本発明は、有糸分裂キネシン、特にKSP(より好ましくはヒトKSP)を阻害するのに有用な化合物、組成物および方法を提供するものである。この化合物は細胞増殖性疾患を治療するのに使用することができ、その化合物にはある種のピペラジン-1-イル-およびジアゼパム-1-イル-(置換されていてもよい)-アルキルキナゾリノンの誘導体が含まれる。本発明はさらに本発明の化合物を含む医薬製剤、およびそのような化合物または組成物を用いた治療方法にも関する。
用語の定義
  本明細書で使用される場合、以下の語句は、それらが使用されているところでそうでないと示されている場合を除いて、通常以下に示す意味をもつ。以下の略記号および用語は、本明細書を通して、以下に示す意味を有する。
  Ac = アセチル
  Boc = t-ブチルオキシカルボニル
  Bu = ブチル
  c- = シクロ
  CBZ = カルボベンゾキシ = ベンジルオキシカルボニル
  DCM = ジクロロメタン = 塩化メチレン = CH2Cl2
  DIEA = N,N-ジイソプロピルエチルアミン
  DMSO = ジメチルスルホキシド
  Et = エチル
  HOAc = 酢酸
  Me = メチル
  rt = 室温
  sat'd = 飽和
  s- = 二級
  t- = 三級
  TFA = トリフルオロ酢酸
  THF-テトラヒドロフラン。
  U、V、WおよびYと記された置換基は、「発明の開示」、「発明を実施するための最良の形態」および「特許請求の範囲」で定義された意味を有する。これらは原子元素のウラニウム、バナジウム、タングステン、イットリウムを表わすものではない。
  用語「任意の(されていてもよい)」または「場合により」とは、後に記載される事象または状況が起る場合もあるし起らない場合もあることを意味し、またその表現には、そのような事象または状況が起こる場合と、起らない場合が含まれる。例えば、「置換されていてもよいアルキル」には、以下で定義する「アルキル」、および「置換アルキル」が含まれる。1つ以上の置換基を含む基については、そのような基は、立体的に実現不可であるおよび/または合成の点から実現可能でないおよび/または本質的に不安定である置換または置換パターンを導入することを意図するものではないことは、当業者なら理解すると思われる。
  アルキルには、直鎖状、分岐状、または環状の脂肪族炭化水素構造およびそれらの組み合せが含まれ、その構造は飽和でも不飽和でもよい(好ましくは最大20個の炭素原子をもつもの、より好ましくは最大C13までのもの)。低級アルキルは、1〜5個(好ましくは1〜4個)の炭素原子のアルキル基を意味する。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s-ブチル、t-ブチルなどが挙げられる。シクロアルキル(または炭素環式)はアルキルのサブセットであり、3〜13個の炭素原子の環状脂肪族炭化水素基が含まれる。シクロアルキル基の例としては、c-プロピル、c-ブチル、c-ペンチル、ノルボルニル、アダマンチルなどが挙げられる。本明細書ではアルキルは、アルカニル、アルケニルおよびアルキニルの残基を意味し;シクロヘキシルメチル、ビニル、アリル、イソプレニルなども含まれることになる。アルキレン、アルケニレンおよびアルキニレンはアルキルのその他のサブセットであり、アルキルと同じ残基を意味するが2つの結合点をもっている。アルキレンの例としては、エチレン(-CH2CH2-)、エテニレン(-CH=CH-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、ジメチルプロピレン(-CH2C(CH3)2CH2-)、シクロヘキシルプロピレン(-CH2CH2CH(C6H13)-)が挙げられる。ある特定の炭素数をもつアルキル残基が指定された場合、その特定の炭素数をもつアルキル残基の全ての幾何異性体も包含されることになる。従って、例えば、「ブチル」には、n-ブチル、s-ブチル、イソブチルおよびt-ブチルが含まれ;「プロピル」には、n-プロピルおよびイソプロピルが含まれる。
  用語「アルコキシ」または「アルコキシル」は、親構造に1個の酸素を通して結合している基 -O-アルキルを意味し、好ましくは1〜8個の炭素原子を直鎖状、分岐状、または環状構造あるいはこれらの組み合せで含む。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられる。低級アルコキシは、1個〜5個の炭素を含んでいる基を意味する。
  用語「置換アルコキシ」は、基 -0-(置換アルキル)を意味する。1つの好ましい置換アルコキシ基は「ポリアルコキシ」または-O-(置換されていてもよいアルキレン)-(置換されていてもよいアルコキシ)であり、-OCH2CH20CH3のような基や、ポリエチレングリコールや-O(CH2CH2O)xCH3[式中xは、凡そ2〜20、好ましくは凡そ2〜10、より好ましくは凡そ2〜5の整数である]などのグリコールエーテルが含まれる。もう1つの好適な置換アルコキシ基は、ヒドロキシアルコキシまたは-OCH2(CH2)yOH[式中yは、凡そ1〜10、好ましくは凡そ1〜4の整数である]である。
