本発明は、ディーゼル燃料(例えば、化石ディーゼル燃料、フィッシャートロプシュ(Fischer-Tropsch)ディーゼル燃料、及び/又は、脂肪酸及びアルコールから製造したエステルに由来する水素化処理(hydroprocessed)バイオディーゼル)を、再生可能なエネルギー源から製造された炭化水素留出物と組み合わせて使用して、ディーゼル燃料からの多核芳香族炭化水素(PAH)排気物質を削減することに関する。
  ある実施様態では、本発明は、上記のディーゼル燃料と、沸点が約320°F乃至約700°Fである、再生可能な炭化水素留出物とを含むディーゼル燃料組成物に関する。このディーゼル燃料組成物を用いると、(再生可能な炭化水素留出物を含まないディーゼル燃料を使用した場合と比べて)ディーゼルエンジンからのPAH排気物質の量が大幅に低下する。ディーゼル燃料組成物中にこの再生可能な炭化水素留出物が存在すると、ディーゼルエンジンからのPAH排気物質の量が、最大で5倍も低下することがある。この結果は、予期したものよりはるかに大きく、単純な希釈効果によるものではない。
  ある実施様態では、上記ディーゼル燃料組成物中の再生可能な炭化水素留出物の量は、約0.1乃至約55体積パーセントである。
  別の実施様態においては、上記ディーゼル燃料組成物中の再生可能な炭化水素留出物の量は、約5乃至約50体積パーセントである。
  別の実施様態においては、上記ディーゼル燃料組成物中の再生可能な炭化水素留出物の量は、約10乃至約40体積パーセントである。
  さらに別の実施様態においては、上記ディーゼル燃料組成物中の再生可能な炭化水素留出物の量は、約20乃至約35体積パーセントである。
  ある実施様態においては、再生可能な炭化水素留出物は、5乃至9の二重結合等量(double bond equivalents)を有する1又は複数種の炭化水素を含む。
  別の実施様態において、本発明は、1又は複数種の求電子性水素供与体(electrophilic hydrogen donors)を、例えば、テトラリン、ジヒドロアントラセン、ジヒドロフェナントレン、又はジヒドロナフタレン、これらのアルキル誘導体を含む再生可能な炭化水素留出物を含んでいるディーゼル燃料組成物に関する。好ましい実施様態では、求電子性水素供与体は、アルキルテトラリン、例えばC1−C5アルキルテトラリンである。テトラリン環構造上には、1又は複数のアルキル基が存在してよい。さらに、アルキル基又は芳香族環の何れかは、置換されてよい。上記ディーゼル燃料と混合されてディーゼルエンジンに投入されると、(ディーゼル燃料組成がこの求電子性水素供与体を含まず、石油系ディーゼル燃料のみを含む場合に排出されるPAHの量に比べて)PAHは大幅に低下する。
  別の実施様態において、本発明は、約320°F乃至約700°Fの沸点を持つ再生可能な炭化水素留出物を含むディーゼル燃料組成物に関しており、当該炭化水素留出物が石油系ディーゼル燃料と混合されると、ASTM  D975の品質基準内のNo.2ディーゼル燃料組成物を与える。
  さらに別の実施様態では、本発明は、約320乃至約700°Fの再生可能な炭化水素留出物を約0.1乃至約55体積パーセントで有するディーゼル燃料組成物を、ディーゼルエンジンに投入してディーゼルエンジンからの1又は複数種のPAH排気物質を削減する方法に関する。再生可能な炭化水素留出物は、5乃至9の二重結合等量を有する1又は複数種の炭化水素を含んでおり、さらにディーゼル燃料組成物中の5乃至9の二重結合等量を有する1又は複数種の炭化水素の量は、約10乃至約50体積パーセントである。
  本発明は、ディーゼルNo.1又はディーゼルNo.2のような石油系ディーゼル燃料、フィッシャートロプシュディーゼル燃料、及び/又はエステル又は脂肪酸由来の水素化処理バイオディーゼルを含むディーゼル燃料組成物に関する。ディーゼル燃料組成物は、再生可能な炭化水素留出物と組み合わせてディーゼル燃料を含んでいる。このディーゼル燃料組成物は、米国材料試験協会により定められたディーゼル燃料の品質基準であるASTM  D975を満たす。
