以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
  図1は、本発明で使用するプラズマ処理装置の一例の概略構造を示す図である。本発明では、プラズマ処理装置で水蒸気プラズマを発生させて、酸化物半導体膜を水蒸気プラズマに晒す。
  本実施形態では、水蒸気プラズマにより、酸化物半導体膜の低抵抗化を行う。本実施形態を応用することにより、酸化物半導体膜を導電領域(電極、配線、透明電極又は透明配線等を含む)として用いることができる。
  まず、本実施形態で用いるサンプル(試料)について説明する。サンプル10は、基板11上に、酸化物半導体膜12を形成して作製する。基板11は、例えば、ガラス基板、シリコン基板、又は樹脂(プラスティック)製の基板等であり、用途等に応じた様々な基板を用いることができる。また、酸化物半導体膜12の製膜には、例えば、スパッタリング法、又は、塗布法等を用いることができる。スパッタリング法は、ターゲット組成に近似した組成の酸化物半導体膜を高い純度で製膜できる。また、塗布法は、様々な組成の酸化物半導体膜を比較的自由に製膜できる。なお、酸化物半導体膜12は、シート抵抗の測定のみを行う場合は基板11に製膜したままでもよいが、実際のプロセスへ適用する際にはパターニングを行うことが望ましい。
  次に、プラズマ処理装置について説明する。図1には、一例として、並行平板型(容量結合型)のプラズマ処理装置を示したが、水蒸気プラズマを発生させることができるプラズマ処理装置であれば、任意の型のプラズマ処理装置を利用することができる。また、本実施形態では、水蒸気プラズマを発生させるチャンバ1内にサンプル10を配置して、水蒸気プラズマ6に晒す場合について説明するが、水蒸気プラズマ発生室と、サンプル10を水蒸気プラズマ6に晒す処理室とを、分離してもよい。
  図1のプラズマ処理装置は、チャンバ(真空室)1内に、RF(Radio Frequency)パワーを印加する電極2(「RF電極」という。)と、接地電極3を配置する。RF電極2には、絶縁コンデンサ(blocking capacitor)4を介して、RF電源5が接続され、RF電圧が印加される。RF電極2と接地電極3との間にRF電圧を印加することにより、プラズマ6が発生する。本実施形態では、チャンバ1内に水蒸気(水蒸気ガス)を導入し、水蒸気プラズマ6を発生させる。
  なお、図1(a)は、RF電極2上にサンプル10を載置する場合であり、図1(b)は、接地電極3上にサンプル10を載置する場合である。一般に、接地電極3上にサンプル10を載置した場合の方が、酸化物半導体膜12に対するダメージが少ない。
  本実施形態では、水蒸気ガス雰囲気下におけるプラズマ照射(水蒸気プラズマ処理)をサンプル10(酸化物半導体膜12)へ行うことで、酸化物半導体膜12の水蒸気プラズマに晒された部分の抵抗を低減する。酸化物半導体の抵抗が低減する理由は、水蒸気プラズマによる還元作用と考えられ、還元作用により酸素原子の抜けた部分がキャリアを生成するものと推定している。
[実施例及び比較例について]
  各種の酸化物半導体膜に対し、処理条件を様々に変えてプラズマ処理を行い、抵抗値を測定した。製膜処理、プラズマ処理、抵抗測定の各工程は、以下のとおりである。
[In−Sn−Zn−O(ITZO)膜に対するプラズマ処理]
[製膜処理]
  ガラス基板上に、酸化インジウムスズ亜鉛(In−Sn−Zn−O)の酸化物半導体膜をスパッタリング法で製膜した。製膜条件は、スパッタターゲット(In−Sn−Zn−Oターゲット)に印加する電力の値はDC300W、ガスの流量比はAr/O2=38/2sccm、圧力は0.2Paとした。本実施例で使用したスパッタターゲットの組成は、In2O3の重量を基準として規格化した値で、In2O3: ZnO : SnO2 = 1wt% : 2.67wt% : 1.24wt%であり、残部は0wt%(不可避不純物以外無し)である。なお、酸化インジウムスズ亜鉛の組成は、これ以外の任意の組成比であってよい。
  また、製膜時間を変えることで、膜厚の異なる3種類のIn−Sn−Zn−O膜(膜厚15nm、50nm、100nmの3種類)を形成した。その後、ホットプレートを用いて、大気中で300℃、1時間の熱処理を実施した。
[プラズマ処理]
  製膜し加熱処理を行ったIn−Sn−Zn−O膜に対して、Arプラズマ処理、又は、水蒸気プラズマ処理を行った。なお、比較のために、プラズマ処理を行わないIn−Sn−Zn−O膜も準備した。
[抵抗測定]
