しかしながら、特許文献1の治療用超音波アダプタは、治療用超音波振動子への配線を導くために診断用超音波プローブを挿通させる外套管を備えているため、外套管の部分が、長手方向に比較的長い距離にわたって外径寸法の大きくなる領域となってしまい、体腔内への挿入性や操作性が悪くなるという不都合がある。
  本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、外径寸法が長手方向に沿って比較的長い距離にわたって大きくなることを防止し、体腔内への挿入性や操作性を向上することができる治療用超音波アダプタおよび超音波治療装置を提供することを目的としている。
  上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
  本発明の一態様は、体内に挿入可能な挿入部の先端に診断用超音波振動子を備えるとともに、前記挿入部の長手方向に沿って設けられ前記診断用超音波振動子の基端側に開口するチャネルを有する診断用超音波内視鏡に着脱可能に取り付けられるハウジングと、該ハウジングに固定され、該ハウジングが前記診断用超音波内視鏡に取り付けられた状態で、前記診断用超音波振動子の撮像範囲内に配置される焦点に向けて高密度に集束させた治療用超音波を照射する治療用超音波振動子と、該治療用超音波振動子に信号を供給するケーブルとを備え、前記ハウジングに、該ハウジングが前記診断用超音波内視鏡に取り付けられた状態で前記診断用超音波振動子および前記チャネルの開口を露出させる開口部が設けられ、前記治療用超音波振動子に接続する前記ケーブルが、前記開口部に露出している治療用超音波アダプタを提供する。
  本態様によれば、診断用超音波内視鏡の挿入部の先端に、ハウジングを取り付けると、ハウジングに固定された治療用超音波振動子の焦点が、挿入部の先端に設けられた診断用超音波振動子の撮像範囲内に配置される。このとき、ハウジングの開口部からは診断用超音波振動子および挿入部に設けられたチャネルの開口が露出する。そして、開口部には治療用超音波振動子に接続するケーブルが露出するので、そのケーブルを挿入部のチャネルを介して挿入部の基端側に導くことができる。すなわち、ケーブルを挿入部と一体的に導くためのシースを設ける必要がなく、従来シースを配置していた部分の細径化を図り、体腔内への挿入性や操作性を向上することができる。
  上記態様においては、前記ケーブルの前記開口部に露出している基端側に、前記チャネルを介して導かれてきた他のケーブルを接続するコネクタを備えていてもよい。
  このようにすることで、チャネルを介して導かれてきた他のケーブルをコネクタに接続することで、診断用超音波内視鏡の先端に取り付けた治療用超音波振動子への信号供給が可能となる。
  また、上記態様においては、前記コネクタが、前記診断用超音波振動子から発せられる超音波の照射範囲外に配置されていてもよい。
  このようにすることで、コネクタやケーブルによって診断用超音波振動子から発せられる超音波が乱されることを防止することができる。
  また、上記態様においては、前記治療用超音波振動子の超音波照射面を被覆するように配置され、前記診断用超音波内視鏡に着脱可能な着脱部を有するバルーンを備えていてもよい。
  このようにすることで、診断用超音波内視鏡の挿入部の先端にハウジングを取り付ける際に、バルーンの着脱部を診断用超音波内視鏡に取り付け、診断用超音波内視鏡から供給した超音波伝播媒体によってバルーンを膨張させることにより、診断用超音波振動子と生体組織との間のみならず、治療用超音波振動子と生体組織との間にも超音波伝播媒体を満たすことができ、診断および治療用の超音波を生体組織に効率よく照射することができる。
  また、本発明の他の態様は、体内に挿入可能な挿入部の先端に診断用超音波振動子を備える診断用超音波内視鏡の先端に着脱可能に取り付けられるハウジングと、該ハウジングの基端側の前記挿入部に長手方向に沿って取り付けられるシースと、前記ハウジングに固定され、該ハウジングが前記診断用超音波内視鏡に取り付けられた状態で、前記診断用超音波振動子の撮像範囲内に配置される焦点に向けて高密度に集束させた治療用超音波を照射する治療用超音波振動子と、該治療用超音波振動子に信号を供給するケーブルとを備え、前記シースが、前記挿入部を収容する一方向に開放された溝と、前記ケーブルを収容する長手方向に貫通した貫通孔とを有し、前記治療用超音波振動子に接続する前記ケーブルの基端側が、前記シースの基端側に露出している治療用超音波アダプタを提供する。
