しかしながら、特許文献1のLD駆動回路は、モニタPDに異常が発生して検出信号が取得できなくなった場合等に、LDが正常に発光している状態であってもLDが発光していない、又は出力が目標値より低くなったと判定することがある。
  このような場合、電流制御回路は、LDの出力を引き上げようとして駆動電流を大きくするため、結果的にLDが故障するレベルまで駆動電流を大きくする可能性がある。従って、医療機器等の場合には、人体に悪影響を及ぼしかねない光量が出射されるおそれがある。
  本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、安全性の高い発光駆動装及びその駆動方法を提供することを目的とする。
  第1発明の発光駆動装置は、発光部と、前記発光部に駆動信号に応じた駆動電流を供給する駆動電流生成部と、前記発光部からの出射光を検出する光検出部と、前記光検出部の検出光強度に応じて前記駆動電流生成部への前記駆動信号を調整し、前記出射光の強度を所定の目標光強度に制御する第1自動光出力制御回路及び第2自動光出力制御回路と、切替信号に応答して前記第1自動光出力制御回路と第2自動光出力制御回路とを切り替えるスイッチ回路と、前記第1自動光出力制御回路及び前記第2自動光出力制御回路に前記目標光強度を指示する制御部と、を備え、前記第1自動光出力制御回路は、前記目標光強度に到達するための第1時定数を有し、前記第2自動光出力制御回路は、前記目標光強度に到達するための前記第1時定数よりも大きい第2時定数を有し、前記制御部は、起動時に前記スイッチ回路に前記第1自動光出力制御回路を指定する前記切替信号を出力し、前記出射光の強度が前記目標光強度に到達してから所定時間が経過したとき、前記スイッチ回路に前記第2自動光出力制御回路を指定する前記切替信号を供給し、前記第2自動光出力制御回路に前記目標光強度に対応する前記駆動信号を出力させる初期信号を供給することを特徴とする。
  本発明の発光駆動装置は、目標光強度に到達するための第1時定数を有する第1自動光出力制御回路と、第1時定数よりも大きい第2時定数を有する第2自動光出力制御回路とを備えている。制御部は、装置の起動時に、スイッチ回路により第1自動光出力制御回路を指定するので、迅速に目標光強度に到達させて装置の使用開始を早めることができる。
  また、制御部は、出射光の強度が目標光強度に到達してから所定時間が経過した後には、スイッチ回路により第2自動光出力制御回路を指定する。このとき、第2自動光出力制御回路が目標光強度に対応する駆動信号を出力する初期信号を供給するので、第2自動光出力制御回路について迅速に目標光強度に到達させることができる。
  第2自動光出力制御回路による制御に切り替えた後には、光検出部に異常が発生して出射光を引き上げる制御が行われた場合でも、出射光の強度が緩やかにしか上昇しない。このため、人体に悪影響を及ぼしかねない出射光が外部に漏れることがなく、安全性の高い発光駆動装置とすることができる。
  第1発明の発光駆動装置において、前記出射光を遮る遮蔽部と、前記制御部により制御され、前記遮蔽部を駆動する遮蔽駆動部と、を備え、前記制御部は、前記光検出部の前記検出光強度が前記目標光強度よりも高い異常光強度以上となった場合に、前記遮蔽駆動部に前記遮蔽部を駆動する遮蔽部駆動信号を供給することが好ましい。
  制御部は、光検出部の検出光強度が異常光強度以上となった場合に、遮蔽駆動部に遮蔽部駆動信号を供給するので、遮蔽部が発光部の出射光を遮る。これにより、異常光強度が外部に漏れることが防止されるので、発光駆動装置の安全性をより高めることができる。
  また、第1発明の発光駆動装置において、前記回路切替部としてスイッチ回路を有し、前記制御部は、前記第1自動光出力制御回路と前記第2自動光出力制御回路とを切り替えるとき、前記スイッチ回路に切替信号を供給することが好ましい。
  この構成によれば、制御部は、スイッチ回路に切替信号を供給して第1自動光出力制御回路と第2自動光出力制御回路とを切り替える。これにより、簡易な構成で、2つの光出力制御回路を切り替え可能な装置とすることができる。
  また、第1発明の発光駆動装置において、前記制御部は、前記所定時間が経過した後において、前記目標光強度を変更する変更信号に応答して、前記スイッチ回路に前記第1自動光出力制御回路を指定する前記切替信号を供給することが好ましい。