  「アシル」は、親構造にカルボニル官能基を通して結合している直鎖状構造、分岐状構造または環状構造あるいはこれらの組み合せの1〜8個の炭素原子からなる基を意味する。そのような基は、飽和でも不飽和でもよいし、また脂肪族でも芳香族でもよい。アシル残基中の1個または複数個の炭素は、親構造への結合ポイントがそのカルボニルに留まるかぎり、窒素、酸素または硫黄で置換されていてもよい。例としては、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、プロピオニル、イソブチリル、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、アミノカルボニルなどが挙げられる。低級-アシルは、1個〜5個の炭素を含んでいるアシル基を意味する。「置換アシル」は、炭素原子、窒素原子または硫黄原子に結合している水素の1個以上が置換されたアシル基を意味し、その親構造への結合点はカルボニルのままである。
  用語「アシルオキシ」は、基 -O-アシルを意味する。「置換アシルオキシ」は、基 -O-置換されたアシルを意味する。
  用語「アミジノ」は、基 -C(=NH)-NH2を意味する。用語「置換アミジノ」は式 -C(=NR)-NRRを意味し、式中の各Rは次の群:水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアミノカルボニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、アシル、アルコキシカルボニル、スルファニル、スルフィニルおよびスルホニルから独立に選択されるが、少なくとも1個のRは水素ではない。
  用語「アミノ」は、基 -NH2を意味する。用語「置換アミノ」は、基 -NHRまたは-NRRを意味し、この場合各Rは、次の群:置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、スルフィニルおよびスルホニル;例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルスルホニルアミノ、フラニル-オキシ-スルホンアミノ、フアニジノから独立に選択される。
  「アリール」および「ヘテロアリール」は、O、N、またはSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含んでいる5員または6員芳香族環またはヘテロ芳香族環;O、N、またはSから選択される1〜4個(またはもっと)のヘテロ原子を含んでいる二環式9員または10員芳香族環系またはヘテロ芳香族環系;または、O、N、またはSから選択される1〜4個(またはもっと)のヘテロ原子を含んでいる三環式13員または14員芳香族環系またはヘテロ芳香族環系を意味する。芳香族6〜14員炭素環式環としては、例えばベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン、およびフルオレンが挙げられ、5〜10員芳香族ヘテロ環式環としては、例えばイミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンズイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾールおよびピラゾールが挙げられ;好ましくはイミダゾールおよびイミダゾリンである。
  「アラルキル」は、アリール部分構造がアルキル残基を介してその親構造に結合している残基を意味する。例としては、ベンジル、フェネチル、フェニルビニル、フェニルアリルなどが挙げられる。「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール部分構造がアルキル残基を介して親構造に結合している残基を意味する。例としては、フラニルメチル、ピリジニルメチル、ピリミジニルエチルなどが挙げられる。
  用語「アリールオキシ」は基 -O-アリール-を意味する。同様に「アラルコキシ」およびは「ヘテロアラルコキシ」は、それぞれアルコキシ残基を介して親構造に結合しているアリール部分構造またはヘテロアリール部分構造を意味する。
  「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素(好ましくはフッ素、塩素および臭素)を意味する。ジハロアリール-、ジハロアルキル-、トリハロアリールなどは、複数のハロゲンで置換されたアリールおよびアルキルを意味するが、必ずしも同じハロゲンの複数個ではない。従って、4-クロロ-3-フルオロフェニルはジハロアリールの範疇に含まれる。
  「ヘテロ環」または「ヘテロシクリル」は、1〜4個の炭素が、酸素、窒素または硫黄などのヘテロ原子で置換されたシクロアルキル残基またはアリール残基を意味する(すなわち、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールが含まれる)。本発明の範囲内に入るヘテロシクリル残基の例としては、イミダゾリル、イミダゾリニル、ピロリジニル、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル(置換基として生じる場合は、一般にメチレンジオキシフェニルと呼ばれる)、テトラゾリル、モルホリニル、チアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、チオフェニル、フラニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、イソオキサゾリル、ジオキサニル、テトラヒドロフラニルなどが挙げられる。「N-ヘテロシクリル」は、置換基残基としての窒素含有へテロ環を意味する。N-ヘテロシクリル残基の例としては、4-モルホリニル、4-チオモルホリニル、1-ピペリジニル、1-ピロリジニル、3-チアゾリジニル、ピペラジニルおよび4-(3,4-ジヒドロベンズオキサジニル)が挙げられる。置換ヘテロシクリルの例としては、4-メチル-l-ピペラジニルおよび4-ベンジル-l-ピペリジニルが挙げられる。