  例えば、ディーゼル燃料組成物は、ASTM  D975の品質基準内のNo.1又はNo、2ディーゼル燃料組成物であってもよい。ある好ましい実施様態においては、ディーゼル燃料組成物は、ASTM  D975の品質基準内のNo.2ディーゼル燃料組成物である。
  本明細書に記載のディーゼル燃料組成物を用いると、ディーゼルエンジンからの多核芳香族炭化水素(PAH)排気物質が劇的に減少する。このように、本発明は、エンジン排気後処理システムにかかる負荷を低減する手段を提供する。このため、後処理システムの実用寿命を延長させることとなる。本発明は、エンジン排気後処理システムの変更を必要としないので、それによる環境PAHレベルへの効果に、ディーゼルエンジン駆動車両の改造を必要としない。
  再生可能な炭化水素留出物を含むディーゼル燃料組成物は、様々なPAHの排出を削減する。本明細書において、PAHは、窒素含有PAH(NPAH)を含んでいる。ある実施様態では、再生可能な炭化水素留出物は、ベンゾ(a)アントラセン、クリセン、ベンゾ(b)フルオランテン、ベンゾ(k)フルオランテン、ベンゾ(a)ピレン、インデノ[1,2,3−cd]ピレン、ジベンゾ(a,h)アントラセンなどのPAHの排気物質を低下させる。一般的に、これらの化合物は、体内でベイ領域エポキシド(bay-region epoxide)を形成できる。そして、これが細胞核に入ってDNA螺旋中に挿入される。これが、遺伝子発現の変化や変異原性をもたらす。
  再生可能な炭化水素留出物は、水素化処理バイオオイル又は熱分解油を分留して、約320°F乃至約700°Fの沸点を持つ炭化水素留出物を分離することにより製造されてよい。この320°F乃至700°Fの再生可能な炭化水素留出物を石油系ディーゼル燃料に添加することで、ディーゼルエンジンからの多核芳香族炭化水素(PAH)の排出を削減できるディーゼル燃料組成物が与えられる。
  この再生可能な留出物は、バイオマス変換反応器中でバイオマスを処理して得られるものであってもよい。この再生可能な留出物は、公知の方法で、例えば米国特許第8,022,260、米国公開公報第20110154720、米国公開公報第20110094147、米国公開公報第20120101318、米国特許出願第13/553,742に記載される方法で生産されてよい。なお、これら文献は、引用により本明細書に組み込まれるものとする。あるいは、この再生可能な留出物が、公知の方法で、例えば米国特許第8,329,969、米国特許第8,329,968、米国特許第8,329,967、及び米国特許第8,324,438を含む文献に記載のプロセスで製造された脱酸素化熱分解供給原料(deoxygenated pyrolysis feedstock)に由来するものであってもよい。なお、これら文献は、引用により本明細書に組み込まれるものとする。
  既存のバイオマス変換方法には、例えば、燃焼、ガス化、低速熱分解、高速熱分解、熱触媒変換、液化、酵素変換が含まれる。
  バイオマスは、固体粒子の形であってよい。バイオマス粒子は、セルロースを含む繊維状バイオマス材料であってよい。適切なセルロース含有材料の例には、藻類、紙屑、及び/又はコットンリンター(cotton linter)が挙げられる。ある実施様態においては、バイオマス粒子は、リグノセルロース(lignocellulosic)材料を含むことができる。適切なリグノセルロース材料の例には、木材チップ、おがくず、パルプ廃棄物、木の枝などの林業廃棄物、トウモロコシ茎葉、小麦藁、バガスなどの農業廃棄物、及び/又は、ユーカリ、スイッチグラス、雑木などのエネルギー作物が含まれる。バイオマスは、固体又は微粉状であってよく、液体であってもよい。通常、バイオマス中の水溶性成分の含量は、約7体積パーセント以下である。
  バイオマスを熱的に処理して(非触媒的)、(比較的水溶性である)熱分解油としてもよく、又は、熱触媒的に処理して、水相と有機相に自然分離する液体生成物としてもよい。(バイオ燃料の製造に用いられる)バイオオイルは有機相からなる。
  ある好ましい実施様態では、バイオマスは、バイオマス流動床接触分解(biomass fluidized catalytic cracking)(BFCC)装置で熱触媒的に、油溶性の再生可能な粗原料(crude)に変換される。得られる再生可能な粗原料中の原子状酸素の含量は、通常25体積パーセント未満である。