  プラズマ処理なしのIn−Sn−Zn−O膜(比較例1、4、7)、Arプラズマ処理したIn−Sn−Zn−O膜(比較例2,3、5、6、8、9)、及び、水蒸気プラズマ処理したIn−Sn−Zn−O膜(実施例1〜12)について、シート抵抗を4探針法で測定した。
−−−  厚さ15nmのIn−Sn−Zn−O膜の場合  −−−
  厚さ15nmのIn−Sn−Zn−O膜に対して、それぞれ異なる処理を行い、処理後のシート抵抗を測定した。それぞれの膜の処理条件は、次のとおりである。
[比較例1]
・加熱後のプラズマ処理条件:プラズマ処理なし
[比較例2]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:1分間
[比較例3]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例1]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例2]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例3]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例4]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
  各条件における処理後のシート抵抗を、表1に示す。
  図2に、比較例1〜3、実施例1〜4の半導体薄膜(厚さ15nmのIn−Sn−Zn−O膜)のシート抵抗の測定結果を示す。比較例1に示すプラズマ処理なしのIn−Sn−Zn−O膜は高いシート抵抗値を示しているが、Arプラズマ処理を施したIn−Sn−Zn−O膜(比較例2、3)及び水蒸気プラズマ処理を施したIn−Sn−Zn−O膜(実施例1〜4)はともに、プラズマ処理なしの比較例1に対して大幅に抵抗値が低減している。また、水蒸気プラズマ処理とArプラズマ処理の効果を比較すると、水蒸気プラズマ処理は、Arプラズマ処理と比べて、ほぼ同等の酸化物半導体膜の抵抗低減効果を有しているが、実施例2のみは他の実施例と異なる傾向を示している。
−−−  厚さ50nmのIn−Sn−Zn−O膜の場合  −−−
  厚さ50nmのIn−Sn−Zn−O膜に対して、それぞれ異なる処理を行い、処理後のシート抵抗を測定した。それぞれの膜の処理条件は、次のとおりである。
[比較例4]
・加熱後のプラズマ処理条件:プラズマ処理なし
[比較例5]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:1分間
[比較例6]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例5]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例6]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例7]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例8]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
  各条件における処理後のシート抵抗を、表2に示す。
  図3に、比較例4〜6、実施例5〜8の半導体薄膜(厚さ50nmのIn−Sn−Zn−O膜)のシート抵抗の測定結果を示す。比較例4に示すプラズマ処理なしのIn−Sn−Zn−O膜は高いシート抵抗値を示しているが、Arプラズマ処理を施したIn−Sn−Zn−O膜(比較例5、6)及び水蒸気プラズマ処理を施したIn−Sn−Zn−O膜(実施例5〜8)はともに、プラズマ処理なしの比較例4に対して大幅に抵抗値が低減している。また、水蒸気プラズマ処理とArプラズマ処理の効果を比較すると、水蒸気プラズマ処理は、Arプラズマ処理と比べて、ほぼ同等の酸化物半導体膜の抵抗低減効果を有していることを示している。
−−−  厚さ100nmのIn−Sn−Zn−O膜の場合  −−−
  厚さ100nmのIn−Sn−Zn−O膜に対して、それぞれ異なる処理を行い、処理後のシート抵抗を測定した。それぞれの膜の処理条件は、次のとおりである。
[比較例7]
・加熱後のプラズマ処理条件:プラズマ処理なし
[比較例8]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:1分間
