次に、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
  <第1実施形態>
  第1実施形態に係る半導体レーザ素子の概略構造について、図1を用いて説明する。半導体レーザ素子は、基板1上に形成された第1導電型の第1クラッド層2と、第1クラッド層2上に形成された活性層3と、活性層3上に設けられた第2導電型の第2クラッド層4と、第2クラッド層4の凸部4a上に設けられたコンタクト層5とによって構成される半導体層を有する。第2クラッド層4は、A方向に沿って延びる凸部4aと、凸部4aの幅方向(B方向)外側に設けられた平坦部4bとによって構成される。
  半導体レーザ素子は、平坦部4bの上面及び凸部4aの側面に形成されており、絶縁性の材料によって構成された電流ブロック層6を有する。半導体レーザ素子は、コンタクト層5と電流ブロック層6上に形成された電極7を有する。
  電極7は、A方向に沿ってコンタクト層5(凸部4a)上に設けられた直線部7aと、直線部7aから凸部4aの幅方向(B方向)外側に突出する複数の突出部7bとを有する。なお、直線部7a及び複数の突出部7bは、それぞれ、本発明の「第1の部分」及び「第2の部分」の一例である。複数の突出部7bの間には、電流ブロック層6が露出する間隙が設けられている。ここで、「間隙」の形状は、凸部4aの幅方向(B方向)外側における複数の突出部7bの端部が繋がっていない形状(図1)だけではなく、凸部4aの幅方向(B方向)外側における複数の突出部7bの端部が繋がっている形状を含む。後者の形状としては、例えば、後述する図13に示す形状が挙げられる。
  図1では、突出部7bは、凸部4aが延びる方向(A方向)に沿って一定間隔で設けられている。すなわち、電極7は、凸部4aの幅方向(B方向)外側における複数の突出部7bの端部が繋がっていないくし型形状を有する。
  (半導体レーザ素子の構造)
  次に、第1実施形態に係る半導体レーザ素子の構造について、詳細に説明する。図2及び図3は、GaN基板を用いた窒化物系半導体からなる400nm帯半導体レーザ素子(青紫色LD)の構造を示す上面図及び断面図である。
  図3(a)に示すように、Ga面のC面(面方位(0,0,0,1))を表面とし、酸素がドーピングされた六方晶n型GaN基板11上に、約1μmの膜厚を有し、Siドープn型GaN層からなるバッファ層12が形成されている。このバッファ層12上には、約1.5μmの膜厚を有し、n型Al0.05Ga0.95Nからなるn側クラッド層13が形成されている。
  n側クラッド層13上には、約50nmの膜厚を有し、アンドープGaNからなるn側光ガイド層14が形成され、更に、n側光ガイド層14上には、多重量子井戸(MQW)構造を有する活性層15が形成されている。この活性層15は、図3(b)に示すように、約15nmの膜厚を有する2つのアンドープGaNからなる障壁層15aと、約4nmの膜厚を有する3つのアンドープIn0.10Ga0.90Nからなる井戸層15bとが交互に積層された構造を有する。
  活性層15上には、約100nmの膜厚を有し、アンドープGaNからなるp側光ガイド層16が形成され、p側光ガイド層16上には、約20nmの膜厚を有し、アンドープAl0.30Ga0.70Nからなるキャップ層17が形成されている。
  アンドープAl0.30Ga0.70Nからなるキャップ層17上には、Mgがドーピングされ、最大で約500nmの膜厚を有するとともに、中央付近に、約1.5μmの幅を有するストライプ状の凸部を有するp型Al0.05Ga0.95Nからなるp側クラッド層18が形成され、その凸部上には、約10nmの膜厚を有し、アンドープIn0.05Ga0.95Nからなるp側コンタクト層19が形成される。このp側クラッド層18の凸部と、p側コンタクト層19により、電流注入領域となるリッジ部が形成されている。
  p側クラッド層18の平坦部上、及び、p側クラッド層18の凸部側面と、p側コンタクト層19側面を覆う形で、約300nmの膜厚を有し、SiO2からなる電流ブロック層20が形成されている。更に、p側コンタクト層19表面上には、Pt/Pd(2/10nm)からなるp側電極21が形成され、p側電極21及び電流ブロック層20上には、くし型形状を有するTi/Au(10/500nm)からなるp側パッド電極22が形成されている。
  図2に示すように、p側パッド電極22は、A方向に沿ってp側電極21(p側クラッド層18の凸部)上に設けられた直線部22aと、直線部22aからB方向外側に突出する複数の突出部22bとを有する。なお、直線部22a及び複数の突出部22bは、それぞれ、本発明の「第1の部分」及び「第2の部分」の一例である。複数の突出部22bの間には間隙が設けられている。p側パッド電極22上の一部の領域には、Auからなるボンディングワイヤ23が接続され、外部電源からp側パッド電極22に給電することができる。
