以下、最良の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかるプラズマ処理装置における真空処理室周りの構成の概略を示す縦断面図である。図に示すように真空処理容器を構成する筒状の側壁203の内側に誘電体製の内壁204が配置される。この内壁203の上部には、アンテナ100を配置し、アンテナ100には周波数450MHzのUHF波を供給する。これにより、アンテナから放射されるUHF波とソレノイドコイル101によって形成される磁場とのECR共鳴によって、処理室内に処理ガスのプラズマを形成し、下部電極102上に載置した試料にプラズマ処理を施すことができる。
  ECR共鳴は、前記ソレノイドコイル101が生成する磁界の磁力線に沿って電子が回転しながら移動するところに、その回転の周期に対応した周波数のUHF波を入射することで電子が選択的に加熱される現象であり、プラズマの効果的な加熱法として知られている。UHF波は高周波電源104で生成し、UHF整合機105を介して負荷インピーダンスとマッチングさせたのちアンテナ100に供給する。
  前記天板202の下方には処理ガス供給用の空間を空けてシャワープレートを設けてある。処理ガスは、ガス源109から前記空間を通り、さらに前記シャワープレートに形成した多数の細孔を介して処理室内に供給される。なお、供給するガス流量はマスフローコントローラ(MFC)111によって制御される。
  シャワープレート103とこの上方に配置され真空処理室内と外側とを気密に区画する天板202との間に処理ガスが一旦溜められるバッファ空間が配置されており、処理室内圧力とバッファ空間内の処理用の反応性ガス(処理ガス)の圧力との差圧によってシャワープレート103は外力を受けることになる。つまり、略円板形状のシャワープレート103の外周が真空処理室に保持され、シャワープレート103の中央部は前記差圧により押し付け、あるいは引っ張り力が作用することになる。
  このような外力に対するシャワープレート103の強度的な限界からバッファ空間および上記細孔を通り真空処理室内に供給される処理ガスの最大供給量は制限を受けることになる。本実施形態のシャワープレート103は石英製で厚さ7mm以下、細孔の径が約0.1mm、細孔の数が数百個以上の構造である。この場合、安全率を見込むとシャワープレート103を介して供給可能なガスの最大供給量は1000sccmであった。
  ガスバルブ110は処理ガスの真空処理室内への供給を調節するために配置され、その開閉により処理ガスの開始または終了が行われる。真空処理室内に供給された処理ガスを含む真空処理室内の気体は下部電極102下方に配置された排出口からターボ分子ポンプ (TMP)106の動作によって排気され、真空処理室内の圧力が所定の圧力まで減圧される。また、ターボ分子ポンプ上流部に設けた可動弁112によってその排気の速度が調節され、真空処理室内の圧力が調節される。
  前記試料である半導体ウエハは静電吸着により下部電極102に吸着保持可能である。さらに、下部電極102にRF電源107より周波数400kHzの高周波を整合器108を介して印加することにより試料の処理性能の制御、処理速度の向上を図ることができる。
  真空処理室、下部電極102、ターボ分子ポンプ106はそれぞれ略円筒形であり、その円筒の軸を一致させて配置している。また、下部電極102は真空処理室内の側壁を構成する部材と梁によって連結され、側方の外周を囲む側壁との間に空間を有して支持されている。また、前記電源、マスフローコントローラ、ターボ分子ポンプ、ソレノイドコイル、整合器等は図示しない制御コンピュータに接続され、適切なシーケンスで動作するようそのタイミング、動作量がコントロールされる。また、その動作結果は制御コンピュータに保存され、また動作結果が適切であるか判断され、不適切な動作をしたときには報告がなされる。
  ガス源109、ガスバルブ110、マスフローコントローラ111及びシャワープレート103は真空処理室内へのガス供給手段を構成する要素である。シャワープレート103に配置される複数の細孔208の長さや内径、真空処理室内に面する開口の径を適切な値にすることにより、真空処理室内に形成したプラズマを用いて試料表面を処理中に半導体ウエハ上に発生する副生成物の分布を最適化し、エッチング性能の面内均一性を向上させることができる。本実施形態の場合、シャワープレート103に設けられた細孔208のガス導入口は、前述のように直径が約0.1mmであり、数百個の導入口が略円板形状のシャワープレート103の中心近傍に配置されている。これらのガス導入口は略円筒形状の下部電極102の円形状上面の径の約1/3の大きさの径の略円形の領域に相互にほぼ等間隔で配置される。
