まず、本発明の縮合多環化合物について説明する。
  本発明の縮合多環化合物は、下記一般式(1)〜(5)のいずれかで表される。
  前記一般式(1)〜(5)において、X1、X2は互いに独立して、−N(R1)−、−C(R2)(R3)−、−C(=O)−、−N[−L1−A1(−A2)q]−、酸素原子、硫黄原子、−S(=O)−又は−SO2−を表し、好ましくは、互いに独立して、−N(R1)−、−N[−L1−A1(−A2)q]−、酸素原子又は硫黄原子であり、さらに好ましくは、−N(R1)−、−C(R2)(R3)−、−N[−L1−A1(−A2)q]−又は酸素原子である。
  X3、X4は互いに独立して、単結合、−N(R4)−、−C(R5)(R6)−、−C(=O)−、−N[−L2−A3(−A4)r]−、酸素原子、硫黄原子、−S(=O)−又は−SO2−を表し、好ましくは、互いに独立して、単結合、−N(R4)−、−C(R5)(R6)−又は−C(=O)−である。ただし、X3、X4が同時に単結合を表す場合は無い。
  Y1〜Y10は互いに独立して、C(R7)もしくは窒素原子を表し、好ましくは、Y1〜Y10のうち、8個以上がC(R7)であり、さらに好ましくは、9個以上がC(R7)である。複数のC(R7)は互いに同一であっても異なっていてもよい。
  R1〜R7は互いに独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルコキシ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルシリル基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールシリル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数12〜20の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の非縮合芳香族炭化水素環基、環形成炭素数10〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環基、又は環形成炭素数1〜30の置換もしくは無置換の複素環基を表す。また、炭素数12〜20の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基が前記より除かれる場合が好ましい。さらには、R1〜R7としては、互いに独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基もしくは環形成炭素数6〜18の置換もしくは無置換の非縮合芳香族炭化水素環基であることが好ましく、特に、メチル基もしくはフェニル基であることが好ましい。
  本発明の縮合多環化合物が、前記一般式(5)で表わされる場合、R5、R6は互いに独立して、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルコキシ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルシリル基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールシリル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数12〜20の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、環形成炭素数10〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環基、又は環形成炭素数1〜30の置換もしくは無置換の複素環基を表すことが好ましい。
  また、本発明の縮合多環化合物が、前記一般式(2)もしくは(4)で表され、X3が−C(R5)(R6)−を、X4が単結合をそれぞれ表す場合、R5、R6は互いに独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルコキシ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルシリル基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールシリル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数12〜20の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、環形成炭素数12〜30の置換もしくは無置換の非縮合芳香族炭化水素環基、環形成炭素数10〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環基、環形成炭素数1〜30の置換もしくは無置換の複素環基(ただし、トリアジン環を除く)を表すことが好ましい。
  R1〜R7について具体例を以下に示す。
  前記炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1−ヘプチルオクチル基、3−メチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、3,5−テトラメチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
  前記炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜4)のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
  前記炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜4)のハロアルキル基としては、例えば、前記炭素数1〜20のアルキル基の水素原子の1つ以上がハロゲン原子で置換されたものが挙げられ、炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜4)のハロアルコキシ基としては、例えば、前記炭素数1〜20のアルコキシ基の水素原子の1以上がハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。
  前記炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜4)のアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ジメチルブチルシリル基、ジメチルターシャリーブチルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基などが挙げられる。