  第1実施形態では、突出部22bの幅a及び間隙の幅bは、例えば、約15μmと同等にされている。電流注入領域(p側電極21)の幅cは、約15μmである。p側パッド電極パターンの外周寸法は、200μm×400μmである。電流ブロック層20及びp側パッド電極22にボンディングワイヤ23が接する領域は、直径約70μmの略円形の領域である。突出部22bの幅a及び間隙の幅bを周期dとした場合に、周期dは、ボンディングワイヤ23の接着径(70μm)の1/2以下であることが好ましい(例えば、30μm)。
  又、図3(a)に示すように、n型GaN基板11の反対側には、Ti/Pt/Au(10/2/500nm)からなるn側電極24が形成されており、AuSnからなる融着層25によって、n側電極24に給電するための導電層26に接続されている。尚、半導体レーザ素子の幅は、約300μmで、奥行きは、約400μmで、レーザ光が出射される面はM面(面方位{1,−1,0,0})である。
  次に、図4に、p側パッド電極22のくし型形状の導電層幅(上述した突出部22bの幅a)に対する、ワイヤボンド工程における導電層剥離発生率を示す。図4によると、導電層幅を小さくすると、剥離発生率が高くなる。導電層幅に対する間隙幅の割合(上述した間隙の幅b/上述した突出部22bの幅a)は、大きいほど剥離が発生しやすくなる。このため、導電層幅(突出部22bの幅a)は10μm以上であることが望ましい。
  (半導体レーザ素子の製造方法)
  次に、第1実施形態による半導体レーザ素子の製造方法について、図5及び図6を用いて説明する。
  まず、図5(a)に示すように、MOVPE(Metal  Organic  Vapor  Phase  Epitaxy:有機金属化学的気相成長)法を用いて、n型GaN基板11上に、約1μmの膜厚を有し、n型GaNからなるバッファ層12と、約1.5μmの膜厚を有し、n型Al0.05Ga0.95Nからなるn側クラッド層13と、約50nmの膜厚を有し、アンドープGaNからなるn側光ガイド層14を、基板温度約1150℃で順次成長させる。
  次に、基板温度を約850℃に保持した状態で、n側光ガイド層14上に、約4nmの膜厚を有し、アンドープIn0.10Ga0.90Nからなる3層の井戸層15bと、約15nmの膜厚を有し、アンドープGaNからなる2層の障壁層15aとを交互に成長させることにより、活性層15を形成する。続いて、活性層15上に、約100nmの膜厚を有し、アンドープGaNからなるp側光ガイド層16と、約20nmの膜厚を有し、アンドープAl0.30Ga0.70Nからなるキャップ層17を、順次成長させる。このキャップ層17は、活性層15のIn原子が脱離するのを防止することにより、活性層15の結晶品質が劣化するのを防止する機能を有する。
  この後、基板温度を約1150℃に設定した状態で、キャップ層17上に、約500nmの膜厚を有し、p型Al0.05Ga0.95Nからなるp側クラッド層18を成長させる。
  次に、基板温度を約850℃保持した状態で、p側クラッド層18上に、約10nmの膜厚を有するアンドープIn0.05Ga0.95Nからなるp側コンタクト層19を成長させる。
  次に、図5(b)に示すように、真空蒸着法によりp側コンタクト層19上に、Pt/Pd膜を形成し、フォトレジストを用いてエッチングすることにより、約1.5μmの幅を有するストライプ形状のp側電極21を形成し、更に、p側コンタクト層19と、p側クラッド層18の一部をエッチングにより除去し、電流注入領域となるリッジ部を形成する。
  そして、図6(a)に示すように、p側電極21上と、p側コンタクト層19及びp側クラッド層18の側面と、p側クラッド層18の平坦部上を覆うように、プラズマCVD法を用いて、約300nmの膜厚を有するSiO2膜からなる電流ブロック層20を形成する。
  この後、リッジ部に開口部を有するフォトレジストを用いて、p側電極21直上の電流ブロック層20をエッチングしてp側電極21を露出させる。次に、p側電極21及び電流ブロック層20上に、フォトレジストを用いて、Ti/Auからなるくし型形状を有するp側パッド電極22を真空蒸着法によりリフトオフ形成する。この場合、p側パッド電極22の最下層にTiを用いているため、SiO2からなる電流ブロック層20との接着性をよくすることができる。
  次に、図6(b)に示すように、n型GaN基板11の裏面を研磨により、例えば、100μm程度の厚みまでうすくした後、その裏面上に、Ti/Pt/Auからなるn側電極24を真空蒸着法により形成する。