  出射光の強度が目標光強度に到達してから所定時間が経過した後には、第2自動光出力制御回路によりレーザダイオードの駆動電流が生成される。本発明の構成によれば、目標光強度を変更する場合、スイッチ回路に第1自動光出力制御回路を指定する切替信号を供給して、第2自動光出力制御回路から第1自動光出力制御回路に切り替える。これにより、迅速に新たな目標光強度に切り替えて、装置を使用することができる。
  第2発明の発光駆動部の駆動方法は、発光部と、前記発光部からの出射光を検出する光検出部と、前記光検出部の検出光強度に応じて前記発光部を駆動する駆動信号を調整し、前記出射光の強度を所定の目標光強度に制御する駆動制御部と、を備えた発光駆動装置の駆動方法であって、第1時定数により前記出射光の強度を前記目標光強度に制御する第1自動光出力制御工程と、前記第1自動光出力制御工程の後に、前記第1時定数よりも大きい第2時定数により前記出射光の強度を前記目標光強度に制御する第2自動光出力制御工程と、を有し、前記第2自動光出力制御工程は、前記目標光強度に対応する光強度から駆動を開始することを特徴とする。
  本発明の発光駆動装置の駆動方法は、第1時定数の第1自動光出力制御工程において出射光の強度を目標光強度に制御するので、比較的迅速に目標光強度に到達させて、装置の使用開始を早めることができる。
  第1自動光出力制御工程の後の第2自動光出力制御工程では、第1時定数よりも大きい第2時定数により出射光の強度を目標光強度に制御する。第2自動光出力制御工程は、第1自動光出力制御工程よりも目標光強度に到達するのが遅いため、目標光強度に対応する光強度から駆動を開始するようにする。これにより、迅速に目標光強度に到達させることができる。
  その後も、第2時定数により出射光の強度を目標光強度に制御する。ここで、光検出部に異常が発生して出射光を引き上げる制御が行われることがあるが、出射光の強度が緩やかにしか上昇しない。このため、人体に悪影響を及ぼしかねない出射光が外部に漏れることがなく、安全に発光駆動装置を駆動させることができる。
  第2発明の発光駆動装置の駆動方法において、前記目標光強度を変更する変更信号に応答して、前記第1自動光出力制御工程を行う切替工程をさらに備えていることが好ましい。
  目標光強度を変更する場合、切替工程により第1自動光出力制御工程を行う。これにより、迅速に新たな目標光強度に切り替えて、装置を使用することができる。
  以下では、図面を参照して、本発明の発光駆動装置の実施形態について説明する。
  まず、図1を参照して、実施形態の発光駆動装置1の構成を説明する。レーザダイオード3(本発明の「発光部」)は、後述するLDドライバ17からの駆動電流に応じて光量が変化する半導体発光素子である。用途により波長は異なるが、眼底カメラの場合には、赤色(波長:約630nm)や緑色(波長:約530nm)が用いられる。
  フォトダイオード5(本発明の「光検出部」)は、レーザダイオード3から出射されたレーザ光(光検出信号)を受光し、光強度に応じた光検出電流を生成する。そして、後述する増幅器7に光検出電流を供給する。
  増幅器7は、フォトダイオード5からの光検出電流を一定の比率で電圧の変換し、後述する高速APC回路11及び低速APC回路13に検出光強度として供給する。増幅器7の例として、TIA(Trans Impedance Amplifier)を用いることができる。
  制御部9は、入力された光出力指示信号に応じて高速APC回路11及び低速APC回路13に目標光強度を供給する。光出力指示信号とは、レーザ発光許可信号かつ光出力強度信号である。また、制御部9は、後述するスイッチ回路15に高速APC回路11と低速APC回路13との切り替えを指示するスイッチ信号を供給する。
  制御部9の安定判定部9aは、高速APC回路11からのフィードバック信号に基づいて、高速APC回路11の出力が安定したか否かを確認する。詳細は後述するが、制御部9は、高速APC回路11の出力が目標光強度で安定し、所定時間が経過したとき、高速APC回路11から低速APC回路13への切り替えを指示するスイッチ信号を出力する。
  また、制御部9は、後述するLDドライバ17からもフィードバック信号を受ける。安定判定部9aでは、安定状態のときであって、かつ単位時間当たりの駆動電流の変化量が所定値以上となった場合に異常と判定する。電流の変化量を基準に異常の判定をするため、異常光強度に到達する前に異常を検出することができる。
  制御部9は、シャッタ駆動部10に制御信号を供給する。シャッタ駆動部10は、例えば、ソレノイドコイルであり、レーザ光のフォトダイオード5への入射を遮蔽するシャッタ10aと接続されている。