  前記炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜12)の置換もしくは無置換のアリールシリル基としては、例えば、フェニルジメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジフェニルターシャリーブチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる。
  前記炭素数2〜20(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基などが挙げられる。
  前記炭素数12〜20の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基としては、例えば、ジフェニルアミノ基、N−フェニル−N−(1−ナフチル)アミノ基、N−フェニル−N−(2−ナフチル)アミノ基などが挙げられる。
  前記環形成炭素数6〜30(好ましくは環形成炭素数6〜24、さらに好ましくは環形成炭素数6〜18)の置換もしくは無置換の非縮合芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基などが挙げられる。
  前記環形成炭素数10〜30(好ましくは環形成炭素数10〜20)の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環基としては、例えば、ナフチル基、フェナントリル基、ナフタセニル基、ピレニル基、ベンゾフェナントリル基、ジベンゾフェナントリル基、ベンゾクリセニル基、ジベンゾクリセニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾトリフェニレニル基、ジベンゾトリフェニレニル基、ピセニル基、ベンゾピセニル基、ジベンゾピセニル基、フルオレニル基などが挙げられる。
  前記環形成炭素数1〜30(好ましくは環形成炭素数2〜18、さらに好ましくは環形成炭素数3〜15)の置換もしくは無置換の複素環基としては、ピロリル基、ピラジニル基、ピリジニル基、インドリル基、イソインドリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、チエニル基、及びピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、ピロリジン環、ジオキサン環、ピペリジン環、モルフォリン環、ピペラジン環、カルバゾール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、イソキサゾール環、オキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラン環、ジベンゾフラン環、ジヒドロアクリジン環、フェノキサジン環、テトラジン環、アザトリフェニレン環、カルボリン環、イミダゾピリジン環から形成される芳香族複素環基や非芳香族複素環基が挙げられる。
  L1、L2は、互いに独立して、単結合、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の二価の非縮合芳香族炭化水素環基、環形成炭素数10〜30の置換もしくは無置換の二価の縮合芳香族炭化水素環基、又は環形成炭素数1〜30の置換もしくは無置換の二価の複素環基を表す。
  L1、L2は、好ましくは、単結合、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の二価の非縮合芳香族炭化水素環基、又は環形成炭素数10〜30の置換もしくは無置換の二価の縮合芳香族炭化水素環基である。
  L1、L2の具体例としては、R1〜R7として挙げられた対応する基を二価基としたものが挙げられる。
  A1、A3は互いに独立して、炭素数1〜20の置換もしくは無置換の飽和脂肪族炭化水素化合物、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の非縮合芳香族炭化水素化合物、環形成炭素数10〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素化合物、又は環形成炭素数1〜30の置換もしくは無置換の複素環化合物のq+1価又はr+1価の残基を表す。
  A1、A3は、好ましくは、置換もしくは無置換のベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、フェナントレン、ナフタセン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、トリフェニレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、カルバゾール又はジベンゾフランから形成される残基である。
  A2、A4は互いに独立して、環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の非縮合芳香族炭化水素環基、環形成炭素数10〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環基、又は環形成炭素数1〜30の置換もしくは無置換の複素環基を表し、それぞれ、上述の非縮合芳香族炭化水素化合物、縮合芳香族炭化水素化合物、又は複素環化合物から形成される1価の基が用いられる。
  A2、A4は、好ましくは、置換もしくは無置換のベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、フェナントレン、ナフタセン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、トリフェニレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、カルバゾール又はジベンゾフランから形成される基である。
  前記環形成炭素数6〜30の置換もしくは無置換の非縮合芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニルなどが挙げられる。
  前記環形成炭素数10〜30の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ナフタレン、フェナントレン、ナフタセン、ピレン、ベンゾフェナントレン、ジベンゾフェナントレン、ベンゾクリセン、ジベンゾクリセン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、トリフェニレン、ベンゾトリフェニレン、ジベンゾトリフェニレン、ピセン、ベンゾピセン、ジベンゾピセンなどが挙げられる。
