[第1実施形態]
  この発明の第1実施形態に係る半導体装置について、同一半導体基板にパワー素子である横拡散型MOS(LDMOS)部と非パワー素子であるCMOS部とが形成された車載用複合ICを例に、図を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る半導体装置の配線構造を示す断面説明図である。図2ないし図4は、第1実施形態に係る半導体装置の配線形成方法の断面説明図である。
  なお、いずれの図においても、説明のために一部を拡大して誇張して示している。また、以下の説明において、ある層が他の層の上に存在すると記述される場合には、ある層が他の層の真上に存在する場合と、ある層と他の層との間に第3の層が介在される場合とを示す。
(半導体装置の配線構造)
  図1に示すように、半導体装置1は、CMOS部31及びLDMOS部32が形成された半導体基板10の基板面10aの上方に、順番に積層形成された第1配線層33、第2配線層34及び第3配線層35を備えている。第3配線層35の表面には、P−SiN膜やP−TEOS膜などからなるパッシベーション膜20が形成されている。
  なお、図中では、CMOS部31及びLDMOS部32の構造は省略する。
  第1配線層33は、SOI(Silicon On Insulator)基板などの半導体基板10の基板面10a上に形成されており、層間絶縁膜12、側面バリアメタル層15、Cu配線18及び上面バリアメタル層19を備えている。
  また、基板面10a上には、CMOS部31及びLDMOS部32に接続されている基板配線11が形成されている。
  層間絶縁膜12は、SiO2膜により形成されている。各層間絶縁膜は、クロストークを低減するために低誘電率なLow−k膜で形成することが好ましく、TEOS、SiO2膜に多量の炭素を含有させたSiOC、フッ素ドープケイ酸塩ガラス(FSG)、リン含有ケイ酸塩ガラス(PSG)、ホウ素リン含有ケイ酸ガラス(BPSG)、SOG(Spin  On  Glass)など、低誘電率を有する材料により形成することができる。
  層間絶縁膜12には、基板配線11とCu配線18とを接続するためのビア部13a及び所定のパターンの配線が形成される配線部13bからなる配線溝13が貫通形成されている。配線部13bは、ビア部13aの形成領域を含み、ビア部13aより幅が広い溝状に形成されている。
  LDMOS部32では、大きな電流を流すため、ON抵抗を低減することが要求されており、Cu配線18を厚くする形成する必要がある。そのため、Cu配線18が形成される層間絶縁膜12は、厚さが1.0〜2.0μm、例えば1.5μmに形成されている。
  Cu配線18は、配線溝13の内側壁に形成された側面バリアメタル層15を介して、配線溝13の内部にCuまたはCuを主成分とする合金が充填されて形成されている。側面バリアメタル層15は、Cu配線18から層間絶縁膜12へのCuの拡散を防止するために、スパッタ法、CVD法などにより形成された導電性を有する被膜であり、本実施形態ではTaNにより形成されている。
  Cu配線18の上面部18aは、側面バリアメタル層15と同様の材料により形成された上面バリアメタル層19により覆われている。ここで、上面バリアメタル層19の幅は、上面部18aの幅よりも大きく形成されている。
  パワー素子であるLDMOS部32のCu配線18は、上層になる程、配線幅が広く形成されている。これに伴い、LDMOS部32の上面バリアメタル層19は、上層になる程、配線幅が広く形成されている。
  CMOS部31では、半導体装置1の小型化のため、微細な配線が要求されているので、CMOS部31のCu配線18は、例えば、幅0.5〜1μm程度に形成される。
  ここで、Cu配線18のアスペクト比(=Cu配線18の厚さ/Cu配線18の幅)が2以下になるようにCu配線18を形成すると、CuまたはCu合金の配線溝13への埋め込み性を向上させることができるので、好ましい。
  第2配線層34及び第3配線層35は、層間絶縁膜12、側面バリアメタル層15、Cu配線18及び上面バリアメタル層19を備えており、第1配線層33と同様の構造である。
  第2配線層34は、第1配線層33の上面に形成されており、第2配線層34から見て下層配線である第1配線層33のCu配線18の上面部18aと第2配線層34のCu配線18の下部とが、上面バリアメタル層19及び側面バリアメタル層15を介して電気的に接続されている。
  同様に、第3配線層35は、第2配線層34の上面に形成されており、第3配線層35から見て下層配線である第2配線層34のCu配線18の上面部18aと第3配線層35のCu配線18の下部とが、上面バリアメタル層19及び側面バリアメタル層15を介して電気的に接続されている。
  上述のように、本実施形態の半導体装置1において、Cu配線18の上面部18aを覆って上面バリアメタル層19が形成されているので、Cu配線18から層間絶縁膜12へのCuの拡散を防止することができる。
  また、上面バリアメタル層19は、Cu配線18及び層間絶縁膜12との密着性が良好であるため、剥離するおそれがない。
  更に、Cu配線18の上面部18aを覆って、Cu配線18と層間絶縁膜12との間にパッシべーション膜を形成する必要がなく、アニール処理、プラズマ処理などによりCu表面を改質する工程が不要である。
(半導体装置の配線形成方法)