  用語「ヘテロアリールオキシ」および「ヘテロシクロオキシ」は、それぞれ基 -O-ヘテロアリールおよび-O-ヘテロシクリルを意味する。
  用語「溶媒和物」は、医薬的に許容される溶媒分子の1以上と物理的会合状態にある化合物(例えば、式 IまたはIIの化合物またはその医薬的に許容される塩)を意味する。「式 IまたはIIの化合物またはその医薬的に許容される塩または溶媒和物」のような表現には、式 IまたはIIの化合物、その化合物の医薬的に許容される塩、その化合物の溶媒和物、ならびにその化合物の医薬的に許容される塩の溶媒和物が包含されることが意図されていることは理解されると思われる。
  アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルに関して使用される用語「置換(された)」は、1個以上(最大5個まで、好ましくは最大およそ3個まで)の水素原子が以下の群:置換されていてもよいアシル(例えば、アミノカルボニルおよびアルコキシカルボニルまたは「エステル」)、置換されていてもよいアシルオキシ(例えば、酸エステル、カルバミン酸エステル、カルボン酸エステル、チオカルボン酸エステルなど)、置換されていてもよいアルキル(例えば、フルオロアルキル)、置換されていてもよいアルコキシ(例えば、メトキシおよびメトキシメトキシ)、アルキレンジオキシ(例えばメチレンジオキシ)、置換されていてもよいアミノ(例えば、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノまたは「CBZ-アミノ」、およびカルボキサミド)、置換されていてもよいアミジノ、置換されていてもよいアリール(例えば、フェニルおよび4-メチル-フェニルまたは「トリル」)、置換されていてもよいアラルキル(例えば、ベンジル)、置換されていてもよいアリールオキシ(例えば、フェノキシ)、置換されていてもよいアラルコキシ(例えば、ベンジルオキシ)、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロアラルキル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロアラルコキシ、カルボキシ(-COOH)、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、スルファニル、スルフィニル、スルホニルおよびチオから独立に選択される置換基で置換されたアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル部分構造を意味する。Tおよび/またはUが置換アルキレンである式 IIの化合物では、用語「置換(された)」は、-CH2-S-CH2-のように、1個以上(最大およそ3個、好ましくは1個)の炭素原子がO、NまたはSから独立に選択されるヘテロ原子で置換されたアルキレン基を意味する。
  用語「スルファニル」は、基:-S-(置換されていてもよいアルキル)、-S-(置換されていてもよいアリール)、-S-(置換されていてもよいヘテロアリール)、-S-(置換されていてもよいヘテロシクリル)を意味する。
  用語「スルフィニル」は、基:-S(O)-H、-S(O)-(置換されていてもよいアルキル)、-S(O)-(置換されていてもよいアミノ)、-S(O)-(置換されていてもよいアリール)、-S(O)-(置換されていてもよいヘテロアリール)、-S(O)-(置換されていてもよいヘテロシクリル)を意味する。
  用語「スルホニル」は、基:-S(O2)-H、-S(O2)-(置換されていてもよいアルキル)、-S(O2)-(置換されていてもよいアミノ)、-S(O2)-(置換されていてもよいアリール)、-S(O2)-(置換されていてもよいヘテロアリール)、-S(O2)-(置換されていてもよいヘテロシクリル)、-S(O2)-(置換されていてもよいアルコキシ)、-S(O2)-置換されていてもよいアリールオキシ)、-S(O2)-(置換されていてもよいヘテロアリールオキシ)、-S(O2)-(置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ)を意味する。
