相変化メモリ装置は、結晶状態によって電気的抵抗が変わる相変化層(カルコゲナイド半導体薄膜等)をメモリセルに利用する素子である。カルコゲナイド半導体とは、カルコゲン元素を含む非晶質(アモルファス)半導体のことである。
  ここでカルコゲン元素とは、6族元素のS(硫黄)、Se(セレン)、Te(テルル)のことである。カルコゲナイド半導体の利用分野は、光ディスクと電気的メモリに大別される。電気的メモリの分野で使用されるカルコゲナイド半導体としては、Ge(ゲルマニウム)、Te(テルル)およびSb(アンチモン)の化合物であるGeSbTe(以下、GSTという)、あるいは、AsSbTeやSeSbTe等が知られている。
  図13(a),(b)は、それぞれ相変化メモリの原理を説明するための図である。
  カルコゲナイド半導体は、図13(a)に示される様に、非晶質状態10と結晶状態30との2つの安定した状態をとることができ、前記非晶質状態10から前記結晶状態30に移行させるためには、エネルギー障壁20を超える熱を供給する必要がある。
  図13(b)に示される様に、前記非晶質状態は高抵抗を示すことから、これをデジタル値の「1」に対応させ、前記結晶状態は低抵抗を示すことから、これをデジタル値の「0」に対応させることにより、デジタル情報の記憶が可能となる。そして、カルコゲナイド半導体を介して流れる電流量(あるいは電圧降下)の差を検出することによって、記憶情報が「1」であるか、「0」であるかを判定することが可能となる。
  カルコゲナイド半導体の相変化のために供給される熱としては、ジュール熱が挙げられる。すなわち、ピーク値および時間幅が異なるパルスをカルコゲナイド半導体に供給することによって、電極とカルコゲナイド半導体との接触面近傍においてジュール熱を生じさせ、このジュール熱により相変化を生じさせる。
  具体的には、カルコゲナイド半導体に、それの融点付近の熱を短時間供給した後に、急速に冷却すれば、カルコゲナイド半導体は非晶質状態になる。一方、カルコゲナイド半導体に対し融点に比べて低い結晶化温度を長時間かけて供給した後に冷却すれば、カルコゲナイド半導体は結晶状態になる。
  例えば、融点が約610℃であるGSTに対し、前記GSTが融点付近温度に達する熱を短時間(1〜10ns)供給した後に、急速に冷却(約1ns)すれば、前記GSTは非晶質状態になる。
  一方、前記GSTが結晶化温度(約450℃)付近に達する熱を長時間(30〜50ns)印加した後に冷却すれば、前記GSTは結晶状態になる。
  図13(b)に示される様に、非晶質状態から結晶状態に移行させることを「セット(結晶化過程)」といい、このときカルコゲナイド半導体に与えられるパルスを「セットパルス」という。ここで、結晶化に最低限必要な温度(結晶化温度)をTcとし、結晶化に最低限必要な時間(結晶化時間)をtrとする。その逆に、結晶状態から非晶質状態に移行させることを「リセット(非晶質化過程)」といい、このときカルコゲナイド半導体に与えられるパルスを「リセットパルス」という。
  このとき、カルコゲナイド半導体に与えられる熱は融点Tm付近の熱であり、カルコゲナイド半導体は溶融後に急冷される。
  図14(a)〜(d)は、相変化メモリ装置の基本的構造と相変化メモリ装置のセット/リセット動作について説明するための図である。
  図14(a)に示される様に、相変化メモリ装置は基本的に、カルコゲナイド半導体層(相変化層)46を、上下の電極(42,48)で挟み込んだ構造をしている。なお、参照符号40は基板であり、参照符号44は電気的絶縁膜である。上側の電極48には、セットパルス等が印加される端子Pが接続され、下側の電極42は、グランド(基準電位)に固定されている。
  図14(b)に示される様に、図14(a)の相変化メモリ装置は抵抗R1と等価であり、上記のとおり、この抵抗R1の比抵抗が、アモルファス状態であるか結晶状態であるかによって異なる。図14(b)の左側に示される様に、端子Pには、セットパルスS1(ピーク値が闘値Vthを超えるパルス)、リセットパルスS2(S1よりもピーク値が大きく、かつ幅の短いパルス)、および、リードパルス(ピーク値が闘値Vth未満で、S1よりも幅広のパルス)が入力される。ここでVthは、結晶化に必要なジュール熱を発生しうる下限電圧である。
  図14(c)は、セットパルスS1と、このセットパルスS1の供給によって発生するジュール熱による温度上昇との対応を示しており、上側の図が電圧波形を示し、下側の図が、ジュール熱による温度上昇の様子を示している。
