[実施形態1]
  図1は中綴じ用ステープラの要部の斜視図であり、図2はその側面図である。この中綴じ用ステープラは、ステープル収納用マガジン1とこのマガジン1から供給されたステープルを被綴り用紙に向けて打ち出すドライバ2を含むマガジンユニット3を支持する上部ブラケット(ドライバ支持部)4と、打ち出されたステープルを折り曲げるクリンチャ5を支持する下部ブラケット(クリンチャ支持部)6とを上下に分離して配置したもので、通常は複写機やプリンタの画像形成装置の後段に設けられる用紙の後処理機としての用紙処理装置に設けられる。なお、ドライバ2はマガジン1の前端部に上下動可能に設けられ、被綴り用紙のクランプ時にはマガジン1とともに作動し、クランプ終了後はマガジンとは独立にステープルの打ち込み作動を行うように構成されている。
  上部ブラケット4は上板部4aと側板部4bと底板部4cとから箱形に形成され、底板部4cにはドライバ2の駆動機構が設けられ、マガジンユニット3が上下方向に回動可能に設けられている。下部ブラケット6は上板部6aと側板部6bとから下向きに開口するコ字形に形成され、クリンチャ5は上板部6aに固定されている。マガジンユニット3とクリンチャ5とは互いに上下に対応する位置に配置されている。
  上部ブラケット4と下部ブラケット6は両側移動機構を介して作動連結されている。すなわち、上部ブラケット4は、前後2本の平行な上部ガイドシャフト7、8にスライド移動可能に設けられ、下部ブラケット6も、前後2本の平行な下部ガイドシャフト9、10にスライド移動可能に設けられている。上部ガイドシャフト7、8と下部ガイドシャフト9、10も互いに平行に配置されている。
  ところで上部ガイドシャフト7、8は、2本ともに上部ブラケット4の側板部4bにほとんど隙間なく嵌合している。これに対し、下部ガイドシャフトのうち後部シャフト10は下部ブラケット6の側板部6bに同様に嵌合しているが、前部シャフト9は側板部6bの前部の縦長貫通孔11に緩やかに挿通している。したがって、下部ブラケット6は、寸法差分だけ後部シャフト10を中心に上下方向に回動することができ、捩りコイルバネ19により常時は前側が図1、図2のように上方端位置にあるように付勢されている。
  また、上部ガイドシャフト7、8と下部ガイドシャフト9、10の後部には、上部ブラケット4と下部ブラケット6とをそれぞれ搬送する上部搬送ベルト13と下部搬送ベルト14が配置され、上部搬送ベルト13と下部搬送ベルト14にはそれぞれ上部ブラケット4と下部ブラケット6が固定されている。上部ブラケット4の上部には固定片15が形成され、この固定片15が上部搬送ベルト13にカシメによって固定されている。下部ブラケット6も同様にして後部に設けられた固定片16を介して下部搬送ベルト14に固定されている。さらに、上部搬送ベルト13と下部搬送ベルト14はそれぞれ同軸に設けられた同径のプーリ17に巻き懸けられている。これにより、プーリ17を回転させることにより、マガジンユニット3側の上部ブラケット4とクリンチャ5側の下部ブラケット6は左右方向に移動するとともに、上部ブラケット4と下部ブラケット6とが同時に同方向に同量だけ移動して常にドライバ2とクリンチャ5の上下の位置関係が同じに保たれるように構成されている。
  なお、下部ブラケット6は捩りコイルバネ19により前部が上方に傾いている。このとき固定片16も傾くが、下部搬送ベルト14は撓むので、固定片16の傾きに追従できる。
  次に、下部ブラケット6の近傍には、下部ガイドシャフトと平行に綴りピッチを決めるロックプレート(位置決め手段)18が下部ブラケット6のスライド方向に沿って配置されている。下部ブラケット6の一方の側板6bの下端には位置決め部として突起20が形成され、ロックプレート18の上縁部にも位置決め部として所定間隔に位置決め溝21が形成されている。位置決め溝21の上端はやや幅広に形成されている。位置決め溝21は被綴り用紙のサイズや綴じ位置などに従って所定の位置に設けられている。