  本態様によれば、診断用超音波内視鏡の挿入部の先端に、ハウジングを取り付けると、ハウジングに固定された治療用超音波振動子の焦点が、挿入部の先端に設けられた診断用超音波振動子の撮像範囲内に配置される。また、ハウジングの基端側の挿入部には長手方向に沿ってシースが取り付けられることにより、シースの貫通孔に収容されたケーブルを挿入部に沿わせて固定することができる。
  この場合において、シースは一方向に開放された溝に挿入部を収容することにより挿入部に取り付けられているので、挿入部を全周にわたって被覆していない。その結果、溝が開放されている方向にはシースが配置されておらず、その肉厚分だけ外径寸法を小さくすることができ、体腔内への挿入性や操作性を向上することができる。
  また、本発明の他の態様は、上記いずれかの治療用超音波アダプタと、該治療用超音波アダプタを先端に取り付ける前記診断用超音波内視鏡とを備える超音波治療装置を提供する。
  本態様においては、治療用超音波を高密度に集束させて照射する治療用超音波振動子の焦点位置を超音波画像に表示する焦点位置表示手段を有することとしてもよい。
  本発明によれば、外径寸法が長手方向に沿って比較的長い距離にわたって大きくなることを防止し、体腔内への挿入性や操作性を向上することができるという効果を奏する。
  本発明の第1の実施形態に係る治療用超音波アダプタ1および超音波治療装置2について、図面を参照して以下に説明する。
  本実施形態に係る治療用超音波アダプタ1は、図1および図2に示されるように、棒状のハウジング3と、該ハウジング3に固定された治療用超音波振動子4と、該治療用超音波振動子4にパルス信号を供給するケーブル5とを備えている。
  ハウジング3の先端は体内への挿入を容易にするために、滑らかな曲面を有する形状に形成されている。ハウジング3の先端部には、側面から径方向に貫通する貫通孔6が設けられ、該貫通孔6の深さ方向の途中位置に、該貫通孔6を閉塞するように、治療用超音波振動子4が固定されている。
  また、ハウジング3には、その基端面から、貫通孔6の基端側まで軸方向に延びる嵌合孔7が設けられている。嵌合孔7は、後述する診断用超音波内視鏡8(図3参照。)の挿入部9を嵌合可能な内径寸法を有している。また、嵌合孔7は、その先端部分において径方向一方向に開口する開口部10を有している。
  開口部10は、診断用超音波内視鏡8の挿入部9を嵌合孔7に嵌合させた状態で、挿入部9の先端に設けられた診断用超音波振動子11およびチャネル12の開口12aを露出させることができる大きさを有している。診断用超音波の照射範囲外にハウジングを配置するよう、開口部10の側壁の高さH0(図5参照)は、診断用超音波振動子11の照射面11aの高さH1より低くなっており、診断用超音波振動子から発せられる超音波の照射範囲外に配置されている。
  また、嵌合孔7の基端側には、嵌合された診断用超音波内視鏡8の挿入部9を摩擦により取付状態に維持するためのOリング13が設けられている。また、Oリングの代わりに、嵌合孔7の内側にテーパ付ねじ部(図示なし)を設けてかしめることにより、ハウジング部を超音波内視鏡8の挿入部9に取り付けるようにしてもよい。
  治療用超音波振動子4は、円弧板状に形成され、ハウジング3の側方に配置される焦点P(図5参照。)に向けて高密度に集束させた治療用超音波を照射するようになっている。治療用超音波振動子4を貫通孔6の途中位置に配置し、後方(円弧の凸側)に空洞を設けることにより、治療用超音波振動子4から後方に向けて超音波が伝播することを防止し、超音波エネルギを効率的に焦点P方向に向かわせることができるようになっている。
  ケーブル5は、一端が治療用超音波振動子4に接続し、ハウジング3の壁面内を貫通して、他端が開口部10に露出している。開口部10に露出した他端にはコネクタ14が取り付けられている。コネクタ14は、診断用超音波振動子11の超音波照射範囲外に配置される開口部10の先端側の壁面に固定されている。このコネクタ14は、他のケーブル15のコネクタ16を接続することができるようになっている。
  本実施形態に係る治療用超音波アダプタ1を取り付ける診断用超音波内視鏡8の挿入部9の先端の構造を図3に示す。診断用超音波内視鏡8は、先端に診断用超音波振動子11を備え、その基端側にバルーン23(図7参照。)を取り付ける取付溝17が設けられている。取付溝17のさらに基端側には、長手軸に対して傾斜する斜面18が設けられ、該斜面18に、斜め前方を観察するための照明手段19と、対物レンズ20と、挿入部9を長手方向に貫通してきたチャネル12の開口12aとが設けられている。
  取付溝18の先端側にはフランジ部21を隔てて窪む凹部22が設けられ、該凹部22には図示しないバルーン用注液口が設けられている。バルーン用注液口は、挿入部9を長手方向に貫通してきた注液用のチャネル(図示略)の先端開口であり、純水等の超音波伝播媒体を吐出させることができるようになっている。