  その後、出射面が平坦な面が得やすいM面になるような方位でへき開し、これと直交する方位でブレーキングを行う。更に、n側電極をAuSnからなる融着層25を用いて約300℃の熱処理により導電層26に接続し、ワイヤ23をボンディングすることにより、図2及び図3に示す半導体レーザ素子が製造される。
  (作用及び効果)
  第1実施形態に係る半導体レーザ素子及び半導体レーザ素子の製造方法によると、p側パッド電極22に設けられた複数の突出部22bの間に、電流ブロック層20が露出する間隙が設けられている。従って、電極が形成されている合計面積が同等であるとした場合において、複数の突出部22bの間に間隙が設けられていない場合、すなわち、突出部が一つにまとまっている場合に比べて、ワイヤボンディング可能な領域が拡がる。また、半導体レーザ素子の表面全域にp側パッド電極が形成されている場合に比べて、p側パッド電極22が形成されている面積、すなわち、容量が発生する面積を小さくすることができ、寄生容量が低減し、半導体レーザ素子の高速動作が可能となる。
  このように、ワイヤボンディング可能な領域の拡大及び容量が発生する面積の縮小によって、半導体レーザ素子の高速動作を可能とするとともに、ワイヤボンディング時に生じる不具合を軽減することができ、組立歩留まりの低下が抑制できる。
  p側パッド電極22の突出部22bは、リッジ部が延びる方向(図2に示したA方向)に一定間隔で配置されており、p側パッド電極22は、リッジ部の幅方向(図2に示したB方向)における突出部22bの端部が繋がっていないくし型形状を有する。従って、容易に間隙を設けることができ、寄生容量を小さくすることができる。更に、熱導伝のよい材料からなる、くし型形状のp側パッド電極22の突出部22bを、放熱フィンとして作用させることができ、半導体レーザ動作時の光吸収による発熱や電気抵抗によるジュール熱を、効率よく外部に放散させることができる。このため、素子特性の劣化を抑制することができる。
  又、くし型p側パッド電極22の導電層幅が小さいと、電流ブロック層20とp側パッド電極22の間の接着強度が弱くなり、図4に示すようにワイヤボンディング工程で剥離が生じやすくなるが、p側パッド電極22の突出部22bの幅を10μm以上とすることで、電流ブロック層20とp側パッド電極22の付着強度を十分に確保することができ、組立歩留まりの低下を抑制することができる。
  更に、第1実施形態に係る半導体レーザ素子においては、くし型p側パッド電極22の導電層幅(図2に示した幅a)と、その間隙幅(図2に示した幅b)とをともに15μmとしているため、寄生容量は、ボンディングワイヤ23直下に発生する分を考慮に入れて、チップ全域(約300μm×400μm)にp側パッド電極を形成した場合の約37%、ワイヤボンディング有効領域全域(200μm×400μm)にp側パッド電極を形成した場合の約55%程度に低減することができ、半導体レーザ素子の動作速度を向上させることができる。
  又、p側パッド電極22の突出部22bの幅aは間隙の幅b以下である。このように構成すれば、寄生容量値は、導電層を全面に形成した場合の半分程度以下になり、高速で動作させることができる。
  又、くし型p側パッド電極22の周期dを、ボンディングワイヤ23の接着径である70μmの1/2以下に相当する30μmにしているため、ボンディングワイヤ23を、3本以上のくし型p側パッド電極22と接着させることができ、ボンディングワイヤ23の剥離を防止することができる。このように、p側パッド電極22とボンディングワイヤ23との間の付着強度を十分に確保することができるため、組立歩留まりの低下を抑制することができる。
  又、第1実施形態に係る半導体レーザ素子において、p側パッド電極22はチタンを含む。チタンは接着性が強いので、電流ブロック層20との接着性が向上し、くし型形状でも剥離しにくくすることができ、組立歩留まりの低下を抑制することができる。
  又、第1実施形態に係る半導体レーザ素子は、GaN基板を備え、六方晶構造を有する窒化物系半導体層を備える。又、レーザ光の出射面はM面である。GaNを含む窒化物半導体層は、M面と直交する方位では平坦な面が得られにくいため、例えば、図7に示したようにチップ側面の凹凸が激しくなったり、角の欠けが生じたりする等の不具合が発生しやすい。このため、外形形状の画像認識によりワイヤボンディング位置を決定する場合に、パターン認識が正常に行えず、正確な位置合わせが困難になる。しかしながら、p側パッド電極22を広い領域に形成しているため、ワイヤボンディング位置がずれたとしても、正常な給電が行えるようになり、組立歩留まりの低下が抑制できる。