  図2は、第1の実施形態を説明する図であり、図1に示すシャワープレート103及び真空処理室の側壁の構成を拡大して示す縦断面図である。図2に示すように、真空処理室のシャワープレート103、側壁203および内壁204部分の近傍では、側壁203の上部にガス導入口200,201を有し、略水平方向へのガス導入口200と略垂直方向へのガス導入口201に同時に等量のガスを供給することができる。本実施形態では、プラズマに面してガス導入構造を含む内壁204は、側壁203の上部でその上面と内側面と接してこれを覆って配置され、側壁203から分離することが可能で、内壁204をメンテナンスの必要に応じて取り外すことができる。また、シール部材205によって内壁204及び側壁204の間の気密が保持されている。また、シャワープレート103は、その外周端部が内壁204の上端の凹み部内に収納されて、この上端により略円板状の周端が支持される。
  前記ガス導入口200及び201は、略円筒形である真空処理室または下部電極102の中心軸に対して略同一半径上の位置に、さらには軸対称となる位置に配置される。またその数は、図8を参照して後述するように、ガス導入口から供給されるガスの速度分布が、処理室内のシャワープレート103のガス導入孔部から下部電極面までの空間内で軸対称となるのに十分な数である。なお、ガス導入口200,201の個数はそれぞれ異なってもよく、複数個であっても奇数個であってもよい。
  前記導入口200、201に供給する掃気ガスの流量はマスフローコントローラ206により調整される。また、シャワープレート103に供給する処理ガスの流量はマスフローコントローラ207によって調整される。マスフローコントローラ206,207はそれぞれ独立した流量制御が可能である。
  なお、図3に、変形例として示すように、単一のガス源からのガス供給路に配置されたマスフローコントローラ208とそれに接続されガス分配器209により、ガス導入口200,201から噴出するガスの流量を分配する構成においても同様な作用を奏することができる。
  さらに、マスフローコントローラ206,207が配置されたガス供給路の各々に、異なるガス源からの異なる種類、組成のガスを通流させ、マスフローコントローラ206,207各々で異なる流量、速度に調節して処理室内に導入しても良い。特に、ガス導入口200,201からは、シャワープレート103または内壁204の表面とプラズマとの相互作用を抑制するガスや希釈ガスである掃気ガスを導入し、細孔208からは半導体ウエハ表面の処理対象の膜層と作用する処理ガスを導入する。このようにすることで、処理室内のプラズマ、生成物の密度や半導体ウエハの処理の特性をより適正に調節することが可能となる。
  なお、ガス導入口200に代表される水平方向へのガス供給口からの異物除去を目的とする際の掃気ガスの流量は、シャワープレートから供給される最大1000sccmよりも大きいものである。
  図7,8は、処理室内のガスの流れを説明する図であり、図7は前記ガスの導入口200,201を設けない場合のガスの流れ、図8は前記ガスの導入口200,201を設けた場合のガスの流れを示す。なお、図7,8において図1に示される部分と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
  図7に示す例では、処理室内のガスの流れは、半導体ウエハ上方の、ウエハに対向するシャワープレート103の細孔から供給された処理ガスは、下方に移動した後、半導体ウエハ直上の空間を半導体ウエハおよび下部電極102外周側に向かって移動し、一部は真空処理室と下部電極102外周との間の空間から下方に移動して下方の排出口から排気される。他の一部は、内壁204の内表面を下方から上方に移動して、内壁204の上端部およびシャワープレート103外周端部が当接する空間、いわゆる処理室の角(隅)部に到達して処理室の中央側に折り返すように流れる。つまり、一部のガスは前記処理室の角部の空間を通って循環する渦状の流れを形成する。
  この渦状の流れの内部ではガスは滞留することになり、前記角部を形成する壁表面への処理室内の生成物の付着が他の部分より著しく増大し、この付着した生成物が塊として剥離したり、再度解離したりして半導体ウエハ表面に付着して異物となるという問題が生起する。
  一方、図8に示すように、前記掃気ガスの導入口200,201を設けた場合は、処理室上部の側壁付近にガスの渦ができることを防ぎ、前述のようなウエハの汚染を防止することができる。また、ガスの流れが滞らなくなることで、一旦プラズマ中に放出された異物を、壁などに再付着させること無く異物を速やかに排出することが可能になる。