  このように構成された本実施形態に係る治療用超音波アダプタ1の作用について以下に説明する。
  本実施形態に係る治療用超音波アダプタ1を用いて患者の体内の治療を行うには、ハウジング3の嵌合孔7に診断用超音波内視鏡8の挿入部9を先端から嵌合させていき、先端に設けられた診断用超音波振動子11および斜面18を開口部10から露出させる。
  これにより、診断用超音波内視鏡8を作動させると、診断用超音波振動子11から発せられる超音波を、開口部10を介して治療用超音波アダプタ1の側方に射出させることができる。このとき、図5に示されるように、診断用超音波振動子11からの超音波の照射範囲、すなわち、撮像範囲内に、治療用超音波振動子4の焦点Pが配置される。
  また、照明手段19から発せられる照明光および体内から対物レンズ20に戻る光も、開口部10を介して出入射させることができる。
  このように診断用超音波内視鏡8の挿入部9の先端を治療用超音波アダプタ1のハウジング3の嵌合孔7に嵌合させると、嵌合孔7に配置されたOリング13が挿入部9との間で潰れて、挿入部9の外面に全周にわたって径方向に密着させられ、その摩擦によって治療用超音波アダプタ1が診断用超音波内視鏡8の挿入部9の先端に取付状態に維持される。
  そして、このとき、ハウジング3の開口部10には診断用超音波内視鏡8の斜面18が露出し、該斜面18に設けられたチャネル12の開口12aも露出しているので、図4および図5に示されるように、チャネル12を介して基端側から導入されてきた他のケーブル15のコネクタ16を開口部10に固定されているコネクタ14に接続する。これにより、他のケーブル15およびケーブル14を介して診断用超音波振動子4にパルス信号を送ることができる。
  すなわち、本実施形態に係る治療用超音波アダプタ1によれば、治療用超音波振動子4に信号を供給するためのケーブル5,15が、診断用超音波内視鏡8のチャネル12を介して体外から導かれるので、従来のようにシースによって診断用超音波内視鏡8の挿入部9の外側にケーブル15を這わせる必要がない。その結果、体腔内を貫通する部分の小径化を図ることができ、挿入性および操作性を向上することができるという利点がある。
  次に、本実施形態に係る治療用超音波アダプタ1を診断用超音波内視鏡8に取り付けてなる超音波治療装置2の作動方法について以下に説明する。
  この超音波治療装置2を用いて体内の患部の治療を行うには、まず、経口等から体内に挿入された挿入部9の先端を、照明手段19および対物レンズ20によって得られる光学画像によって患部付近に導く。次いで、この位置で、診断用超音波振動子11を作動させて患部付近の超音波断層像を取得する。
  そして、治療用超音波振動子4を作動させて、弱い出力の集束超音波を間欠的に照射する。これにより、図示しないモニタに表示した超音波画像内に焦点P位置の残像を残すことができ、超音波画像上で焦点P位置を確認することができる。そして、操作者が超音波画像を見ながら焦点P位置を患部に一致させるように調節する。
  焦点Pが患部に一致した状態で、治療用超音波振動子4の出力を高め、高密度に集束された集束超音波を照射することにより、患部の焼灼を行う。このとき、高密度の集束超音波の照射時間を治療用超音波振動子4の仕様から所定の時間になるように予め設定しておき、所定時間経過後に自動的に照射が停止されるようにしておくことが好ましい。そして、超音波画像上での弱い出力の集束超音波による焦点P位置の確認作業と、高密度の集束超音波による患部の焼灼作業とを繰り返すことにより、治療を行うことができる。
  超音波画像上で焦点P位置の確認作業を行うので、診断用超音波内視鏡8への治療用超音波アダプタ1の取り付けは高い位置決め精度が要求されず、多少ずれていても精度よく治療を行うことができる。
  なお、本実施形態においては、コネクタ14を開口部10の先端側の壁面に固定することとしたが、これに限定されるものではなく、他の任意の位置に固定してもよい。特に、開口部10の先端側の壁面から、チャネル12の開口12aまでの間の任意の位置に固定することで、チャネル12の開口12aから露出するケーブル15の長さを短くするようにしてもよい。
  また、図2に示す例では、開口部10が形成されている側壁の端面近傍にコネクタ14を固定しているが、診断用超音波内視鏡8と嵌合孔7との間に十分なスペースが確保できる場合には、側壁の内面側にコネクタ14を配置したり、図6に示されるように、チャネル12の開口12aを覆うように延びる側壁の内面にコネクタ14を配置したりしてもよい。これにより、ケーブル15の露出を最小限に抑えることができる。
