZnO)等のSnを含む膜を形成してもよい。
  本工程で高移動度酸化物半導体膜41を含む積層膜を形成してもよい。例えば、高移動度酸化物半導体膜41よりも移動度の低い他の酸化物半導体膜を下層とし高移動度酸化物半導体膜41を上層とする積層膜を形成してもよい。これにより、図4に示すTFT構造が得られる。
  ・STEP4:高移動度酸化物半導体膜41のパターニング(図5D)
  次いで、高移動度酸化物半導体膜41のパターニングを行う。これにより、高移動度酸化物半導体膜41のうちTFT形成領域Rc2、Rpに位置する部分を除去する。高移動度酸化物半導体膜41のうちTFT形成領域Rc1に位置する部分は除去せずに残す。TFT形成領域Rc1に残る高移動度酸化物半導体膜41は、酸化物半導体層となる部分よりも大きいサイズを有してもよい。
  高移動度酸化物半導体膜41のパターニングは、ドライエッチングで行ってもよいし、ウェットエッチングで行ってもよい。ウェットエッチングの場合、高移動度酸化物半導体膜41がIn-Ga-Zn-O系半導体膜であれば、PAN系エッチング液またはシュウ酸系エッチング液を用い、In-Sn-Zn-O系半導体膜であればシュウ酸系エッチング液を用いることができる。
  ・STEP5:低移動度酸化物半導体膜42の形成(図5E)
  続いて、図5Eに示すように、下部絶縁層3とパターニングされた高移動度酸化物半導体膜41とを覆うように低移動度酸化物半導体膜42を形成する。ここでは、低移動度酸化物半導体膜42として、厚さが40nmのIn―Ga-Zn-O系半導体膜(例えばIn:Ga:Zn=1:1:1または4:2:4)を形成する。
  ・STEP6:高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42のパターニング(図5F)
  続いて、高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42を含む積層膜のパターニングを行う。これにより、図5Fに示すように、TFT形成領域Rc1に、高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42を含む積層構造を有する酸化物半導体層4Aが形成される。TFT形成領域Rc2、Rpには、低移動度酸化物半導体膜42を含み、高移動度酸化物半導体膜41を含まない酸化物半導体層4Bが形成される。
  積層膜のパターニングは、ドライエッチングで行ってもよいし、ウェットエッチングで行ってもよい。ウェットエッチングの場合、高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42がいずれもIn-Ga-Zn-O系半導体膜であれば、PAN系エッチング液またはシュウ酸系エッチング液を用いてもよい。高移動度酸化物半導体膜41がIn-Sn-Zn-O系半導体膜、低移動度酸化物半導体膜42がIn-Ga-Zn-O系半導体膜であれば、シュウ酸系エッチング液を用いてもよい。これにより、高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42を同時に(一括して)エッチングすることができる。この場合、酸化物半導体層4Aにおいて、高移動度酸化物半導体膜41の側面と低移動度酸化物半導体膜42の側面とは整合する。
  高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42のパターニングの前または後に、高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42のアニール処理を行ってもよい。
  ・STEP7:ゲート絶縁膜50およびゲート用導電膜70の形成(図5G)
  次いで、図5Gに示すように、酸化物半導体層4A、4Bの一部上に、ゲート絶縁膜50およびゲート用導電膜(厚さ:例えば50nm以上500nm以下)70をこの順で形成する。
  ゲート絶縁膜50として、下部絶縁層3と同様の絶縁膜(下部絶縁層3として例示した絶縁膜)を用いることができる。ここでは、ゲート絶縁膜50として、酸化珪素(SiO2)膜を形成する。ゲート絶縁膜として、酸化珪素膜などの酸化物膜を用いると、酸化物半導体層4A、4Bのチャネル領域に生じた酸化欠損を酸化物膜によって低減できるので、チャネル領域の低抵抗化を抑制できる。
  ゲート用導電膜70として、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)等の金属またはこれらの合金を用いることができる。ゲート用導電膜70は、異なる導電材料から形成された複数の層を含む積層構造を有していてもよい。ここでは、ゲート用導電膜として、Cu合金膜を下層、Cu膜を上層とするCu/Cu合金積層膜を用いる。代わりに、Cu/Ti積層膜、あるいは、Cu/Mo積層膜を用いてもよい。
  ・STEP8:ゲート絶縁層5A、5Bおよびゲート電極7A、7Bの形成(図5H)
  続いて、図5Hに示すように、ゲート絶縁層5A、5Bおよびゲート電極7A、7Bを形成する。
  まず、公知のフォトリソ工程により、ゲート用導電膜70のパターニングを行う。これにより、TFT形成領域Rc1にゲート電極7A、TFT形成領域Rc2、Rpに、それぞれ、ゲート電極7Bを形成する。図示しないが、ゲート用導電膜70を用いて、ゲートバスラインも形成される。酸化物半導体層4A、4Bのうち、基板1の法線方向から見たときゲート電極7A、7Bに重なる部分は、それぞれ、チャネル領域を含む第1領域4Ac、4Bcとなる。
  次いで、ゲート用導電膜70のパターニングに用いたレジストマスクを用いて、あるいは、ゲート電極7A、7Bをマスクとして、ゲート絶縁膜50のパターニングを行い、ゲート絶縁層5A、5Bを形成する。この方法によると、基板1の法線方向から見たとき、ゲート電極7A、7Bの側面は、それぞれ、ゲート絶縁層5A、5Bの側面と整合する。ただし、各膜のエッチング条件によっては整合しない場合がある。例えば、ゲート電極7A、7Bをオーバーエッチングして、レジストマスクの側面からゲート電極7A、7Bの側面を大きくシフトさせる。この後、レジストマスクを用いてゲート絶縁膜50のドライエッチングを行うと、基板1の法線方向から見て、ゲート電極7A、7Bの側面は、ゲート絶縁層5A、5Bの側面よりも内側に位置することがある(図7C参照)。
  なお、ゲート絶縁膜50のパターニングを行った後で、ゲート用導電膜の形成およびパターニングを行ってもよい。
  ゲート電極7A、7Bを形成した後、酸化物半導体層4A、4Bの低抵抗化処理を行ってもよい。低抵抗化処理として、例えばプラズマ処理を行ってもよい。これにより、基板1の主面の法線方向から見たとき、酸化物半導体層4A、4Bのうちゲート電極7A、7Bにもゲート絶縁層5A、5Bにも重なっていない領域(露出領域)は、これらと重なっている領域(チャネル領域を含む)よりも比抵抗の低い低抵抗領域となる。低抵抗領域は、導電体領域(例えばシート抵抗:200Ω/□以下)であってもよい。本実施形態では、基板1の法線方向から見たときゲート電極7A、7Bに重なる第1領域4Ac、4Bcと、第1領域の両側に位置し、第1領域4Ac、4Bcよりも比抵抗の低い低抵抗領域とを含む酸化物半導体層4A、4Bを得る。なお、低抵抗化処理の方法はプラズマ処理に限定されない。