  前記環形成炭素数1〜30の置換もしくは無置換の複素環化合物としては、ピロール、ピラジン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドール、イソインドール、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、カルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、チオフェン、ピロリジン、ジオキサン、ピペリジン、モルフォリン、ピペラジン、オキサゾール、イソキサゾール、オキサジアゾール、ベンゾオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピラン、ジベンゾフラン、ジヒドロアクリジン、フェノキサジン、テトラジン、アザトリフェニレン、カルボリン、イミダゾピリジンなどが挙げられる。
  q、rは互いに独立して0〜10の整数を表し、好ましくは、互いに独立して、0〜5であり、より好ましくは2〜5である。
  前記した各基が置換基を有する場合の置換基としては、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜4)の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜4)の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のハロアルキル基、炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜4)の置換もしくは無置換のハロアルコキシ基、炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜4)の置換もしくは無置換のアルキルシリル基、炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜12)の置換もしくは無置換のアリールシリル基、炭素数2〜20(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数12〜20の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、環形成炭素数6〜30(好ましくは環形成炭素数6〜18)の置換もしくは無置換の非縮合芳香族炭化水素環基、環形成炭素数10〜30(好ましくは環形成炭素数10〜20)の置換もしくは無置換の縮合芳香族炭化水素環基、環形成炭素数1〜30(好ましくは環形成炭素数3〜18)の置換もしくは無置換の複素環基が挙げられ、その具体的例示は、前記に従う。ただし、炭素数12〜20の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基は除かれることが好ましい。
  本発明の縮合多環化合物の分子量は3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1500以下であることがさらに好ましい。
  また、本発明の縮合多環化合物からは、以下の化合物は除かれる。
  本発明の縮合多環化合物としては、前記一般式(1)、(2)又は(3)で表わされるものが好ましい。
  また、本発明の縮合多環化合物としては、より具体的には以下の規定を満たすものが挙げられる。
  前記一般式(1)〜(5)において、X1、X2が互いに独立して、−N(R1)−、−C(R2)(R3)−、−C(=O)−、−N[−L1−A1(−A2)q]−、酸素原子、又は硫黄原子を表し、(ただし、X1及びX2の少なくとも一方は−N[−L1−A1(−A2)q]−を表す。)
  X3、X4が互いに独立して、単結合、−N(R4)−、−C(R5)(R6)−、−C(=O)−、酸素原子、又は硫黄原子を表し、(ただし、X3及びX4が同時に単結合を表わすことは無い。)
  Y1〜Y10は互いに独立して、C(R7)を表し、
  R1〜R7は互いに独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、
  L1、L2は互いに独立して、単結合、又は環形成炭素数6〜30の二価の非縮合芳香族炭化水素環基、又は環形成炭素数10〜30の置換もしくは無置換の二価の縮合芳香族炭化水素環基を表し、
  A1、A3は互いに独立して、環形成炭素数6〜30の非縮合芳香族炭化水素化合物、環形成炭素数10〜30の縮合芳香族炭化水素化合物、又は環形成炭素数1〜30の複素環化合物のq+1価又はr+1価の残基を表し、
  A2、A4は、環形成炭素数6〜30の非縮合芳香族炭化水素環基、環形成炭素数10〜30の縮合芳香族炭化水素環基、又は環形成炭素数1〜30の複素環基を表し、
  qは0〜5の整数を表し、好ましくは2〜5の整数を表す。
  上記一般式(1)〜(5)において、X1及びX2が互いに異なる二価基であることが好ましく、より具体的には、X1及びX2の一方のみが−N[−L1−A1(−A2)q]−を表し、他方が−N(R1)−、−C(R2)(R3)−、−C(=O)−、酸素原子、又は硫黄原子を表すか、もしくは、互いに独立したX1、X2が−N[−L1−A1(−A2)q]−を表すがそれが同一でない場合、共に縮合多環化合物の分子構造の対称性が低くなるため、結晶化の観点から好ましい。
  X1及びX2が互いに異なる二価基である本発明の縮合多環化合物の例としては、以下に示す化合物が挙げられる。
  一般式(1)〜(5)で表される本発明の縮合多環化合物としては、以下に示す部分構造を有し、かつ、A
1〜A
4の少なくともいずれか(より好ましくは全て)が置換もしくは無置換のベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、フェナントレン、ナフタセン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、トリフェニレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、カルバゾール、又はジベンゾフランから形成される残基であることが好ましい。
  尚、下記部分構造を有する本発明の縮合多環化合物は、前記一般式(1)〜(5)で表される構造を部分的に有するものであって、ベンゼン環の各環形成炭素上のR
7は、水素原子以外の前述の各種置換基であってもよい。
  前記一般式(1)〜(5)で表される本発明の縮合多環化合物の具体例を以下に示すが、本発明の化合物はこれらの例示化合物に限定されるものではない。
  本発明の縮合多環化合物は有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として有用であり、これを用いた本発明の有機EL素子は、発光効率が高く、長寿命を有している。
  次に、本発明の有機EL素子用材料及び有機EL素子について説明する。