  水素化処理の前に、望ましくない重質材料及び固体をバイオオイルから取り除いてよい。通常、分離器にて、約90乃至95重量%の固体がこの混合物から除かれる。分離器は、例えば、コアレッサ(coalescer)、重力相分離装置、液体サイクロン、静電脱塩装置等であってよい。随意選択的に、また、好ましくは、混合物中に残留している固体を、例えば濾過物を洗錬することでさらに除去してよい。固体と重質材料の除去により、再生可能な原料から高純度のバイオオイルを得ることができ、水素化処理が容易となる。
  この分離の際に、重質材料と固体の除去に加えて、水を除いてもよい。
  次いで、副産物である水と重質材料と固体とが除かれたバイオオイルを水素化処理装置に投入し、水素化処理装置に水素を投入しながら、高純度バイオオイルを脱酸素させる。通常、水素化処理装置中で、90乃至約99.99体積パーセントの酸素が、分離された混合物から除かれる。通常、その酸素は、水素と反応して水を生成する。この水素化処理運転の際に、他の副生成物、例えば硫化水素も生成される。再生可能な炭化水素留出物中には、あるならば、最小量の硫黄が存在することが望ましいため、中間水素化処理装置供給物からの有機硫黄の除去は重要である。
  1又は複数基の分留装置中で、脱酸素後のストリームから、沸点が約700°F以下である2種以上の炭化水素留出物のフラクションを分離してよい。これらフラクションは、一般的に約150乃至約350°Fの沸点を持つナフサストリームと、約320乃至約700°Fの沸点を持つ炭化水素留出物とであってもよい。ディーゼル燃料は、後者の炭化水素留出物に由来する。通常、この炭化水素留出物中の酸素の量は、0.5wt%未満である。通常、この炭化水素留出物中の硫黄の量は、25重量百万分率(ppmw)未満である。
  ディーゼル燃料組成物を得るためにディーゼル燃料に混合される再生可能な炭化水素留出物は、リグノセルロースの熱触媒的変換で得た油を水素化処理して得られる改質油(upgraded oil)から製造されることが好ましい。
  使用可能な再生可能な炭化水素留出物には、5乃至9の二重結合等量を持つ1又は複数種の炭化水素が含まれる。通常、再生可能な炭化水素留出物の約10乃至約50体積パーセント、好ましくは20乃至約35体積パーセントは、5乃至9の二重結合等量を持つ1又は複数種の炭化水素からなっている。
  ある好ましい実施様態においては、再生可能な炭化水素留出物は、少なくとも1種のテトラリン又はアルキルテトラリン(好ましくは、少なくとも1種のC1−C5アルキルテトラリン)を含んでいる。再生可能な炭化水素留出物は、1又は複数種のテトラリン又はアルキルテトラリン類に加えてさらに、ジヒドロアントラセン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロナフタレン及びこれらのアルキル誘導体から選ばれる化合物を含んでもよい。留出物は、通常約10乃至50体積パーセントの、より一般的には約30乃至約35%のテトラリンとアルキルテトラリン類(まとめて「テトラリン類」)を含んでいる。ある代表的な再生可能な炭化水素留出物は、例えば、約50体積パーセントのシクロパラフィン類、16体積パーセントのアルキルベンゼン類、30体積パーセントのインダン類及びテトラリン類を含んでいる。ディーゼル燃料組成物中の再生可能な炭化水素留出物の量が、ディーゼル燃料組成物の約5体積パーセントである場合、通常、ディーゼル燃料組成物は約1乃至約1.5体積パーセントのテトラリン類を含んでいる。ディーゼル燃料組成物が、約25体積パーセントの再生可能な炭化水素留出物を含んでいる場合、ディーゼル燃料組成物中のテトラリン類の量は、約5乃至約20体積パーセントである。
  存在する場合には、ディーゼル燃料組成物中のジヒドロアントラセン類、ジヒドロフェナントレン類、及び/又はジヒドロナフタレン類、又はアルキル化誘導体の量は、0.5体積パーセント未満である。
  ディーゼル燃料組成物は、ディーゼル燃料に再生可能な炭化水素留出物を添加することで製造されてよい。ディーゼル燃料組成物は、ASTM  D975のディーゼル燃料規格を満たす。通常、ディーゼル燃料組成物のセタン価は、約40乃至約50である。ディーゼル燃料組成物中の酸素含量は、通常0.05重量パーセント以下である。ディーゼル燃料組成物中の硫黄含量は、通常0.0015重量パーセント以下である。
