以下、本発明の一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るセンサとしてのTOFセンサ20を搭載した移動体1の外観が示されている。この移動体1は、荷物を目的地に無人搬送するものである。なお、本明細書では、XYZ3次元直交座標系において、路面に直交する方向をZ軸方向、移動体1の前進方向を+X方向として説明する。
  ここでは、TOFセンサ20は、一例として、移動体1の前部に取り付けられ、移動体1の+X側にある物体を検出する。また、TOFセンサ20による検出可能な領域を検出領域ともいう。
  移動体1の内部には、一例として図2に示されるように、表示装置30、監視制御装置40、メモリ50、及び音声・警報発生装置60などが備えられている。これらは、データの伝送が可能なバス70を介して電気的に接続されている。
  ここでは、TOFセンサ20と、表示装置30と、監視制御装置40と、メモリ50と、音声・警報発生装置60とによって、センシング装置としての監視装置10が構成されている。すなわち、監視装置10は、移動体1に搭載されている。また、監視装置10は、移動体1のメインコントローラ80と電気的に接続されている。
  TOFセンサ20は、一例として図3に示されるように、光射出系201、光検出系202、及び物体情報取得部203などを有している。そして、これらは、筐体内に収納されている。この筐体は、光射出系201から射出される光及び、物体で反射され、光検出系202に向かう光が通過するための窓を有し、該窓にはガラスが取り付けられている。
  光射出系201は、光検出系202の−Z側に配置されている。この光射出系201は、一例として図4に示されるように、光源21、カップリングレンズ22、パルス制御部24、及び光源駆動部25などを有している。
  光源21は、光源駆動部25によって点灯及び消灯される。光源21は、+X方向に光を射出するように配置されている。なお、以下では、光源駆動部25で生成され、光源21を駆動するための信号を「光源駆動信号」という。
  カップリングレンズ22は、光源21の+X側に配置され、光源21から射出された光を平行光あるいは、わずかに発散した発散光とする。ここでは、カップリングレンズ22として平凸レンズが用いられている。カップリングレンズ22を介した光が、光射出系201から射出される光である。なお、カップリングレンズ22に代えて、同等の機能を有し、複数の光学素子を含むカップリング光学系を用いても良い。
  パルス制御部24は、物体情報取得部203からの距離情報に基づいて、光源21から射出されるパルス光の発光時間であるパルス幅Wを制御する信号(以下では、「パルス制御信号」という。)を生成する。このパルス制御信号は、光源駆動部25及び光検出系202に送出される。ここでは、パルス制御信号として、光源21から射出されるパルス光のパルス幅と同じパルス幅のパルス信号がパルス制御部24から出力される(図5参照)。なお、周期制御部24の詳細については後述する。
  光源駆動部25は、パルス制御部24からのパルス制御信号に基づいて、前記光源駆動信号を生成する(図6参照)。光源駆動信号は、光源21及び物体情報取得部203に送出される。
  これにより、光源21からは、パルス制御部24から指示されたパルス幅のパルス光が光源21から射出される。なお、以下では、光源21から射出される光を「検出光」ともいう。
  移動体1のメインコントローラ80は、移動体1を移動させる際に、物体情報の取得開始要求を監視制御装置40に送出する。そして、移動体1のメインコントローラ80は、移動体1が目的位置に到達すると、物体情報の取得終了要求を監視制御装置40に送出する。
  監視制御装置40は、物体情報の取得開始要求、及び物体情報の取得終了要求を受け取ると、物体情報取得部203に送出する。
  物体情報取得部203は、監視制御装置40から物体情報の取得開始要求を受信すると、光源駆動部25に光源21の駆動開始要求を送信するとともに、パルス制御部24に光源21から射出されるパルス光のパルス制御開始要求を送信する。
  そして、物体情報取得部203は、監視制御装置40から物体情報の取得終了要求を受信すると、光源駆動部25に光源21の駆動終了要求を送信するとともに、パルス制御部24に光源21から射出されるパルス光のパルス制御終了要求を送信する。
  ところで、検出領域内に物体があると、TOFセンサ20から射出され物体で反射された光の一部は、TOFセンサ20に戻ってくる。以下では、便宜上、物体で反射されTOFセンサ20に戻ってくる光を「物体からの反射光」ともいう。
  光検出系202は、物体からの反射光を検出する。光検出系202は、いわゆるTOFカメラ(例えば、特許文献1参照)であり、一例として図7に示されるように、結像光学系28、受光器29及びAD変換器31などを有している。
  結像光学系28は、物体からの反射光の光路上に配置され、該光を集光する。ここでは、結像光学系28は1枚のレンズで構成されているが、2枚のレンズで構成されても良いし、3枚以上のレンズで構成されても良いし、ミラー光学系を用いても良い。