  (変形例)
  上述した第1実施形態に係るp側パッド電極22では、突出部22bは、直線部22aの両側に設けられており、半導体レーザ素子の表面の略全域に設けられているが、これに限定されるものではない。具体的には、突出部22bが形成される領域は、ワイヤボンディング装置に固有の特性(位置合せ精度や“ずれ”が予測される方向)に応じて、ワイヤボンディングに不具合が生じない範囲内で小さくすることも可能である。
  例えば、共振器(リッジ部や直線部22a)が延びる方向(図2に示したA方向)にのみ、位置合せのずれが生じると想定される場合について考える。このような場合には、共振器(リッジ部や直線部22a)の幅方向(図2に示したB方向)において、突出部22bの長さを短くすることが可能である。また、図8に示すように、直線部22a(リッジ部)の片側にのみ、突出部22bを設けることも可能である。
  次に、共振器(リッジ部や直線部22a)の幅方向(図2に示したB方向)にのみ、位置合せのずれが生じると想定される場合について考える。このような場合には、図9及び図10に示すように、共振器(リッジ部や直線部22a)が延びる方向(図2に示したA方向)において、突出部22bが設けられる領域を狭めることも可能である。
  最後に、共振器(リッジ部や直線部22a)が延びる方向(図2に示したA方向)及び共振器(リッジ部や直線部22a)の幅方向(図2に示したB方向)において、位置合せのずれがそれほど生じないと想定される場合について考える。このような場合には、図11及び図12に示すように、直線部22a(リッジ部)の片側にのみ、突出部22bを設けるとともに、A方向において突出部22bが設けられる領域を狭めることも可能である。
  図8〜図12に示したように、半導体レーザ素子の表面において、突出部22bが設けられる領域を小さくすることによって、寄生容量をさらに低減することができる。
  図10及び図12に示したように、光吸収に伴う熱的要因によって壊れやすい光出射端面の近傍に突出部22bを設けることによって、熱放散の効率をあまり低下させることなく、寄生容量を低減することができる。
  さらに、図13に示すように、チップ端にワイヤがボンディングされた場合に、ワイヤの接触面積を確保するために、p側パッド電極22は、直線部22a(リッジ部)の幅方向bの外側における突出部22bの端部が部分22cで繋がった形状を有していてもよい。図10のパターンでは、p側パッド電極22は、突出部22bの端部が繋がった形状を有するため、図2に示したくし型形状のp側パッド電極に比べて、ワイヤの接着性が向上する。
  上述した第1実施形態では、p側パッド電極22にボンディングされるワイヤは一本であったが、これに限定されるものではない。具体的には、図14及び図15に示すように、p側パッド電極22には、複数本のワイヤがボンディングされていてもよい。これによって、寄生容量の低減を図りながら、大電流の供給が可能になり、半導体レーザ素子の動作速度を向上させることができる。
  <第2実施形態>
  (半導体レーザ素子の構造)
  第2実施形態に係る半導体レーザ素子の概略構造について、図16を用いて説明する。半導体レーザ素子は、基板上1に形成された第1導電型の第1クラッド層2と、第1クラッド層2上に形成された活性層3と、活性層3上に設けられた第2導電型の第2クラッド層4と、第2クラッド層4の凸部4a上に設けられたコンタクト層5とによって構成される半導体層を有する。第2クラッド層4は、A方向に沿って延びる凸部4aと、凸部4aの幅方向(B方向)外側に設けられた平坦部4bとによって構成される。
  半導体レーザ素子は、平坦部4bの上面及び凸部4aの側面に形成されており、絶縁性の材料によって構成された電流ブロック層6を有する。半導体レーザ素子は、コンタクト層5と電流ブロック層6上に形成された電極7を有する。
  電極7は、A方向に沿ってコンタクト層5(凸部4a)上に設けられた直線部7aと、直線部7aから凸部4aの幅方向(B方向)外側に突出する突出部7bとを有する。電流ブロック層6上には、電極7と接していない島状の接着部27が設けられている。接着部27は、突出部7bに隣接している。なお、突出部7bと接着部27と間には、電流ブロック層6が露出する間隙が設けられている。
  (半導体レーザ素子の構造)
  次に、第2実施形態に係る半導体レーザ素子の構造について、詳細に説明する。図17は、GaN基板を用いた窒化物系半導体からなる400nm帯半導体レーザ素子(青紫色LD)の構造を示す上面図である。第2実施形態に係る半導体レーザ素子の詳細構造は、島状の接着部27を備えた以外は、第1実施形態と同様であるので、接着部27以外の説明は省略する。