  「異性体」は、同じ分子量をもつが異なる化合物である。「立体異性体」は、その原子の空間における配置のされ方のみが異なる異性体である。「鏡像異性体」は、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体の対である。鏡像異性体の対の1:1混合物は「ラセミ」混合物である。用語「(±)」は適切な場合にはラセミ混合物を表わすのに用いられる。「ジアステレオ異性体」は、少なくとも2つの不斉原子をもつが互いの鏡像ではない立体異性体である。絶対立体化学はCahn-Ingold-Prelog R-S系により特定される。ある化合物が純粋な鏡像異性体である場合、それぞれのキラル炭素における立体化学はRかSで特定することができる。絶対立体配置が分からない分割された化合物は、ナトリウムD線の波長においてそれらが直線偏光光線を回転する方向(右旋性回転または左旋性回転)に応じて(+)または(-)と表わされる。用語「実質的に純粋」とは、約1%より高い不純物が全くなく少なくとも約95%の化学的純度をもっていることを意味する。用語「実質的に光学的に純粋」または「実質的に鏡像異性体的に純粋」とは、少なくとも約95%の鏡像異性過剰をもっていることを意味する。本発明は、純粋な鏡像異性体、およびラセミ混合物を含めた鏡像異性体の混合物を使用することを企図するものであるが、実質的に光学的に純粋な鏡像異性体を使用するのが概して最も好ましいと思われる。
  「有糸分裂の紡錘体形成」とは、有糸分裂キネシンによる微小管の二極構造への組織化を意味する。「有糸分裂紡錘体の機能障害」とは、有糸分裂の停止、単極紡錘体の形成または有糸分裂紡錘体の異常形成を意味し、この場合の「異常形成」には、有糸分裂紡錘体極の扇形化[splaying]またはそうでなければ有糸分裂紡錘体の形態的な摂動の誘発が含まれる。有糸分裂紡錘体の形成に関連して用いられる用語「阻害する」は、紡錘体形成を増加させることおよび紡錘体極分離を増加させるまたは減少させることを含めた有糸分裂紡錘体の形成を変調させることを意味する。「抗有糸分裂」は、例えば上記したような有糸分裂を阻害するまたは阻害する能力を有していることを意味する。
  用語「医薬的に許容される塩」には酸付加塩と塩基付加塩の両方が含まれる。「医薬的に許容される酸付加塩」は、その遊離塩基がその生物学的有効性を保持しておりかつ生物学的あるいはその他の意味において望ましくないものではない塩を意味し、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、または酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、シナモン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サルチル酸などの有機酸で形成されている。「医薬的に許容される塩基付加塩」としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などの無機塩基から誘導されるものが挙げられる。特に好適なのは、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩である。医薬的に許容される無毒の有機塩基から誘導される塩としては、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミンのような第一級、第二級、第三級のアミンの塩、天然に存在する置換アミンを含めた置換アミンの塩、環状アミンの塩、ならびに塩基性イオン交換樹脂の塩が挙げられる。
  用語「治療的に有効な用量」あるいは「有効な量」とは、以下に定義するところの治療を必要とする患者に投与した場合そのような治療に影響を及ぼすのに十分な式 IまたはIIの化合物の量を意味する。有効な量は、治療を受けている患者の状態や病状、患者の体重や年齢、病状の重症度、選んだのその特定の化合物、医薬的に許容される塩または溶媒和物、従うべき投与計画、投与のタイミング、投与の仕方などによって変わるものであり、これらは全て当業者なら容易に決定できるものである。本発明の好ましい態様では、この有効量は、治療を受けている疾患に関連している細胞中のKSPキネシンの活性を阻害するのに十分な量である。
  用語「治療」あるいは「治療する」とは患者における疾患のあらゆる治療を意味し、それには:
a)疾患を予防すること、すなわちその疾患の臨床症状が発生しないようにすること;
b)疾患を阻害すること、すなわち臨床症状の発生を遅らせるあるいは停止させること;および/または
C)疾患を軽減すること、すなわち臨床症状を沈静させること;
が含まれる。
  本発明で言う「患者」には、ヒトおよび他の動物特に哺乳動物、ならびにその他の生物が含まれる。つまり本方法は、ヒトの治療および獣医用途のいずれにも適用可能である。ある好ましい実施形態では、患者は哺乳動物であり、最も好ましくは患者はヒトである。
本発明の化合物
  本発明はある種のキナゾリノン誘導体を提供するものである。この化合物は有糸分裂キネシン類の1種以上の阻害物質である。本発明は、有糸分裂キネシンの作用を摂動すると有糸分裂紡錘体の異常形成あるいは機能障害が引き起こされ多くの場合細胞周期の停止や細胞死に至るという発見を活かしたものである。
[式中:
R1、R2、R3およびR4は独立に水素、ヒドロキシ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、ハロゲン、シアノであり;
R5は水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキルであり;
R6およびR6'は独立に水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロアラルキルであるか、またはR6およびR6'は一緒になって3員〜7員非芳香族炭素環式環またはヘテロ環式環を形成しており;
