以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る発電機に経済的に負荷を配分する負荷配分装置について説明する。
(第1の実施の形態)
  図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発電機に経済的に負荷を配分する負荷配分装置を示すブロック図である。なお、図7と同一部分には、同一符号を付して説明する。
  本実施の形態に係る負荷配分装置60は、負荷配分部10、分担負荷予測部11、メモリ12、LFC余力算出部13、総需要記録部14、第2のメモリ15を具備する。
  メモリ12は、分担負荷31、発電機出力変化速度32、発電機出力上下限33及びLFC余力34を記録する。
  発電機出力変化速度32及び発電機出力上下限33は、発電機特性で定まるものであり事前にメモリ12に設定しておく。
  第二のメモリ15は、過去から現在に至る総需要予測記録35及び総需要実績記録36を保存するものである。
  以下、図1に示した本発明の第1の実施の形態に係る負荷配分装置60の動作について説明する。
  総需要記録部14は、これからの総需要予測値と現在の総需要実績値を入力して、入力した需要予測値と総需要実績値を第二のメモリ15の総需要予測記録35および総需要実績記録36に新たに加えて記録保存する。
  総需要実績値は一般に電力系統の各所の負荷の計測値を集めて加算して得られるものであるが、いかなる方法で入力してもよい。また、総需要予測値は、一般に前日のうちに翌日の天候予測値や気温予測値や過去の総需要実績等から翌日24時間分について予測するのが一般に行われているが、いかなる方法で入力してもよい。
  総需要予測記録35および総需要実績記録36は、例えば過去1年分とか2年分とかの総需要予測値と総需要実績値を記録保存しているものである。
  LFC余力算出部13は、総需要予測記録35と総需要実績記録36からそれぞれ過去の総需要予測値と総需要実績値を入力してそれらの差を求め、求めた差を統計処理してLFC余力を算出する。
  ここで統計処理は、例えば過去の日の時間帯tの総需要予測値(t)と総需要実績値(t)との差の標準偏差σ(t)を求め、σ(t)×k(定数)としてLFC余力(t)を求める。過去の日としては、例えば過去1年間365日分のデータを使うとかあるいは過去3カ月分のデータを使うことが考えられる。
  統計処理方法はこの他の方法でもよいが、要は過去の総需要予測値と過去の総需要実績値との差を用いて発電機制御当日のLFC余力を算出することによって、有効なLFC余力を算出することができる。ここでk(定数)は、あらかじめ設定しておくものである。上げ方向のLFC余力と下げ方向のLFC余力によってk(定数)を別々に設定することも考えられる。
  LFC余力算出部13は、このようにして算出した値をメモリ12のLFC余力34に書き込む。ここで時間帯は1日を24時間に分けてt=1〜24としてもよいし、1日を30分ごと48時間帯に分けてt=1〜48としてもよいし、趣旨を変えない範囲で変更してもよい。
  また、LFC余力算出部13は1日に1回全時間帯分について計算することでもよいし、時間帯t毎に計算してもよいが、いずれの場合であっても負荷配分部10がLFC余力34を利用する前に計算するようにしておく。
  分担負荷予測部11には現在の各発電機出力が入力されており、入力された各発電機出力の合計値から発電機に配分すべき分担負荷を5分毎など定期的に予測計算し、計算結果により分担負荷31を更新する。ここでは各発電機出力から分担負荷を予測計算する例を示したが、たとえば系統の負荷の計測値の合計から分担負荷を予測計算することもできる。
  発電機出力変化速度32は、各発電機の単位時間内に出力変化できる値で、発電機出力上下限33は各発電機の出力の上限値および下限値で、いずれも発電機の特性を示すもので、あらかじめデータとして設定されている。
  負荷配分部10は、入力されている発電機出力とメモリ12から読み込んだ分担負荷31、発電機出力変化速度32、発電機出力上下限値33およびLFC余力34から、二次計画法によって最も経済的な発電機出力を例えば5分毎に計算し、計算した発電機出力に基づき発電機指令値を送信する。