  このように、本発明の実施形態によれば、処理室内に浮遊して存在する異物を速やかに排出することができる。このため、装置立ち上げ時間の短縮などに有効である。反応生成物が堆積し、これに伴い、エッチング性能の劣化あるいは異物数が増加すると、処理室を分解する湿式クリーニングが必要となる。湿式クローニングを行った場合には、通常、多くの異物含む雰囲気を処理容器内に持ち込むことになる。
  このような場合には、処理室の再組み立てが完了した後、製品着工可能な装置状態を作り上げるため、ダミー放電などの処理を繰り返す作業が必要となり、装置稼働率が低下する。この場合に、本発明のように、掃気ガスの導入口を設け、該導入口から処理ガス以上の流量の掃気ガスを導入して、かつ排気することにより、処理室内に浮遊して存在する異物を速やかに排出することができる。これにより、ダミー放電の回数・時間を減らすことが可能になり、装置稼働率を向上させることができる。
  図4は、別の変形例を示す縦断面図である。図4に示すように、内壁204に沿ったガス流れを作るガス導入口210は、シャワープレート103の最外周部であって側壁203または内壁204の上端部内側近傍に配置されても良い。この場合は、ガス導入口200,210は、下部電極102の中心軸についての周方向で異なる角度位置に配置され、相互にガス導入を阻害しないようにされる。また、ガス導入口210の配置位置は、内壁204により支持されるシャワープレート103外周端部の近傍に位置しており、本例の場合は側壁によって支持される支持点の近傍であるため、1000sccm以上のガスを流すことが可能である。また、この例では、シャワープレート中心部の細孔208から供給されるガスと、異物除去を目的とした前記構造より供給するガスとは図中のようなシール部材205’を用いて分離する。
  また、前記のガス流れを提供するガス導入口としては、ガス供給の向きをエッチングプロセス中に任意に変えることができる可動のものであってもよい。また、以上の実施形態うちの可能な組み合わせであっても良い。
  また、ガス導入口の出口部分は、所望する噴出向きに対して垂直な面内にあることが望ましい。例えば図5に示すように垂直方向に噴出させる導入口を処理室内に傾いた面に設けると、ガスの噴出向きはそれに従い、処理室側壁からある角度を持った速度分布となる。この場合、処理室側壁から放出される異物の除去としては、側壁下部にガスが流れず異物除去が十分に行われない。
  また、例えば図6に示すように、垂直方向に噴出させる導入口を処理室側壁側に傾いた面に設けると、ガスの噴出向きはそれに従い、処理室側壁にいったん吹き付けられ、側壁においてガス流れが反射し、側壁下部の異物除去が十分に行われない。
  ここで、エッチングプロセス中における異物の挙動について説明しておく。プラズマは巨視的には電気的に中性であり、プラズマ中のイオン密度と電子密度はおよそ等しい。しかし、電子温度がイオン温度に比べて高いために、バルクプラズマ中のある領域に流れる電子電流はイオン電流に比べて大きい。この電子電流とイオン電流はプラズマ中に浮遊する異物に対して等しくならなければならず、その平衡状態として異物は電気的に負に帯電することが多い。
  プラズマ中に存在する異物に働く力は、主として静電気力、イオン粘性力、ガス粘性力、重力であり、一般に放電中は静電気力とイオン粘性力が支配的になる。
  シリコンウエハを載置した下部電極近傍について見ると、プラズマは下部電極の電位に対して高い電位を持っており、その電位勾配のある部分はシースと呼ばれるが、このシース付近に存在する異物は上記のように負に帯電しているため、該異物は静電気力によりプラズマのほうへ押し戻そうとする力を受ける。
  また、イオン粘性力は、プラズマ中の正イオンがシースの電位勾配により電極側へとひきつけられる際に衝突、または異物に接近し軌道を変えることで異物に運動量を与えることによる力である。
  プラズマ処理中は上記の静電気力およびイオン粘性力に加え重力、ガス粘性力が異物に働くことにより、異物はこれらの力のつりあう位置で捕獲される、またはつりあう位置を中心とした振動をする傾向にある。
  放電が終了すると、重力、熱泳動、装置内部や異物の残留電荷の間に働く静電気力が支配的となり、また放電中に異物が運動をしていた場合にはそれによる初速度を持つことになる。このため、放電が終了しプラズマが消失すると、これらの異物のあるものは飛散し、あるものはウエハ上に落下する。