R7は置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいアラルキルであり;
R8は水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいアラルキルであり;
nは1または2である]
で表わされる群から選択される化合物およびそれらの単一の立体異性体、立体異性体の混合物、ならびに医薬的に許容される塩、溶媒和物、および医薬的に許容される塩の溶媒和物の1種または複数種に関する。
[式中:
TおよびUは独立に共有結合または置換されていてもよい低級アルキレンであり;
W、X、YおよびZは独立にN、C、CH、O、Sまたは不存在であるが、
  W、X、Y、Zの1つ以下が不存在であり、
  W、X、Y、Zの2つ以下が-N=であり、
  W、X、YまたはZは、W、X、Y、Zの1つが不存在である場合のみOまたはSであることができ;
R9は独立に置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいアラルキルであり(pが0であるかまたはR9が別に特定されていない場合は全ての結合可能な位置は水素となる);
Pは0〜9であり;
R1〜R3およびnは式 Iに関して定義したとおりであるが、W、X、Y、Zがそれぞれ-N=、O、S、不存在である場合はR1、R2、R3、R4は不存在である]
で表わされる群から選択される化合物およびそれらの単一立体異性体、立体異性体の化合物、ならびに医薬的に許容される塩、溶媒和物、および医薬的に許容される塩の溶媒和物の1種または複数種に関する。式 IIにより包含される化合物は式 Iの化合物を含むことが見て分かると思われるが、これらは同様に本発明の治療方法の実施における活性薬として、また本発明の医薬製剤を含む組成物の製造における活性薬としても有用であり、またそのような活性薬の合成における中間体としても有用であり得る。簡潔を期すために、明細書および特許請求の範囲では置換基T、U、W、X、YおよびZについては、式 Iの範囲内に入る一部の化合物については論議しないこととする。
  本明細書に記載されている化合物の多くは1つまたは複数の不斉中心を有しており、従って(R)-または(S)-のように純粋立体化学から定義することができる鏡像異性体、ジアステレオ異性体、および他の立体異性体の生成があり得る。本明細書に記載される化合物がオレフィン性二重結合またはその他の幾何不斉中心をもつ場合、そうでないと断らないかぎり、そのような化合物はEおよびZの幾何異性体の両方を含むこととする。同様に、全ての多形体も含まれることとする。本発明には、ラセミ混合物、中間混合物、光学的純粋体、実質的光学純粋体、鏡像異性的純粋体、および実質的鏡像異性的純粋体も含めた全てのそのような考えられ得る異性体が含まれる。
命名法について
  式 IおよびIIの化合物は、以下に記載するように命名および付番することができる(例えばISIS-DRAWにおけるAutoNom version 2.1、またはChemDrawを用いて)。
で表わされる化合物、すなわちR1、R2、R4およびR5が水素であり;R3がクロロであり;R5がベンジルであり;R6がエチルであり;R7がフェニルであり;R8がHであり;nが1である式 Iによる化合物は、3-ベンジル-7-クロロ-2-[-1-(2-フェニル-ピペラジン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オンと命名することができる。
で表わされる化合物、すなわちR1、R4およびR5がHであり;R2およびR3がメトキシであり;R5がベンジルであり;R6がイソプロピルであり;R7がp-トリルであり;R8がメチルであり;nが2である式 Iによる化合物は、(E)-3-ベンジル-6,7-ジメトキシ-2-[2-メチル-1-(4-メチル-7-p-トリル-[1,4]ジアゼパム-1-イル)-プロピル-3H-キナゾリン-4-オンと命名することができる。
で表わされる化合物、すなわちWがCHであり、XがCであり、YおよびZが-C=であり;R1、R3、R4、R6'およびR8がHであり;R2がジメチルであり;R5がベンジルであり;R6がエチルであり;R7がp-トリルであり;TおよびUが共有結合であり;nが1であり;pが0である式 IIによる化合物は、3-ベンジル-6,6-ジメチル-2-[1-(2-p-トリル-ピペラジン-1-イル)-プロピル]-5,6-ジヒドロ-3H-キナゾリン-4-オンと命名することができる。
で表わされる化合物、すなわちWが-N=であり;X、YおよびZが-C=であり;R1が不存在であり;R2、R4、およびR3がHであり;R3がシアノであり;R5がベンジルであり;R6がイソプロピルであり;R7がメチルであり;R8がp-トリルであり;R9が6-メチルおよび3,5-ジエチルであり;Tがオキソ-エチレンであり;Uが共有結合であり;nが1であり;pが3である式 IIによる化合物は、3-ベンジル-2-[3-(3,5-ジエチル-2,6-ジメチル-4-P-トリル-ピペラジン-1-イル)-4-メチル-2-オキソ-ペンチル]-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-ピリド[3,2-d]ピリミジン-7-カルボニトリルと命名することができる。