  上記構成によれば、プーリ17を図示しない駆動機構によって駆動して上部ブラケット4と下部ブラケット6とを左右方向にほぼ同量だけ平行にスライド移動させて所定の位置に搬送した後、上部ブラケット4と下部ブラケット6との間に被綴り用紙(図示せず)を差し込んでドライバ駆動機構を作動させると、図3に示されるように、マガジンユニット3が下方に回動してマガジンユニット3とクリンチャ5との間に被綴り用紙をクランプし、さらにマガジンユニット3のドライバがステープルを被綴り用紙に打ち込み、ステープルの脚部の先端はクリンチャ5の溝に当って折り曲げられ、綴り作業が完了する。綴りが終了した後、プーリ17を回転させると、搬送ベルト13、14が移動し、上部ブラケット4と下部ブラケット6とが同時に同方向に同量だけ移動するので、所定の位置でプーリ17の回転を停止させてドライバ駆動機構を作動させることにより、同様にして綴り作業が行われる。
  ところで、上述のように、ドライバ駆動機構が作動してマガジンユニット3が下方に回動してクランプ動作をしたとき、マガジンユニット3のクランプ力は被綴り用紙を介して下部ブラケット6に伝えられるから、クランプが開始されると、これに連動して、下部ブラケット6が後部シャフト10を中心に下方に回動し、一方の側板6bの突起20がロックプレート18の位置決め溝21に係合する。これにより、下部ブラケット6とクリンチャ5は正しく位置決めされ、左右に動くことはない。したがって、ステープルの脚部の先端がクリンチャ5に当った後、固定クリンチャ5の側とドライバ2の側との相対的な位置関係が保たれる。この結果、それほど搬送時の位置決め精度が備わっていない上部ブラケット4と下部ブラケット6との移動機構を用いた場合でも、綴り時における固定クリンチャ5とドライバ2との相対的な位置関係の精度を向上できるとともに、クリンチ負荷による左右方向への横ずれ耐力を格段に向上できて、綴り作動が確実に行われる。
  上述のように、上記中綴じ用ステープラによれば、簡単な構造によって、綴り時にドライバ2側とクリンチャ5側とを正確に位置決めすることができる。したがって、ドライバ2と固定クリンチャ5の上下分離型ステープラであって両側移動機構を有するフィニッシャの製品化も十分に可能となる。
  また、綴りピッチを決める部品が少なく、品質が安定する。
  しかも、位置決めにはクランプ時の押圧力を直接に利用することができ、クリンチャ支持部を移動させるための特別の手段を必要とせず、構造を簡単にすることができる。
  さらに、ロックプレート18を上部ブラケット4と下部ブラケット6のスライド方向に沿って配置し、位置決め部を構成する突起20は、ロックプレート18に所定の間隔で形成された構成であるから、容易に加工することができる。
  また、ロックプレート18の位置決め溝21は仕様によって変更されるものであり、図の位置、数量に限定されない。また、位置決め部は突起と溝のように凸部と凹部とによって形成するのが好ましい。構造が簡単で、凹部の開口端を広げることによって凸部の係合を案内して確実に位置決めをすることができる。突起と溝は逆の位置に設けられていてもよい。以下の実施形態においても同様である。
[実施形態2]
  次に、図4は、下部ブラケット6が回動しないほかは、上述と同様の中綴じ用ステープラに別の形態の位置決め機構を設けた例の要部の斜視図で、下部ブラケット6の上面部に位置決め部としてロックピン22が上下に移動可能に設けられている。ロックピン22は圧縮バネ23により常時上方に付勢され、上方から押し込まれたときは、下部ブラケット6の上面部を貫通して下方に突出して下部ガイドシャフトの前部シャフト9の上面に当るように構成されている。前部シャフト9は位置決め手段として構成され、その上面には所定間隔に位置決め部として位置決め凹部24が形成されている。位置決め凹部24の上端は外に広がって開口端が広くなるように形成されている。本実施形態において、位置決め凹部24は一例として貫通孔として形成されている。