  具体的には、負荷配分部10は、発電機出力を変数とし、目的関数を各発電機の燃料費の合計とし、発電機の出力合計が分担負荷に等しくなる需給制約と、発電機出力と、発電機出力変化速度と、発電機出力上下限値とから定まる各発電機の出力制約と、LFC余力の制約とを制約条件として、二次計画法を用いて目的関数が最小となる解を求める。これらを数式で示すと次のとおりである。
変数:発電機出力P(i) i=1〜発電機最大数
目的関数:ΣF(i)
  Fは燃料費で次式で表す。F(i)=aP(i)2+bP(i)+c
  ここで、a、b、cは発電機ごとに与えられる定数である。つまり燃料費は、発電機出力の関数として与える。
制約条件:
需給制約:分担負荷=ΣP(i)
発電機変化速度制約:  PNOW(i)−PMW(i)×5≦P(i)≦PNOW(i)+PMW(i)×5
  ここで、PNOW(i)は、各発電機の現在出力、PMWは1分間に変化できる出力最大値である。なお、ここでは5分毎に負荷配分装置が発電機指令値を送信するものとして5分間で変化できる出力上限と下限を発電機変化速度制約としている。
  発電機出力上下限制約:PMIN(i)≦P(i)≦PMAX(i)
  ここでPMIN(i)、PMAX(i)は各発電機の出力最小値および最大値である。
  LFC余力制約:Σ(P (i)−PL (i))≧PLFCL  かつ  Σ(PU(i)−P(i))≧PLFCU
  ここでPL(i)は各発電機のPNOW(i)−PMW(i)×5とPMIN(i)の大きいほうであり、PU(i)は各発電機のPNOW(i)+PMW(i)×5とPMAX(i)の小さいほうである。また、PLFCLは下げ方向のLFC余力であり、PLFCUは上げ方向のLFC余力である。
  これらの条件で目的関数を最小化とする各発電機の出力を二次計画法を用いて算出する。このようにして求めた各発電機の出力に基づいて発電機へ指令値を送信する。負荷配分部10は、5分毎にこのような処理を繰り返すことによって、発電機を経済的に運用することができる。
  本発明の第1の実施の形態に係る負荷配分装置によれば、適切なLFC余力を自動的に算出して確保した上で、経済的に負荷を発電機に配分できる。
(第2の実施の形態)
  図2は、本発明の第2の実施の形態に係る発電機に経済的に負荷を配分する負荷配分装置を示すブロック図である。なお、図1と同一部分には、同一符号を付して説明する。
  図2に示すように、第3のメモリ16を追加した以外は、図1で示した負荷配分装置のブロック図と同じである。第3のメモリ16にはカレンダーが記憶されている。
  以下、本発明の第2の実施の形態に係る負荷配分装置60の動作について説明する。
  LFC余力算出部13は、第2のメモリの総需要予測記録35と総需要実績記録36からそれぞれ過去の総需要予測値と総需要実績値を入力する際に、第3のメモリ16のカレンダー37を参照して発電機制御をおこなう当日の曜日を調べ、同じ曜日の過去の総需要予測値と総需要実績値だけを入力してそれらの差を求め、求めた差を統計処理してLFC余力を算出する。それ以外は図1で説明した負荷配分装置60の作用と同じである。
  従って、本発明の第2の実施の形態に係る負荷配分装置によれば、LFC余力を人が設定しなくても、適切なLFC余力を自動的に算出して確保した上で、経済的に負荷を発電機に配分できるだけでなく、過去の同じ曜日の統計データから算出したLFC余力を用いることによって、より適切なLFC余力の確保が期待できる。
(第3の実施の形態)
  図3は、本発明の第3の実施の形態に係る発電機に経済的に負荷を配分する負荷配分装置を示すブロック図である。なお、図1と同一部分には、同一符号を付して説明する。
  図3に示すように、負荷配分装置60の構成要素として総需要記録部17を追加したこと、および第二のメモリ15に天候実績記録38と天候予測記録39とを保存するようにしたこと以外は図1に示した負荷配分装置60と同じである。
  以下、本発明の第3の実施の形態に係る負荷配分装置60の動作について説明する。
  総需要記録保存部17は、天候実績値と天候予測値を入力し第2のメモリ15に天候予測記録38および天候実績記録39として保存する。入力する天候予測値は、例えばこれから先12時間の3時間毎の天候予測値からなり、また天候実績値は過去1時間の天候実績値からなるようにしておく。