  例えば、フォトダイオード5の故障等により検出感度が低下したとき、高速APC回路11又は低速APC回路13が一定出力を維持しようとして出力を引き上げることがある。このような場合に、異常光強度のレーザ光が外部に漏れて人体に悪影響を及ぼすことがないように、シャッタ駆動部10は、シャッタ10aにシャッタ駆動信号(本発明の「遮蔽部駆動信号」)を供給してシャッタ10aを駆動し、レーザ光を遮蔽する。
  高速APC回路11(本発明の「第1自動光出力制御回路」)は、増幅器7からの検出光強度と制御部9からの目標光強度とを比較する。そして、高速APC回路11は、レーザ光の光出力強度が目標光強度となるようなLD駆動信号(本発明の「駆動信号」)を生成し、スイッチ回路15を介してLDドライバ17に供給する。また、高速APC回路11は、LD駆動信号を生成するため、制御部9に対してフィードバック信号を出力するが、低速APC回路13と比較して時定数が小さいため、迅速に目標光強度に到達して定常状態となる。
  低速APC回路13(本発明の「第2自動光出力制御回路」)は、高速APC回路11と同様に検出光強度と目標光強度とを比較し、レーザ光の光出力強度が目標光強度となるようなLD駆動信号を生成する。低速APC回路13は、高速APC回路11と比較して時定数が大きいため、目標光強度に到達するまでに時間がかかる。このため、低速APC回路13は、制御部9から目標光強度に対応する駆動信号(電圧値)の初期信号を受けて起動する。
  スイッチ回路15は、制御部9から供給されたスイッチ信号に基づいて、高速APC回路11又は低速APC回路13を指定する回路である。そして、高速APC回路11又は低速APC回路13から出力されるLD駆動信号をLDドライバ17に供給する。
  なお、高速APC回路11と低速APC回路13との間の切り替えは、ハードウェア的な手法に限られるものではなく、ソフトウェア的な手法であってもよい。例えば、制御部9がフィードバック信号を受けて動作するCPUである場合には、スイッチ回路15がなくてもCPUの1つの処理として、APC回路を切り替えることができる。
  LDドライバ17(本発明の「駆動電流生成部」)は、レーザダイオード3を駆動するための駆動電流を生成、出力する回路である。LDドライバ17は、高速APC回路11又は低速APC回路13から入力された電圧値に応じて、駆動電流を生成する。
  次に、図2を参照して、高速APC回路11と低速APC回路13の回路応答特性について説明する。
  図2の実線は、高速APC回路11が増幅器7から検出光強度に関する信号を受けた場合に、高速APC回路11の光強度(LD駆動信号)が上昇していく様子を示している。目標光強度は、発光駆動装置1で使用する標準の出力である。
  高速APC回路11は光強度の立ち上がりが急峻であり、一度目標光強度を越えた後、徐々に安定状態に落ち着く。ここでは、高速APC回路11が検出光強度の信号を受けてから目標光強度の63%の値に到達するまでの時間を時定数τ1としているが、目標光強度の値に到達するまでの時間でも同じである。
  一方、図2の一点鎖線は、低速APC回路13が増幅器7からの検出光強度に関する信号を受けた場合に、光強度(LD駆動信号)が上昇していく様子を示している。図示するように、低速APC回路13は、高速APC回路11と比較して光強度の立ち上がりが緩やかであり、目標光強度を越えることなく、徐々に安定状態に落ち着く。
  なお、低速APC回路13が検出光強度の信号を受けてから目標光強度の63%の値に到達するまでの時間が時定数τ2であり、時定数τ1の4〜5倍長い時間となっている。
  本発明の発光駆動装置1は、高速APC回路11と低速APC回路13の特徴をうまく利用して、レーザダイオード3からレーザ光を出力する。例えば、発光駆動装置1の起動時に低速APC回路13を用いる動作とした場合、目標光強度に到達するまでの時間が長くなり、発光駆動装置1を使用する使用者の待ち時間が生じてしまう。このため、発光駆動装置1の起動時には、高速APC回路11を用いる。
  また、本発明の発光駆動装置1は眼底カメラ等の医療機器に用いられることがあるが、常に高速APC回路11で動作させた場合、以下のような問題が生じることがある。例えば、レーザ光を受光するフォトダイオード5の感度が悪化した場合、制御部9は、レーザダイオード3の出力を上げようとするので、レーザ光の光強度がすぐに異常光強度以上に上昇してしまう。従って、このレーザ光が外部に漏れて、人の目に入ることがある。