  p側パッド電極22上の一部の領域には、Auからなるボンディングワイヤ23が接続され、外部電源からp側パッド電極22に給電することができる。このとき、接着部27にもボンディングワイヤ23が接続され、p側パッド電極22とボンディングワイヤ23との間の付着強度を十分に確保する。
  接着部27は、接着性が強い材質であればよく、例えば、チタン、クロム、アルミニウム等が用いられる。
  (作用及び効果)
  第2実施形態に係る半導体レーザ素子によると、電流ブロック層20上には、p側パッド電極22に接していない島状の接着部27が設けられており、接着部27は、突出部22bに近接している。また、突出部22bと接着部27との間には、電流ブロック層20が露出する間隙が設けられている。従って、突出部が一つしか設けられていない場合に比べて、ワイヤをボンディング可能な領域が拡がる。また、半導体レーザ素子の表面全域に電極が形成されている場合に比べて、電極が形成されている面積、すなわち、容量が発生する面積を小さくすることができ、寄生容量が低減し、半導体レーザ素子の高速動作が可能となる。
  このように、ワイヤをボンディング可能な領域の拡大及び容量が発生する面積の縮小によって、半導体レーザ素子の高速動作を可能とするとともに、給電のためのワイヤをボンディングする時に生じる不具合を軽減することができる。
  (変形例)
  第2実施形態では、島状の接着部27を有する半導体レーザ素子について説明したが、第1実施形態において説明したくし型形状のp側パッド電極22と組み合わせてもよい。例えば、図18に示すように、くし型形状のp側パッド電極22の間隙に、島状の接着部27を配置してもよい。このような構成によると、更に接着性を向上させることができる。
  <第3実施形態>
  (半導体レーザ素子の構造)
  第3実施形態に係る半導体レーザ素子の構造について、図19及び図20を用いて説明する。図19及び図20は、絶縁性のサファイア基板を用いた窒化物系半導体からなる400nm帯半導体レーザ素子(青紫色LD)の構造を示した上面図及び断面図である。
  図15(a)に示すように、C面(面方位(0,0,0,1))を表面としたサファイア基板51上に、約10μmの膜厚を有し、アンドープGaN層からなるバッファ層52が形成されている。このバッファ層52上には、膜厚約100nmを有するとともに、紙面と垂直方向に伸びる、幅約6μm、間隔約4μmのストライプ形状を有するSiO2層53が形成されており、これを囲むように、約12μmの膜厚を有するアンドープGaN層からなる横方向成長層54が形成されている。更に、横方向成長層54上には、約1μmの膜厚を有するとともに、凸部を有し、Siドープn型GaNからなるn側コンタクト層55が形成されている。このn側コンタクト層55の平坦部上には、Ti/Pt/Au(10/2/500nm)からなるn側電極67が形成されている。
  一方、n側コンタクト層55の凸部上には、約1.5μmの膜厚を有し、Siドープn型Al0.05Ga0.95Nからなるn側クラッド層56が形成され、n側クラッド層56上には、約50nmの膜厚を有し、アンドープGaNからなるn側光ガイド層57が形成され、更に、n側光ガイド層57上には、多重量子井戸(MQW)構造を有する活性層58が形成されている。この活性層58は、図15(b)に示すように、約15nmの膜厚を有し、2つのアンドープGaNからなる障壁層58aと、約4nmの膜厚を有し、3つのアンドープIn0.10Ga0.90Nからなる井戸層58bとが交互に積層された構造を有する。
  活性層58上には、約100nmの膜厚を有し、アンドープGaNからなるp側光ガイド層59が形成され、p側光ガイド層59上には、約20nmの膜厚を有し、アンドープAl0.30Ga0.70Nからなるキャップ層60が形成されている。
  アンドープAl0.30Ga0.70Nからなるキャップ層60上には、Mgがドーピングされ、最大で約500nmの膜厚を有するとともに、中央部付近に、約1.5μmの幅を有するストライブ状の凸部を有するp型Al0.05Ga0.95Nからなるp側クラッド層61が形成され、その凸部上には、約10nmの膜厚を有し、アンドープIn0.05Ga0.95Nからなるp側コンタクト層62が形成される。このp側クラッド層61の凸部と、p側コンタクト層62により、電流注入領域となるリッジ部が形成されている。
  p側コンタクト層62直上とn側電極67形成部を除く領域を覆う形で、約300nmの膜厚を有し、電流ブロック層として機能するSiO2からなる絶縁層64が形成されている。更に、p側コンタクト層62表面上には、Pt/Pd(2/10nm)からなるp側電極63が形成され、p側電極63及び絶縁層64の一部領域上には、くし型形状を有し、Ti/Au(10/500nm)からなるp側パッド電極65が形成されている。