  通常、本明細書に記載のディーゼル燃料組成物の使用により減少するPAH排気物質の量は、上述した石油系ディーゼル燃料の希釈で期待される量の少なくとも2倍である。多くの場合、本明細書に記載のディーゼル燃料組成物の使用により減少するPAH排気物質の量は、再生可能な炭化水素留出物を含めないで石油系ディーゼル燃料を用いた場合の5倍以上である。
  フォード6.7Lのディーゼルエンジンを用いる試験運転で、ディーゼル燃料組成物がちょうど5体積パーセントの再生可能な炭化水素留出物を含む場合、排気中のPAHの減少量は、後処理なしで(即ち、後処理装置、例えば触媒コンバータや粒子トラップ等を使用せずに)平均12体積パーセントであった。これは、石油系ディーゼル燃料の単純な希釈で期待される量の2倍よりも大きい。また、ディーゼル燃料組成物が、5体積パーセントの再生可能な炭化水素留出物を含んでおり、後処理装置がある場合、排気中の減少したPAHの量は、平均30体積パーセントであることがわかった。これは、単純な希釈で期待される量の6倍よりも大きい。このエンジンからのPAH排気物質削減により、既存の後処理装置の実用寿命がさらに延びることが期待される。
  特定の理論に束縛されるものではないが、PAHの削減は、再生可能な炭化水素留出物中に求電子性水素供与体が存在することに起因しているかも知れないと考えられ、以下の反応の一方又は両方が起こっているようである。
  PAH+アルキルテトラリン→テトラヒドロ−PAH+アルキルナフタレン  (I);
及び
  2PAH+アルキルテトラリン→2ジヒドロ−PAH+アルキルナフタレン  (II)
  再生可能な炭化水素留出物と混合されてよいディーゼル燃料は、フィッシャートロプシュ処理で得られたものであっても、水素化処理されたエステル又は脂肪酸から、原油精製又は粗製石油源の水素化処理で得られたものであってもよい。石油系ディーゼル燃料は、ディーゼルNo.1又はディーゼルNo.2であってよい。[石油系ディーゼル燃料は、通常、大気圧で沸点が約480°F乃至約660°Fのフラクションを集めて得られた原油留出物である。本明細書では、「ディーゼルNo.1」と「ディーゼルNo.2」は、それぞれこのフラクションの低沸点成分と高沸点成分から得られた燃料を言う。]  これらの石油系燃料は、単独で用いても、所望なら任意の組合せで用いてよい。さらに、それは、ディーゼル燃料成分の混合物を含んでもよい。[通常、ディーゼル燃料成分は、液状炭化水素中間留出物燃料油を含み、例えば石油系ジェット又はタービン燃料、自動車燃料、鉄道ディーゼル燃料、加熱油、あるいはガス油を含む。通常、これらは、グレードと用途により変動するが、概ね約300°F乃至約750°Fの範囲の沸点を持つ。]
  ディーゼル燃料組成物中の再生可能な炭化水素留出物の量は、通常、約0.1乃至約55体積パーセントであり、より一般的には、約3乃至約30体積パーセント、更に一般的には約5乃至約25体積パーセントである。
  バイオオイル、水素化処理バイオオイル、分画された水素化処理ストリーム、ディーゼル燃料、及び/又はディーゼル燃料組成物は、同一の製油所、プラント又は施設内で製造されてよい。或いは、これらの工程は、異なるプラントで行われてよい。例えば、石油系ディーゼル燃料は、石油系製油所、石油系燃料保管施設、又は石油系燃料輸送システムで製造されてよい。石油系ディーゼル燃料を再生可能な炭化水素留出物と混合するために、留出物混合システムを用いてもよい。故に、このような場合、本明細書に記載のプロセスは、より包括的な工学デザインの一部であってよい。
  以下の実施例は、本発明の実施様態の幾つかを説明するものである。本発明の請求項の範囲内の他の実施様態は、本明細書中の記述を考察することで、当業者には明らかとなろう。本明細書は、またその実施例は、例示であると考えられるべきものであり、本発明の範囲と精神は、添付の特許請求の範囲に示されるものである。