[比較例9]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例9]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例10]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例11]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例12]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−Zn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
  各条件における処理後のシート抵抗を、表3に示す。
  図4に、比較例7〜9、実施例9〜12の半導体薄膜(厚さ100nmのIn−Sn−Zn−O膜)のシート抵抗の測定結果を示す。比較例7に示すプラズマ処理なしのIn−Sn−Zn−O膜は高いシート抵抗値を示しているが、Arプラズマ処理を施したIn−Sn−Zn−O膜(比較例8、9)及び水蒸気プラズマ処理を施したIn−Sn−Zn−O膜(実施例9〜12)はともに、プラズマ処理なしの比較例7に対して大幅に抵抗値が低減している。また、水蒸気プラズマ処理とArプラズマ処理の効果を比較すると、水蒸気プラズマ処理は、Arプラズマ処理と比べて、ほぼ同等の酸化物半導体膜の抵抗低減効果を有していることを示している。
  実施例1〜12から、いずれの厚さの酸化物半導体膜も、未処理のものと比較して、水蒸気プラズマ処理によりシート抵抗値が低減する。このシート抵抗値は、半導体装置における電極・配線、又はトランジスタのソース・ドレイン領域等の導電領域として使用するのに十分な、低い抵抗値である。実際の製造プロセスにおいては、酸化物半導体膜を所定の形状にパターンニングして、又は、低抵抗化の不要な部分をマスクし酸化物半導体膜の所定の領域を露出させて、水蒸気プラズマに晒し、導電領域を形成する。なお、In−Sn−Zn−O膜等の酸化物半導体膜は、可視光を透過させるため、水蒸気プラズマ処理した酸化物半導体膜を透明電極・透明配線として、使用することができる。
  図3、図4を参照すると、全体として処理時間が1分間の場合よりも10分間の場合の方が、シート抵抗値が低いことから、水蒸気プラズマが処理時間と共に酸化物半導体膜により浸透するものと推測される。
  膜が均質であればシート抵抗値は膜厚が厚くなるほど低くなるところ、厚さ15nmの半導体膜のシート抵抗値よりも厚さ50nmの半導体膜のシート抵抗値が低いことから、水素プラズマは50nm以上浸透しているものと推測される。一方、厚さ50nmの半導体膜のシート抵抗値と厚さ100nmの半導体膜のシート抵抗値とがほぼ変わらないことから、100nmの深さまでは水蒸気プラズマが十分浸透していない可能性もある。厚い酸化物半導体膜は、プラズマ処理時間を長くすることにより、更に低抵抗化が可能と推定される。
  別の実験によれば、水蒸気プラズマは、金属へのダメージは殆ど発生しない。しかしながら、実施例1〜12を比較すると、厚さが薄い(15nm)酸化物半導体膜をRF電極2上に載置して10分間のプラズマを照射した場合(実施例2)には、接地電極3上に載置した場合よりシート抵抗値が低下していないことから、RF電極2上で長時間のプラズマを照射した場合には、酸化物半導体膜に若干のダメージが生じる可能性があると推測される。したがって、低抵抗化の水素プラズマ処理は、基板を接地電極に載置して処理することが望ましい。
[In−Ga−Zn−O(IGZO)膜に対するプラズマ処理]
[製膜処理]
  ガラス基板上に、酸化インジウムガリウム亜鉛(In−Ga−Zn−O)の酸化物半導体膜をスパッタリング法で製膜した。製膜条件は、スパッタターゲット(In−Ga−Zn−Oターゲット)に印加する電力の値はRF100W、ガスの流量比はAr/O2=19.4/0.6sccm、圧力は0.4Paとした。本実施例で使用したスパッタターゲットの組成は、In:Ga:Zn:O=1:1:1:4である(原子数比)。なお、酸化インジウムガリウム亜鉛の組成は、これ以外の任意の組成比であってよい。
  また、製膜時間を変えることで、膜厚の異なる3種類のIn−Ga−Zn−O膜(膜厚15nm、50nm、100nmの3種類)を形成した。その後、ホットプレートを用いて、大気中で300℃、1時間の熱処理を実施した。
[プラズマ処理]
  製膜し加熱処理を行ったIn−Ga−Zn−O膜に対して、Arプラズマ処理、又は、水蒸気プラズマ処理を行った。なお、比較のために、プラズマ処理を行わないIn−Ga−Zn−O膜も準備した。
[抵抗測定]