  図19に示すように、p側パッド電極65は、A方向に沿ってp側電極63(p側クラッド層61の凸部)上に設けられた直線部65aと、直線部65aからB方向外側に突出する複数の突出部65bとを有する。なお、直線部65a及び複数の突出部65bは、それぞれ、本発明の「第1の部分」及び「第2の部分」の一例である。複数の突出部65bの間には間隙が設けられている。p側パッド電極65上の一部の領域には、Auからなるボンディングワイヤ66が接続され、n側電極67の一部の領域には、Auからなるボンディングワイヤ68が接続され、外部電源からp側パッド電極65及びn側電極67に給電することができる。
  第3実施形態では、突出部65bの幅a及び間隙の幅bは、例えば、約15μmと同等にされている。電流注入領域(p側電極63)の幅cは、約15μmである。電流ブロック層64及びp側パッド電極65にボンディングワイヤ66が接する領域は、直径約70μmの略円形の領域である。同様に、n側電極67にボンディングワイヤ68が接する領域は、直径約70μmの略円形の領域である。
  又、半導体レーザ素子の幅は、約400μm、奥行きは、約400μmで、n側クラッド層56からp側クラッド層61までが形成されている領域は、幅が約250μmで、奥行きは約400μmである。又、レーザ光が出射される面はM面(面方位{1,−1,0,0})である。
  (半導体レーザ素子の製造方法)
  次に、第3実施形態に係る半導体レーザ素子の製造方法について、図21〜図23を用いて説明する。
  まず、図21(a)に示すように、C面を表面とするサファイア基板51上に、MOVPE法による2段階成長法(600℃成長低温バッファ層及び1000℃成長層)により、約1μmの膜厚を有し、アンドープGaNからなるバッファ層52を成長させる。バッファ層52上に、プラズマCVD法を用いて、約100nmの膜厚を有するSiO2膜を全面に形成した後、レジストパターンを形成して一部領域をエッチング除去し、ストライプ形状を有する選択成長用マスクとなるSiO2膜53を形成する。この時、ストライプの幅が約6μmで、間隔が約4μmである。
  次に、バッファ層52及びSiO2膜53上に、1100℃でMOVPE法によりアンドープGaN層を成長させると、図21(b)に示すように、SiO2膜53上には成長しにくく、アンドープGaNからなるバッファ層52が露出した部分にのみ(1,2,−2,2)面の傾斜を持つ、断面形状が三角形のファセット構造を有するGaN層54aが形成される。
  更に、GaN層の成長を進めると、図21(c)に示すように、横方向への成長によりSiO2膜53上にも形成されるようになり、膜厚約12μmまで成長させると、ファセット構造のGaN層が合体して、上面が平坦な連続した横方向成長層54が得られる。この場合、SiO2膜53上に横方向成長層54には、基板の材料であるサファイアとGaN層の物性的違いに基づく欠陥が伝搬しにくく、GaN層が合体する部分を除いて、欠陥の少ない良質なGaN層が得られる。
  この横方向成長層54上に、図22(a)に示すように、MOVPE法により半導体レーザの動作層となる半導体層を成長する。まず、約1μmの膜厚を有し、n型GaNからなるn側コンタクト層55と、約1.5μmの膜厚を有し、n型Al0.05Ga0.95Nからなるn側クラッド層56と、約50nmの膜厚を有し、アンドープGaNからなるn側光ガイド層57を、基板温度約1150℃で順次成長させる。
  次に、基板温度を約850℃に保持した状態で、n側光ガイド層57上に、約4nmの膜厚を有するアンドープIn0.10Ga0.90Nからなる3層の井戸層58bと、約15nmの膜厚を有するアンドープGaNからなる2層の障壁層58aとを交互に成長させることにより、MQW構造を有する活性層58を形成する。続いて、活性層58上に、約100nmの膜厚を有し、アンドープGaNからなるp側光ガイド層59と、約20nmの膜厚を有し、アンドープAl0.30Ga0.70Nからなるキャップ層60を、順次成長させる。このキャップ層60は、MQW活性層15のIn原子が離脱するのを防止することにより、活性層58の結晶品質が劣化するのを防止する機能を有する。
  この後、基板温度を約1150℃に設定した状態で、キャップ層60上に、約500nmの膜厚を有し、p型Al0.05Ga0.95Nからなるp側クラッド層61を成長させる。