  ・STEP9:層間絶縁層10の形成(図5I)
  次いで、酸化物半導体層4A、4B、ゲート絶縁層5A、5Bおよびゲート電極7A、7Bを覆う層間絶縁層10を形成する。この後、公知のフォトリソ工程により、層間絶縁層10のパターニングを行う。これにより、図5Iに示すように、TFT形成領域Rc1において、層間絶縁層10に、酸化物半導体層4Aの低抵抗領域の一部である第1コンタクト領域4As、4Adを露出する第1開口部10Asおよび第2開口部10Adを形成し、TFT形成領域Rc2、Rpにおいて、層間絶縁層10に、酸化物半導体層4Bの低抵抗領域の一部であるコンタクト領域4Bs、4Bdを露出する第1開口部10Bsおよび第2開口部10Bdを形成する。
  層間絶縁層10として、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜などの無機絶縁層を単層又は積層させて形成することができる。無機絶縁層の厚さは100nm以上500nm以下でもよい。層間絶縁層10を窒化シリコン膜などの酸化物半導体を還元させる絶縁膜を用いて形成すると、酸化物半導体層4A、4Bのうち層間絶縁層10と接する領域(ここでは低抵抗領域)の比抵抗を低く維持できるので好ましい。ここでは、層間絶縁層10として、例えば、SiNx層(厚さ:300nm)をCVD法で形成する。
  層間絶縁層10として、酸化物半導体を還元し得る絶縁層(例えば、窒化シリコン層などの水素供与性の層)を用いる場合、上述した低抵抗化処理を行わなくても、酸化物半導体層4A、4Bのうち層間絶縁層10と接する部分を、接していない部分よりも低抵抗化できる。
  ・STEP10:ソース電極8A、8Bおよびドレイン電極9A、9Bの形成(図5J)
  次いで、層間絶縁層10上に、不図示のソース用導電膜(厚さ:例えば50nm以上500nm以下)を形成し、ソース用導電膜のパターニングを行う。これにより、図5Jに示すように、ソース電極8A、8Bおよびドレイン電極9A、9Bを形成する。図示しないが、ソース用導電膜からソースバスラインも形成される。このようにして、非表示領域FRのTFT形成領域Rc1およびTFT形成領域Rc2に、それぞれ、第1回路トランジスタTc1および第2回路トランジスタTc2が形成される。また、各画素領域PIXのTFT形成領域Rpに、画素トランジスタTpが形成される。
  ソース電極8A、8Bは、それぞれ、層間絶縁層10上および開口部10As、10Bs内に配置され、開口部10As、10Bs内で、酸化物半導体層4A、4Bの第1コンタクト領域4As、4Bsに接続される。ドレイン電極9A、9Bは、それぞれ、層間絶縁層10上および開口部10Ad、10Bd内に配置され、開口部10Ad、10Bd内で、酸化物半導体層4A、4Bの第2コンタクト領域4Ad、4Bdに接続される。
  ソース用導電膜として、例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)あるいはタングステン(W)から選ばれた元素、またはこれらの元素を成分とする合金などを用いることができる。例えば、チタン膜-アルミニウム膜-チタン膜の3層構造、モリブデン膜-アルミニウム膜-モリブデン膜などの3層構造などを有していてもよい。なお、ソース用導電膜は3層構造に限られず、単層、または2層構造、あるいは4層以上の積層構造を有していてもよい。ここでは、Ti膜(厚さ:15~70nm)を下層、Cu膜(厚さ:50~400nm)を上層とする積層膜を用いる。Ti膜などのオーミック導電膜を最下層とする積層膜を用いると、酸化物半導体層4A、4Bとのコンタクト抵抗をより効果的に低減できる。
  ・STEP11:無機絶縁層11および有機絶縁層12の形成(図5K)
  次に、図5Kに示すように、層間絶縁層10と、ソース電極8A、8Bおよびドレイン電極9A、9Bとを覆うように、無機絶縁層(厚さ:例えば100nm以上500nm以下)11および有機絶縁層(厚さ:例えば1~4μm、好ましくは2~3μm)12をこの順で形成する。
  この後、各画素領域PIXにおいて、有機絶縁層12に、無機絶縁層11の一部を露出する開口部12pを形成する。続いて、有機絶縁層12をマスクとして無機絶縁層11のエッチングを行い、無機絶縁層11に、ドレイン電極9Bを露出する開口部11pを設ける。このようにして、開口部11p、12pから構成される画素コンタクトホールCHpを形成する。
  無機絶縁層11として、層間絶縁層10と同様の無機絶縁膜を用いることができる。ここでは、無機絶縁層11として、例えば、SiNx層(厚さ:300nm)をCVD法で形成する。有機絶縁層12は、例えば、感光性樹脂材料を含む有機絶縁膜(例えばアクリル系樹脂膜)であってもよい。
  ・STEP12:画素電極PEおよび配線TLの形成(図5L)
  次いで、有機絶縁層12上に、不図示の第1の透明導電膜(厚さ:20~300nm)およびタッチ配線用導電膜(厚さ:例えば200nm)を形成する。この後、例えば、フッ素化合物を含む過酸化水素系エッチング液を用いて、第1の透明導電膜およびタッチ配線用導電膜のパターニングを行う。これにより、図5Lに示すように、タッチ配線TLと、画素電極PEを含む積層膜20とが、互いに離間して形成される。
  タッチ配線TLは、第1の透明導電膜から形成された下層18およびタッチ配線用導電膜から形成された上層19を含む積層構造を有する。
  積層膜20は、画素電極PEと、画素電極PE上に位置し、かつ、タッチ配線用導電膜から形成された導電層22とを含む。画素電極PEは、画素コンタクトホールCHp内で、画素TFTのドレイン電極9Bに電気的に接続される。
  本実施形態では、基板1の法線方向から見たとき、下層18および上層19は互いに整合し、画素電極PEおよび導電層22は互いに整合する。
  第1の透明導電膜として、インジウム-亜鉛酸化物、インジウム-錫酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物、ZnO等の金属酸化物を用いることができる。
  タッチ配線用導電膜として、ゲート用導電膜またはソース用導電膜と同様の導電膜を用いることができる。タッチ配線用導電膜は、CuもしくはAlを主体とした、単層もしくは積層構造を有する金属膜(厚さ:50~500nm)であってもよい。
  ・STEP13:導電層22のパターニング(図5M)
  図5Mに示すように、導電層22のパターニングを行うことにより、第1電極21を得る。導電層22のパターニングは、画素電極PEをエッチングせずに導電層22のみをエッチングするような条件で行われる。ここでは、例えば、フッ素化合物を含まない過酸化水素系エッチング液を用いて、導電層22のウェットエッチングを行う。