  このようにしておくことにより、第2のメモリには総需要予測記録35に対応して天候予測記録39が記録保存され、総需要実績記録36に対応して天候実績記録38が記録保存されることになる。
  また、LFC余力算出部13は、第2のメモリの総需要予測記録35と総需要実績記録36とからそれぞれ過去の総需要予測値と総需要実績値を入力する際に、天候予測記録39の今日の天候予測値と同じ過去の天候予測値の日の総需要予測値と総需要実績値だけを入力してそれらの差を求め、求めた差を統計処理してLFC余力を算出する。それ以外は図1で説明した負荷配分装置60の作用は同じである。
  本発明の第3の実施の形態に係る負荷配分装置によれば、LFC余力を人が設定しなくても、適切なLFC余力を自動的に算出して確保した上で、経済的に負荷を発電機に配分できるだけでなく、過去の同じ天候予測の日の統計データから算出したLFC余力を用いることによって、より適切なLFC余力の確保が期待できる。
(第4の実施の形態)
  図4は、本発明の第4の実施の形態に係る発電機に経済的に負荷を配分する負荷配分装置を示すブロック図である。なお、図1と同一部分には、同一符号を付して説明する。
  図4に示すように、本発明の第4の実施の形態に係る負荷配分装置60は、図1のLFC余力算出部13の代わりに予備力算出部18を、メモリ12のLFC余力34のかわりに予備力30を設けた以外は、図1と同じ構成である。
  以下、本発明の第4の実施の形態に係る負荷配分装置60の動作について説明する。
  総需要記録部14は、総需要予測値と総需要実績値を入力して第二のメモリ15に総需要予測記録35および総需要実績記録36として記録保存するが、これは第1の実施の形態の総需要記録部と同じである。
  予備力算出部18は、総需要予測記録35と総需要実績記録36とからそれぞれ過去の総需要予測値と総需要実績値を入力してそれらの差を求め、求めた差を統計処理して予備力を算出する。
  ここで統計処理は、例えば過去の日の時間帯tの総需要予測値(t)と総需要実績値(t)の差の標準偏差σ(t)を求め、σ(t)×m(定数)として予備力(t)を求める。過去の日としては例えば過去1年間365日分のデータを使うとかあるいは過去3カ月分のデータを使うことが考えられる。統計処理方法はこの他の方法でもよいが、要は過去の総需要予測値と過去の総需要実績値との差を用いて発電機制御当日の予備力を算出することによって、有効な予備力を算出することができる。ここでm(定数)は、あらかじめ設定しておくものである。
  予備力算出部18は、このようにして算出した値をメモリ12の予備力30に書き込む。ここで時間帯は1日を24時間に分けてt=1〜24としてもよいし、1日を30分ごと48時間帯に分けてt=1〜48としてもよいし、趣旨を変えない範囲で変更してもよい。
  また、予備力算出部18は1日に1回全時間帯分について計算することでもよいし、時間帯t毎に計算してもよいが、いずれの場合であっても負荷配分部10が予備力30を利用する前に計算するようにしておく。
  分担負荷予測部11の作用は図1の場合と同じである。発電機出力変化速度32は各発電機の単位時間内に出力変化できる値で、発電機出力上下限33は各発電機の出力の上限値および下限値で、いずれも発電機の特性を示すもので、あらかじめデータとして設定されていることは第1の実施の形態と同じである。
  負荷配分部10は、入力されている発電機出力とメモリ12から読み込んだ分担負荷31、発電機出力変化速度32、発電機出力上下限値33および予備力30とから、二次計画法によって最も経済的な発電機出力を例えば5分毎に計算し、計算した発電機出力に基づき発電機制御信号を送信する。
  具体的には、負荷配分部10は、発電機出力を変数とし、目的関数を各発電機の燃料費の合計とし、発電機の出力合計が分担負荷に等しくなる需給制約と、発電機出力と、発電機出力変化速度と、発電機出力上下限値とから定まる各発電機の出力制約と、予備力の制約とを制約条件として、二次計画法を用いて目的関数が最小となる解を求める。これらを数式で示すと次のとおりである。
  変数:発電機出力P(i) i=1〜発電機最大数
  目的関数:ΣF(i)
  Fは燃料費で次式で表す。F(i)=aP(i)2+bP(i)+c
  ここでabcは発電機ごとに与えられる定数である。つまり燃料費は発電機出力の関数として与える。
  制約条件:
  需給制約:分担負荷=ΣP(i)