  プラズマ処理なしのIn−Ga−Zn−O膜(比較例10、13、16)、Arプラズマ処理したIn−Ga−Zn−O膜(比較例11,12、14、15、17、18)、及び、水蒸気プラズマ処理したIn−Ga−Zn−O膜(実施例13〜24)について、シート抵抗を4探針法で測定した。
−−−  厚さ15nmのIn−Ga−Zn−O膜の場合  −−−
  厚さ15nmのIn−Ga−Zn−O膜に対して、それぞれ異なる処理を行い、処理後のシート抵抗を測定した。それぞれの膜の処理条件は、次のとおりである。
[比較例10]
・加熱後のプラズマ処理条件:プラズマ処理なし
[比較例11]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:1分間
[比較例12]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例13]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例14]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例15]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例16]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
  各条件における処理後のシート抵抗を、表4に示す。
  図5に、比較例10〜12、実施例13〜16の半導体薄膜(厚さ15nmのIn−Ga−Zn−O膜)のシート抵抗の測定結果を示す。比較例10に示すプラズマ処理なしのIn−Ga−Zn−O膜は高いシート抵抗値を示しているが、Arプラズマ処理を施したIn−Ga−Zn−O膜(比較例11、12)及び水蒸気プラズマ処理を施したIn−Ga−Zn−O膜(実施例13、15、16)はともに、プラズマ処理なしの比較例10に対して大幅に抵抗値が低減している。また、水蒸気プラズマ処理とArプラズマ処理の効果を比較すると、水蒸気プラズマ処理は、Arプラズマ処理と比べて、同等またはそれ以上の酸化物半導体膜の抵抗低減効果を有していることを示している。なお、実施例14は、特異的に高い抵抗値を示しているが、RF電極2上でのプラズマ照射により、酸化物半導体膜にダメージが生じた可能性がある。
−−−  厚さ50nmのIn−Ga−Zn−O膜の場合  −−−
  厚さ50nmのIn−Ga−Zn−O膜に対して、それぞれ異なる処理を行い、処理後のシート抵抗を測定した。それぞれの膜の処理条件は、次のとおりである。
[比較例13]
・加熱後のプラズマ処理条件:プラズマ処理なし
[比較例14]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:1分間
[比較例15]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例17]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例18]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例19]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例20]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
  各条件における処理後のシート抵抗を、表5に示す。
  図6に、比較例13〜15、実施例17〜20の半導体薄膜(厚さ50nmのIn−Ga−Zn−O膜)のシート抵抗の測定結果を示す。比較例13に示すプラズマ処理なしのIn−Ga−Zn−O膜は高いシート抵抗値を示しているが、Arプラズマ処理を施したIn−Ga−Zn−O膜(比較例14、15)及び水蒸気プラズマ処理を施したIn−Ga−Zn−O膜(実施例17〜20)はともに、プラズマ処理なしの比較例13に対して大幅に抵抗値が低減している。また、水蒸気プラズマ処理とArプラズマ処理の効果を比較すると、水蒸気プラズマ処理は、Arプラズマ処理と比べて、同等またはそれ以上の酸化物半導体膜の抵抗低減効果を有していることを示している。
−−−  厚さ100nmのIn−Ga−Zn−O膜の場合  −−−
  厚さ100nmのIn−Ga−Zn−O膜に対して、それぞれ異なる処理を行い、処理後のシート抵抗を測定した。それぞれの膜の処理条件は、次のとおりである。
[比較例16]
・加熱後のプラズマ処理条件:プラズマ処理なし
[比較例17]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:1分間