  セットパルスS1の電圧値は所定の闘値Vthを超えており、その時間幅は、tcryである。tcryは、結晶化時間tr(カルコゲナイド半導体の結晶化に最低限必要な時間)以上である。ジュール熱による温度上昇は、融点Tmよりかなり低く、かつ、結晶化に最低限必要な温度(結晶化温度)Tcよりも高い。
  同様に、図14(d)は、リセットパルスS2と、このセットパルスS2の供給によって発生するジュール熱による温度上昇との対応を示しており、上側の図が電圧波形を示し、下側の図が、ジュール熱による温度上昇の様子を示している。
  図示されるように、リセットパルスS2のピーク値は、結晶化のための闘値Vthをはるかに超え、かつ、その幅は十分に狭い。これにより、ジュール熱による温度上昇は、カルコゲナイド半導体の融点Tmを超えている。また、温度上昇がピークとなる時点から結晶化温度Tcに至るまでの時間tamoは十分に短い。これにより、カルコゲナイド半導体は一旦、溶融した後、急冷されることになり、この結果としてカルコゲナイド半導体はアモルファス状態に復帰する。
  以上の説明では、端子PからセットパルスS1/リセットパルスS2を供給する回路方式を採用しているが、回路方式としては、図15に示すような回路方式でもよい。
  図15は、相変化メモリ装置の回路方式の一例を示す回路図である。
  図15において、抵抗R1は、相変化メモリ装置と等価な抵抗であり、端子Pは、VDD(電源電位)に接続されている。M1〜M3は、サイズが調整されたMOSトランジスタであり、P1,P2,P3はそれぞれ、セットパルス用端子、リセットパルス用端子およびリードパルス用端子である。
  P1〜P3の各々によって、MOSトランジスタM1〜M3のどれをオンさせるかを選択すると共に、MOSトランジスタM1〜M3の導通時間を制御する。これによって、セット、リセットおよびリードの各動作を実現することができる。
  図16は、相変化メモリ装置(相変化メモリIC)における、リード動作を説明するための回路図である。図16 では、前掲の図と共通する部分には同じ参照符号が付されている。
  図16において、Wはワード線を示し、Gはグランド線を示し、Bはビット線(セットパルスS1,リセットパルスS2およびリードパルスS3を入力するための端子Pに接続されるパルス入力線である)を示し、R1は相変化メモリ装置(カルコゲナイド半導体層60からなる)の等価抵抗を示す。
  また、M4はメモリセル選択のためのNMOSトランジスタ(スイッチング素子)を示し、R2は電流/電圧変換抵抗を示し、A1はセンスアンプを示し、参照符号62は、センスアンプA1の基準電圧源を示す。また、11は、リード動作時にメモリセルを流れる電流を示し、VoutはセンスアンプA1の出力電圧(センシング出力)を示す。
  セット動作時(リセット動作時やリード動作時も同じ)には、ワード線WをアクティブレべルとしてNMOSトランジスタM4をオンさせ、その後、端子Pから、必要なパルス
(S1〜S3のいずれか)を入力する。リード動作時には、リードパルスS3が入力される。
  メモリセルを構成するカルコゲナイド半導体層60がアモルファス状態であるか、結晶状態であるかによって抵抗R1の比抵抗が異なり、これに対応して、電流I1の電流量が異なる。したがって、その電流量を電圧値に変換して読み取ることによって、記憶されている情報が「1」であるか「0」であるかを判定することができる。
  図17は、相変化メモリ装置における、メモリセル部の具体的な構造の一例を示す断面図である。
  図17において、P型の半導体シリコン基板70には、n型層71,72(ソース層71,ドレイン層72)が形成されており、ゲート絶縁膜73上にゲート電極74(ワード線Wに接続される)が設けられている。
  参照符号75,79は層間絶縁膜である。n型層71には電極(層間絶縁膜75を貫通するコンタクトプラグ76ならびに1層目の導体層からなる電極78)が接続されており、この電極はグランド線Gに接続されている。
  また、n型層72には、層間絶縁膜75を貫通するコンタクトプラグ77(例えば、タングステン(W)からなる)が接続され、このコンタクトプラグ77には、層間絶縁膜79を貫通するコンタクトプラグ80(ヒータ電極:TINからなる)が接続されている。
  参照符号82はカルコゲナイド半導体からなる相変化層である。参照符号81は、極薄い金属膜からなる密着層である。相変化層層82と層間絶縁膜79との密着性は良好とは言えないため、両者の密着強度を向上させるため、密着層81が設けられている。