  そこで、本発明の発光駆動装置1では、高速APC回路11に切り替えて起動した後、光強度が目標光強度で安定して所定時間が経過したタイミングにおいて、低速APC回路13の動作に切り替える。低速APC回路13は、上述のようなフォトダイオード5の故障が発生した場合でも、光強度が緩やかにしか上昇しないため、高速APC回路11で動作している場合よりも人体に安全な装置とすることができる。
  また、発光駆動装置1の使用中にレーザ光の出力を変化させる場合があるが、このような場合には、一度高速APC回路11に切り替えて新たな目標光強度にセットする。そして、光強度が新たな目標光強度で安定したタイミングにおいて、低速APC回路13に切り替える。これにより、使用者の待ち時間を極力抑えて、その後の使用時にはフォトダイオード5等の故障に対して対処することができる。
  最後に、図3を参照して、フォトダイオード5に異常が発生した場合の異常停止処理について説明する。
  フォトダイオード5の光検出信号の変化について、横軸を時間T、縦軸をフォトダイオード5の光検出信号としたグラフに示す。時間T=t0にてレーザダイオード3をオンとし、光検出信号が目標光強度のレベルに到達した後、時間T=t2にてフォトダイオード5に異常が発生したとする。このとき、図示するように、時間T=t2のタイミングで光検出信号が0となる。
  また、このときの発光駆動装置1の制御について、横軸を時間T、縦軸をレーザダイオード3の駆動信号(LD駆動信号)としたグラフに示す。まず、時間T=t0からLD駆動信号が徐々に上昇して、やがて目標光強度に到達する。このとき、発光駆動装置1は、高速APC回路11による動作となっている。そして、LD駆動信号が目標光強度で安定した時間T=t1にて、制御部9からの切替信号により高速APC回路11から低速APC回路13に切り替える。その後は、発光駆動装置1は、低速APC回路13による動作となる。
  そして、時間T=t2にてフォトダイオード5に異常が発生すると、低速APC回路13は、レーザダイオード3のLD駆動信号を引き上げて光強度を一定に維持しようとする。しかし、現在、低速APC回路13による動作となっているため、光強度は少しずつしか上昇しない。
  一方、従来例において、起動や切り替えを早くするため高速APC回路による動作としていた場合、時間T=t2にてレーザダイオード3の出力が急激に引き上げられる。すなわち、一瞬で異常光強度を越えてレーザダイオード3の電流制限にまで到達する。
  その後、時間T=t3で異常停止処理が行われるとする。本発明の異常停止処理は、シャッタ10aを駆動してレーザ光を遮蔽する機械的手法であるので、時間T=t2〜t3の期間は約20msと短い。この期間において、従来例では人体に悪影響を及ぼしかねない光量が出力されるが、本発明では異常光強度を越えないうちに異常停止処理が完了する。このような制御は、特に、発光駆動装置1を眼底カメラや光干渉断層計等の医療機器に適用した場合に重要となる。
  仮に、発光駆動装置1において、電気系統の故障によりシャッタ10aへの電力供給が停止した場合でも、シャッタ10aがバネで自動的にレーザ光を遮光する位置に移動する。このため、発光駆動装置1は、極めて安全な装置といえる。本実施形態の異常停止処理は、シャッタ10aを駆動する機械的手法であったが、これに限られるものではなく、例えば、回路的にオフしてレーザダイオード3の出力を停止することも可能である。
  以上で説明したように、本発明の発光駆動装置1は、目標光強度に到達するための時定数τ1を有する高速APC回路11と、目標光強度に到達するための時定数τ2(>時定数τ1)を有する低速APC回路13とを備えている。制御部9は、発光駆動装置1の起動時に高速APC回路11で動作させ、レーザ光の光強度が目標光強度に到達して安定してからは、低速APC回路13に切り替え、その後は低速APC回路13により駆動信号を生成する。これにより、発光駆動装置の安全性を高めることができる。
  上述の実施形態は一例に過ぎず、用途に応じて適宜変更することができる。例えば、APC回路の応答速度は2種類に限られず、高速、中速、低速の3種類としてもよい。このとき、発光駆動装置の駆動時は高速APC回路を用いて、目標光強度に到達して安定したタイミングで中速APC回路又は低速APC回路に切り替えるようにしてもよい。また、通常時は低速APC回路を用いて、新たな目標光強度に切り替える際に、中速APC回路を用いるようにしてもよい。
  また、本発明のシャッタ駆動部10はソレノイドコイルであったが、これに限られない。モータによりシャッタ10aを駆動してもよいし、カメラ等で用いられる複数の薄板を組み合せて光を遮蔽する遮蔽部材を用いてもよい。