  本発明の有機EL素子用材料は、前述した本発明の縮合多環化合物を含むことを特徴とし、本発明の有機EL素子は、陰極と陽極の間に発光層を含む複数の有機薄膜層を有し、前記有機薄膜層のうちの少なくとも1層が前記有機EL素子用材料を含むことを特徴とする。
  前記縮合多環化合物は、本発明の有機EL素子の有機薄膜層のうち、少なくとも一層に含有される。特に前記縮合多環化合物は発光層におけるホスト材料又は電子輸送層、正孔輸送層に係る材料として用いた場合、素子の高発光効率、長寿命化が期待できる。
<第1の実施形態>
  多層型の有機EL素子の構造としては、例えば、陽極/正孔輸送層(正孔注入層)/発光層/陰極、陽極/発光層/電子輸送層(電子注入層)/陰極、陽極/正孔輸送層(正孔注入層)/発光層/電子輸送層(電子注入層)/陰極、陽極/正孔輸送層(正孔注入層)/発光層/正孔障壁層/電子輸送層(電子注入層)/陰極、等の多層構成で積層したものが挙げられる。
  本発明の有機EL素子において、前記発光層が、本発明の縮合多環化合物をホスト材料として含有すると好ましい。また、前記発光層が、ホスト材料と燐光発光材料からなり、該ホスト材料が前記縮合多環化合物であると好ましい。
  また、本発明の縮合多環化合物は、燐光発光材料と共に用いるホスト材料または燐光発光材料と共に用いる電子輸送材料であっても良く、3重項のエネルギーギャップが2.2〜3.2eVであると好ましく、2.5〜3.2eVであるとより好ましい。
  燐光発光材料としては、燐光量子収率が高く、発光素子の外部量子効率をより向上させることができるという点で、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)又は白金(Pt)を含有する化合物であると好ましく、イリジウム錯体、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、白金錯体等の金属錯体であるとさらに好ましく、中でもイリジウム錯体及び白金錯体がより好ましく、イリジウム,オスミウムOs、白金Ptから選択される金属原子のオルトメタル化錯体が最も好ましい。イリジウム錯体、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、白金錯体等の金属錯体の具体例を以下に示す。
  また、本発明の有機EL素子は、前記発光層が、ホスト材料と燐光発光材料を含有し、且つ、発光波長の極大値が450nm以上720nm以下である金属錯体を含有すると好ましい。
  本発明の有機EL素子は、前記陰極と有機薄膜層(例えば電子注入層や発光層など。)との界面領域に還元性ドーパントを有することが好ましい。還元性ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ金属錯体、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属錯体、アルカリ土類金属化合物、希土類金属、希土類金属錯体、及び希土類金属化合物等から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
  アルカリ金属としては、仕事関数が2.9eV以下である、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)、Cs(仕事関数:1.95eV)等が好ましく挙げられる。これらのうち、より好ましくはK、Rb、Csであり、さらに好ましくはRb又はCsであり、最も好ましくはCsである。
  アルカリ土類金属としては、仕事関数が2.9eV以下である、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0〜2.5eV)、Ba(仕事関数:2.52eV)等が好ましく挙げられる。
  希土類金属としては、仕事関数が2.9eV以下である、Sc、Y、Ce、Tb、Yb等が好ましく挙げられる。
  以上の金属のうち好ましい金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が可能である。
  アルカリ金属化合物としては、Li2O、Cs2O、K2O等のアルカリ酸化物、LiF、NaF、CsF、KF等のアルカリハロゲン化物等が挙げられ、これらの中でも、LiF、Li2O、NaFが好ましい。
  アルカリ土類金属化合物としては、BaO、SrO、CaO及びこれらを混合したBamSr1-mO(0<m<1)、BamCa1-mO(0<m<1)等が挙げられ、これらの中でも、BaO、SrO、CaOが好ましい。
  希土類金属化合物としては、YbF3、ScF3、ScO3、Y2O3、Ce2O3、GdF3、TbF3等が挙げられ、これらの中でも、YbF3、ScF3、TbF3が好ましい。
  アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、希土類金属錯体としては、それぞれ金属イオンとしてアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンの少なくとも一つ含有するものであれば特に限定はない。また、配位子にはキノリノール、ベンゾキノリノール、アクリジノール、フェナントリジノール、ヒドロキシフェニルオキサゾール、ヒドロキシフェニルチアゾール、ヒドロキシジアリールオキサジアゾール、ヒドロキシジアリールチアジアゾール、ヒドロキシフェニルピリジン、ヒドロキシフェニルベンゾイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフルボラン、ビピリジル、フェナントロリン、フタロシアニン、ポルフィリン、シクロペンタジエン、β−ジケトン類、アゾメチン類、及びそれらの誘導体などが好ましいが、これらに限定されるものではない。
  還元性ドーパントの添加形態としては、界面領域に層状又は島状に形成すると好ましい。形成方法としては、抵抗加熱蒸着法により還元性ドーパントを蒸着しながら、界面領域を形成する発光材料や電子注入材料である有機物を同時に蒸着させ、有機物中に還元性ドーパントを分散する方法が好ましい。分散濃度は、モル比で、有機物:還元性ドーパント=100:1〜1:100が好ましく、5:1〜1:5がより好ましい。
  還元性ドーパントを層状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を層状に形成した後に、還元ドーパントを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは層の厚み0.1〜15nmで形成する。