  参照符号83は、相変化層82の上面を覆うように設けられている、2層目の導体層からなる上部電極である。参照符号84は層間絶縁膜である。上部電極83には、層間絶縁膜84を貫通するコンタクト電極85が設けられており、このコンタクト電極85には、3層目の導体層からなる電極86(この電極86がパルス供給用端子Pとなる)が接続されている。
  図17中、相変化層82内の点線Xで囲まれて示される領域が、相変化が生じる領域である。層間絶縁膜79に埋め込まれている電極80(例えば、チタン窒化物(TiN)からなる)は、相変化層82を流れる電流を絞り込んで電流密度を増大させ、結果的に、相変化領域Xにおいてジュール熱を効率的に発生させるのに寄与する働きをするため、ヒータ電極と呼ばれる。
  図14(a)に記載したような、相変化層を上下の電極で挟み込んだ構造の相変化メモリ装置は、例えば、特許文献1に記載されている。またこの特許文献1には、前記ヒータ電極としてチタン窒化物(TiN)からなるものやアルミニウムチタン窒化物(TiAlN)からなるものが開示されている(特許文献1)。
特開2006−74028号公報  本発明の第一の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
  図1は、本発明の相変化メモリ装置の特徴的な構造を例示した要部模式図である。
  図1において、NMOSトランジスタ(Nチャネル絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)Mは、メモリセルを選択するためのスイッチング素子であり、そのゲートは、ワード線WL1に接続されている。
  そして、NMOSトランジスタ(M)のソースは、接地電位用金属プラグ100および接地電位用配線102を介して接地電位(GND:基準電位)に電気的に接続されている。
  また、NMOSトランジスタ(M)のドレインは、タングステン106等からなるコンタクトプラグ104に電気的に接続されている。
  前記コンタクトプラグ104の上面には、積層ヒータ電極108の底面が接触している。
  さらに前記積層ヒータ電極108の上面は、相変化層114の底面に接触している。前記積層ヒータ電極108と前記相変化層114との接触面112の近傍が、前記相変化層114の相変化が生じる相変化領域となる。
  ここで前記相変化層としては、例えば、GSTからなるもの等を挙げることができる。
  また相変化層114の上面には上部電極(電極層)116が形成されている。この上部電極116は、コンタクトプラグ118を介して電極端子119に接続されている。
  前記積層ヒータ電極108は、図1に例示される様に、第一の導電材料αからなる第一の電極部分109と、
  前記第一の電極部分の内側に接して設けられた第二の導電材料βからなる第二の電極部分110とを有するものである。
  ここで前記第二の導電材料βの比抵抗は、前記第一の導電材料αの比抵抗よりも小さいものである。
  すなわち、前記積層ヒータ電極108は、その外側の比抵抗よりも内側の比抵抗が小さいものである。
  この場合、前記第一の導電材料αの比抵抗と前記第二の導電材料βの比抵抗とは、それぞれ一定の値を有するものであってもよいし、前記第一の導電材料αから前記第二の導電材料βへ向かって、連続的に比抵抗が小さくなるものであってもよい。
  図2は、前記積層ヒータ電極108を、前記NMOSトランジスタトランジスタMが設けられている半導体基板と平行な平面により切断して得られた断面を例示した模式要部断面図である。
  図2に例示される様に、前記積層ヒータ電極108はその外側に比抵抗の大きい第一の導電材料からなる第一の電極部分109が配置され、その内側に比抵抗の小さい第二の導電材料からなる第二の電極部分110が配置されている。
  この様に本発明において前記第二の導電材料の比抵抗が前記第一の導電材料の比抵抗よりも小さいというときは、前記半導体基板と平行な平面により前記第一の電極部分と前記第二の電極部分とを切断した断面にそれぞれ含まれる前記第一の導電材料の比抵抗と前記第二の導電材料の比抵抗とを比較して判断されるものである。
  なお説明の便宜上、図1および図2では前記積層ヒータ電極108は、第一の導電材料からなる第一の電極部分109と第二の導電材料からなる第二の電極部分110との二つの電極部分からなるものとして図示されているが、前記積層ヒータ電極108は二つの電極部分からなるものに限定されるものではない。
  図3は、前記NMOSトランジスタトランジスタMが設けられている半導体基板と平行な平面により前記積層ヒータ電極108を切断して得られた断面について例示した模式要部断面図である。