  上記方法で第1電極21を形成することで、以下のようなメリットがある。
  有機絶縁層12上および画素コンタクトホールCHp内に第1の透明導電膜(例えばインジウム-錫酸化物(ITO))のみを形成し、パターニングを行うと、第1の透明導電膜は比較的薄いので、画素コンタクトホールCHp内でピンホールが形成されやすい。画素コンタクトホールCHp内において、第1の透明導電膜にピンホールが形成されると、ピンホールによってドレイン電極DEの表面が露出し、ダメージを受ける可能性がある。これに対し、本実施形態では、第1の透明導電膜上にタッチ配線用導電膜を形成した状態で、第1の透明導電膜およびタッチ配線用導電膜を同時にパターニングして、画素電極PEを含む積層膜20を形成する。これにより、第1の透明導電膜(画素電極PE)にピンホールが発生しにくくなる。また、ピンホールが発生したとしても、ドレイン電極DEはタッチ配線用導電膜で覆われているため、ドレイン電極DEの表面を保護することができ、ピンホールに起因する画素コンタクト部のコンタクト抵抗の上昇を抑制できる。さらに、この後、画素電極PE全体を覆っているタッチ配線用導電膜(導電層22)のうち、画素コンタクト部以外に位置する部分(すなわち表示に寄与する領域に位置する部分)を除去することで、第1電極21を形成する。これにより、タッチ配線用導電膜を利用することによる画素開口率の低下を抑制できる。
  ・STEP14:誘電体層17の形成(図5N)
  次いで、図5Nに示すように、タッチ配線TL、画素電極PEおよび第1電極21を覆うように誘電体層(厚さ:50~500nm)17を形成する。この後、誘電体層17のパターニングを行い、タッチ配線TLの上層19の一部を露出するタッチコンタクトホールCHtを形成する。
  誘電体層17の材料は、無機絶縁層11の材料として例示した材料と同じであってもよい。ここでは、誘電体層17として、例えばCVD法でSiN膜を形成する。
  ・STEP15:共通電極CEの形成(図6)
  続いて、誘電体層17上およびタッチコンタクトホールCHt内に、第2の透明導電膜(厚さ:20~300nm)を形成し、第2の透明導電膜のパターニングを行う。これにより、それぞれがタッチセンサ電極TXとして機能する複数のセグメントを含む共通電極CEを形成する。各タッチセンサ電極TXは、タッチコンタクトホールCHt内で対応するタッチ配線TLに接続される。このようにして、アクティブマトリクス基板1000が製造される。
  本実施形態のアクティブマトリクス基板1000の製造方法は、上記方法に限定されない。STEP4において、高移動度酸化物半導体膜41のエッチングにより、酸化物半導体層4Aの下層を形成し、STEP6では、低移動度酸化物半導体膜42のみをエッチングしてもよい。例えば、高移動度酸化物半導体膜41がSnを含む酸化物半導体膜であり、低移動度酸化物半導体膜42がSnを含まない酸化物半導体膜であれば、PAN系エッチング液を用いることで、低移動度酸化物半導体膜42のみを選択的にエッチングできる。このように、低移動度酸化物半導体膜42と高移動度酸化物半導体膜41とを別々にエッチングする場合には、酸化物半導体層4Aにおいて、高移動度酸化物半導体膜41の側面と低移動度酸化物半導体膜42の側面とは整合しなくてもよい。例えば、図7Aに例示するように、低移動度酸化物半導体膜42の幅が、高移動度酸化物半導体膜41よりも小さく、基板1の法線方向から見たとき、低移動度酸化物半導体膜42は、高移動度酸化物半導体膜41の上面の内部に位置してもよい。これにより、高移動度酸化物半導体膜41の表面のうち低移動度酸化物半導体膜42から露出する部分の面積が大きくなるので、低抵抗化処理によって、酸化物半導体層4Aの低抵抗化領域の比抵抗をさらに低減できる。あるいは、図7Bに例示するように、低移動度酸化物半導体膜42の幅が、高移動度酸化物半導体膜41よりも大きく、低移動度酸化物半導体膜42は、高移動度酸化物半導体膜41の上面および側面を覆っていてもよい。このように、高移動度酸化物半導体膜41のサイズを低移動度酸化物半導体膜42よりも小さくすることで、TFT100のデプレッション化が生じ難くなる。
  アクティブマトリクス基板1000の構造も、図6に示す構造に限定されない。画素電極PEおよび共通電極CEは、誘電体層17を介して対向するように配置されればよい。ここでは、画素電極PE上に誘電体層17を介して共通電極CEを配置した例を示したが、画素電極PEの基板1側に共通電極CEを配置してもよい。
  また、ここでは、インセルタッチパネル型液晶表示装置に使用するアクティブマトリクス基板を例に説明したが、本実施形態のアクティブマトリクス基板は、タッチパネルを内蔵しない液晶表示装置に使用してもよい。その場合、タッチ配線TL、タッチ電極TXおよび第1電極21を形成しなくてもよいし、第1電極21のみを形成してもよい。
  <変形例1>
  本実施形態における第2のTFTでは、ソース電極およびドレイン電極のうちの少なくとも一方の電極は、酸化物半導体層の基板側に、下部絶縁層を介して配置されていてもよい。この場合、第2のTFTにおける第1コンタクト領域および第2コンタクト領域の少なくとも一方は、低移動度酸化物半導体膜の基板側に、高移動度酸化物半導体膜からなる接続層を有していてもよい。接続層は、下部絶縁層の開口部内において、ソース電極またはドレイン電極に電気的に接続されている。これにより、酸化物半導体層とソース電極またはドレイン電極とのコンタクト抵抗を低減できる。
  以下、ソースバスラインSLが、ゲートバスラインGLおよび画素TFTの活性層よりも基板1側に位置する構造(「下部ソース配線構造」と呼ぶ)を有するアクティブマトリクス基板を例に、変形例1のアクティブマトリクス基板を説明する。
  下部ソース配線構造を有するアクティブマトリクス基板では、ソースバスラインとゲートバスラインとの間に位置する絶縁層を厚くできるので、これらのバスラインの交差部に生じる寄生容量を低減することが可能である。また、ソースバスラインと共通電極との間に生じる容量も低減できる。下部ソース配線構造については、例えば、本出願人による国際公開第2015/186619号などに記載されている。参考のために、国際公開第2015/186619号の開示内容の全てを本願明細書に援用する。
  図8は、本実施形態の変形例1のアクティブマトリクス基板1001における第1のTFT100および第2のTFT201を示す模式的な断面図である。ここでは、第1のTFT100をSSD回路用TFTなどの回路TFTに用い、第2のTFT201を画素TFTに用いる例を説明する。
  アクティブマトリクス基板1001は、下部ソース配線構造を有している。以下では、アクティブマトリクス基板1000と異なる点を主に説明し、同様の構造については説明を省略する。