  次に、上述したCu配線18の形成方法について図を参照して説明する。なお、配線形成方法は、CMOS部31とLDMOS部32とで共通であり、各配線層においても同様であるため、図中には、CMOS部31側の第1配線層33の形成工程について示す。
  まず、図2(A)に示すように、半導体基板10の基板面10a上に、基板配線11を覆って、層間絶縁膜12を形成する。層間絶縁膜12として、例えば厚さ1.5μmのSiO2膜を形成する。
  続いて、図2(B)に示すように、層間絶縁膜12の基板配線11の上方に位置する部位に、フォトリソグラフィ法およびエッチング法により、ビア部13aと配線部13bとからなる配線溝13を形成する。これにより、基板配線11が露出し、ビア部13aと連結される。
  続いて、図2(C)に示すように、スパッタ法またはCVD法などにより、層間絶縁膜12の表面、配線溝13の内側面及び基板配線11を覆うTaNからなる側面バリアメタル層15を形成する。
  続いて、図3(D)に示すように、スパッタ法により層間絶縁膜12の表面、配線溝13の内側面及び基板配線11を覆うCu膜であるシード層16を形成する。シード層16は、続く電解めっきの電極として作用する。
  続いて、図3(E)に示すように、電解めっき法によりCuめっき層17を形成し、配線材料であるCuを配線溝13にCuを充填する。ここで、シード層16はCuめっき層17と一体化する。Cuめっき層17として、純Cu以外に、Cuを主成分とする合金、例えば、Cu−Al合金などを用いることができる。
  続いて、図3(F)に示すように、層間絶縁膜12表面の残った余分なCuめっき層17を化学機械的研磨(CMP:Chemical  Mechanical  Polishing)などにより除去し、平坦化することにより、配線溝13にCuが充填されたCu配線18を形成する。
  続いて、図4(G)に示すように、層間絶縁膜12及びCu配線18の上面部18aを覆って、スパッタ法またはCVD法などによりTaNからなる上面バリアメタル層19を形成する。
  そして、図4(H)に示すように、上面バリアメタル層19のうち、Cu配線18の上面部18aを覆い上面部18aよりも幅が広い領域を残し、それ以外をフォトリソグラフィ法およびエッチング法により除去する。
  上述の工程を繰り返すことにより、第2配線層34及び第3配線層35(図1)が形成され、半導体装置1の多層配線を形成することができる。
  なお、本実施形態における膜厚、配線層の数などは例示であり、各種構成の配線の形成方法として適用することができる。
  本実施形態では、Cu配線18の上面部18aよりも幅が広くなるように形成されているので、図5に示すように、第2配線層34の層間絶縁膜12に、第1配線層33のCu配線18に向かってエッチングにより配線溝13を形成する際に、アライメントがずれてしまい、配線溝13が第1配線層33のCu配線18の上面部18aよりはみ出して形成されてしまった場合でも、上面バリアメタル層19がエッチングストッパ層として作用し、第1配線層33の層間絶縁膜12がエッチングされることがない。
  これにより、第1配線層33の層間絶縁膜12を過剰にエッチングすることによる不良、例えば、側面バリアメタル層15のカバレッジ不良による腐食やマイグレーションなどを防止することができる。
  現状では、配線溝13のアライメント精度は±0.05μm程度であり、配線幅1μmのCu配線18に対しては、5%程度のアライメントずれが生じる可能性がある。従って、上面バリアメタル層19は、少なくともCu配線18の配線幅(上面部18aの幅)の5%程度、上面部18aの幅よりも広く形成することが好ましい。
  Cu配線18の配線幅が1μm未満の場合には、アライメントのずれが生じても上面バリアメタル層19がエッチングストッパ層として作用することができるように、上面バリアメタル層19を、Cu配線18の配線幅(上面部18aの幅)の5%以上、上面部18aの幅よりも広く形成することが好ましい。
(変更例)
  本実施形態では、上面バリアメタル層19としてTaNを用いたが、Cu配線18から層間絶縁膜12へのCuの拡散を防止することができ、Cu配線18及び層間絶縁膜12との密着性が良好であれば、これに限定されるものではない。例えば、上面バリアメタル層19は、Ti、TiN、Ta、TiW、W、Ni、Pdなどにより形成することができる。また、上面バリアメタル層19は、単層膜ではなく、多層膜として形成してもよい。更に、側面バリアメタル層15と上面バリアメタル層19とは異なる材料により形成することができる。
  Ni、Pdからなる上面バリアメタル層19は、めっき法により形成することもできる。上面バリアメタル層19をめっき法により形成する場合には、図4(G)、(H)に示す工程に代えて、レジストを形成した後にめっきを行う選択めっきにより形成することもできる。これによれば、めっきを施した後に、フォトリソグラフィ法およびエッチング法により除去する工程を省略することができる。
  本実施形態では、デュアルダマシン法によるCu配線18について例示したが、本発明は、シングルダマシン法によるCu配線にも適用することができる。
[第1実施形態の効果]
(1)第1実施形態の半導体装置1では、Cu配線18の上面部18aを覆って上面バリアメタル層19が形成されているので、Cu配線18から層間絶縁膜12へのCuの拡散を防止することができる。
