以下に、本発明を実施するための形態について、図面に依拠して説明する。図1は、本発明に係る医療機関における商材管理システムの構成を示す概略図であり、そこに示されるように該システムは、医療機関A内に配置されて医療に関する商材を種類ごとに区分けして収納するラック1と、医療機関Aにおける手術室2に配置されてラック1から取出される商材に関するデータを、音声及び/又は画像にて出力する選択商材報知手段3とを備えて構成される。ラック1は、手術室2内に配置され、あるいは、手術室2外に配置され、あるいは、複数用意されて手術室2の内外に配置される。
  ラック1は、手術に際して用いられる器材、資材、薬品等の医療に関する商材を収めた商材ケース10を定位置に配置するための複数の棚9を有し、また、本システム全体を制御するコンピュータ(図示してない)が配備される。また、ラック1はその一側面に、そのコンピュータに接続されるディスプレイ11と、収納する商材の少なくとも製造番号及び滅菌期限に関するデータを読み取るデータ読み取り手段とを備える(図2参照)。ディスプレイ11としては、通例、タッチパネル式ディスプレイ11が用いられる。また、ここで用いるデータ読み取り手段としては、各商材に付された当該商材の、少なくとも製造番号及び滅菌期限に関するバーコードデータを読み取るバーコードリーダー12を用いることが簡便で好ましい。
  また、ラック1のコンピュータは、各商材についてのデータを記憶するためのマスタデータ記憶手段を備えると共に、商材(商材ケース10)が棚9から取出される都度、当該商材に関するデータを手術室2内の選択商材報知手段3に出力するための、商材データ出力手段を備える。
  更に好ましい実施形態においては、ラック1は、タッチパネル式ディスプレイ11に近接する位置に、適正操作者を認証するための指紋認証装置13を備える。また、ラック1の各棚9には、取出し選択された商材を収納した商材ケース10を背後又は下方から押して、棚9から少し飛び出るように作用するケース押出機構が配設されると共に、各商材ケース10に対応する位置に表示ランプ14が取り付けられる。各表示ランプ14は、対応する商材ケース10の取出し選択に呼応して点灯したり、点滅したりするようにされる。
  選択商材報知手段3は、ディスプレイ及び/又はスピーカーを含むものであって、医療機関Aの手術室2内に配置される。選択商材報知手段3は、コンピュータのデータ送信手段から送信される、棚9から取出そうとして選択された商材(商材ケース10)に関するデータを受信し、それをディスプレイに画像及び/又は文字で表示し、また、スピーカーから商材名をアナウンスさせる。それにより、手術室2内にいる医師や看護婦等の関係者(以下「スタッフ」とする)が一斉に、取出された商材が適切なものか否かを即座に確認することができるため、誤使用を未然に防止することが可能となる。
  また、他の実施形態においては、コンピュータは、広域ネットワーク5を介して医療機関A外の、例えば、当該商材の納品業者Bに接続され、逐次商材の在庫数等に関するデータを送出する手段を具備する(図3参照)。このようなシステムを構築した場合は、医療機関A側と納品業者B側とで、在庫数、商材の使用経過等のデータを共有することが可能となり、遠隔地において、不正データの確認、マスタデータの更新、医療機関A側からの自動発注、納品業者B側における自動受注、24時間オンライン管理等の実施が可能となる。
  次いで、上記システムにおける処理の流れにつき、図4以下に示すフローチャートを参照しつつ説明する。好ましい実施形態においては、本システムへのログインのために認証が必要とされる。図示した実施形態におけるように指紋認証装置13による認証方法を採用する場合は、本システムに関与する納品業者とスタッフは、本システムに関与するに先立ち、指紋登録をしておく必要がある。この指紋認証装置13による認証処理を経てログイン完了となると、タッチパネル式ディスプレイ11には、商材取出、商材検索、商材補充、数量調整、緊急対応等の操作項目が表示され、そのいずれの操作を行うかの選択要求が表示される。
  先ず、商材補充操作を選択した場合について説明する。この商材補充操作は、使用されて不足している商材を、ラック1の所定位置の商材ケース10内へ収納補充するための操作で、主に納品業者が行うことになる。図4は、商材補充操作における処理の流れを示すフローチャートで、そこに示されるように、その操作に当たっては先ず、選択操作(S101)後、補充しようとする商材に付されている、少なくとも製造番号(LOT)及び滅菌期限・使用期限(UBD)を表わすバーコードを、ラック1のバーコードリーダー12にかざして当該データを読み込ませる(S102)。
  読み込まれたデータはラック1のコンピュータにおいて処理され、マスタデータ記憶手段から当該データに対応する商品コード、商品名等が取得され(S103−YES)、それがタッチパネル式ディスプレイ11に表示される(S104)。マスタデータに当該商材のデータが存在しない場合(S103−NO)は、新規登録をするか否かの指示要求がなされ、登録指示をすると、その商品コード、商品名等がマスタデータに登録されてマスタデータが更新される(S105)。
  納品業者は、ステップS104においてタッチパネル式ディスプレイ11に表示された商材情報が間違いのないものと確認したときは(S106−YES)、タッチパネル式ディスプレイ11において在庫データ登録操作(S107)を行った後、当該商材を所定の商材ケース10内に収納し、当該商材ケース10を、ラック1の適正位置に装填することにより登録完了となる(S108)。登録が完了すると、当該商材の在庫数量が1つインクリメントされる。また、S104においてタッチパネル式ディスプレイ11に表示された商材情報に間違いがあることを確認したときは(S106−NO)、タッチパネル式ディスプレイ11においてキャンセル操作を行う(S109)。