  なお、上部ブラケット4のロックピン22に対応する位置には押圧部25が形成されている。
  上記構成によれば、ドライバ駆動機構とクリンチャ5との間に被綴り用紙を差し込んでドライバ駆動機構を作動させると、図5に示されるように、マガジンユニット3が下方に回動してクランプ動作をする。このとき、上部ブラケット4の押圧部25も被綴り用紙を押圧する。マガジンユニット3のクランプ力は被綴り用紙を介して下部ブラケット6に伝えられるから、クランプが開始されると、これに連動して、上部ブラケット4の押圧部25が被綴り用紙を介して下部ブラケット6のロックピン22を圧縮バネ23に抗して押し下げるので、図6のようにロックピン22は下方に移動して前部シャフト9の位置決め用凹部24に係合する。これにより、下部ブラケット6とクリンチャ5は正しく位置決めされ、左右に動くことはない。したがって、ステープルの脚部の先端がクリンチャ5に当った後、固定クリンチャ5とドライバ2の中心が自動調芯され、横ずれが発生することなく、綴り作動が確実に行われる。
  上述の構成の中綴じ用ステープラによれば、簡単な構造によって、綴り時にクリンチャ5側だけでなくドライバ2側も正確に位置決めすることができる。
  なお、位置決めはロックピンのようなピン形状でなく、ボール形状でもよい。
[実施形態3]
  次に、図7及び図8は、図1に示したものと同様の中綴じ用ステープラにさらに別の形態の位置決め機構を設けた例の要部の斜視図で、下部ブラケット6とロックプレート18とには図1に示したものと同じ位置決め機構が設けられているが、さらに上部ブラケット4とその上部近傍に上部ガイドシャフト7、8と平行に設けられた上部ロックプレート(位置決め手段)25とに位置決め機構が設けられている。
  すなわち、上部ブラケット4の一方の側板4bの上端には位置決め部として突起20が形成され、上部ロックプレートの下縁部には位置決め部として所定間隔に位置決め溝21が形成されている。位置決め溝21の下端はやや幅広に形成されている。なお、上部ガイドシャフトの後部シャフト8は上部ブラケット4の側板部4bに嵌合しているが、前部シャフト7は側板部4bの前部の縦長貫通孔26に緩やかに挿通している。したがって、上部ブラケット4は、寸法差分だけ後部シャフト8を中心に上下方向に回動することができる。また、上部ブラケット4の側板部4bの内側に屈曲する屈曲部27と上部ガイドシャフトに嵌合したガイドブロック28との間には圧縮バネ30が配置され、上部ブラケット4は常時下方に回動するように付勢されている。同様に、下部ブラケット6は捩りコイルバネ19により常時は上方に位置するように付勢されている。ガイドブロック28の上部には凸部31が形成され、上部ブラケット4の開口部32に嵌合して、上部ブラケット4とともに上部ガイドシャフト7の軸方向にスライドするように構成されている。
  上記構成によれば、ドライバ駆動機構とクリンチャ5との間に被綴り用紙を差し込んでドライバ駆動機構を作動させると、マガジンユニット3が下方に回動してクランプ動作をする。このとき、上部ブラケット4の押圧部も被綴り用紙を押圧する。マガジンユニット3のクランプ力は被綴り用紙を介して下部ブラケット6に伝えられるから、クランプが開始されると、これに連動して、図9に示されるように、下部ブラケット6が後部シャフト10を中心に下方に回動し、一方の側板6bの突起20がロックプレート25の位置決め溝21に係合する。
  ところで、下部ブラケット6が下方に回動して停止しても、マガジンユニット3は上部ブラケット4に対してさらに下方に回動して十分にクランプするように構成されているから、マガジンユニット3が回動できなくなると、さらに回動し続ける部分は、上部ブラケット4が圧縮バネ30に抗して後部シャフト8を中心に上方に回動し、さらにはステープラ内部に設けられた圧縮バネ(図示せず)が撓むことで吸収される。上部ブラケット4が上方に回動すると、その上縁の突起20は上部ロックプレート25の位置決め溝21に係合する。