  還元性ドーパントを島状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を島状に形成した後に、還元ドーパントを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは島の厚み0.05〜1nmで形成する。
  本発明の有機EL素子は、発光層と陰極との間に電子注入層を有する場合、該電子注入層に用いる電子輸送材料としては、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する芳香族ヘテロ環化合物が好ましく、特に含窒素環誘導体が好ましい。
  この含窒素環誘導体としては、例えば、下記一般式(A)で表される含窒素環金属キレート錯体が好ましい。
  R2〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、炭素数1〜40の炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、又は複素環基を表し、これらは置換されていてもよい。
  Mは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)であり、インジウムであることが好ましい。
  式(A)のL4は、下記式(A’)又は(A’’)で表される基である。
(式中、R8〜R12は、それぞれ独立して、水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1〜40の炭化水素基を示し、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。また、R13〜R27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1〜40の炭化水素基を示し、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。)
  含窒素複素環誘導体としては、以下の一般式を有する有機化合物からなる含窒素複素環誘導体であって、金属錯体でない含窒素化合物も挙げられる。例えば、(a)に示す骨格を含有する5員環もしくは6員環や、式(b)に示す構造のものが挙げられる。
  (式(b)中、Xは炭素原子もしくは窒素原子を表す。Z1ならびにZ2は、それぞれ独立に含窒素ヘテロ環を形成可能な原子群を表す。)
  好ましくは、5員環もしくは6員環からなる含窒素芳香多環族を有する有機化合物。さらには、このような複数窒素原子を有する含窒素芳香多環族の場合は、上記(a)と(b)もしくは(a)と(c)を組み合わせた骨格を有する含窒素芳香多環有機化合物。
  含窒素有機化合物の含窒素基は、例えば、以下の一般式で表される含窒素複素環基から選択される。
  (各式中、R28は、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、nは0〜5の整数であり、nが2以上の整数であるとき、複数のR28は互いに同一又は異なっていてもよい。)
  さらに、好ましい具体的な化合物として、下記式で表される含窒素複素環誘導体が挙げられる。
(式中、HAraは、置換基を有していてもよい炭素数3〜40の含窒素複素環であり、L6は単結合、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のアリーレン基又は置換基を有していてもよい炭素数3〜40のヘテロアリーレン基であり、Arbは置換基を有していてもよい炭素数6〜40の2価の芳香族炭化水素基であり、Arcは置換基を有していてもよい炭素数6〜40のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数3〜40のヘテロアリール基である。)
  HAraは、例えば、下記の群から選択される。
  L6は、例えば、下記の群から選択される。
  Arcは、例えば、下記の群から選択される。
  Arbは、例えば、下記のアリールアントラニル基から選択される。
(式中、R29〜R42は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のアリール基又は炭素数3〜40のヘテロアリール基であり、Ardは、置換基を有していてもよい炭素数6〜40のアリール基又は炭素数3〜40のヘテロアリール基である。)
  また、上記式で表されるArbにおいて、R29〜R36は、いずれも水素原子である含窒素複素環誘導体が好ましい。
  この他、下記の化合物(特開平9−3448号公報参照)も好適に用いられる。
(式中、R43〜R46は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは未置換の脂肪族基、置換もしくは未置換の脂肪族式環基、置換もしくは未置換の炭素環式芳香族環基、置換もしくは未置換の複素環基を表し、X1、X2は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子もしくはジシアノメチレン基を表す。)
  また、下記の化合物(特開2000−173774号公報参照)も好適に用いられる。
  式中、R47、R48、R49及びR50は互いに同一の又は異なる基であって、下記式で表わされるアリール基である。
(式中、R51、R52、R53、R54及びR55は互いに同一の又は異なる基であって、水素原子、或いはそれらの少なくとも1つが飽和または不飽和アルコキシル基、アルキル基、アミノ基又はアルキルアミノ基である。)
  さらに、該含窒素複素環基もしくは含窒素複素環誘導体を含む高分子化合物であってもよい。
  また、電子輸送層は、下記一般式(201)〜(203)で表される含窒素複素環誘導体の少なくともいずれか1つを含有することが好ましい。
  式(201)〜(203)中、R56は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいキノリル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基で、nは0〜4の整数であり、R57は、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいキノリル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、R58及びR59は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいキノリル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基であり、L7は、単結合、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリーレン基、置換基を有していてもよいピリジニレン基、置換基を有していてもよいキノリニレン基又は置換基を有していてもよいフルオレニレン基であり、Areは、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリーレン基、置換基を有していてもよいピリジニレン基又は置換基を有していてもよいキノリニレン基であり、Arfは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいキノリル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基である。