  発電機変化速度制約:
  PNOW(i)−PMW(i)×5≦P(i)≦PNOW(i)+PMW(i)×5
  ここで、PNOW(i)各発電機の現在出力、PMWは1分間に変化できる出力最大値である。なお、ここでは5分毎に負荷配分装置が発電機指令値を送信するものとして5分間で変化できる出力上限と下限を発電機変化速度制約としている。
  発電機出力上下限制約:PMIN(i)≦P(i)≦PMAX(i)
  ここでPMIN(i)、PMAX(i)は各発電機の出力最小値および最大値である。
予備力制約:  Σ(PMAX(i)−P(i))≧PYOBI  ここでPYOBIは予備力である。
  これらの条件で目的関数を最小化とする各発電機の出力を二次計画法を用いて算出する。このようにして求めた各発電機の出力に基づいて発電機へ指令値を送信する。負荷配分部10は、5分毎にこのような処理を繰り返すことによって、発電機を経済的に運用することができる。
  本発明の第4の実施の形態に係る発電機の負荷配分装置によれば、予備力を人が設定しなくても、適切な予備力を自動的に算出して確保した上で、経済的に負荷を発電機に配分できる。
(第5の実施の形態)
  図5は、本発明の第5の実施の形態に係る発電機に経済的に負荷を配分する負荷配分装置を示すブロック図である。なお、図4と同一部分には、同一符号を付して説明する。
  図5に示すように、第3のメモリ16を追加した以外は、図4で示した負荷配分装置のブロック図と同じである。第3のメモリ16にはカレンダーが記憶されている。
  以下、本発明の第5の実施の形態に係る負荷配分装置60の動作について説明する。
  予備力算出部18は、第2のメモリ15の総需要予測記録35と総需要実績記録36からそれぞれ過去の総需要予測値と総需要実績値を入力する際に、第3のメモリ16のカレンダー37を参照して発電機制御をおこなう当日の曜日を調べ、同じ曜日の過去の総需要予測値と総需要実績値だけを入力してそれらの差を求め、求めた差を統計処理して予備力を算出する。それ以外は図4で説明した負荷配分装置60の作用と同じである。
  従って、本発明の第5の実施の形態に係る負荷配分装置によれば、予備力を人が設定しなくても、適切な予備力を自動的に算出して確保した上で、経済的に負荷を発電機に配分できるだけでなく、過去の同じ曜日の統計データから算出した予備力を用いることによって、より適切な予備力の確保が期待できる。
(第6の実施の形態)
  図6は、本発明の第6の実施の形態に係る発電機に経済的に負荷を配分する負荷配分装置を示すブロック図である。なお、図4と同一部分には、同一符号を付して説明する。
  図6において、負荷配分装置60の構成要素として総需要記録部17を追加したこと、および第二のメモリ15に天候実績記録38と天候予測記録39を保存するようにしたこと以外は第5の実施の形態に係る負荷配分装置60と同じである。
  以下、本発明の第6の実施の形態に係る負荷配分装置60の動作について説明する。
  図6の総需要記録保存部17は天候実績値と天候予測値を入力し第2のメモリ15に天候予測記録38および天候実績記録39として保存する。入力する天候予測値は、例えばこれから先12時間の3時間毎の天候予測値からなり、また天候実績値は過去1時間の天候実績値からなるようにしておく。
  このようにしておくことにより、第2のメモリには総需要予測記録35に対応して天候予測記録39が記録保存され、総需要実績記録36に対応して天候実績記録38が記録保存されることになる。
  また、予備力算出部18は第2のメモリの総需要予測記録35と総需要実績記録36からそれぞれ過去の総需要予測値と総需要実績値を入力する際に、天候予測記録39の今日の天候予測値と同じ過去の天候予測値の日の総需要予測値と総需要実績値だけを入力してそれらの差を求め、求めた差を統計処理して予備力を算出する。それ以外は図4で説明した負荷配分装置60の作用は同じである。
  本発明の第6の実施の形態に係る負荷配分装置によれば、予備力を人が設定しなくても、適切な予備力を自動的に算出して確保した上で、経済的に負荷を発電機に配分できるだけでなく、過去の同じ天候の日の統計データから算出した予備力を用いることによって、より適切な予備力の確保が期待できる。
  なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。