  また、上面バリアメタル層19は、Cu配線18及び層間絶縁膜12との密着性が良好であるため、剥離するおそれがない。
  更に、Cu配線18の上面部18aを覆って、Cu配線18と層間絶縁膜12との間にパッシべーション膜を形成する必要がなく、アニール処理、プラズマ処理などによりCu表面を改質する工程が不要である。
(2)Cu配線18の上面部18aよりも幅が広くなるように形成されているので、第2配線層34の層間絶縁膜12に、第1配線層33のCu配線18に向かってエッチングにより配線溝13を形成する際に、アライメントがずれてしまい、配線溝13が第1配線層33のCu配線18の上面部18aよりはみ出して形成されてしまった場合でも、上面バリアメタル層19がエッチングストッパ層として作用する。これにより、第1配線層33の層間絶縁膜12を過剰にエッチングすることによる不良、例えば、側面バリアメタル層15のカバレッジ不良による腐食やマイグレーションなどを防止することができる。
[第2実施形態]
  この発明の第2実施形態に係る半導体装置について、図を参照して説明する。図6は、第2実施形態に係る半導体装置の配線構造を示す断面説明図である。図7は、配線溝のCu配線に対するアライメントがずれた場合の配線構造を示す断面説明図である。図8及び図9は、第2実施形態に係る半導体装置の配線構造の変更例を示す断面説明図である。
  なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ記号を用いるとともに、説明を省略する。
  図6に示すように、第2実施形態の半導体装置では、Cu配線18に、下層のCu配線18と電気的に接続される複数のビアが形成されている。本実施形態では、2箇所にビア18b、18cが形成されている場合を例示する。
  ビア18b、18cは、第1配線層33のCu配線18の上面部18aの上方に配置されており、それぞれが第1配線層33のCu配線18と電気的に接続されている。これにより、1つのビア、例えば、ビア18bがオープン不良となった場合でも、ビア18cにより第1配線層33のCu配線18との導通をとることができ、配線機能を維持することができる。
  また、ビア18b、18cによる接続は並列抵抗となるため、接続部の抵抗を下げることもできる。
  第2配線層34の層間絶縁膜12に、第1配線層33のCu配線18に向かってエッチングにより配線溝13を形成する際に、アライメントがずれてしまった場合でも、例えば、図7に示すように、ビア18cが第1配線層33のCu配線18の上面部18aの上方に位置するため、第1配線層33のCu配線18との導通を確実にとることができる。
(変更例)
  本実施形態では、2箇所にビア18b、18cが形成されている場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、図8に示すように、ビア18dを追加して、3箇所に並んでビアを形成することもできる。この構成によれば、ビア18b、18c、18dのいずれかが第1配線層33のCu配線18の上面部18aの上方に位置するため、より確実に第1配線層33のCu配線18との導通をとることができる。
  ビア18b、18cが、上面部18aの上方に位置しない場合でも、図9に示すように上面バリアメタル層19の上方に位置していれば、上面バリアメタル層19を介して下層のCu配線18との導通を確実にとることができる。
  なお、第2実施形態においても、配線層の数などは例示であり、各種構成の配線の形成方法として適用することができる。
[第2実施形態の効果]
(1)第2実施形態の半導体装置では、第1実施形態の半導体装置と同様の効果を奏することができるとともに、上層の層間絶縁膜12に、下層のCu配線18に向かってエッチングにより配線溝13を形成する際に、アライメントがずれてしまった場合でも、少なくとも1つのビア18cがCu配線18の上面部18aの上方に位置するため、下層のCu配線18との導通を確実にとることができる。
  また、1つのビアがオープン不良となった場合でも、他のビアにより下層のCu配線18との導通をとることができ、配線機能を維持することができる。
(2)ビア18b、18cが、上面部18aの上方に位置しない場合でも、上面バリアメタル層19の上方に位置していれば、上面バリアメタル層19を介して下層のCu配線18との導通を確実にとることができる。
[その他の実施形態]
(1)上面バリアメタル層19は、スパッタ法、CVD法などにより、Al2O3、AlNなどの絶縁性の材料を用いて形成することもできる。
  この構成を用いる場合には、フォトリソグラフィ法およびエッチング法により上方の配線層の配線溝13を形成する際に、上面バリアメタル層19のうち、Cu配線18の上面部18aを覆って形成された領域の一部を除去して、Cu配線18の上面部18aを露出させることにより、上方の配線層のCu配線18の下部と下方の配線層のCu配線18の上面部18aとを電気的に接続することができる。
(2)Cu配線18の上面部18aにプラズマ処理等を行うことにより、Cu表面の改質処理を行ってもよい。例えば、窒素プラズマ処理でCu表面を窒化させることにより安定化させることができる。また、イオン注入でN、Bなどを打ち込み、熱処理を行うことにより表面改質を行うこともできる。
  この構成を用いると、Cu配線18の上面部18aと上面バリアメタル層19との密着力を更に高めることができる。