  アクティブマトリクス基板1001では、画素TFTである第2のTFT201のソース電極8BおよびソースバスラインSL(不図示)が、下部導電層2Bと同じ層内に(すなわち同じ導電膜を用いて)形成されている。ソース電極8Bは、ソースバスラインSLに電気的に接続されている。ソース電極8Bは、ソースバスラインSLの一部であってもよい。ドレイン電極9Bは、層間絶縁層10上に配置されていてもよい。酸化物半導体層4Bの第1コンタクト領域4Bsは、下部絶縁層3に形成された開口部3s内で、ソース電極8B(またはソースバスラインSL)に電気的に接続されている。このような構造は、下部絶縁層3を形成後、高移動度酸化物半導体膜41の形成前に、下部絶縁層3のパターニング工程を追加して開口部3sを形成することで得られる。
  図示する例では、第1のTFT100の第1コンタクト領域4Bsは、高移動度酸化物半導体膜41からなる接続層41aと低移動度酸化物半導体膜42とを含む積層部paを有している。開口部3s内において、高移動度酸化物半導体膜41とソース電極8Bとは、高移動度酸化物半導体膜41からなる接続層41aを介して電気的に接続される。移動度の高い接続層41aを設けることで、酸化物半導体層4BとソースバスラインSLとのコンタクト抵抗を低減できる。
  第1のTFT100は、図2に示す第1のTFT100と同様の構造を有してもよい。すなわち、アクティブマトリクス基板1000と同様に、ソース電極8A、8Bおよびドレイン電極9A、9Bは、いずれも、層間絶縁層10上に配置されていてもよい。図示していないが、アクティブマトリクス基板1001は、例えば駆動回路用TFTとして、図2に示す第2のTFT200をさらに備えてもよい。
  なお、第1のTFT100、200のソース電極8A、8Bおよびドレイン電極9A、9B、および、第2のTFT201のドレイン電極9Bも、必要に応じて、下部導電層2A、2Bと同じ層内に形成されてもよい。
  図9A~図9Dは、アクティブマトリクス基板1001の製造方法を説明するための工程断面図である。ここでは、非表示領域FRに第1回路トランジスタTc1および第2回路トランジスタTc2を形成し、表示領域DRにおける各画素領域PIXに、画素トランジスタTpを形成する例を示す。第1回路トランジスタTc1は、第1のTFT100であり、例えばSSD回路に用いられる。第2回路ランジスタTc2は、第2のTFT200であり、例えば駆動回路に用いられる。画素トランジスタTpは、第2のTFT201である。第1回路トランジスタTc1、第2回路トランジスタTc2および画素トランジスタTpを形成する領域を、それぞれ、TFT形成領域Rc1、Rc2、Rpとする。以下では、アクティブマトリクス基板1000の製造方法と異なる点を主に説明し、同様の工程については説明を省略する。
  まず、図9Aに示すように、基板1上に、下部導電膜を形成し、パターニングすることにより、TFT形成領域Rc1に下部導電層2Aを形成し、TFT形成領域Rc2に下部導電層2Bを形成する。また、TFT形成領域Rpには、下部導電膜を用いて、下部導電層2Bおよびソース電極8B(またはソースバスラインSL)を形成する。
  次いで、図9Bに示すように、下部導電層2A、2Bおよびソース電極8Bを覆うように下部絶縁層3を形成する。この後、下部絶縁層3のパターニングを行い、TFT形成領域Rpにおいて、下ソース電極8Bの一部を露出する開口部3sを設ける。
  次いで、図9Cに示すように、高移動度酸化物半導体膜41を形成し、高移動度酸化物半導体膜41のパターニングを行う。これにより、高移動度酸化物半導体膜41のうちTFT形成領域Rc1に位置する部分を残し、TFT形成領域Rc2に位置する部分を除去する。また、TFT形成領域Rpにおいては、高移動度酸化物半導体膜41から接続層41aを形成する。接続層41aは、開口部3p内および下部絶縁層3上に配置され、開口部3p内でソース電極8Bに接続される。
  続いて、図9Dに示すように、低移動度酸化物半導体膜42を形成し、低移動度酸化物半導体膜42および低移動度酸化物半導体膜42のパターニングを行う。
  これにより、TFT形成領域Rc1に、高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42を有する酸化物半導体層4Aが形成される。TFT形成領域Rc2には、低移動度酸化物半導体膜42がパターニングされて、低移動度酸化物半導体膜42を含み、高移動度酸化物半導体膜41を含まない酸化物半導体層4Bが形成される。TFT形成領域Rpには、接続層41aを覆うように低移動度酸化物半導体膜42を配置することで、接続層41aおよび低移動度酸化物半導体膜42を含む酸化物半導体層4Bが形成される。酸化物半導体層4Bの第1コンタクト領域4Bsは、接続層41aおよび低移動度酸化物半導体膜42を含む積層部paとなり、第1領域となる部分は低移動度酸化物半導体膜42を含み、高移動度酸化物半導体膜41を含まない上層部p2となる。
  図示しないが、この後の工程は、アクティブマトリクス基板1000と同様である。ただし、TFT形成領域Rpにおいて、層間絶縁層10には第1開口部10Bsを形成せず、層間絶縁層10上にソース電極を形成しない。
  なお、上記では、下部ソース配線構造を有するアクティブマトリクス基板を例に説明したが、本変形例は、下部ソース配線構造を有しないアクティブマトリクス基板にも適用され得る。例えば、本変形例の第2のTFTの活性層構造を、下部導電層と同じ層内に形成された配線に接続される回路TFTに適用してもよい。
  <変形例2>
  図10Aは、本実施形態における変形例2のアクティブマトリクス基板1002における第1のTFT101および第2のTFT200を示す模式的な断面図である。図10Bは、TFT101の模式的な平面図である。図10Aに示すTFT101の断面は、図10BのXa-Xa’線における断面である。
  アクティブマトリクス基板1002は、第1のTFT101が積層部paおよび上層部p2を含む活性層構造を有する点で、前述の実施形態のアクティブマトリクス基板1000と異なる。なお、第2のTFT200は、図2に示したTFT200と同様の活性層構造を有する。
  TFT101では、酸化物半導体層4Aは、低移動度酸化物半導体膜42を含み、かつ、高移動度酸化物半導体膜41を含まない上層部p2と、高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42を含む積層部paとを有している。酸化物半導体層4Aの第1領域4Acの少なくとも一部は積層部paである。第1コンタクト領域4Asおよび第2コンタクト領域4Adは、いずれも、上層部p2である。
  図示する例では、高移動度酸化物半導体膜41は、第1領域4Acの少なくとも一部に位置するように配置されている。低移動度酸化物半導体膜42は、高移動度酸化物半導体膜41よりも一回り大きく、高移動度酸化物半導体膜41の上面および側面を覆うように配置されている。ここでは、高移動度酸化物半導体膜41の側面全体が低移動度酸化物半導体膜42で覆われている。なお、高移動度酸化物半導体膜41の一部は低移動度酸化物半導体膜42で覆われていなくてもよい。酸化物半導体層4Aにおける活性層以外の構造は、前述の実施形態のTFT100と同様である。