  図3に例示される様に、例えば、前記第二の導電材料からなる第二の電極部分110の内側に、さらに第三の導電材料からなる第三の電極部分111を内包する等、前記積層ヒータ電極108は三以上の電極部分を持つものであってもよい。
  この場合、第一の導電材料の比抵抗をR1、第二の導電材料の比抵抗をR2、第三の導電材料の比抵抗をR3とすると、R1>R2>R3の関係を満たすものである。
  以下、前記積層ヒータ電極が二以上の電極部分を持つ場合も同様である。
  前記第一の導電材料としては、例えば、導電性を有する元素、前記導電性を有する元素の窒化物、前記導電性を有する元素のシリサイド等を挙げることができる。
  前記導電性を有する元素としては、例えば、チタン、タンタル、モリブデン、ニオブ、ジルコニウム、タングステン、炭素等を挙げることができる。
  前記導電性を有する元素の窒化物としては、例えば、TiN、TiBN、TiON、TiAlON、TiCN等のチタン窒化物、TaN、TaAlN、TaON、TaCN等のタンタル窒化物、MoN、MoAlN等のモリブデン窒化物、NbN等のニオブ窒化物、ZrAlN等のジルコニウム窒化物、WBN、WON等のタングステン窒化物、CN等の炭素窒化物等を挙げることができる。
  前記導電性を有する元素のシリサイドとしては、例えば、TiSiN等のチタンシリサイド、TaSiN等のタンタルシリサイド、MoSiN等のモリブデンシリサイド、NbSiN等のニオブシリサイド、ZrSiN等のジルコニウムシリサイド、WSiN等のタングステンシリサイド、TiSiC等のカーボンシリサイド等を挙げることができる。
  前記第一の導電材料は一種もしくは二種以上を使用することができる。
  前記第二の導電材料としては、例えば、導電性を有する元素、前記導電性を有する元素の窒化物、前記導電性を有する元素のシリサイド等を挙げることができる。
  前記導電性を有する元素としては、例えば、チタン、タンタル、モリブデン、ニオブ、ジルコニウム、タングステン、炭素等を挙げることができる。
  前記導電性を有する元素の窒化物としては、例えば、TiN、TiBN、TiON、TiAlON、TiCN等のチタン窒化物、TaN、TaAlN、TaON、TaCN等のタンタル窒化物、MoN、MoAlN等のモリブデン窒化物、NbN等のニオブ窒化物、ZrAlN等のジルコニウム窒化物、WBN、WON等のタングステン窒化物、CN等の炭素窒化物等を挙げることができる。
  前記導電性を有する元素のシリサイドとしては、例えば、TiSiN等のチタンシリサイド、TaSiN等のタンタルシリサイド、MoSiN等のモリブデンシリサイド、NbSiN等のニオブシリサイド、ZrSiN等のジルコニウムシリサイド、WSiN等のタングステンシリサイド、TiSiC等のカーボンシリサイド等を挙げることができる。
  前記第二の導電材料は一種もしくは二種以上を使用することができる。
  前記第三の導電材料以降についても前記第二の導電材料の場合と同様である。
  前記第一の導電材料の比抵抗は、300〜20000μΩ・cmの範囲であることが好ましく、350〜10000μΩ・cmの範囲であればより好ましく、400〜8000μΩ・cmの範囲であればさらに好ましい。
  前記第二の導電材料の比抵抗は、10〜2000μΩ・cmの範囲であることが好ましく、1000〜1000μΩ・cmの範囲であればより好ましく、150〜1000μΩ・cmの範囲であればさらに好ましい。
  なお、前記第三の導電材料は、前記第二の導電材料の比抵抗よりも低い範囲で適宜選択することができる。
  また前記第一の導電材料の比抵抗は、前記第二の導電材料の比抵抗の10倍以上であることが好ましい。
  上記に説明した前記積層ヒータ電極108の構造を採用することにより、一定の比抵抗を有する導電材料からなるヒータ電極の場合と比較して、図2または図3に例示される前記積層ヒータ電極108の断面面積を小さくすることなく前記積層ヒータ電極108全体の発熱効率を向上させることができる。
  この様に本発明の相変化メモリ装置の構造は、前記積層ヒータ電極を必要以上に小さく設計する必要がないことから本発明の相変化メモリ装置製造の際の歩留まり低下を抑制することができる。
  さらに前記積層ヒータ電極108には比抵抗の小さい導電材料が配置されていることから、前記積層ヒータ電極108による相変化メモリ装置内部の電圧降下を防止することができ、信頼性が高く高集積化が可能な相変化メモリ装置を提供することができる。
  次に本発明の第二の実施態様について説明する。