  受光器29は、結像光学系28を介した物体からの反射光を受光する。ここでは、受光器29の受光素子としてCMOS撮像素子が用いられている。
  AD変換器31は、受光器29から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、物体情報取得部203に出力する。
  物体情報取得部203は、AD変換器31の出力信号と光源駆動信号に基づいて、X軸方向に直交する面内での物体の2次元情報及びX軸方向に関する物体までの距離情報、すなわち物体の3次元情報を求める。なお、TOFカメラの基本動作原理及び3次元情報の取得方法に関しては既知(例えば、特許文献1参照)であるため、ここでの説明は省略する。
  そして、物体情報取得部203は、取得した物体の3次元情報をパルス制御部24及び監視制御装置40に出力する。
  ところで、パルス光の発光時間であるパルス幅Wは、TOFセンサ20の測距性能と非常に関係が深く、パルス幅Wが短いほど距離分解能が高くなり、計測精度を高くすることができるが、一方で周期の折り返しの影響で測距できる範囲が短くなる。ここでいう折り返しとは、パルス光の周期Tを超えて遅れて戻ってきた反射光が何周期分遅れて来たのかが判別できないことを意味している。折り返しが発生しない条件は、パルス光のパルス幅Wの2倍までである。
  そこで、本実施形態では、物体の距離情報をフィードバックして、物体との距離に応じた適切なパルス幅Wで光源21をパルス発光させている。
  ここでは、説明をわかりやすくするため、パルス制御部24は、パルス幅Wを、50nsec、25nsec、10nsec、5nsecのいずれかにするものとする。また、各周波数における発光デューティ(duty)を50%とし、位相2πまで検出できるものとする。つまり、パルス光の周期Tは、100nsec、50nsec、20nsec、10nsecのいずれかとなる。
  この場合、物体からの反射光の遅延が1周期を超えない範囲で決まる測距可能な最長距離は、パルス幅Wが5nsec(デーティ50%の場合は周期Tが10nsec)のときで1.5m、パルス幅Wが10nsec(デーティ50%の場合は周期Tが20nsec)のときで3m、パルス幅Wが25nsec(デーティ50%の場合は周期Tが50nsec)のときで7.5m、パルス幅Wが50nsec(デーティ50%の場合は周期Tが100nsec)のときで15mである。
  そこで、パルス制御部24は、物体までの距離dが、d≦1mのときにパルス幅Wが5nsecとなり、1m<d≦2mのときにパルス幅Wが10nsecとなり、2m<d≦5mのときにパルス幅Wが25nsecとなり、5m<d≦15mのときにパルス幅Wが50nsecとなるように制御する(図8参照)。
  例えば、物体がd=10mの位置にあるときは、パルス幅Wを50nsecとし、物体がd=5mの位置に相対移動すると、パルス幅Wを25nsecに切り替える。更に、物体がd=2mの位置に相対移動すると、パルス幅Wを10nsecに切り替える。
  また、例えば、物体がd=0.5mの位置にあるときは、パルス幅Wを5nsecとし、物体がd=1mを超える位置に相対移動すると、パルス幅Wを10nsecに切り替える。更に、物体がd=2mを超える位置に相対移動すると、パルス幅Wを25nsecに切り替える。
  このように、パルス制御部24は、物体との距離が近くなるとパルス幅Wを短くし、物体との距離が遠くなるとパルス幅Wを長くする。
  なお、便宜上、+X方向に関して、TOFセンサ20からの距離が1m以下の領域をR1、TOFセンサ20からの距離が1mを超え、2m以下の領域をR2、TOFセンサ20からの距離が2mを超え、5m以下の領域をR3、TOFセンサ20からの距離が5mを超え、15m以下の領域をR4とする(図9参照)。
  すなわち、領域R1に対応するパルス幅Wは5nsecであり、領域R2に対応するパルス幅Wは10nsecであり、領域R3に対応するパルス幅Wは25nsecであり、領域R4に対応するパルス幅Wは50nsecである。以下では、R1〜R4を総称して「領域情報」ともいう。
  次に、物体情報取得部203からパルス制御開始要求を受信したときに、パルス制御部24で行われる処理(以下では、「パルス制御処理」という)について、図10を用いて説明する。図10のフローチャートは、パルス制御部24において実行される一連の処理アルゴリズムに対応している。なお、ここでは、TOFセンサ20の+X側に物体が存在しているものとする。
  最初のステップS401では、パルス制御信号のパルス幅が格納される変数wにデフォルト値をセットする。ここでは、一例として50nsecをセットする。なお、別に測距装置を備えている場合は、該測距装置の計測結果を参照してデフォルト値を決定しても良い。また、物体までの距離が既知であれば、それに対応するパルス幅をデフォルト値として用いても良い。
  次のステップS403では、パルス制御信号のパルス幅に対応する領域情報が格納される変数Rに、変数wに格納されているパルス幅に対応する領域情報がセットされる。例えば、変数wに50nsecがセットされていれば、R4が変数Rにセットされる。