[比較例18]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例21]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例22]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例23]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例24]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Ga−Zn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
  各条件における処理後のシート抵抗を、表6に示す。
  図7に、比較例16〜18、実施例21〜24の半導体薄膜(厚さ100nmのIn−Ga−Zn−O膜)のシート抵抗の測定結果を示す。比較例16に示すプラズマ処理なしのIn−Ga−Zn−O膜は高いシート抵抗値を示しているが、Arプラズマ処理を施したIn−Ga−Zn−O膜(比較例17、18)及び水蒸気プラズマ処理を施したIn−Ga−Zn−O膜(実施例21〜24)はともに、プラズマ処理なしの比較例16に対して大幅に抵抗値が低減している。また、水蒸気プラズマ処理とArプラズマ処理の効果を比較すると、水蒸気プラズマ処理は、Arプラズマ処理と比べて、同等またはそれ以上の酸化物半導体膜の抵抗低減効果を有していることを示している。
[In−Sn−O(ITO)膜に対するプラズマ処理]
[製膜処理]
  ガラス基板上に、酸化インジウムスズ(In−Sn−O)の酸化物半導体膜をスパッタリング法で製膜した。製膜条件は、スパッタターゲット(In−Sn−Oターゲット)に印加する電力の値はRF250W、ガスの流量比はAr/O2=45/0.3sccm、圧力は0.9Paとした。本実施例で使用したスパッタターゲットの組成は、In2O3=90wt%,SnO2=10wt%である。なお、酸化インジウムスズの組成は、これ以外の任意の組成比であってよい。
  また、製膜時間を変えることで、膜厚の異なる3種類のIn−Sn−O膜(膜厚15nm、50nm、100nmの3種類)を形成した。その後、ホットプレートを用いて、大気中で300℃、1時間の熱処理を実施した。
[プラズマ処理]
  製膜し加熱処理を行ったIn−Sn−O膜に対して、Arプラズマ処理、又は、水蒸気プラズマ処理を行った。なお、比較のために、プラズマ処理を行わないIn−Sn−O膜も準備した。
[抵抗測定]
  プラズマ処理なしのIn−Sn−O膜(比較例19、22、25)、Arプラズマ処理したIn−Sn−O膜(比較例20,21、23、24、26、27)、及び、水蒸気プラズマ処理したIn−Sn−O膜(実施例25〜36)について、シート抵抗を4探針法で測定した。
−−−  厚さ15nmのIn−Sn−O膜の場合  −−−
  厚さ15nmのIn−Sn−O膜に対して、それぞれ異なる処理を行い、処理後のシート抵抗を測定した。それぞれの膜の処理条件は、次のとおりである。
[比較例19]
・加熱後のプラズマ処理条件:プラズマ処理なし
[比較例20]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:1分間
[比較例21]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例25]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例26]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例27]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例28]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
  各条件における処理後のシート抵抗を、表7に示す。
  図8に、比較例19〜21、実施例25〜28の半導体薄膜(厚さ15nmのIn−Sn−O膜)のシート抵抗の測定結果を示す。In−Sn−O膜は、プラズマ処理を行わないもの(比較例19)であっても抵抗値が比較的低いが、Arプラズマ処理を施したIn−Sn−O膜(比較例20)及び水蒸気プラズマ処理を施したIn−Sn−O膜(実施例25、27、28)はともに、プラズマ処理なしの比較例19に対して更に抵抗値が低減している。また、水蒸気プラズマ処理とArプラズマ処理の効果を比較すると、水蒸気プラズマ処理は、Arプラズマ処理と比べて、同等またはそれ以上の酸化物半導体膜の抵抗低減効果を有していることを示している。なお、比較例21は特異的に高い抵抗値を示しているが、RF電極2上でのプラズマ照射により、酸化物半導体膜にダメージが生じた可能性がある。