  本変形例によると、酸化物半導体層4Aにおいて、チャネルとなる部分に高移動度酸化物半導体膜41を配置し、かつ、高移動度酸化物半導体膜41のサイズを、低移動度酸化物半導体膜42よりも小さくすることで、高い移動度を確保しつつ、TFT101のデプレッション化を抑制できる。
  TFT101では、図11Aに例示するように、高移動度酸化物半導体膜41は、第1領域4Acの一部のみに配置されていてもよい。つまり、第1領域4Acが積層部paおよび上層部p2を含んでいてもよい。この場合、高移動度酸化物半導体膜41のチャネル長方向の幅は、第1領域4Acの幅(すなわちゲート電極7Aの幅)よりも小さくてもよい。または、図11Bに示すように、高移動度酸化物半導体膜41のチャネル長方向の幅が、第1領域4Acの幅(すなわちゲート電極7Aの幅)と同じまたはそれよりも大きく、第1領域4Ac全体が積層部paであってもよい。
  図12は、本変形例の他のアクティブマトリクス基板1002を示す断面図である。図12に示すように、アクティブマトリクス基板1002は、活性層構造の異なる少なくとも3つのTFT100、101、200を備えていてもよい。なお、本明細書において、アクティブマトリクス基板が、活性層構造の異なる2つの第1のTFT(または2つの第2のTFT)を備える場合、その一方を「第3のTFT」と呼ぶことがある。
  続いて、本変形例のアクティブマトリクス基板1002の製造方法を説明する。
  図13A~図13Fは、それぞれ、本変形例のアクティブマトリクス基板1002の製造方法の一例を説明するための工程断面図である。ここでは、非表示領域FRに第1回路トランジスタTc1および第2回路トランジスタTc2を形成し、表示領域DRにおける各画素領域PIXに、画素トランジスタTpを形成する例を示す。第1回路トランジスタTc1は、第1のTFT101であり、例えばSSD回路に用いられる。第2回路ランジスタTc2は、第2のTFT200であり、例えば駆動回路に用いられる。画素トランジスタTpは、第2のTFT200である。第1回路トランジスタTc2、第2回路トランジスタTc2および画素トランジスタTpを形成する領域を、それぞれ、TFT形成領域Rc1、Rc2、Rpとする。以下では、アクティブマトリクス基板1000の製造方法と異なる点を主に説明し、同様の工程については説明を省略する。
  まず、アクティブマトリクス基板1000と同様の方法で、下部導電層2A、2Bおよび下部絶縁層3を形成する。次いで、図13Aに示すように、下部絶縁層3上に、高移動度酸化物半導体膜41の形成およびパターニングを行う。これにより、TFT形成領域Rc1において、酸化物半導体層(活性層)となる領域の一部のみに、高移動度酸化物半導体膜41を配置する。高移動度酸化物半導体41のうちTFT形成領域Rc2、Rpに位置する部分は除去される。
  次いで、図13Bに示すように、高移動度酸化物半導体膜41および下部絶縁層3を覆うように低移動度酸化物半導体膜42を形成する。この後、図13Cに示すように、低移動度酸化物半導体膜42のパターニングを行う。これにより、TFT形成領域Rc1に、高移動度酸化物半導体膜41と、高移動度酸化物半導体膜41の上面および側面を覆う低移動度酸化物半導体膜42とを含む酸化物半導体層4Aを得る。TFT形成領域Rc2、Rpには、低移動度酸化物半導体膜42を含み、高移動度酸化物半導体膜41を含まない酸化物半導体層4Bを得る。
  次いで、図13D~図13Fに示すように、アクティブマトリクス基板1000と同様の方法で、ゲート絶縁層5A、5B、ゲート電極7A、7B、層間絶縁層10、ソース電極8A、8Bおよびドレイン電極9A、9Bを形成する。このようにして、TFT形成領域Rc1に第1回路トランジスタTc1が形成され、TFT形成領域Rc2に第2回路トランジスタTc2が形成される。また、各画素領域のTFT形成領域Rpには、画素トランジスタTpが形成される。
  <変形例3>
  変形例3のアクティブマトリクス基板は、第2のTFTの第1領域が、高移動度酸化物半導体膜41を含み、低移動度酸化物半導体膜42を含まない下層部p1を有する点で、アクティブマトリクス基板1000と異なる。
  図14Aは、変形例3のアクティブマトリクス基板1003における第1のTFT100および第2のTFT300の模式的な断面図である。以下、アクティブマトリクス基板1003の構成について、アクティブマトリクス基板1000と異なる点のみを説明し、同様の構成については説明を省略する。
  TFT100は、図2に示すTFT100と同様の構造を有する。
  TFT300は、TFT100と同様に、酸化物半導体層4Cと、酸化物半導体層4Cの一部上にゲート絶縁層5Cを介して配置されたゲート電極7Cと、ソース電極8Cおよびドレイン電極9Cを有する。TFT300は、酸化物半導体層4Cの基板1側に下部導電層2Cをさらに有してもよい。
  酸化物半導体層4Cは、高移動度酸化物半導体膜41を含むが、低移動度酸化物半導体膜42を含まない下層部p1を有する。図示するように、酸化物半導体層4Cの全体が、高移動度酸化物半導体膜41を含み、低移動度酸化物半導体膜42を含んでいなくてもよい。なお、本変形例では、酸化物半導体層4Cの第1領域4Ccが全体に亘って下層部p1であればよく、第2領域は低移動度酸化物半導体膜42を含んでも構わない。
  酸化物半導体層4A、4Cは、高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42以外の酸化物半導体膜をさらに含んでもよい。例えば、図14Bに示すように、酸化物半導体層4A、4Cは、高移動度酸化物半導体膜41と基板1との間に、高移動度酸化物半導体膜41よりも移動度の低い他の酸化物半導体膜43をさらに含んでもよい。他の酸化物半導体膜43として、例えば低移動度酸化物半導体膜42と同様の組成を有する低移動度酸化物半導体膜を用いてもよい。他の酸化物半導体膜43の厚さは、図4に示す例と同様であり、例えば5nm以上30nm以下であってもよい。
  図15は、TFT100およびTFT300のVg-Id特性を例示する図である。グラフの横軸は、ゲートードレイン間電圧Vdgを表し、グラフの縦軸はドレイン電流Idを表す。
  図15から、TFT300は、TFT100よりも低い閾値電圧を有することが分かる。これは、TFT300では、酸化物半導体層4Cの第1領域4Ccは低移動度酸化物半導体膜42を含まないので、低移動度酸化物半導体膜42を含む酸化物半導体層4Aよりも、第1領域全体としての移動度が高くなり、閾値電圧がマイナス方向にシフトしたからと考えられる。