  次のステップS405では、変数wに格納されているパルス幅のパルス制御信号を生成する。このパルス制御信号は、光源駆動部25及び光検出系202に送出される。これにより、光源21からは、変数wに格納されているパルス幅のパルス光が射出される。
  次のステップS407では、物体情報取得部203から距離情報を受け取ったか否かを判断する。距離情報を受け取っていなければ、ここでの判断は否定され、距離情報を受け取るのを待つ。距離情報を受け取っていれば、ここでの判断は肯定され、ステップS409に移行する。
  このステップS409では、距離dが15m以下であるか否かを判断する。距離dが15m以下であれば、ここでの判断は肯定され、ステップS411に移行する。
  このステップS411では、距離dが含まれる領域の領域情報を求める。例えば、距離dが10mであれば、領域情報としてR4が得られ、距離dが5mであれば、領域情報としてR3が得られる。
  次のステップS413では、得られた領域情報と変数Rに格納されている領域情報とが同じか否かを判断する。得られた領域情報と変数Rに格納されている領域情報とが同じでなければ、ここでの判断は否定され、ステップS415に移行する。
  次のステップS415では、得られた領域情報を変数Rにセットする。すなわち、変数Rの内容を更新する。
  次のステップS417では、得られた領域情報に対応するパルス幅を求める。例えば、得られた領域情報がR3であれば、25nsecが得られ、得られた領域情報がR2であれば、50nsecが得られる。
  次のステップS419では、得られたパルス幅を変数wにセットする。すなわち、変数wの内容を更新する。
  次のステップS421では、パルス制御終了要求があるか否かを判断する。パルス制御終了要求がなければ、ここでの判断は否定され、上記ステップS405に戻る。
  なお、上記ステップS409において、距離dが15m以下でなければ、ステップS409での判断は否定され、ステップS423に移行する。
  このステップS423では、検出範囲外である旨を表示し、周期制御処理を終了する。
  また、上記ステップS413において、得られた領域情報と変数Rに格納されている領域情報とが同じであれば、ステップS413での判断は肯定され、上記ステップS421に移行する。すなわち、変数wの内容は更新されない。
  また、上記ステップS421において、パルス制御終了要求があれば、ステップS421での判断は肯定され、パルス制御処理を終了する。
  図2に戻り、監視制御装置40は、物体情報取得部203から物体の3次元情報を受け取ると、直近の複数の3次元情報を参照し、物体の相対的な移動方向及び相対的な移動速度を含む移動情報を求める。そして、物体の3次元情報及び移動情報を表示装置30に表示する。また、監視制御装置40は、物体の3次元情報及び移動情報を移動体1のメインコントローラ80に出力する。
  移動体1のメインコントローラ80は、監視制御装置40からの物体の3次元情報及び移動情報に基づいて、物体に対する自己(移動体1)の位置を制御する。
  また、監視制御装置40は、物体の3次元情報及び移動情報に基づいて、危険の有無を判断し、危険があると判断すると、移動体1のメインコントローラ80及び音声・警報発生装置60に通知する。
  移動体1のメインコントローラ80は、監視制御装置40から危険ありの通知があると、予め設定されている回避処理を行う。
  音声・警報発生装置60は、一例として図11に示されるように、音声合成装置61、警報信号生成装置62及びスピーカ63などを有している。
  音声合成装置61は、複数の音声データを有しており、監視制御装置40から危険有りの情報を受け取ると、対応する音声データを選択し、スピーカ63に出力する。
  警報信号生成装置62は、監視制御装置40から危険有りの情報を受け取ると、対応する警報信号を生成し、スピーカ63に出力する。
  以上の説明から明らかなように、本実施形態では、光検出系202によって本発明のセンサにおける受光手段が構成され、物体情報取得部203によって本発明のセンサにおける距離情報取得部が構成されている。また、パルス制御部24にて、本発明の距離計測方法が実施されている。
  以上説明したように、本実施形態に係るTOFセンサ20は、光射出系201、光検出系202、及び物体情報取得部203などを有している。光射出系201は、光源21、カップリングレンズ22、パルス制御部24、及び光源駆動部25などを有している。
  物体情報取得部203は、いわゆるTOF演算方式によって、すなわち、光源21から射出されたパルス光が物体で反射されて光検出系202で検出されるまでの時間に基づいて物体までの距離を求める。
  パルス制御部24は、物体情報取得部203からの距離情報に基づいて、光源21から射出されるパルス光のパルスを制御する。