  本実施形態のプラズマ処理装置では、処理室内に形成され異物となる生成物の挙動をガスの流れを用いて制御するために、プラズマを生成するためのUHF波の放電開始および終了の際、あるいは半導体ウエハの静電吸着を除去する除電ステップ等の特定のタイミングに異物除去に十分な流量のガスを供給し、異物がプラズマ中に捕獲されている状態で排出する。
  一様なガス流中に球形の異物が浮遊している状態について考えると、ガス粘性力はガス流に対する異物の断面積、ガスの分子量、ガスの密度、分子の速度にそれぞれ比例すると考えることができる。排気速度の制御によって調圧された処理室内では、ガスの密度とガスの流速との積は一定であるため、ガス粘性力に支配的なのはガス流量である。本実施形態では、前記ガス流速を増すことにより、プラズマ中に浮遊する異物を低減し、さらにプラズマ中に浮遊する異物はウエハに付着させずに排出することができる。
  次に、図9を用いて、半導体ウエハのエッチング処理のシーケンスについて説明する。エッチング処理に際しては、まず、マスフローコントローラを用いて流量制御されたガスA(処理ガス)を処理室内に導入し(303)、同時に排気速度制御によって所望の処理室内圧力を達成する。安定した処理室内圧力を検知すると、アンテナ100よりUHF波が処理室内に供給され(304)、プラズマを生成する。このとき、ウエハは静電吸着(ESC)によって下部電極102に固定される(305)。またこの電極にはプラズマ中の活性種をウエハ表面に引き込むために高周波バイアス電圧(RF)が印加される。処理が終了すると、前記バイアス電圧(RF)および静電吸着(ESC)のための電圧印加が止められる(306)。なお、ウエハへの残留電荷を除去するためその後わずかの時間(除電期間)だけ放電は継続される(307)。この静電吸着による残留電荷の除去処理(除電ステップ)の間はエッチングを進行させない。このため、エッチング終了(306)後は半導体ウエハと反応しない不活性のガス、例えば、処理中に処理ガスを希釈するために供給されるAr等の希釈用ガスを掃気ガス(ガスB)として供給する。UHF波の供給が終了すると速やかに前記掃気ガスの供給を停止して処理室内を高真空に排気する。
  次に、本実施形態のプラズマ処理装置において、半導体ウエハに対して1つのエッチング処理を終了して、別のエッチング処理を行うシーケンスについて述べる。
  まず、処理室内に浮遊する異物を除去する。処理室に浮遊する異物の起源は、(1)放電開始に伴うプラズマの発生によって処理室側壁近傍に電界が生じ、側壁に付着する異物と側壁とがそれぞれ分極し、静電気力によってはがされる。(2)プラズマから側壁に向かい電界によって加速された正イオンが側壁をスパッタすることにより、側壁にある異物があるエネルギーを与えられシース電界を乗り越えてプラズマ中に取り込まれる。(3)プラズマ気層中で反応生成物どうしが結合し成長するなどであると考えられている。
  このため、放電を開始して処理を開始する前に、前記ガス導入口から垂直方向に掃気ガス(ガスB)を供給し(301)、あらかじめ側壁に沿ったガス流れを形成する。これにより、側壁がプラズマにさらされることによって放出される異物はプラズマに取り込まれることが抑制されて処理室から下部電極102直下方の排出口から排出される。
  この後、前述のように、処理ガス(ガスA)を処理室内に導入し(303)、半導体ウエハを下部電極102上面の載置面上に静電吸着して保持し(305)、処理室外からUHF帯の周波数による電界または磁界を処理室内に供給し(304)て処理用ガスを放電して形成したプラズマにより半導体ウエハをエッチング処理する。この間、下部電極102内の電極(図示せず)には、プラズマ中の荷電粒子を半導体ウエハ表面に誘引するためのバイアス電圧(RF)が供給される。
  プラズマ処理が終了したと判断されるとプラズマ放電を終了する。この際には、ウエハを下部電極へ静電吸着させるために印加されていた静電吸着(ESC)電圧を遮断またはほぼ0まで低下させて所定の時間保持して、ESC電圧が与えられたことによってウエハに帯電した電荷を低減あるいは除去する(307)。この間、シャワープレート103および上記ガス導入口200、201あるいは210からAr,He等の希ガスをはじめとする反応性の低いガスを導入しエッチングを進行させることなく放電を継続する(302)。この除電期間の間はUHF波を導入し続ける。なお、このとき異物はプラズマ中に捕獲されたままである。