  Argは、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいキノリル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、又は−Are−Arfで表される基(Are及びArfは、それぞれ前記と同じ)である。
  前記式(201)において、R57は、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいキノリル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。
  これら各基の具体例、好ましい炭素数及び置換基としては、前記Rについて説明したものと同様である。
  前記式(202)及び(203)において、R58及びR59は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリール基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいキノリル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基である。
  これら各基の具体例、好ましい炭素数及び置換基としては、前記R56について説明したものと同様である。
  前記式(201)〜(203)において、L7は、単結合、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリーレン基、置換基を有していてもよいピリジニレン基、置換基を有していてもよいキノリニレン基又は置換基を有していてもよいフルオレニレン基である。
  前記式(201) において、Areは、置換基を有していてもよい炭素数6〜60のアリーレン基、置換基を有していてもよいピリジニレン基又は置換基を有していてもよいキノリニレン基である。Are及びArgの示す各基の置換基としては、それぞれ前記R56について説明したものと同様である。
  また、含窒素環誘導体としては、含窒素5員環誘導体も好ましく挙げられる。該含窒素5員環としては、例えばイミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、オキサトリアゾール環、チアトリアゾール環等が挙げられ、含窒素5員環誘導体としては、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ピリジノイミダゾール環、ピリミジノイミダゾール環、ピリダジノイミダゾール環であり、特に好ましくは、下記一般式(B)で表されるものである。
  一般式(B)中、LBは二価以上の連結基を表し、例えば、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、硫黄原子、金属原子(例えば、バリウム原子、ベリリウム原子)、芳香族炭化水素環、芳香族複素環等が挙げられる。
  前記一般式(B)で表される含窒素5員環誘導体のうち、さらに好ましくは下記一般式(B’)で表されるものが好ましい。
  一般式(B’)中、RB71、RB72及びRB73は、それぞれ一般式(B)におけるRB2と同様である。
  ZB71、ZB72及びZB73は、それぞれ一般式(B)におけるZB2と同様である。
  LB71、LB72及びLB73は、それぞれ連結基を表し、一般式(B)におけるLBの例を二価としたものが挙げられ、好ましくは、単結合、二価の芳香族炭化水素環基、二価の芳香族複素環基、及びこれらの組み合わせからなる連結基であり、より好ましくは単結合である。LB71、LB72及びLB73は置換基を有していてもよく、置換基としては前記一般式(B)におけるLBで表される基の置換基として挙げたものと同様である。
  YBは、窒素原子、1,3,5−ベンゼントリイル基又は2,4,6−トリアジントリイル基を表す。
  電子注入層及び電子輸送層を構成する化合物としては、本発明の縮合多環化合物の他、電子欠乏性含窒素5員環又は電子欠乏性含窒素6員環骨格と、置換又は無置換のインドール骨格、置換又は無置換のカルバゾール骨格、置換又は無置換のアザカルバゾール骨格を組み合わせた構造を有する化合物等も挙げられる。また、好適な電子欠乏性含窒素5員環又は電子欠乏性含窒素6員環骨格としては、例えばピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、トリアゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、キノキサリン、ピロール骨格及び、それらがお互いに縮合したベンズイミダゾール、イミダゾピリジン等の分子骨格が挙げられる。これらの組み合わせの中でも、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン骨格と、カルバゾール、インドール、アザカルバゾール、キノキサリン骨格が好ましく挙げられる。前述の骨格は置換されていてもよいし、無置換でもよい。
  電子注入層及び電子輸送層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。これらの層の材料は、π電子欠乏性含窒素ヘテロ環基を有していることが好ましい。
  また、電子注入層の構成成分として、含窒素環誘導体の他に無機化合物として、絶縁体又は半導体を使用することが好ましい。電子注入層が絶縁体や半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。
  このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲニド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲニドとしては、例えばLi2O、K2O、Na2S、Na2Se及びNa2Oが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲニドとしては、例えばCaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えばLiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えばCaF2、BaF2、SrF2、MgF2及びBeF2等のフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