で表わされる化合物、すなわちWおよびYがCHであり;XがOであり;Zが不存在であり;R1およびR3がHであり;R2およびR4が不存在であり;R5がベンジルであり;R6がイソプロピルであり、R7がトリルであり;R8がメチルであり;R9がジメチルであり;Tが共有結合であり;Uがエチル-イソプロピルアミノ-メチレンであり;nが2であり;pが2である式 IIによる化合物は、3-ベンジル-2-[1-({イソプロピル-[2-(3,3,4-トリメチル-7-p-トリル-[1,4]ジアゼパム-1-イル)-エチル]-アミノ}-メチル)-2-メチル-プロピル]-5,7-ジヒドロ-3H-フロ[3,4-d]ピリミジン-4-オンと命名することができる。
合成反応のパラメーター
  用語「溶媒」、「不活性有機溶媒」、または「不活性溶媒」は、これら溶媒と共に記載されている反応の条件下で不活性である溶媒を意味する[例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、クロロホルム、塩化メチレン(またはジクロロメタン)、ジエチルエーテル、メタノール、ピリジンなどが挙げられる]。そうでないと断らない限り、本発明の反応で用いられる溶媒は、不活性有機溶媒である。
  用語「q. s.」は、記述されている作用を達成するのに十分な量を加えること、例えば所望の容量(すなわち100%)に溶液をもってくることを意味する。
  本明細書に記載された化合物および中間体の単離および精製は、望まれている場合は、例えば濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーもしくは厚層クロマトグラフィーまたはこれらの方法の組み合せのような適切な分離方法または精製方法により行うことができる。適切な分離方法および単離方法の具体的な説明は、後で出てくる実施例を参照することで得ることができる。しかしながら、他の等価の分離方法または単離方法も当然用いることができる。
  望まれる場合は、(R)-異性体および(S)-異性体は当業者に知られている方法により分割することができ、例えば:ジアステレオ異性体の塩または錯塩を生成させることにより例えば結晶化により分離することができ;ジアステレオ異性体の誘導体を生成させることにより例えば結晶化、ガス−液体クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーにより分離することができ;1つの鏡像異性体を鏡像異性体特異的試薬と選択的に反応させ(例えば酵素的酸化または還元を行い)、その後変性された鏡像異性体と変性されなかった鏡像異性体を分離することができ;あるいはキラルな環境、例えばキラルリガンドが結合されているシリカのようなキラル支持体上またはキラル溶媒の存在下でガス−液体クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーを行うことでできる。例えば、式 IまたはIIの化合物を低級アルカノール中に溶解させ、ヘキサン中70%のEtOAcで60分間調整されたChiralpak AD(205 x 20 mm)カラム(CHIRAL Technologies, Inc.)に入れることができる。上記した分離方法の1つにより所望の鏡像異性体が他の化学物質に変換される場合は、その所望の鏡像異性体を分離するにはさらなる工程が必要であることは分かると思われる。別のやり方として、光学的に活性な試薬、基質、触媒、または溶媒を用いた不斉合成により、あるいは不斉転換によるある鏡像異性体の他の鏡像異性体への変換により好ましい鏡像異性体を合成することもできる。
式 IおよびIIの化合物の合成
  式 IおよびIIの化合物の合成について反応図式 1を参照しながら以下に説明する。反応図式 1に関連して記載されている反応工程および/または反応条件の1つ以上が、R1〜R9に水素以外の置換基を入れるための調整を必要とすることがあることは当業者なら解かると思われる。
出発物質
  式 I01で表わされる置換されていてもよい2-ブロモ-アルキル-3H-キナゾリン-4-オンはWO01/30768に記載されているようにして得ることができる。その他の反応体は市販されているか(例えばAldrich Chemical Company, Milwaukee, WIから)、当業者なら普通の合成手法を用いて容易に調製することができる。
式 I03の調製
  反応図式 1のStep 1にあるように、式 I01で表わされる置換されていてもよい2-ハロ-アルキル-3H-キナゾリン-4-オン、2分の1モル当量の式 I02(式中R8'は保護されたR8置換基または保護されていないR8置換基あるいはBocなどの保護基「PG」である)で表わされる置換されていてもよいピペラジンまたはジアゼパム、および過剰量の炭酸カリウムを有機溶媒(例えばアセトニトリル)中で合わせる。反応を窒素雰囲気下高められた温度(例えば100℃)で8時間、その後幾分低い温度(例えば60℃)で5日間行わせる。この混合物を次に希釈し(例えば酢酸エチルで)、洗い、乾燥させ、濾過し、蒸発させると粗製残留物を得るが、これは常法(例えばシリカゲルクロマトグラフィー)により精製でき、対応する式 I03/式 IまたはIIで表わされる化合物(これはR8'にもよるが本発明の前駆体または生成物である)を得る。
式 IおよびIIの調製