  静電吸着電圧の遮断と同時、あるいはその前から大きな流量の希ガスを前記ガス導入口200,201または210から処理室内に掃気ガスとして供給する。これにより、ウエハ上方に捕獲されている異物をガス流に乗せて排出することができる。ガス導入口200,201あるいは210からの大量の希ガスはシャワープレート103の中心部直下に集まるようにその外周側から中央側に向けて供給される。この流れは、シャワープレート103から供給された処理ガスが作る流れに影響されて、処理ガスの流れに沿って処理室中央付近では下方へ向かい、ウエハ直上では中央から周囲へと向かう。また、この流れは、処理室、シャワープレート103あるいは下部電極102に対して軸対称である。これは、前記したように略円筒形の処理室、下部電極102あるいは略円形の排出口が同軸上に配置されていることで、軸対称の流れが形成されることによる。
  除電時間(307)終了後にはプラズマ生成用の電界および磁界は停止されるが、処理ガス(ガスA)および希ガス等の掃気ガス(ガスB)は処理室内に導入され続ける(302,303)。次に、処理ガスの導入が停止され掃気ガスのみが処理室内に導入される。その後、予め定められた掃気ガスの導入の時間が経過後に掃気ガスの導入が停止される。この後、半導体ウエハの処理を終了する。あるいは掃気ガスが導入された状態(302)から引続き、別のエッチング処理、例えば下層の膜や別の種類の組成の膜の処理を行う。  別のエッチング処理を行う場合には、先のエッチング処理と異なる条件の処理ガスの導入が開始された後、掃気ガスの導入が停止されるとともに、先の処理と同じくUHF帯の電界の印加、静電吸着のための電圧の印加、高周波電力の下部電極102への供給が行われる。
  このように、処理室の天井面を構成するプレートの中央付近に配された細孔から処理ガスを供給することに加え、処理容器から取り外し可能な側壁の上部に大流量(1000sccm以上)のガスを供給可能な第1ガス導入口を処理室中心に対し略対称に備え、ここから上記プレートに平行な方向、すなわち水平方向にガス供給を行う。また、第2のガス導入口を介して側壁と平行な方向、すなわち垂直方向に大流量(1000sccm以上)のガス供給を行う。この場合、大流量のガスは通常プロセスの数倍〜数十倍のガス粘性力を生みだし、このガス粘性力によって異物を有効に排出することができ、処理開始時のプラズマ生成に伴う異物発生と、発生した異物が処理終了時にウエハ上に付着することによる汚染を防止することができる。
  図10は、本発明の第2の実施形態にかかるプラズマ処理装置示す縦断面図である。前記第1の実施形態では、エッチング等のプラズマ処理の前後に処理室の角部から希ガス等の反応性の低い掃気ガスを大きな流量で供給しつつ放電を停止して、半導体ウエハ上のプラズマ中に浮遊する反応生成物を下部電極102の外周側に排出する技術を示した。このような生成物の排出は、大きな流量のガスをウエハ上の中央から外周側に向けて流れるように供給することにより達成される。図10は、図1に示すプラズマ処理装置の変形例を示す図である。以下に、この図において図1の実施形態と異なる構成について主に説明し、同様の構成については説明を省略する。
  本実施形態の図1に示す実施形態との差異は、処理室の天井面を一体として覆うシャワープレート103と天板202との間のバッファ空間が区画されているところにある。すなわち、バッファ空間は、シャワープレート103と天板202との間に介挿されたリング状隔壁202aにより、内周側空間1003aおよび外周側空間1003bに区画される。なお、このときリング状隔壁の中心軸はシャワープレート等の中心軸に一致させて配置する。このため、前記内周側空間1003aおよび外周側空間1003bには、それぞれ異なるガスを異なる流量で供給することができる。
  このような構成にすることで、処理室内の内周側および外周側でのプラズマ内の荷電粒子、活性粒子、生成物の密度、あるいは分布を調整でき、半導体ウエハの処理の特性をより柔軟に調節することができる。このことにより、より多くの種類の半導体ウエハや膜層に対して適正な条件で処理を実現して、処理の再現性や精度を向上させることができる。
  図10に示すように、内周側空間1003aには、マスフローコントローラ1011aおよびガスバルブ1010aを介して流れが調節された第1の処理ガスが供給される。また、外周側空間1003bには、マスフローコントローラ1011b、ガスバルブ1010bを介して第2の処理ガスが供給される。また、これらの空間1003a,1003bに供給されたガスは下方の処理室内に供給される。
  また、マスフローコントローラ1011a,1011bには、第1の処理ガスおよび第2の処理ガスを貯留するタンクを備えた第1のガス源1009a、第2のガス源1009bが接続される。また、希ガスを貯留したタンクを備えた希ガス源1009cがマスフローコントローラ1011a,1011bと連通可能に接続される。