  TFT100を駆動回路用TFTとして用い、TFT300をSSD回路用TFTとして用いてもよい。TFT300を例えばSSD回路に用いると、オン電流を高めることができるので有利である。TFT300は、閾値電圧が負であるデプレッション特性を有してもよい。これにより、TFT300のオン電流をさらに向上させることができる。
  または、駆動回路に、TFT100およびTFT300を混在させてもよい。例えば、ゲート駆動回路における出力トランジスタとしてTFT300を用い、他のトランジスタとしてTFT100を用いることもできる。
  図16は、本変形例の他のアクティブマトリクス基板1003を示す断面図である。図16に示すように、アクティブマトリクス基板1003は、活性層構造の異なる少なくとも3つのTFT100、200、300を備えていてもよい。
  <ゲート駆動回路の構成および動作>
  アクティブマトリクス基板にモノリシックに形成されるゲートドライバの回路構成および動作を説明する。ゲートドライバは、シフトレジスタを含んでいる。シフトレジスタは、多段に接続された複数の単位シフトレジスタ回路を含んでいる。
  図17は、シフトレジスタ回路を例示する図である。
  シフトレジスタ回路は、複数の単位シフトレジスタ回路SR1~SRz(z:2以上の整数)(以下、「単位シフトレジスタ回路SR」と総称する。)を有している。各段の単位シフトレジスタ回路SRは、セット信号を受け取るセット端子S、出力信号を出力する出力端子Z、リセット信号を受け取るリセット端子R、および、クロック信号GCK1、GCK2を受け取るクロック入力端子CK1、CK2を備えている。単位シフトレジスタ回路SRα(α≧2)において、セット端子Sには前段の単位シフトレジスタ回路SRの出力信号が入力される。初段の単位シフトレジスタ回路SR1のセット端子Sにはゲートスタートパルス信号GSPが入力される。各段の単位シフトレジスタ回路SRは、また、表示領域に配置された対応するゲートバスラインGLに出力信号を出力する。リセット端子Rには、次段の単位シフトレジスタ回路の出力信号が入力される。最終段の単位シフトレジスタ回路SRzのリセット端子Rにはクリア信号が入力される。
  2つのクロック入力端子には2相のクロック信号であるGCK1、GCK2が与えられる。クロック入力端子の一方にクロック信号GCK1が入力されるとともに他方のクロック入力端子にクロック信号GCK2が入力される。クロック入力端子に入力されるクロック信号は、隣接する段間で交互に入れ替わるように構成されている。
  図18は、単位シフトレジスタ回路SRの一例を示す図である。この例では、単位シフトレジスタ回路SRは、4つのTFT31~34および容量部Capを備えている。
  TFT31は入力トランジスタである。TFT31のゲートおよびドレインはセット端子に接続され、TFT31のソースはTFT34のゲートに接続されている。TFT34は出力トランジスタである。TFT34のドレインはクロック入力端子CK1に、ソースは出力端子Zに、それぞれ接続されている。すなわち、TFT34は伝送ゲートとして、クロック入力端子CK1に入力されるクロック信号の通過および遮断を行う。
  容量部Capは、出力トランジスタであるTFT34のゲートとソースとの間に接続されている。本明細書では、TFT34のゲートに接続されたノードを「ノードnetA」、出力端子Zに接続されたノードを「ノードZ」と称する。容量部Capの一方の電極は、TFT34のゲートおよびノードnetAに接続され、他方の電極は、TFT34のソースおよびノードZに接続されている。
  TFT32は、Low電源入力端子とノードnetAとの間に配置されている。TFT32は、ノードnetAの電位を低下させるためのプルダウントランジスタである。TFT32のゲートはリセット端子に、ドレインはノードnetAに、ソースはLow電源入力端子に、それぞれ接続されている。
  ノードZにはTFT33が接続されている。TFT33のゲートはクロック信号の入力端子CK2に、ドレインはノードZに、ソースはLow電源入力端子に、それぞれ接続されている。
  本実施形態では、TFT31~34として、第2のTFTを用いてもよい。あるいは、少なくとも出力トランジスタであるTFT34として、電流駆動力の大きい(移動度の高い)第1のTFTを用い、他のTFTとして第2のTFTを用いてもよい。これにより、駆動回路内に、用途に応じて、特性の異なる2種類のTFTを混在させることができる。また、TFT31~34は、そのTFT構造にかかわらず、いずれも、エンハンスメント特性を有することが好ましい。
  なお、駆動回路の構成は、図示した構成に限定されない。例えば、単位シフトレジスタ回路は、出力トランジスタを含む5以上のTFTを有し得る。
  <SSD回路の構成および動作>
  アクティブマトリクス基板にモノリシックに形成されるSSDの回路構成および動作を説明する。
  図19は、SSD回路の構成および動作を説明するための図である。
  ソースドライバSDと表示領域DRとの間には、SSD回路600が配置されている。SSD回路600は、複数のSSD単位回路500(1)~500(i)(iは2以上の整数)(「SSD単位回路500」と総称することがある)と、制御信号幹線SW1~SWn(nは2以上の整数、ここではn=3)とを含んでいる。SSD回路600およびソースドライバSDは、非表示領域FRに設けられた制御回路によって制御される。制御信号幹線SW1~SWnは制御回路に接続されている。
  ソースドライバSDの出力端子V(1)~V(i)(以下、「V端子」と総称することがある)のそれぞれには、複数のビデオ信号線DO(1)~DO(i)(「ビデオ信号線DO」と総称することがある)のいずれかが接続されている。1本のビデオ信号線DOには、グループ化されたn本のソースバスラインSLが対応付けられている。ビデオ信号線DOとグループ化されたソースバスラインSLとの間には、SSD単位回路500がビデオ信号線単位で設けられている。SSD単位回路500は、1つのビデオ信号線DOから、n本ソースバスラインSLへビデオデータを分配する。
  本実施形態において、複数のビデオ信号線DO(1)~DO(i)のうちN番目のビデオ信号線をDO(N)(Nは1からiまでの整数)、ビデオ信号線DO(N)に対応付けられたSSD単位回路500およびソースバスラインSLを、それぞれ、500(N)、SL(N-1)~SL(N-n)とする。ソースバスラインSL(N-1)~SL(N-n)は、例えば、R、G、B画素に対応付けられていてもよい(すなわちn=3)。
  それぞれのSSD単位回路500(N)は、少なくともn個(ここでは3個)の薄膜トランジスタ(SSD回路用TFT)40(1)~40(n)(「SSD回路用TFT40」と総称することがある)とを備える。
  SSD回路用TFT40は、選択スイッチとして機能する。SSD回路用TFT40のゲート電極は、n本の制御信号幹線SW1~SWnのうちの対応する1つに電気的に接続されている。SSD回路用TFT40のソース電極は、ビデオ信号線DO(N)の分岐配線に電気的に接続されている。SSD回路用TFT40のドレイン電極は、ソースバスラインSL(N-1)~SL(N-3)のうちの対応する1つのソースバスラインに接続されている。