  次いで、商材検索操作を選択した場合につき、図5に示される検索機能フローチャートを参照しつつ説明する。この商材検索操作は、ラック1における所望の商材の存否及び存在箇所の確認のために行われるものである。この操作に際しては先ず、選択操作(S201)後、タッチパネル式ディスプレイ11において、検索対象となる商材を、商品名、メーカー名、種類、サイズのいずれの観点から検索するかの選択画面が表示される(S202)。
  そこにおいて、商品名による検索をすることとして商品名を入力すると(S203)、サイズ選択画面に切り替わり、そこでサイズを指定すると(S204)、マスタデータを参照してそれが存在するか否かの確認処理がなされ、存在することが確認されると(S205−YES)、その検索結果が表示され(S206)、存在することが確認されない場合(S205−NO)には、キャンセル処理がなされる(S207)。
  ステップ(S202)において、メーカー名から検索することとしてメーカー名を入力すると(S208)、種類選択画面に切り替わり、そこにおいて種類(例えば、ステント又はバルーン)を選択すると(S209)、複数の商品名を表示した商品名選択画面が表示される。そこで商品名を選択指定すると(S210)、上記ステップ(S204)のサイズ選択ステップに戻り、以後上記ステップ(S205〜S207)を実行する。
  また、ステップ(S202)において、種類から検索することとして種類を選択指定すると(S211)、メーカー名選択画面に切り替わり、そこにおいてメーカー名を選択指定すると(S212)、複数の商品名を表示した商品名選択画面が表示される。そこで商品名を選択指定すると(S213)、上記ステップ(S204)のサイズ選択ステップに戻り、以後上記ステップ(S205〜S207)を実行する。
  更に、ステップ(S202)において、サイズから検索することとしてサイズを選択指定すると(S214)、種類選択画面に切り替わり、そこにおいて種類(例えば、ステント又はバルーン)を選択すると(S215)、メーカー名選択画面に切り替わり、そこにおいてメーカー名を選択指定すると(S216)、複数の商品名を表示した商品名選択画面が表示される。そこで商品名を選択指定すると(S217)、上記ステップ(S205)の照会画面が表示され、以後上記ステップ(S206、S207)を実行する。
  続いて、商材取出操作を選択した場合につき、図6及び図7に示される取出機能フローチャートを参照しつつ説明する。この商材取出操作は、上記検索機能操作における検索結果表示ステップ(S206)まで共通であるので、それに続くそれ以後のステップについてのみ説明することとする。それ以後のステップは、二度出し防止ステップと、確認補助ステップとから成る。
  図6に示される二度出し防止ステップは、取出そうとしている商材が、既に使用されているものと重複している場合に、重複取出しで問題ないか否かの確認要求のためのステップである。ここにおいては、検索結果表示(S206)に引き続き、重複取出しか否かが判断され(S301)、重複取出しと判断された場合(S301−YES)にはその旨の報知(アラート)がなされる(S302)。重複取出しで問題ない場合は、アラートの解除操作をすることで次ステップに進むことができる。
  重複取出しではなく(S301−YES)、また、アラートの解除がなされた場合は、取出し(出荷)の適・不適の判断がなされ(S303)、適の判断がなされたとき(S303−YES)は、ラック1のケース押出機構に動作信号が送られ、該当する部分の当該ケース押出機構が動作して、該当する商材ケース10を前方に少し押し出し(S304)、また同時に、表示ランプ14が点灯又は点滅する。かくして操作者は、取出すべき商材が収納されたラック1を直ちに且つ誤りなく把握することができる。また、取出し不適の判断がなされた場合(S303−NO)は、キャンセル処理がなされる(S305)。
  図7に示される確認補助ステップは、上記二度出し防止ステップの商材押出ステップ(S304)に続くもので、商材押出ステップ(S304)が実行されると、当該商材のデータが、ラック1のコンピュータのデータ送信手段から、医療機関Aの手術室2内に配置されている選択商材報知手段3に送られる(S401)。選択商材報知手段3においては、この棚9から取出された商材(商材ケース10)に関するデータをディスプレイに画像及び/又は文字で表示し(S402)、また、スピーカーから当該商材名をアナウンスさせる(S403)。
  かくして手術室2内にいるスタッフは、取出そうとされている商材が適切なものか否かを眼と耳とで即座に確認することができる(S404)。そして、それが所望の商材であることが確認された場合(S404−YES)は、在庫数減少計算がなされてマスタデータが更新され(S405)、それが所望の商材ではないことが確認された場合(S404−NO)は、返却処理がなされる(S406)。
  本発明に係るシステムは上記のとおりであって、該システムによれば、在庫数量を含む各商材に関するデータがマスタデータに記憶され、各商材の補充、取出しに伴って逐次マスタデータの更新がなされるため、各商材の在庫管理が容易であり、特に、ラック1から取出された商材に関するデータが、手術室2に配備されている選択商材報知手段13によって逐次音声及び/又は画像にて出力されるため、手術室2内のスタッフ全員が当該商材の適否を確認することができ、以て、商材の誤使用等の発生を確実に防止すると共にその安全使用を確保し、誤使用等に伴う無駄なコストの発生を抑止することが可能となる。
  また、本システムを採用することにより、納入業者は医療機器の立会に関する基準を遵守することが可能となり、医療機関の現場スタッフにとっても、医療材料の在庫管理、使用履歴管理等が容易となり、商材の二度出し回避によるコスト削減(患者の医療費負担増の防止)が図れる。