  これら3つのガス源1009a,1009b,1009cは各々2つのマスフローコントローラ1011a,1011bとバルブ1012a,1012b,1012cを介して連通可能に接続されている。さらに、マスフローコントローラ1011a,1011bの間はその上流側でバルブ1013を介して連通可能に接続されている。
  前記マスフローコントローラおよびバルブは、演算装置を備えたコントローラ1014と接続され、コントローラは、各マスフローコントローラおよびバルブとその動作状態の情報と動作の指令情報の授受が可能である。なお、このコントローラ1014は、プラズマ処理装置の電源、コイル、ターボ分子ポンプ、バルブ等とも同様に接続され、これらの動作を調節可能である。
  本実施形態においても、図3に示す例と同様に、エッチング処理の前後、あるいは2つのエッチング処理の間に、半導体ウエハ表面の膜に影響を与えない希ガス等の掃気ガスを供給してプラズマを生成するとともに、大きな流量で掃気ガスを供給することで、ウエハ表面のプラズマ中に浮遊している生成物等異物の原因となる物質を下部電極102外周側から処理室外に排出することができる。
  プラズマ処理中は、コントローラ1014からの指令に応じ、内周側空間1003aに第1のガス源1009aからの第1の処理ガスを供給する。このとき、コントローラ1014は、バルブ1012aおよび1010aを所定量開くとともにバルブ1013を閉塞し、マスフローコントローラ1011aによって調節された流量で第1の処理ガスを供給する。また、第2の処理ガスも同様に、外周側空間1003bに第2のガス源1009bから供給する。このとき、コントローラ1014は、バルブ1012b,1010bを所定量開き、マスフローコントローラ1011bで流量が調節され第2のガスを外周側空間に供給する。
  なお、バルブ1013を開放し、1012a,1012bいずれかを閉塞することで、内周側空間と外周側空間とに同一種類のガスを供給することもできる。また、内周側空間、および外周側空間1003a,1003bから処理室内に供給する処理ガスの流量は、外周側で高く内周側で低くすることも、その逆にすることもできる。
  希ガス源1009cからの希ガスは、バルブ1012cを所定量開放して、内周側および外周側空間1003a,1003bのいずれにも供給可能である。さらに、エッチング処理の前後、または2つのエッチング処理間に供給する場合には、マスフローコントローラ1011aを1000sccm以上の予め定められた値の流量となるように設定して希ガスを内周側空間1003aに供給する。
  マスフローコントローラ1011bは、外周側空間1003bに供給する希ガスの量を内周側空間に供給する流量よりも小さい値、例えは1000sccm以下の値に調節する。  この場合は、処理室の内周側に外周側よりも大流量の希ガスが供給されることになり、処理室内において半導体ウエハ上で内周側から外周側に向かう流れが形成される。これにより、プラズマ中の浮遊する異物源は前記希ガスからなる掃気ガスとともに下部電極102の外周の空間から下方に向かい、さらには排出口から真空処理室外に排出される。
  本実施形態では、エッチング処理終了後にシャワープレート103の中央側から1000sccm以上の希ガスを処理室内に導入しつつ放電してプラズマを形成する。このためシャワープレート103は、図1に示すものに比して強度を大きく設定している。例えば、厚さが7mm以上の大きさのものやAl2O3やSiC等の剛性の大きな材質のもので構成する。また、内周側のバッファ空間1003aの下方のシャワプレート構造体1003aの細孔の個数は、外周側のバッファ空間1003bの下方のシャワープレート1003bの細孔の個数より大きくされ、より中央側に大きな流量の範囲でガスを処理室内に供給可能に構成する。
  以上の例では、静電吸着電極として吸着を単一の電極によって行うモノポール型の静電吸着電極を例に説明したが、同時に正負の電位をウエハの内周と外周に分けて印加するダイポール電極を使用することも可能である。また、UHF波を用いたエッチング装置を例に説明したが、他の放電(有磁場UHF放電、容量結合型放電、誘導結合型放電、マグネトロン放電、表面波励起放電、トランスファー・カップルド放電)を利用したドライエッチング装置においても同様に適用することができる。また、プラズマを用いるエッチング装置を例に説明したが、プラズマ処理を行うその他のプラズマ処理装置、例えばプラズマCVD装置、アッシング装置、表面改質装置等についても同様に適用できる