  この第二の実施態様では、前記積層ヒータ電極の製造方法の例について説明する。
  図4は、前記積層ヒータ電極の製造方法について例示するための、主要工程毎の模式要部断面図である。
  図4(a)に例示される様に、前記コンタクトプラグ180の上面にハイデンシティプラズマ等の操作により層間絶縁膜182を堆積させる。
  続いて層間絶縁膜182の一部を選択的にエッチングしてコンタクトホール188を開口する。
  前記エッチングの方法は公知であり、例えば、前記層間絶縁膜182の上部にフォトレジスト層(図示せず)を形成し、フォトリソグラフィー法により所望の形状に前記フォトレジスト層をパターンニングする。そしてこのパターンニングされたフォトレジスト層をマスクとして選択的にエッチングすることができる。
  次に、例えばTi[N(CH3)2]4を原料とした有機金属気相成長法(MO−CVD法)により、前記コンタクトホール内部にTiNを1〜30nmの範囲、好ましくは5〜15nmの範囲で堆積させる。
  次に温度450℃、圧力1.5Torr、N2を200ml/分、H2を300ml/分のガス流量下に、5〜35秒間プラズマ処理工程を実施することにより、前記TiNの比抵抗を400〜6200μΩ・cmの範囲で変更することができる。
  なお、前記プラズマ処理工程は異方性が強いため、前記コンタクトホール188内部側面のTiNの比抵抗に比べて前記コンタクトホール内部底面のTiNの比抵抗を十分小さくすることができる。
  この工程により、図4(b)に例示される様に、前記第一の導電材料からなる第一の電極部分184を形成することができる。
  続いて、例えばTiClを原料とした化学気相成長法(CVD法)により、前記第一の導電材料に重ねてTiNを20〜80nmの範囲、好ましくは40〜60nmの範囲で堆積させる。この操作により、前記コンタクトホール188内部を化学気相成長法により得られたTiNを用いて埋設することができる。
  化学気相成長法により得られたTiNは前記有機金属気相成長法により得られたTiNに比較してその内部に含まれる不純物が少ないため、前記化学気相成長法により得られたTiNの比抵抗を前記有機金属気相成長法により得られたTiNの比抵抗に比較して小さくすることができる。
  そして前記第一の電極部分184および第二の電極部分188の上端部をCMP(化学的機械的研磨)により研磨して前記積層ヒータ電極を得る。
  これらの工程により、図4(b)に例示される様に、前記第一の電極部分の内側に接して設けられた、前記第一の導電材料の比抵抗よりも小さい比抵抗を有する第二の導電材料からなる第二の電極部分188を形成することができる。
  この様にして得られた前記積層ヒータ電極の上に相変化層を別途設けることにより、前記第一の電極部分184の上端部および前記第二の電極部分188の上端部を、前記相変化層と接触させることができる。
  また、図4(b)に例示する様に、前記第一の電極部分184の下端部は、前記コンタクトプラグ180と接して設けることができる。
  さらに前記第二の電極部分188の下端部は、前記第一の電極部分184を介して、前記コンタクトプラグ180と電気的に接続させることができる。
  次に本発明の第三の実施態様について説明する。
  この第三の実施態様では、前記積層ヒータ電極の製造方法の異なる例について説明する。
  図5は、前記積層ヒータ電極の製造方法について例示するための、主要工程の模式要部断面図である。
  先の図4(a)の場合と同様に、前記コンタクトプラグ180の上面にハイデンシティプラズマ等の操作により層間絶縁膜182を堆積させる。
  続いて層間絶縁膜182の一部を選択的にエッチングしてコンタクトホール188を開口する。
  次に、例えばTi[N(CH3)2]4を原料とした有機金属気相成長法(MO−CVD法)により、前記コンタクトホール内部にTiNを1〜30nmの範囲、好ましくは5〜15nmの範囲で堆積させる。
  続いて、図5に例示される様に、前記有機金属気相成長法により得られたTiNをエッチバックし、先の図4(a)に対応する前記コンタクトホール188の底面に堆積された前記TiNを除去することにより、前記コンタクトホール188の内部側面に前記TiNによるサイドウォールを形成する。
  続いて、例えばTiClを原料とした化学気相成長法(CVD法)により、前記第一の導電材料に重ねてTiNを20〜80nmの範囲、好ましくは40〜60nmの範囲で堆積させる。この操作により、前記コンタクトホール188内部を化学気相成長法により得られたTiNを用いて埋設することができる。