  反応図式 1のStep 2にあるように、式 I03/式 I(式中PGは保護基である)で表わされる前駆体の脱保護を常法、例えばその前駆体をTFA/水の95/5混合物中に溶解させ、その後室温にて1時間撹拌することにより行う。得られた残留物を溶解させ(例えば酢酸エチル中に)、洗い(例えば飽和NaHCO3およびNaCl)、乾燥させ、濾過し、蒸発させる。精製(例えばシリカゲルTLC)により対応する式 IまたはIIで表わされる生成物を得る。
  上記した本発明の方法により調製された化合物は、検出可能な量の式 I03の存在で確認することができる。医薬は承認および/または市販の前に薬局方基準を満たさなければならないこと、また合成用試薬や前駆体(例えば式 I03)は薬局方基準で規定されている限度を越えてはならないことは周知なことであるが、本発明の方法により調製される最終化合物には、例えば純度95%の範囲で1%より多い不純物がひとつもないレベルでそのような物質の僅少だが検出可能な量が存在していると思われる。このようなレベルは、例えば発光分光法により検出することができる。そのような物質の存在について医薬化合物の純度を追跡するのは重要なことであり、そのような物質の存在を、本発明方法の使用の検出方法として追加的に開示する。
好ましい任意的な方法および最終工程
  式 I01で表わされる置換されていてもよい化合物と、2分の1モル当量の式 I02で表わされる置換されていてもよいピペラジンまたはジアゼパムを縮合させて対応する式 I、式 IIの化合物または式 I03/式 Iで表わされる保護された前駆体を得る。
  式 I03/式 Iで表わされる化合物を脱保護する。
  式 IまたはIIで表わされる化合物の異性体のラセミ混合物をクロマトグラフィーカラムに入れ、(R)-鏡像異性体と(S)-鏡像異性体とに分離する。
  式 IまたはIIの化合物と医薬的に許容される酸を接触させて対応する酸付加塩を生成させる。
  式 IまたはIIで表わされる医薬的に許容される酸付加塩と塩基を接触させて対応する式 IまたはIIの遊離塩基を生成させる。
好ましい化合物
  本発明の好ましい実施形態には、以下の置換基の群(・印がついて字下げされたもの/下位群化されたもので、それぞれ、字下げが多くなるほど好ましい度合いが大きくなる)の組み合せおよび置き換えをもつ式 IおよびIIの化合物が含まれるもしくは用いられる。これらは、添付の特許請求の範囲、および簡潔に言うと具体的には特許請求されていないかも知れないが本開示の教示に包含されると解すべき置換基の群の組み合せおよび置き換えを支持して提供されている。この点に関して、以下に記載されている各置換基についての下位群は、その置換基のみに、また、他の置換基について記載されている下位群の1つ、数個、または全てとの組み合せで適用されることが意図されている。
  W、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
・W、X、YおよびZが-C=である。
  R1、R2、R3およびR4が、水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから独立に選ばれる。
・R1、R2、R3およびR4が独立に水素、クロロ、フルオロ、メチル、メトキシ、シアノまたは置換低級アルキルである。
  ・R1、R2、R3およびR4が独立に水素、クロロ、フルオロ、メチル、メトキシまたはシアノである。
・R1、R2、R3およびR4のうち3つまたは4つが水素である場合。
  ・R1、R2、R3およびR4が水素であるかまたはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、4つ目がハロ、メトキシ、メチル、またはシアノである。
    ・ハロがクロロである場合。
      ・R3が水素またはクロロである場合。
        ・R3がクロロである場合。
  R5が置換されていてもよいアラルキルである。
・R5がベンジルまたは置換ベンジルである。
  ・R5がベンジルである。
  Tが置換されていてもよいC1〜C4アルキレンであるかまたは共有結合(すなわち不存在)である。
・Tが共有結合である。
・Tがヘテロ原子で置換された炭素を有するアルキレンでありかつそのヘテロ原子が直接二環式構造に結合していない場合。
  ・Tがアミノアルキレンまたはアミドアルキレンである。
・Tがアルキレン、またはハロもしくはオキソで置換されたアルキレンである。
  R6およびR6'が独立に水素または置換されていてもよい低級アルキルである。
・R6およびR6'の一方が水素である。
  ・R6およびR6'の他方が置換されていてもよい低級アルキルである。
    ・R6およびR6'の他方がC3〜C5低級アルキルである。
      ・低級アルキルがi-プロピル、c-プロピルまたはt-ブチルである。
        ・低級アルキルがi-プロピルである。
・R6およびR6'の一方が置換されていてもよい低級アルキルである。
  ・R6およびR6'の一方がC3〜C5低級アルキルである。
    ・低級アルキルがi-プロピル、c-プロピルまたはt-ブチルである。
      ・低級アルキルがi-プロピルである。
  Uが置換されていてもよいC1〜C4アルキレンであるかまたは共有結合である。
・Uが共有結合である。
・Uがヘテロ原子で置換された炭素を有するアルキレンでありかつそのヘテロ原子が直接ピペラジンまたはジアゼピン構造に結合していない場合。