  また、半導体としては、例えばBa、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnからなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等が挙げられ、これらは一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、電子注入層を構成する無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子注入層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。なお、このような無機化合物としては、例えばアルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
  また、本発明における電子注入層には、前述の還元性ドーパントを好ましく含有させることができる。
  なお、電子注入層又は電子輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは、1〜100nmである。
  正孔注入層又は正孔輸送層(正孔注入輸送層も含む)には芳香族アミン化合物、例えば、一般式(I)で表わされる芳香族アミン誘導体が好適に用いられる。
  一般式(I)において、Ar1〜Ar4は置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50のヘテロアリール基を表す。
  Lは連結基である。具体的には置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリーレン基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜50のヘテロアリーレン基、または、2個以上のアリーレン基もしくはヘテロアリーレン基を単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、アミノ基で結合して得られる2価の基である。
  また、下記一般式(II)の芳香族アミンも正孔注入層または正孔輸送層の形成に好適に用いられる。
  一般式(II)において、Ar1〜Ar3の定義は前記一般式(I)のAr1〜Ar4の定義と同様である。
  本発明の縮合多環化合物は、正孔および電子を輸送する化合物であるため、正孔注入層または輸送層、電子注入層または輸送層にも用いることができる。
  本発明において、有機EL素子の陽極は、正孔を正孔輸送層又は発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。本発明に用いられる陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、金、銀、白金、銅等が適用できる。また陰極としては、電子注入層又は発光層に電子を注入する目的で、仕事関数の小さい材料が好ましい。陰極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金等が使用できる。
  本発明の有機EL素子の各層の形成方法は特に限定されない。従来公知の真空蒸着法、スピンコーティング法等による形成方法を用いることができる。本発明の有機EL素子に用いる、前記縮合多環化合物を含有する有機薄膜層は、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)あるいは溶媒に解かした溶液のディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法による公知の方法で形成することができる。
  本発明の有機EL素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。
<第2の実施形態>
  本実施形態の有機EL素子は、発光層又は発光層を含むユニットを少なくとも2つ有するタンデム素子構成を有する。
  このような有機EL素子では、例えば、2つのユニット間に電荷発生層(CGLとも呼ぶ)を介在させ、ユニット毎に電子輸送帯域を設けることができる。
  このようなタンデム素子構成の具体的な構成の例を以下に示す。
  (11)陽極/正孔注入・輸送層/燐光発光層/電荷発生層/蛍光発光層/電子注入・輸送層/陰極
  (12)陽極/正孔注入・輸送層/蛍光発光層/電子注入・輸送層/電荷発生層/燐光
発光層/陰極
  これらのような有機EL素子において、燐光発光層には本発明の縮合多環化合物および第1実施形態で説明した燐光発光材料を用いることができる。これにより、有機EL素子の発光効率、および素子寿命をさらに向上させることができる。また、陽極、正孔注入・輸送層、電子注入・輸送層、陰極には第1実施形態で説明した材料を用いることができる。また、蛍光発光層の材料としては、公知の材料を用いることができる。そして、電荷発生層の材料としては、公知の材料を用いることができる。
<第3の実施形態>
  本実施形態の有機EL素子は、複数の発光層を備え、複数の発光層のいずれか2つの発光層の間に電荷障壁層を有する。本実施形態にかかる好適な有機EL素子の構成として、特許第4134280号公報、米国公開特許公報US2007/0273270A1、国際公開公報WO2008/023623A1に記載されているような構成が挙げられる。
  具体的には、陽極、第1発光層、電荷障壁層、第2発光層及び陰極がこの順に積層された構成において、第2発光層と陰極の間に三重項励起子の拡散を防止するための電荷障壁層を有する電子輸送帯域を有する構成が挙げられる。ここで電荷障壁層とは隣接する発光層との間でHOMO準位、LUMO準位のエネルギー障壁を設けることにより、発光層へのキャリア注入を調整し、発光層に注入される電子と正孔のキャリアバランスを調整する目的を有する層である。
  このような構成の具体的な例を以下に示す。
  (21)陽極/正孔注入・輸送層/第1発光層/電荷障壁層/第2発光層/電子注入・輸送層/陰極
  (22)陽極/正孔注入・輸送層/第1発光層/電荷障壁層/第2発光層/第3発光層/電子注入・輸送層/陰極
  これらの第1発光層、第2発光層、および第3発光層のうちの少なくともいずれかに本発明の縮合多環化合物および第1実施形態で説明した燐光発光材料を用いることができる。これにより、有機EL素子の発光効率、及び素子寿命を向上させることができる。