  なお、上部ブラケット4と上部ロックプレート25とが係合するタイミングと、下部ブラケット6と下部ロックプレート18とが係合するタイミングとは、何れの係合するタイミングが先になってもかまわず、コイルバネ19、圧縮バネ30のバネ荷重によって調整できる。
  このように、クランプ作動に連動して上部ブラケット4と上部ロックプレート25及び下部ブラケット6と下部ロックプレート18は、それぞれ正しく位置決めされ、左右に動くことはない。したがって、ステープルの脚部の先端がクリンチャ5に当った後、固定クリンチャ5の側とドライバ2の側との相対的な位置関係が保たれる。この結果、それほど搬送時の位置決め精度が備わっていない上部ブラケット4と下部ブラケット6との移動機構を用いた場合でも、綴り時における固定クリンチャ5とドライバ2との相対的な位置関係の精度を向上できるとともに、クリンチ負荷による左右方向への横ずれ耐力を格段に向上できて、綴り作動が確実に行われる。
  上述の構成の中綴じ用ステープラによっても、簡単な構造によって、綴り時にドライバ2側とクリンチャ5側とを正確に位置決めすることができる。
[実施形態4]
  次に、図10は、上述と同じ中綴じ用ステープラにさらに他の形態の位置決め機構を設けた例の要部の斜視図で、位置決め部として、下部ブラケット6の側板部6bの下端には位置決め部として突起20が形成され、ロックプレート(位置決め手段)18の上面部には位置決め部として位置決め溝21が形成されている。そして、ロックプレート18の両側後端に形成された屈曲片29は下部ガイドシャフトの後部シャフト10に上下に回動可能に支持されている。ロックプレート18は適宜手段によって、ステープラの左右移動終了後、綴り動作前のクランプ作動に連動して上方に回動するように構成されている。
  上記構成によれば、クランプ動作に連動して、ロックプレート18が回動し、ロックプレート18の位置決め溝21一方の側板6bの突起20がロックプレート18の位置決め溝21に係合する。これにより、下部ブラケット6とクリンチャ5は正しく位置決めされる。
  ロックプレート18の回動はクランプ作動に連動して行われればよく、駆動機構は限定されない。リンク・カム機構、ソレノイド機構等、電気的あるいは機械的機構によってもよい。
  なお、図11は位置決め手段であるロックプレート18の駆動手段の一形態を示すもので、ロックプレート18の後方に駆動片33を延長し、駆動片33の先端を上部ブラケット4に設けられたマガジンユニット3の下方に配置する。このとき、上部ブラケット4と駆動片33の先端との間には被綴り用紙が通る間口を確保する。なお、マガジンユニット3はステープラ本体34に対して上下に移動可能に配置されている。
  上記構成によれば、マガジンユニット3とクリンチャ5との間に被綴り用紙を差し込んでドライバ駆動機構を作動させると、マガジンユニット3が下方に移動してクランプ動作をする。これに連動してヘッド部に設けられたマガジンユニット3の下面がロックプレートの駆動片33の先端を押し下げるので、ロックプレート18の前部は後部シャフト20を中心に上方に回動し、ロックプレート18の位置決め溝21に下部ブラケット6の一方の側板部6bの突起20が係合し、固定クリンチャ5の側とドライバ2の側との相対的な位置関係が保たれる。この結果、それほど搬送時の位置決め精度が備わっていない上部ブラケット4と下部ブラケット6との移動機構を用いた場合でも、綴り時における固定クリンチャ5とドライバ2との相対的な位置関係の精度が向上できるとともに、クリンチ負荷による左右方向への横ずれ耐力を格段に向上できる。
  したがって、上述の構成によっても、簡単な構造によって、綴り時にドライバ側とクリンチャ5側とを正確に位置決めすることができる。