  SSD回路用TFT40のゲート電極には、制御信号幹線SW1~SW3の1つから選択信号(制御信号)が供給される。制御信号は、同一のグループ内における選択スイッチのオン期間を規定しており、ソースドライバSDからの時系列的な信号出力と同期している。SSD単位回路500(N)は、ビデオ信号線DO(N)の出力を時分割することで得られるデータ電位を複数のソースバスラインSL(N-1)~ソースバスラインSL(N-n)に時系列的に書き込む(時分割駆動)。これにより、ソースドライバSDのV端子の数を削減できることができるので、非表示領域FRの面積をさらに低減できる(狭額縁化)。
  本実施形態では、SSD回路用TFT40として、他の回路TFTまたは画素TFTよりも移動度の高い、すなわち電流駆動力の大きいTFTを用いることができる。例えば、SSD回路用TFT40として、移動度の高い第1のTFTまたは第3のTFTが好適に適用され得る。第1のTFT100はデプレッション特性を有してもよい。
  なお、SSD回路の構成は、図示した構成に限定されない。SSD回路の構成、動作などは、例えば特開2008-225036号公報、特開2006-119404号公報、国際公開2011/118079号などに開示されている。本明細書では、参考のため、特開2008-225036号公報、特開2006-119404号および国際公開2011/118079号公報の開示内容の全てを援用する。
  (第2の実施形態)
  第2の実施形態のアクティブマトリクス基板は、各画素領域に、活性層構造の異なる複数のTFTを含む点で、前述の実施形態と異なる。以下、有機EL表示装置に用いられるアクティブマトリクス基板を例に、本実施形態のアクティブマトリクス基板を説明する。なお、以下では、第1の実施形態のアクティブマトリクス基板と異なる点を主に説明し、同様の構造については、説明を省略する。
  図20は、本実施形態のアクティブマトリクス基板2000の平面構造の一例を示す概略図である。
  アクティブマトリクス基板2000は、マトリクス状に配列された複数の画素領域PIXを有する。複数の画素領域PIXは、典型的には、赤を表示する赤画素、緑を表示する緑画素および青を表示する青画素に対応する画素領域を含む。
  複数の画素領域PIXのそれぞれは、基板1と、基板1に設けられた画素回路(図1では不図示)とを備える。図21に、画素回路の例を示す。
  図21に示す画素回路700は、駆動用TFT71と、選択用TFT72と、容量素子(保持容量)73とを含む。駆動用TFT71および選択用TFT72は、それぞれ、基板1に支持された酸化物半導体TFTである。
  選択用TFT72のゲート電極は、ゲートバスラインGLに接続されている。選択用TFT72のソース電極は、ソースバスラインSLに接続されている。選択用TFT72のドレイン電極は、駆動用TFT71のゲート電極と容量素子73とに接続されている。駆動用TFT71のソース電極は、電流供給線CLに接続されている。駆動用TFT71のドレイン電極は、アクティブマトリクス基板2000上に形成されたOLED(有機発光ダイオード)80に接続されている。
  ゲートバスラインGLから選択用TFT72のゲート電極にオン信号が供給されると、選択用TFT72がオン状態となるので、ソースバスラインSLからの信号電圧(OLED80の所望の発光輝度に対応している)が選択用TFT72を介して容量素子73および駆動用TFT71のゲート電極に印加される。信号電圧によって駆動用TFT71がオン状態になると、電流供給線CLからの電流が駆動用TFT71を介してOLED80に流れ、OLED80が発光する。
  本実施形態によると、画素回路700内に、要求される特性が異なる複数の酸化物半導体TFT(ここでは駆動用TFT71と選択用TFT72)を作り分けることができる。具体的には、選択用TFT72として第1のTFTを用い、駆動用TFT71として、選択用TFT72よりも移動度の低い(閾値電圧をプラス方向にシフトさせた)第2のTFTを用いてもよい。
  図22は、アクティブマトリクス基板2000における第1のTFT100および第2のTFT200を示す断面図である。ここでは、画素回路700の駆動用TFT71として第2のTFT200、選択用TFT72として第1のTFT100、駆動回路用TFTとして第2のTFT200を用いる例を示す。
  第1のTFT100および第2のTFT200の構造は、図2を参照して前述した構造と同様である。ただし、トップエミッション型の有機EL表示装置に適用する場合、各TFTに遮光層として下部導電層2A、2Bを形成しなくてもよい。または、第1のTFT100では、下部導電層2Aを下部ゲート電極として機能させ(ダブルゲート構造)、第2のTFT200には下部導電層2Bを設けなくてもよい。
  駆動用TFT71および選択用TFT72上には、平坦化層75が設けられている。平坦化層75の上には、画素電極PEが設けられている。駆動用TFT71のドレイン電極9Bは、画素電極PEに電気的に接続されている。なお、カラーフィルター方式の有機EL表示装置に適用する場合には、平坦化層75と無機絶縁層11との間にカラーフィルター層(不図示)がさらに設けられる。隣接する画素領域間には、平坦化層75および画素電極PEの上に、絶縁性材料から形成されたバンク(不図示)が設けられている。また、図示しないが、画素電極PE上には、有機EL層が配置され、有機EL層上には上部電極が設けられる。例えば、画素電極PEは陽極、上部電極は陰極として機能する。
  なお、画素回路の構成は、図21に例示した構成に限定されない。各画素回路は3以上のTFTを有していてもよい。その場合でも、少なくとも駆動用TFT71として第2のTFT200を用い、他のTFTについては、用途に応じて、第1のTFT100または第2のTFT200を用いてもよい。
  本実施形態においても、図8を参照して説明したように、第1のTFT100および/または第2のTFTのソース電極およびドレイン電極の一方または両方を、下部導電層と同じ層内に形成してもよい。この場合、第2のTFT200の酸化物半導体層4Bと、下部導電層と同じ層内に位置する電極との接続部分に高移動度酸化物半導体膜41を配置することで、コンタクト抵抗を低減してもよい。このような構造は、例えば、下部ソース配線構造を有するアクティブマトリクス基板に好適に適用される。
  高移動度酸化物半導体膜41および低移動度酸化物半導体膜42の組成、厚さ等は、前述の実施形態と同様であってもよい。ただし、本実施形態では、駆動用TFT71として用いる第2のTFT200のS値が大きい(すなわちV-I特性がなだらかである)ことが好ましい。このため、低移動度酸化物半導体膜42は、前述の実施形態よりもさらに低い移動度を有してもよい。また、駆動用TFT71のチャネル長Lを大きくすることで、S値をさらに大きくできる。