  実施例では、エンジンアウト(排気後処理あり)とエンジンアウト(後処理前)の関数として、車両排気物質を実証する。前者では、車両のディーゼル酸化触媒と他の排出コントロール装置(排ガス再循環、粒子フィルタ、及び選択的触媒還元触媒)に排気物質をかけた。後者では、排気制御を行わなかった。これらの試験は、エンジンスタンドにあるエンジンを用いて行った。
  リグノセルロース材料由来のバイオオイルを水素化処理して得られた、沸点が約320°F乃至約700°Fである再生可能な炭化水素留出物に、石油系ディーゼル燃料を添加した。ディーゼル燃料Aは、5体積パーセントの再生可能な炭化水素留出物を含んでおり、ディーゼル燃料Bは、25体積パーセントの再生可能な炭化水素留出物を含んでいた。各燃料例での多核芳香族炭化水素(PAH)の排出量(ng/bhp−hr)は、2011フォード6.7Lエンジンを用いて、また必要なら、そのフォード車の後処理システムを用いて決定した。
  排気物質の分析は、研究調整評議会(CRC)、EPA、サウスウエスト研究所の分析方法に基づいて行った。これらの方法では、排気物質は、ガスクロマトグラフィと高速液体クロマトグラフィで分析される。PAH粒子を、フルオロカーボンで被覆したガラス繊維フィルタに捕集し、揮発相PAHの捕集には、PUF/XAD/PUFサンドイッチ吸着材トラップを用いた。PUF/XAD/PUFトラップは、1.25インチ厚のポリウレタンフォーム(PUF)層と、0.5インチ厚のXAD−2樹脂層と、第二の1.25インチのPUF層とからなる積層サンプリング媒体を含んでいた。PUF/XAD/PUFトラップを、媒体径が4インチとなるように加工したところ、満足できる流量が可能となり、必要な面速度が保持できた。検出閾値は、0.5ng/hp−hrであった。次いで、試料を抽出と分析にかけた。各フィルタの半分とPUF/XAD/PUF試料材料の全部は、別々に抽出された。抽出の前に、各フィルタに、それぞれ100ngの重水素化PAHを含む内標準溶液を加えた。内標準物質は、試料中の標的PAHの定量に用いられた。次いで、これらのフィルタを、塩化メチレンを用いて10時間ソックスレー抽出し、さらに10時間トルエンで抽出した。PUF/XAD/PUFトラップの場合、上記フィルタに用いた重水素化PAHを同一量で加えた。次いでこれらのトラップ試料を、塩化メチレンを用いて少なくとも16時間ソックスレー抽出した。抽出後、95°Fに維持された水槽を有するロータリーエバボレータを用いて、の塩化メチレン抽出液を20mLまで濃縮した。次いで、濃縮抽出液を、16ml(80%)と4ml(20%)とに二分割した。その80%部を、気化により約0.5mLまで濃縮し、ヘキサンで6mLにまで希釈し、酸洗浄と塩基洗浄を行い、次いで1インチのシリカゲルカラムでカラム分画した。この最後の試料抽出液を気化により100μLまで濃縮し、濃縮試料のPAHを分析した。揮発相PHA用の試料と粒子相PAH用の試料の両方を、内径0.25mm×30mで膜厚が0.25μmのDB−5カラムを用いてGC/MS分析した。PAH化合物の分析は、正イオン/電子イオン化(PI/EI)モードを用いて行われた。
  後処理なしでの排気物質(エンジンアウト)の結果を表Iに、後処理ありでの結果を表IIに示す。
  表Iに示されるように、5体積パーセントの炭化水素留出物の添加で、7種のPAHの内の5種が減少し、25体積パーセントの炭化水素留出物の添加で、PAHの全てが大きく減少した。5体積パーセントの再生可能な炭化水素留出物を用いた場合、平均PAH減少量は約12%であり、25体積パーセントの再生可能な炭化水素留出物を用いた場合、平均PAH減少量は約76体積パーセントであった。5体積パーセント炭化水素留出物を使用した場合に減らなかった二種のPAHは、再生可能な炭化水素留出物の量を25体積パーセントにまで増加させると、およそ62乃至75体積パーセント減少した。表IIから、後処理がある場合、燃料ブレンド中の炭化水素留出物の量が5体積パーセントから25体積パーセントに増加すると、PAHの全てが大きく減少することがわかる。5体積パーセントの再生可能な炭化水素留出物を用いる場合、平均PAH減少量は約30%であった。
  上記結果より、本発明の新概念の真の精神と範囲から外れることなく種々の変形や変更が可能であることは明らかであろう。