  次に、基板温度を約850℃保持した状態で、p側クラッド層61上に、約10nmの膜厚を有し、アンドープIn0.05Ga0.95Nからなるp側コンタクト層62を形成する。
  その後、図22(b)に示すように、フォトレジストを用いて、一部の領域をエッチング除去し、n側コンタクト層55を露出させる。
  この後、図23(a)に示すように、真空蒸着法によりp側コンタクト層62上に、Pt/Pd膜を形成し、フォトレジストを用いてエッチングすることにより、約1.5μmの幅を有するストライプ形状のp側電極63を形成し、更に、p側コンタクト層62と、p側クラッド層61の一部をエッチングにより除去し、電流注入領域となるリッジ部を形成する。
  そして、図23(b)に示すように、露出している半導体層すべてを覆うように、プラズマCVD法を用いて、約300nmの膜厚を有する、SiO2膜からなる絶縁層64を形成する。
  この後、リッジ部に開口部を有するフォトレジストを用いて、p側電極63上の絶縁層64をエッチングし、p側電極63を露出させる。次に、p側電極63上、絶縁層64上に、Ti/Auからなるくし型形状のp側パッド電極65を真空蒸着法により形成する。この場合、p側パッド電極65の最下層にTiを用いているため、SiO2からなる絶縁層64との接着性をよくすることができる。
  次に、フォトレジストを用いて、n側コンタクト層55上の、一部領域の絶縁層64をエッチング除去し、n側コンタクト層55を露出させた後、Ti/Pt/Auからなるn側電極67を真空蒸着法によりリフトオフ形成する。
  次に、サファイア基板51の裏面を研磨により、へき開しやすいように、例えば、150μm程度の厚みまでうすくした後、その後、出射面が平坦な面が得やすい、M面になるような方位でへき開し、これと直交する方位でブレーキングを行う。所定のパッケージに組み込んだ後、ワイヤ66、68を、それぞれ、p側パッド電極65、n側電極67にボンディングすることにより、図19及び図20に示す半導体レーザ素子が製造される。
  (作用及び効果)
  第3実施形態に係る半導体レーザ素子の場合、電流ブロック層として機能する絶縁層64に発生する寄生容量は、ボンディングワイヤ66直下に発生する分を考慮に入れると、p側クラッド層61が形成されている領域(約250μm×400μm)すべてにp側パッド電極を形成した場合の約44%、ワイヤボンディング有効領域全域(約200μm×400μm)にp側パッド電極を形成した場合の約55%程度に低減することができ、半導体レーザ素子の動作速度を向上させることができる。
  又、第3実施形態に係る半導体レーザ素子は、サファイア基板を備え、六方晶構造を有する窒化物系半導体層を備える。又、レーザ光の出射面はM面である。GaNを含む窒化物半導体層は、M面と直交する方位では平坦な面が得られにくいため、例えば、図7に示したようにチップ側面の凹凸が激しくなったり、角の欠けが生じたりする等の不具合が発生しやすい。このため、外形形状の画像認識によりワイヤボンディング位置を決定する場合に、パターン認識が正常に行えず、正確な位置合わせが困難になる。しかしながら、p側パッド電極65を広い領域に形成しているため、ワイヤボンディング位置がずれたとしても、正常な給電が行えるようになり、組立歩留まりの低下が抑制できる。
  <第4実施形態>
  以下において、第4実施形態について図面を参照しながら説明する。第4実施形態では、第1実施形態に示した半導体レーザ素子を用いた半導体レーザ装置について説明する。
  (半導体レーザ装置の構成)
  以下において、第4実施形態に係る半導体レーザ装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図24及び図25は、第4実施形態に係る半導体レーザ装置200の構成を示す図である。具体的には、図24は、半導体レーザ装置200を光出射面側から見た図であり、図25は、半導体レーザ装置200を図24に示すC方向から見た図である。
  図24に示すように、半導体レーザ装置200は、支持基体210と、支持基体210上に融着層220を介して形成された副基板230と、副基板230上に融着層233を介して形成された半導体レーザ素子240とを有している。副基板230は、一対の導電層(導電層231及び導電層232)を有する。なお、導電層232は、上述した導電層26に相当し、融着層233は、上述した融着層25に相当する。
  半導体レーザ装置200は、外部電源に接続するための給電ピン(給電ピン261、給電ピン271及び給電ピン281)を有する。給電ピン261は、パッケージ本体201に設けられた絶縁リング262内に挿通されている。同様に、給電ピン271は、パッケージ本体201に設けられた絶縁リング272内に挿通されている。