  前記第二の実施態様の場合と同様、前記第一の電極部分の内側に接して設けられた、前記第一の導電材料の比抵抗よりも小さい比抵抗を有する第二の導電材料からなる第二の電極部分183を形成することができる。
  さらに前記第一の電極部分184および第二の電極部分183の上端部をCMP(化学的機械的研磨)により研磨して、図5に例示される前記積層ヒータ電極を得る。
  この様にして得られた前記積層ヒータ電極の上に相変化層を別途設けることにより、前記第一の電極部分184の上端部および前記第二の電極部分183の上端部を、前記相変化層と接触させることができる。
  また、図5に例示する様に、前記第一の電極部分184の下端部および前記第二の電極部分183の下端部は、前記コンタクトプラグ180と接して設けることができる。
  次に本発明の第四の実施態様について説明する。
  図6は、本発明の第四の実施態様である相変化メモリ装置を例示した模式要部断面図である。
  図6に例示される様に、p型シリコン半導体基板170には、STI(shallow
  trench  isolation)171が形成され、さらにNMOSトランジスタの構成要素であるn型拡散層172a,172bが形成されている。
  また、p型半導体基板170上にはゲート絶縁膜173が形成され、このゲート絶縁膜173の上にドープドポリシリコン層175およびタングステンシリサイド層176がゲート電極として積層形成されている。
  前記タングステンシリサイド層176の上にはシリコン窒化膜177が形成されている。また、前記ゲート電極の側面にはサイドウォール174が形成されている。このシリコン窒化膜177およびサイドウォール174により、前記ゲート電極とコンタクトプラグ180は電気的に絶縁されている。
  また、前記p型シリコン半導体基板170の上には層間絶縁膜178が形成されていて、この層間絶縁膜178にはコンタクトプラグ180が形成されている。前記コンタクトプラグ180は前記n型拡散層172aと電気的に接続されている。
  前記コンタクトプラグ180は、前記層間絶縁膜178に接する側にバリアメタル層179が形成されている。このバリアメタル層179は、前記層間絶縁膜178に接する側からTi層、TiN層の順に形成されてなるものである。
  前記層間絶縁膜178に接してタングステンが埋設されることにより前記コンタクトプラグ180が形成されている。
  さらに層間絶縁膜178の上には層間絶縁膜182が形成されていて、この層間絶縁膜182には、第一の導電材料からなる第一の電極部分184と第二の導電材料からなる第二の電極部分183とからなる積層ヒータ電極が形成されている。
  前記第一の電極部分184の下端部は前記コンタクトプラグ180と接して設けられている。
  また前記第二の電極部183分の下端部は前記第一の電極部分184を介して、前記コンタクトプラグ180と電気的に接続されている。
  ここで前記第一の導電材料としては、先に例示した本発明の第二の実施態様の場合と同様に、例えばTi[N(CH3)2]4を原料とした有機金属気相成長法(MO−CVD法)により得られたTiN等を挙げることができる。
  また前記第二の導電材料としては、例えばTiClを原料とした化学気相成長法(CVD法)により得られたTiN等を挙げることができる。
  前記化学気相成長法により得られたTiN等は有機金属気相成長法により得られたTiN等と比較してその中に含まれる不純物含量が少ないことから、前記第一の電極部分184の内側に接して前記第一の導電材料の比抵抗よりも小さい比抵抗を有する前記第二の電極部分183を設けることができる。
  さらに層間絶縁膜182上に絶縁膜(図示せず)が形成されている。この絶縁膜上部には密着層としてTi薄膜192が形成され、その上に相変化層としてのGST185が形成されている。
  またGST185の上面には、上部電極186が形成されている。
  前記第一の電極部分184の上端部および前記第二の電極部分183の上端部は、前記相変化層と接して設けられている。
  なお前記第一の電極部分184の上端部はその全部が前記相変化層185と接している必要はなく、前記上端部の一部が前記相変化層185と接するものであってもよい。
  次に本発明の第五の実施態様について説明する。
  この第五の実施態様では、相変化メモリ装置の回路構成、メモリセルのレイアウト構成、および相変化メモリ装置の製造方法について説明する。
  図7は、本発明の第四の実施態様である相変化メモリ装置の全体の回路構成を例示した回路図である。