  また、本実施形態においては、治療用超音波振動子4から延びるケーブル5の基端側にコネクタ14を設け、診断用超音波内視鏡8のチャネル12を介して導いてきた他のケーブル15のコネクタ16と接続することとしたが、これに代えて、コネクタ接続を行うことなく、治療用超音波振動子4から延びるケーブル5を、直接、診断用超音波内視鏡8のチャネル12を介して体外まで取り出すことにしてもよい。
  また、本実施形態においては、図7に示されるように、治療用超音波振動子4の超音波照射面4aを被覆するように配置されたバルーン23を備えていてもよい。超音波照射面4aに被覆された部分のバルーンは、超音波照射面4aまたはその近傍に接着することにしてもよい。このバルーン23は、ハウジング3の嵌合孔7の開口部10内にまで延び、その端部に、診断用超音波内視鏡8の診断用超音波振動子11に被せられるようにして着脱可能に取り付ける伸縮可能な着脱部24を有していることが好ましい。
  着脱部24を広げて診断用超音波振動子11に被せ、取付溝17において収縮させることにより、診断用超音波内視鏡8に取り付けることができる。これにより、バルーン23内部には診断用超音波振動子11および凹部22のバルーン用注液口が配置されるので、バルーン用注液口から超音波伝播媒体Fをバルーン23内に供給して膨張させることができる。
  その結果、図8に示されるように、生体組織Aと治療用超音波振動子4および診断用超音波振動子11との間に超音波電波媒体Fを満たすことができる。すなわち、超音波振動子4,11の超音波照射面4a,11aから発せられる超音波を生体組織Aに効率的に伝播させて、ノイズの少ない鮮明な超音波断層像を得ることができるとともに、超音波エネルギを効率的に患部に伝播させて、効率的に治療を行うことができる。
  次に、本発明の第2の実施形態に係る治療用超音波アダプタ30について、図面を参照して以下に説明する。
  本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る治療用超音波アダプタ1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
  本実施形態に係る治療用超音波アダプタ1は、図9に示されるように、ハウジング31が、基端側に延びるシース部32を有している点、および、ケーブル5が、開口部10に露出するのではなく、シース部32の基端側に露出している点において第1の実施形態に係る治療用超音波アダプタ1と相違している。
  シース部32は、円管の周方向の一部が切り欠かれた横断面C字状に形成され、切欠の方向に開放された溝32aを有している。この溝32aの内径寸法は診断用超音波内視鏡8の挿入部9の外径寸法より若干大きく構成されている。切欠における溝32aの開口幅は、診断用超音波内視鏡8の挿入部9の外径寸法より若干小さく構成されている。
  本実施形態においては、シース部32は柔軟性を有する材質により構成され、切欠を押し広げるように弾性変形させた状態で、挿入部9を切欠からシース部32の溝32a内に挿入することができるようになっている。
  このように構成された本実施形態に係る治療用超音波アダプタ30の作用について以下に説明する。
  本実施形態に係る治療用超音波アダプタ30を診断用超音波内視鏡8の挿入部9に取り付けて超音波治療装置2を構成するには、挿入部9の先端をハウジング31の嵌合孔7に嵌合させた状態で、挿入部9を径方向に押圧してシース部32の溝32a内に押し込むことによりシース部32を挿入部9の長手方向に沿って取り付ける。シース部32には内部の貫通孔33を貫通してケーブル5が設けられているので、シース部32を挿入部9に取り付けることにより、ケーブル5を挿入部9に長手方向に沿わせるように取り付けることができる。
  この場合において、シース部32は、切欠によって一方向に開口しているので、図10に示されるように、切欠方向には壁面がなく、従来の円管状のシースと比較すると、その肉厚分だけ外径寸法を小さくすることができるという利点がある。これにより、体腔内への挿入性および操作性を向上することができる。
  また、本実施形態に係る治療用超音波アダプタ30によれば、シース部32に設けた切欠から溝32a内に挿入部9を挿入するので、挿入部9を長手方向に挿入していく作業をせずに済む。挿入部9の外径とシース部32の内径とが近接して隙間が少ない場合には、摩擦によって挿入作業が困難となるが、本実施形態によれば、そのような不都合がなく、簡易に組み立てることができるという利点がある。