  半導体レーザ素子240は、n側電極241と、基板242と、半導体層243と、電流ブロック層244と、p側パッド電極245とを有する。
  n側電極241は、上述したn側電極24に相当しており、基板242は、上述した基板11に相当する。
  半導体層243は、上述したバッファ層12と、n側クラッド層13と、n側光ガイド層14と、活性層15と、p側光ガイド層16と、キャップ層17と、p側クラッド層18と、p側コンタクト層19とによって構成される。なお、p側コンタクト層19上には、上述したp側電極21に相当する電極が設けられている(不図示)。
  半導体層243は、上述した実施形態と同様に、電流注入領域である凸部247aと、凸部247aの幅方向外側に設けられた平坦部247bとを有する。
  電流ブロック層244は、上述した電流ブロック層20に相当しており、凸部247aの側面と平坦部247bの上面とに形成される。
  図25に示すように、p側パッド電極245は、上述したp側パッド電極22に相当しており、凸部247a上に設けられた直線部245aと、直線部245aから凸部247aの幅方向外側に突出する複数の突出部245bとを有する。なお、直線部245a及び複数の突出部245bは、それぞれ、本発明の「第1の部分」及び「第2の部分」の一例である。
  上述した給電ピン251は、ボンディングワイヤ271を介してp側パッド電極22の突出部22bに接続されている。一方で、上述した給電ピン261は、ボンディングワイヤ272を介して導電層232に接続されている。
  (作用及び効果)
  第4実施形態に係る半導体レーザ装置によれば、第1実施形態と同様に、ボンディングワイヤ271をボンディング可能な領域の拡大及び寄生容量が発生する面積の縮小を図ることができる。これによって、半導体レーザ装置の高速動作が可能となり、ワイヤボンディング時に生じる不具合を低減することができる。
  <その他の実施形態>
  本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
  例えば、上記の実施の形態では、MOVPE法を用いて、半導体各層を結晶成長させる説明したが、本発明はこれに限らず、MBE法、HVPE法やガスソースMBE法などを用いて、半導体各層を結晶成長させてもよい。又、半導体の結晶構造として、ウルツ鉱型であっても閃亜鉛鉱型構造であってもよい。
  又、上記の実施の形態では、GaN、AlGaN及びInGaNからなる層を含む窒化物系半導体素子層を用いたが、本発明はこれに限らず、AlN、InN及びAlInGaNからなる層を含む窒化物系半導体素子層を用いてもよく、GaAs、AlGaAs、InGaP、AlInGaPなどからなる層を含む窒化物系半導体以外の半導体素子層を用いてもよい。
  このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
  1…基板、2…第1クラッド層、3…活性層、4…第2クラッド層、4a…凸部、4b…平坦部、5…コンタクト層、6…電流ブロック層、7…電極、7a…直線部、7b…突出部、11…基板、12…バッファ層、13…n側クラッド層、14…n側光ガイド層、15…活性層、15a…障壁層、15b…井戸層、16…p側光ガイド層、17…キャップ層、18…p側クラッド層、19…p側コンタクト層、20…電流ブロック層、21…p側電極、22…p側パッド電極、22a…直線部、22b…突出部、23…ボンディングワイヤ、24…n側電極、25…融着層、26…導電層、27…接着部、51…サファイア基板、52…バッファ層、53…SiO2層、54…横方向成長層、54a…GaN層、55…n側コンタクト層、56…n側クラッド層、57…n側光ガイド層、58…活性層、58a…障壁層、58b…井戸層、59…p側光ガイド層、60…キャップ層、61…p側クラッド層、62…p側コンタクト層、63…p側電極、64…絶縁層、65…ボンディングワイヤ、65…p側パッド電極、65a…直線部、65b…突出部、66…ボンディングワイヤ、67…n側電極、101…基板、102…第1クラッド層、103…活性層、104…第2クラッド層、105…コンタクト層、106…電流ブロック層、107、108…電極、200…半導体レーザ装置、201…支持基体、220…融着層、230…副基板、231、232…導電層、233…融着層、240…半導体レーザ素子、241…n側電極、242…基板、243…半導体層、244…電流ブロック層、245…p側パッド電極、245a…直線部、245b…突出部、247a…凸部、247b…平坦部、251、261、271…給電ピン、252、262…絶縁リング、271、272…ボンディングワイヤ