  図7に例示される様に、相変化メモリ装置の中央部には、素子選択用のMOS電界効果トランジスタ(M)と、前記相変化層を含む部分(図中、等価抵抗Rとして描かれている)と、により構成されるメモリセルをマトリックス状に配置してなるメモリセル部が配置されている。
  図7に例示されるGはグランド線(接地電位用配線)であり、W1〜W4はワード線であり、B1〜B3はビット線である。
  Xデコーダ120,121と、Yデコーダ122,123は、アドレス回路を構成する。
  Xデコーダ120,121は、ワード線W1〜W4を駆動する。Yデコーダ122,123は、ビット線B1〜B3を駆動する。
  制御回路124は、相変化メモリ装置の動作を統括的に制御する。この制御回路124は、Yデコーダ122,123、Xデコーダ120,121のそれぞれに、制御信号S5〜S8のそれぞれを供給し、各デコーダ(120〜123)の動作を個別に制御する。
  パルス生成回路125は、制御回路124からの制御信号S10に従って、各種のパルス信号(セットパルス、リセットパルス、リードパルス)S20を生成し、Yデコーダ122,123に供給する。
  図7中、A10a,A10bはセンス回路を構成するオペアンプである。R10a,R10bは、電流I(図7中、太い実線の矢印で示される)を電圧に変換するための、電流/電圧変換抵抗である。なお、Vrefは基準電圧であり、Vout1,Vout2は相変化メモリ装置の検出信号(読み出し信号)である。
  図8は、図7に示される相変化メモリ装置の、メモリセル領域における素子や配線のレイアウト配置の一例を示す平面図である。図8において、図6と共通する部分には同じ参照符号が付されている。
  図8において、実線で囲まれる長方形の領域Fは、STI(shallow  trench  isolation)により囲まれて形成された素子形成領域である。
  また、縦方向に布線される2本の配線(DP)はドープトポリシリコン層からなり、それぞれ、ワード線(W1,W2)を構成するものであり、MOS電界効果トランジスタのゲート電極を兼ねるものである。
  また、左右に配置される積層ヒータ電極は、第一の導電材料からなる第一の電極部分184と、第二の導電材料からなる第二の電極部分183とからなるものである。
  ここで前記第一の導電材料としては、先に例示した本発明の第二の実施態様の場合と同様に、例えばTi[N(CH3)2]4を原料とした有機金属気相成長法(MO−CVD法)により得られたTiN等を挙げることができる。また前記第二の導電材料としては、例えばTiClを原料とした化学気相成長法(CVD法)により得られたTiN等を挙げることができる。
  また、中央に配置される接地電位用プラグ100は、TiNおよびTiからなるバリアメタル179と、タングステン180とにより構成される。
  また、図8において参照符号200は接地配線(G)である。また相変化層としてのGST185(図中、一点破線で囲まれて示されている)が、左右に布線されている。
  次に製造方法について説明する。
  まず半導体基板内と半導体基板上にメモリセル選択用のスイッチング素子を形成する第一の工程について説明する。
  図9は、第一の工程における、図8のA−A’線に沿う相変化メモリ装置の模式要部断面図である。
  図9に例示される様に、p型半導体シリコン基板170に、素子分離領域としてSTI(shallow  trench  isolation)171を形成した後、ゲート酸化膜173を形成する。
  次にドープトポリシリコン175を100nm、タングステンシリサイド176を100nm、シリコン窒化膜177を100nmの厚みで順次形成する。
  続いてフォトレジスト(図示せず)を形成し、フォトリソグラフィによって加工してエッチングマスクを形成する。
  次にRIE(リアクティブイオンエッチング)等の異方性エッチングによって、シリコン窒化膜177をエッチングしてレジストマスクを除去する。
  続いてシリコン窒化膜177をマスクとして、タングステンシリサイド176,ドープトポリシリコン175を連続的にエッチングしてゲート電極を形成する。
  次にゲート電極をマスクとしてリンをイオン注入してn型拡散層172a,172bを形成する。
  続いてシリコン窒化膜を50nm堆積し、RIEによってエッチバックすることによって、サイドウォール174を形成する。
  この様にして形成されるMOS電界効果トランジスタのゲート部分は、図8中のワード線DP(W1,W2)に相当する。
  この様に前記MOS電界効果トランジスタは前記メモリセル選択用のスイッチング素子として機能するものである。