−−−  厚さ50nmのIn−Sn−O膜の場合  −−−
  厚さ50nmのIn−Sn−O膜に対して、それぞれ異なる処理を行い、処理後のシート抵抗を測定した。それぞれの膜の処理条件は、次のとおりである。
[比較例22]
・加熱後のプラズマ処理条件:プラズマ処理なし
[比較例23]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:1分間
[比較例24]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例29]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例30]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例31]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例32]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
  各条件における処理後のシート抵抗を、表8に示す。
  図9に、比較例22〜24、実施例29〜32の半導体薄膜(厚さ50nmのIn−Sn−O膜)のシート抵抗の測定結果を示す。In−Sn−O膜は、プラズマ処理を行わないもの(比較例22)であっても抵抗値が比較的低いが、Arプラズマ処理を施したIn−Sn−O膜(比較例23、24)及び水蒸気プラズマ処理を施したIn−Sn−O膜(実施例29〜32)はともに、プラズマ処理なしの比較例22に対して更に抵抗値が低減している。また、水蒸気プラズマ処理とArプラズマ処理の効果を比較すると、水蒸気プラズマ処理は、Arプラズマ処理と比べて、同等またはそれ以上の酸化物半導体膜の抵抗低減効果を有していることを示している。
−−−  厚さ100nmのIn−Sn−O膜の場合  −−−
  厚さ100nmのIn−Sn−O膜に対して、それぞれ異なる処理を行い、処理後のシート抵抗を測定した。それぞれの膜の処理条件は、次のとおりである。
[比較例25]
・加熱後のプラズマ処理条件:プラズマ処理なし
[比較例26]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:1分間
[比較例27]
・加熱後のプラズマ処理条件(Arプラズマ処理):
          ガス種:アルゴン
          ガス流量:20sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:150W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例33]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例34]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:RFパワーを印加する電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
[実施例35]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:1分間
[実施例36]
・加熱後のプラズマ処理条件(水蒸気プラズマ処理):
          ガス種:水蒸気
          ガス流量:12sccm
          In−Sn−O膜の載置位置:接地電極上
          RFパワー:250W
          プラズマ処理時間:10分間
  各条件における処理後のシート抵抗を、表9に示す。
  図10に、比較例25〜27、実施例33〜36の半導体薄膜(厚さ100nmのIn−Sn−O膜)のシート抵抗の測定結果を示す。In−Sn−O膜は、プラズマ処理を行わないもの(比較例25)であっても抵抗値が比較的低いが、Arプラズマ処理を施したIn−Sn−O膜(比較例26、27)及び水蒸気プラズマ処理を施したIn−Sn−O膜(実施例33〜36)はともに、プラズマ処理なしの比較例25に対して更に抵抗値が低減している。また、水蒸気プラズマ処理とArプラズマ処理の効果を比較すると、水蒸気プラズマ処理は、Arプラズマ処理と比べて、ほぼ同等の酸化物半導体膜の抵抗低減効果を有していることを示している。