  図示していないが、アクティブマトリクス基板2000の非表示領域には、モノリシックにゲート駆動回路が形成されていてもよい。その場合、駆動回路用TFTとして、第2のTFT200を用いることができる。ゲート駆動回路に、用途に応じて特性の異なるTFTを混在させることも可能である。例えば、少なくとも出力トランジスタとして第1のTFT100を用い、他の駆動回路用TFTに第2のTFT200を用いてもよい。
  図23は、本実施形態における第1のTFT100および第2のTFT200のVg-Id特性を例示する図である。グラフの横軸は、ドレイン電極の電位を基準としたゲート電極の電位(ゲートードレイン間電圧)Vdgを表し、グラフの縦軸はドレイン電流Idを表す。
  図23から、第2のTFT200の閾値電圧は、第1のTFT100の閾値電圧よりもプラス方向にシフトしていることが分かる。この例では、第2のTFT200は、閾値電圧が正であるエンハンスメント特性を有し、第1のTFT100は、閾値電圧が負であるデプレッション特性を有している。また、第2のTFT200のV-I特性は、第1のTFT100よりもなだらかである。つまり、第2のTFT200のS値は、第1のTFT100よりも大きい。なお、各TFTの閾値電圧の正負やその大きさ、V-I特性の傾き等は、図示する例に限定されない。
  第2のTFT200は、S値が大きいことから、画素回路の駆動用TFTとして好適に用いられる。これにより、多階調表示を好適に行うことができる。また、図示するように、第2のTFT200がエンハンスメント特性を有する場合、駆動回路用TFTなどの一部の回路TFTに好適に用いられ得る。これにより、回路誤動作を抑制でき、歩留まりの低下を抑制できる。
  一方、第1のTFT100は高い電流駆動力(オン電流)を有する。また、短チャネル化が可能であり、回路面積を低減できる。第1のTFT100は、例えば、画素回路の選択用TFTとして好適に用いられる。これにより、高周波や高精細機種への適用が可能となる。また、第1のTFT100を、ゲート駆動回路の出力トランジスタとして用いてもよい。
  有機EL表示装置における画素回路の駆動用TFTおよび選択用TFTと、駆動回路用TFTとの好適な特性を表2に例示する。表2に記載の特性および数値範囲は例示であり、各TFTの特性を限定するものではない。
  <酸化物半導体>
本実施形態における各TFTの酸化物半導体層に含まれる酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体であってもよいし、結晶質部分を有する結晶質酸化物半導体であってもよい。結晶質酸化物半導体としては、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体、c軸が層面に概ね垂直に配向した結晶質酸化物半導体などが挙げられる。
  酸化物半導体層は、2層以上の積層構造を有していてもよい。酸化物半導体層が積層構造を有する場合には、酸化物半導体層は、非晶質酸化物半導体層と結晶質酸化物半導体層とを含んでいてもよい。あるいは、結晶構造の異なる複数の結晶質酸化物半導体層を含んでいてもよい。また、複数の非晶質酸化物半導体層を含んでいてもよい。酸化物半導体層が上層と下層とを含む2層構造を有する場合、2層のうちゲート電極側に位置する層(ボトムゲート構造なら下層、トップゲート構造なら上層)に含まれる酸化物半導体のエネルギーギャップは、ゲート電極と反対側に位置する層(ボトムゲート構造なら上層、トップゲート構造なら下層)に含まれる酸化物半導体のエネルギーギャップよりも小さくてもよい。ただし、これらの層のエネルギーギャップの差が比較的小さい場合には、ゲート電極側に位置する層の酸化物半導体のエネルギーギャップが、ゲート電極と反対側に位置する層の酸化物半導体のエネルギーギャップよりも大きくてもよい。
  非晶質酸化物半導体および上記の各結晶質酸化物半導体の材料、構造、成膜方法、積層構造を有する酸化物半導体層の構成などは、例えば特開2014-007399号公報に記載されている。参考のために、特開2014-007399号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。
  酸化物半導体層は、例えば、In、GaおよびZnのうち少なくとも1種の金属元素を含んでもよい。本実施形態では、酸化物半導体層は、例えば、In-Ga-Zn-O系の半導体(例えば酸化インジウムガリウム亜鉛)を含む。ここで、In-Ga-Zn-O系の半導体は、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)の三元系酸化物であって、In、GaおよびZnの割合(組成比)は特に限定されず、例えばIn:Ga:Zn=2:2:1、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:1:2等を含む。このような酸化物半導体層は、In-Ga-Zn-O系の半導体を含む酸化物半導体膜から形成され得る。
  In-Ga-Zn-O系の半導体は、非晶質でもよいし、結晶質でもよい。結晶質In-Ga-Zn-O系の半導体としては、c軸が層面に概ね垂直に配向した結晶質In-Ga-Zn-O系の半導体が好ましい。
  なお、結晶質In-Ga-Zn-O系の半導体の結晶構造は、例えば、上述した特開2014-007399号公報、特開2012-134475号公報、特開2014-209727号公報などに開示されている。参考のために、特開2012-134475号公報および特開2014-209727号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。In-Ga-Zn-O系半導体層を有するTFTは、高い移動度(a-SiTFTに比べ20倍超)および低いリーク電流(a-SiTFTに比べ100分の1未満)を有しているので、駆動TFT(例えば、複数の画素を含む表示領域の周辺に、表示領域と同じ基板上に設けられる駆動回路に含まれるTFT)および画素TFT(画素に設けられるTFT)として好適に用いられる。
  酸化物半導体層は、In-Ga-Zn-O系半導体の代わりに、他の酸化物半導体を含んでいてもよい。例えばIn-Sn-Zn-O系半導体(例えばIn2O3-SnO2-ZnO;InSnZnO)を含んでもよい。In-Sn-Zn-O系半導体は、In(インジウム)、Sn(スズ)およびZn(亜鉛)の三元系酸化物である。あるいは、酸化物半導体層は、In-Al-Zn-O系半導体、In-Al-Sn-Zn-O系半導体、Zn-O系半導体、In-Zn-O系半導体、Zn-Ti-O系半導体、Cd-Ge-O系半導体、Cd-Pb-O系半導体、CdO(酸化カドミウム)、Mg-Zn-O系半導体、In-Ga-Sn-O系半導体、In-Ga-O系半導体、Zr-In-Zn-O系半導体、Hf-In-Zn-O系半導体、Al-Ga-Zn-O系半導体、Ga-Zn-O系半導体、In-Ga-Zn-Sn-O系半導体、In-W-Zn-O系半導体などを含んでいてもよい。