  また、例えば、第1発光層を赤色に発光させ、第2の発光層を緑色に発光させ、第3の発光層を青色に発光させることにより、素子全体として白色に発光させることができる。このような有機EL素子は、照明やバックライトなどの面光源として好適に利用できる。
なお、陽極、正孔注入・輸送層、電子注入・輸送層、陰極には第1実施形態で説明した材料を用いることができる。
  また、電荷障壁層の材料としては、公知の材料を用いることができる。
  次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1  化合物Aの合成
  (1)中間体Aの合成
  アルゴン雰囲気下、1,2−フェニレンジアミン10.8g(100mmol)、2−ブロモ安息香酸メチル45.2g(210mmol)、Pd2(dba)33.7g(4mmol)、t−Bu3P−HBF44.6g(16mmol)、ナトリウムt−ブトキシド26.9g(280mmol)を脱水トルエン250mlに加えて、24時間加熱還流攪拌した。さらにトルエン500mlを加えてから、120℃で1時間加熱攪拌し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、中間体A  11.3g(収率30%)を固体として得た。
  アルゴン雰囲気下、中間体A  11.3g(30mmol)、脱水THF200mlを反応容器に加え、−10℃で攪拌した。次いで、1M臭化メチルマグネシウム−THF溶液72mlを滴下で加えた。滴下終了後、−10℃で1時間攪拌し、40℃で8時間攪拌した。反応溶液を氷水に注ぎ、塩化アンモニウム水溶液で中和した後、酢酸エチルを加えて有機相を分離した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、中間体B  4.5g(収率40%)を固体として得た。
  アルゴン雰囲気下、中間体B  4.5g(12mmol)をポリリン酸50mlに加え、室温で24時間攪拌した。水を加え、炭酸水素ナトリウムで中和した後、酢酸エチルを加えて有機相を分離した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、中間体C  2.0g(収率50%)を固体として得た。
  アルゴン雰囲気下、中間体C  2.0g(6mmol)、ヨードベンゼン1.6g(8mmol)、Pd2(dba)30.11g(2mol%)、t−Bu3P−HBF40.14g(8mol%)、ナトリウムt−ブトキシド0.81g(8.4mmol)を脱水トルエン30mlに加えて、24時間加熱還流攪拌した。さらにトルエン300mlを加えてから、120℃で1時間加熱攪拌し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、中間体D  1.0g(収率40%)を固体として得た。
  (5)化合物Aの合成
  アルゴン雰囲気下、中間体D  2.0g(4.8mmol)、2−クロロ−4,6−ジフェニルトリアジン1.93g(7.2mmol)、Pd
2(dba)
30.17g(4mol%)、t−Bu
3P−HBF
40.14g(10mol%)、ナトリウムt−ブトキシド0.65g(6.7mmol)を脱水トルエン60mlに加えて、24時間加熱還流攪拌した。さらにトルエン500mlを加えてから、120℃で1時間加熱攪拌し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物A  1.1g(収率35%)を固体として得た。
FD−MS分析の結果、分子量647に対してm/e=647であった。
  実施例1の条件に従い、化合物Bを合成した。
FD−MS分析の結果、分子量723に対してm/e=723であった。
  実施例1の条件に従い、化合物Cを合成した。
FD−MS分析の結果、分子量722に対してm/e=722であった。
  4−ブロモジベンゾフラン(J.Am.Chem.Soc.2836ページ(1939年)の方法に従い合成)24.7g(100mmol)、アントラニル酸メチル15.9g(105mmol)Pd2(dba)31.8g(2mmol)、t−Bu3P−HBF42.3g(8mmol)、ナトリウムt−ブトキシド13.5g(140mmol)を脱水トルエン200mlに加えて、24時間加熱還流攪拌した。さらにトルエン500mlを加えてから、120℃で1時間加熱攪拌し、不溶物を濾別した。濾液を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、中間体E15.9g(収率50%)を固体として得た。
  アルゴン雰囲気下、中間体E15.9g(50mmol)、脱水THF150mlを反応容器に加え、−10℃で攪拌した。次いで、1M臭化メチルマグネシウム−THF溶液60mlを滴下で加えた。滴下終了後、−10℃で1時間攪拌し、40℃で8時間攪拌した。反応溶液を氷水に注ぎ、塩化アンモニウム水溶液で中和した後、酢酸エチルを加えて有機相を分離した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、中間体F9.5g(収率60%)を固体として得た。
  中間体F9.5g(30mmol)を出発原料として、実施例1の(3)に記載した条件に従うことにより、中間体G3.6g(収率40%)を固体として得た。
  中間体G3.6g(12mmol)を出発原料として、実施例1の(5)に記載した条件に従うことにより、化合物D1.9g(収率30%)を固体として得た。
FD−MS分析の結果、分子量530に対してm/e=530であった。
  2−ブロモジベンゾフランを出発原料として、実施例4に記載の方法と同様にして、化合物Eを固体として得た。
  FD−MS分析の結果、分子量530に対してm/e=530であった。
  中間体K(特開2009−52032公報に記載の方法に従って合成)を出発原料として、実施例4に記載の方法と同様にして、中間体Mまで合成し、中間体Mを固体として得た。
  (2)化合物Fの合成
  水素化ナトリウム(油中60質量%)1.2g(30mmol)、脱水DMF100mlを反応容器に加え、室温で攪拌した。次いで、中間体M  3.4g(10mmol)を反応溶液に加えて、室温で1時間攪拌した。さらに、脱水DMF30mlに溶解した2−クロロ−4,6−ジフェニルトリアジン5.9g(22mmol)を滴下して加えた。室温で6時間、次いで60℃で3時間攪拌した。反応溶液に氷水浴下でゆっくりと水を加えた後、トルエンを加えて有機相を分離した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下で濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物F3.2g(収率40%)を固体として得た。
  FD−MS分析の結果、分子量802に対してm/e=802であった。