  本実施形態では、半導体膜として、In−Sn−Zn−O膜、In−Ga−Zn−O膜、及びIn−Sn−O膜を使用して実験を行ったが、これらの膜に限られず、他の酸化物半導体膜においても、水蒸気プラズマ処理により抵抗値が低減することが確認されている。例えば、IZO(In−Zn−O)、ZnOにおいて、同様の傾向が見られる。本発明は、酸化物半導体膜を水蒸気プラズマに晒すことにより、抵抗値を低減し、導電領域を形成することができる。特に、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)のうち、少なくとも1種類を含む酸化物半導体膜に対して、水蒸気プラズマ処理により、導電領域を形成することができる。
  本実施形態の各実施例では、水蒸気プラズマ処理は、ガス(水蒸気)流量:12sccm、RFパワー:250Wとして行ったが、ガス流量及び/又はRFパワーを変えても、酸化物半導体膜の低抵抗化が同様に生じることが確認されている。
  上記の実施の形態1では、導電領域の形成方法について説明したが、本発明はこれに限らず、水蒸気プラズマ処理された酸化物半導体膜からなる電極配線(透明電極)又は導電領域として構成されてもよい。
(実施の形態2)
  本実施形態では、酸化物半導体膜を用いて薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を製造した。より詳細には、水蒸気プラズマ処理により、酸化物半導体領域の低抵抗化を行い、ソース・ドレイン領域を形成した。
  図11は、本発明を適用した薄膜トランジスタの構造の一例を表す図(断面図)である。薄膜トランジスタ20は、酸化物半導体膜21上に、ゲート絶縁膜22、及びゲート電極23を有している。図11の薄膜トランジスタは、いわゆるセルフアライン型であり、酸化物半導体膜21は、チャンネル領域とソース・ドレイン領域を備え、ゲート電極23とソース・ドレイン領域とが位置合わせされている。
  製造方法としては、まず、基板11上に、酸化物半導体膜21を形成する。基板11は、例えば、ガラス基板、シリコン基板、又は樹脂(プラスティック)製の基板等であり、用途等に応じた様々な基板を用いることができる。また、酸化物半導体膜21の形成には、例えば、スパッタリング法、又は、塗布法等を用いることができる。酸化物半導体膜21の厚さは、実験1〜9を参照して15〜100nmとしたが、これより厚い又は薄い酸化物半導体膜であっても、理論上は動作に問題はない。酸化物半導体膜21は、薄膜トランジスタの形成領域ごとにパターニングし、半導体島領域とすることが望ましい。
  続けて、酸化物半導体膜21のチャネル領域上に、ゲート絶縁膜22を形成する。ゲート絶縁膜22は、例えば、酸化シリコン(SiO2)膜を用いる。必要により、より誘電率の高い窒化シリコン又は他の絶縁膜を利用することもできる。ゲート絶縁膜22は、例えば、10〜300nmの厚さとすることができる。
  次に、ゲート絶縁膜22上にゲート電極材料膜を形成する。ゲート電極材料は、導電性の高い任意の材料で形成することができるが、本実施形態では、Mo、Mo合金、又はAlの金属膜を形成し、金属電極とした。
  ゲート絶縁膜22及びゲート電極材料膜を形成後、それらを同一形状に加工し、ゲート電極23とゲート絶縁膜22を形成する。ゲート長は、薄膜トランジスタ20の性能に応じて、例えば1〜100μmの範囲で適宜選択することができる。
  その後、薄膜トランジスタ20を、水蒸気プラズマに晒す。図11の薄膜トランジスタ20は、ゲート電極23及びゲート絶縁膜22がマスクとなり、酸化物半導体膜21のゲート電極23及びゲート絶縁膜22に覆われていない領域のみが選択的に水蒸気プラズマに晒されることで、低抵抗化し、ソース・ドレイン領域が形成される。
  形成された薄膜トランジスタ20を観察したところ、ゲート電極23の表面にはダメージが生じていなかった。水蒸気プラズマは、金属層には殆どダメージを与えない。
  このようにして、水蒸気プラズマを用いることで、Arプラズマを用いた場合とは異なり、物理的にゲート電極にダメージを与えることなく、酸化物半導体膜を低抵抗化でき、セルフアライン型薄膜トランジスタを製造することができる。
  また、上記の実施の形態2では、薄膜トランジスタ20の製造方法について説明したが、本発明はこれに限らず、水蒸気プラズマによって形成されたソース・ドレイン領域を有する、酸化物半導体の薄膜トランジスタとして構成されてもよい。
  上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。