  この場合は、物体情報取得部203では、物体までの距離を演算する際に、1つのパルスのみを考慮すれば良いので、演算が複雑化することなく、かつ同時性が損なわれることなく、距離情報を算出することができる。なお、特許文献1に開示されている方法では、演算が複雑化するという不都合があり、特許文献2に開示されている方法では、同時性が損なわれるおそれがあった。
  また、パルス制御部24は、物体との距離が近くなるとパルス光の発光時間であるパルス幅を短くし、物体との距離が遠くなるとパルス光の発光時間であるパルス幅を長くしている。すなわち、物体との距離に応じた適切なパルス幅のパルス光が光源21から射出される。そこで、検出精度の向上及び検出距離の拡大を図ることができる。
  そして、監視装置10は、TOFセンサ20を備えているため、高い精度の監視を行うことができる。
  なお、上記実施形態では、パルス制御部24は、直前の距離情報に基づいて、光源21から射出されるパルス光のパルスを制御する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
  例えば、直近の複数の距離情報に基づいて、次の距離情報を予測し、該予測結果に基づいて、パルス光のパルスを制御しても良い。この場合のパルス制御処理を説明するためのフローチャートが図12に示されている。
  図12のフローチャートは、図10のフローチャートにおいて、ステップS407とステップS409との間に、ステップS408_1とステップS408_2が挿入されたものである。
  ステップS408_1では、物体情報取得部203からの距離情報をメモリに保存する。なお、メモリには、複数の距離情報が時系列で保存されるようになっている。
  ステップS408_2では、メモリに格納されている直近の複数の距離情報に基づいて、物体の相対的な移動速度、加速度を算出し、次の距離情報を予測する。ここでの予測結果が距離dとなる。
  また、この場合に、図13のフローチャートに示されるように、予測結果に基づいてTOFセンサ20に異常な動きがあるか否かを判断し(ステップS408_3)、異常な動きが有れば、アラーム信号を出力(ステップS408_4)しても良い。このアラーム信号は、物体情報取得部203を介して監視制御装置40に送られる。
  監視制御装置40は、上記アラーム信号を受け取ると、TOFセンサ20の異常を、移動体1のメインコントローラ80及び音声・警報発生装置60に通知する。音声・警報発生装置60は、監視制御装置40からTOFセンサ20の異常を受け取ると、所定の音声あるいは警報を発する。移動体1のメインコントローラ80は、監視制御装置40からTOFセンサ20の異常を受け取ると、予め設定されている異常時処理を行う。
  また、上記実施形態では、パルス制御部24が、パルス光の発光時間であるパルス幅Wを50nsec、25nsec、10nsec、5nsecのいずれかにする場合について説明したが、これら限定されるものではない。
  また、上記実施形態では、パルス制御部24が、パルス幅を4種類のパルス幅のいずれかにする場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、パルス制御部24が、パルス幅を6種類のパルス幅のいずれかにしても良い。
  また、発光デューティを50%として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、発光デューティを30%としても良い。
  また、上記実施形態では、物体情報が取得可能な最大距離が15mの場合について説明したが、これに限定されるものではない。
  また、上記実施形態では、受光器29が、物体の3次元情報を取得することができる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、少なくとも物体までの距離が取得できれば良い。
  また、上記実施形態において、物体情報取得部203での処理の一部を監視制御装置40が行っても良いし、監視制御装置40での処理の一部を物体情報取得部203が行っても良い。
  また、上記実施形態において、AD変換器31は、受光器29と一体化されても良いし、物体情報取得部203と一体化されても良い。
  また、上記実施形態において、物体情報取得部203での処理の一部を受光器29が行っても良いし、受光器29での処理の一部を物体情報取得部203が行っても良い。
  また、上記実施形態では、監視装置10が1つのTOFセンサ20を備える場合について説明したが、これに限定されるものではない。移動体の大きさ、監視領域などに応じて、複数のTOFセンサ20を備えても良い。
  また、上記実施形態では、TOFセンサ20が移動体の進行方向を監視する監視装置10に用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、移動体の後方や側面を監視する装置に用いられても良い。
  さらに、TOFセンサ20は、移動体搭載用以外のセンシング装置にも用いることができる。この場合には、監視制御装置40は、センシングの目的に応じたアラーム情報を出力する。
  また、TOFセンサ20は、センシング装置以外の用途(例えば、距離計測装置や形状測定装置)にも用いることができる。