  次に前記スイッチング素子に電気的に接続するコンタクトプラグを形成する第二の工程について説明する。
  図10は、第二の工程における、図8のA−A’線に沿う相変化メモリ装置の模式要部断面図である。
  前記半導体シリコン基板170の上に層間絶縁膜としてTEOS酸化膜178を700nmの厚みで形成し、CMP(化学的機械的研磨)によって平坦化する。
  次に層間絶縁膜178の所定の位置にフォトリソグラフィによってコンタクトホールを形成する。このとき、層間絶縁膜178のエッチングに際しては、層間絶縁膜178がエッチングされ、シリコン窒化膜がエッチングされない条件を選択してエッチングを行う。
  このコンタクトホールの内面に、Tiを10nm、TiNを15nm程度の厚みで連続的に堆積してバリアメタル179を形成する。
  続いてコンタクトホールの内面にWを埋設し、CMPにより平坦化することによりコンタクトプラグ180が形成される。
  また接地電位用プラグ105上にWからなる接地配線200(G)を形成する。
  次に前記コンタクトプラグ上に形成される層間絶縁膜の一部を選択的にエッチングしてコンタクトホールを形成する第三の工程について説明する。
  図11は、第三の工程における図8のA−A’線に沿う相変化メモリ装置の模式要部断面図である。
  図11に例示される様に、層間絶縁膜としてHDP膜(ハイデンシティプラズマ酸化膜)182を形成する。
  続いてフォトレジスト(図示せず)を形成し、フォトリソグラフィによって加工してエッチングマスクを形成する。
  次にプラズマエッチング等の異方性エッチングによって、層間絶縁膜182の所定の位置をエッチングしてからレジストマスクを除去する。
  この様にして前記層間絶縁膜182に積層ヒータ電極を埋め込むためのコンタクトホール188を形成する。
  図12は、第四〜第六の工程における図8のA−A’線に沿う相変化メモリ装置の模式要部断面図である。
  前記コンタクトホール内に第一の導電材料を堆積する第四の工程と、前記第一の導電材料に重ねて第二の導電材料を堆積する第五の工程は、先に説明した第三の実施態様の場合と全く同様である。
  この様にして、前記第一の導電材料からなる前記第一の電極部分184の下端部および前記第二の導電材料からなる前記第二の電極部分183の下端部が前記コンタクトプラグ180に接する様に前記積層ヒータ電極を設けることができる。
  次に前記層間絶縁膜182の上に、フォトレジスト(図示せず)を形成し、フォトリソグラフィによって加工してエッチングマスクを形成する。
  次にプラズマエッチング等の異方性エッチングによって、前記層間絶縁膜182の所定の位置をエッチングしてからレジストマスクを除去する。
  続いて薄いTi層を密着層192として形成する。さらに前記Ti層192に重ねて相変化層としてGST185を100nmの厚みで堆積させる。そしてGST膜185上にWからなる上部電極層186を形成する。
  上部電極層186上に層間絶縁膜187を形成し、この層間絶縁膜187の所定の位置にコンタクトホールを形成する(図示せず)。
  前記層間絶縁膜187に設けられたコンタクトホールにWを埋設してコンタクトプラグ189を形成する。ついでWからなる配線層190を形成する。この配線層190は図7の回路図におけるビット線(B1〜B3)を構成する。
  上述した工程により、本発明の相変化メモリ装置を製造することができる。
  この様にして得られた本発明の相変化メモリ装置は連続書き換えテストにおいて1010回連続書き換えが可能であったのに対し、本発明に使用した積層ヒータ電極に替えて、有機金属気相成長法により得られたTiNからなるヒータ電極を使用した相変化メモリ装置の場合は、連続書き換えテストにおいて106回の連続書き換えにより動作不良が発生した。
  以上、本発明について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変形、応用が可能である。
  例えば、メモリセルを構成するMOSトランジスタの替わりにバイポーラトランジスタ、接合ダイオード、ショットキーバリアダイオード等のスイッチング素子を使用することができる。
  また本発明に使用する相変化層としては、カルコゲナイド半導体以外の材料を使用することもできる。また、相変化メモリ装置の回路形式として、図15に例示されるような回路形式、すなわち波形の異なるパルスを入力するのではなく、サイズの異なるトランジスタを選択的に導通させて電流を制御する方式を採用することができる。