  ・Uがアミノアルキレンまたはアミドアルキレンである。
・Uがアルキレン、またはハロもしくはオキソで置換されたアルキレンである。
  R7がアリール、置換アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、オキサアラルキル、オキサヘテロアラルキル、置換アラルキル、置換ヘテロアラルキル、置換オキサアラルキル、または置換オキサヘテロアラルキルである。
・R7が置換されていてもよいアリールまたはアラルキルである。
  ・R7が置換されていてもよいアリールである。
    ・R7がp-トリルである。
・R7がフェニル、低級アルキル-フェニル、低級アルコキシ-フェニル、ハロ-フェニル、ベンジル、フェニルビニル、ヘテロアラルキル、フェノキシ低級アルキル、オキサヘテロアラルキル、置換ベンジル、置換フェニルビニル、置換ヘテロアラルキル、置換フェノキシ低級アルキル、または置換オキサヘテロアラルキルである。
・R7がフェニル、低級アルキル-フェニル、低級アルコキシ-フェニル、ハロ-フェニル、ベンジル、フェニルビニル、フェノキシ低級アルキル、置換ベンジル、置換フェニルビニル、または置換フェノキシ低級アルキルである。
  R8が水素または低級アルキルである。
・R8が水素またはメチルである。
  ・R8が水素である。
  R9が独立に低級アルキル、低級アリール、置換低級アルキルまたは置換アリールである(または不存在である)。
・R8が不存在、低級アルキルまたは置換されていてもよいフェニルである。
  ・R8が不存在である。
  nが1である。
  pが0である。
  好ましい置換基の好適な組み合せおよび置き換えの例は、nが1であり、pがゼロであり、T、U、W、X、Y、ZおよびR1〜R8の1つ以上が上記したとおりである化合物、医薬的に許容される塩および溶媒和物である。例えば、nが1である場合でかつ:
・W、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
  ・W、X、YおよびZが-C=である。
・R1、R2、R3およびR4が、水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから独立に選ばれる。
  ・R1、R2、R3およびR4が独立に水素、クロロ、フルオロ、メチル、メトキシ、シアノまたは置換低級アルキルである。
    ・R1、R2、R3およびR4が独立に水素、クロロ、フルオロ、メチル、メトキシまたはシアノである。
  ・R1、R2、R3およびR4のうちの3つまたは4つが水素である。
    ・R1、R2、R3およびR4が水素であるかまたはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり4つめがハロ、メトキシ、メチル、またはシアノである。
    ・ハロがクロロである場合。
    ・R3が水素またはクロロである場合。
    ・R3がクロロである場合。
・R5が置換されていてもよいアラルキルである。
  ・R5がベンジルまたは置換ベンジルである。
  ・R5がベンジルである。
・TおよびUが独立に置換されていてもよいC1〜C4アルキレンまたは共有結合(すなわち不存在)である。
  ・Tが共有結合である。
  ・Uが共有結合である。
    ・TおよびUが共有結合である。
  ・TまたはUがヘテロ原子で置換された炭素を有するアルキレンであり、そのヘテロ原子が直接隣接する環式構造に結合していない場合。
    ・Tおよび/またはUがアミノアルキレンまたはアミドアルキレンである。
  ・Tおよび/またはUがアルキレンまたはハロまたはオキソで置換されたアルキレンである。
・R6およびR6'が独立に水素または置換されていてもよい低級アルキルである。
  ・R6およびR6'の一方が水素である。
  ・R6およびR6'の他方が置換されていてもよい低級アルキルである。
  ・R6およびR6'の他方がC3〜C5低級アルキルである。
  ・低級アルキルがi-プロピル、c-プロピルまたはt-ブチルである。
  ・低級アルキルがi-プロピルである。
・R7がアリール、置換アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、オキサアラルキル、オキサヘテロアラルキル、置換アラルキル、置換ヘテロアラルキル、置換オキサアラルキル、または置換オキサヘテロアラルキルである。
  ・R7が置換されていてもよいアリールまたはアラルキルである。
    ・Rが置換されていてもよいアリールである。
    ・R7がp-トリルである。
  ・R7がフェニル、低級アルキル-フェニル、低級アルコキシ-フェニル、ハロ-フェニル、ベンジル、フェニルビニル、ヘテロアラルキル、フェノキシ低級アルキル、オキサヘテロアラルキル、置換ベンジル、置換フェニルビニル、置換ヘテロアラルキル、置換フェノキシ低級アルキル、または置換オキサヘテロアラルキルである。
  ・R7がフェニル、低級アルキル-フェニル、低級アルコキシ-フェニル、ハロ-フェニル、ベンジル、フェニルビニル、フェノキシ低級アルキル、置換ベンジル、置換フェニルビニル、または置換フェノキシ低級アルキルである。
・R8が水素または低級アルキルである。
  ・R8が水素またはメチルである。
    ・R8が水素である。
  ・nが1であり;R8が水素または低級アルキルであり;R7がアリール、置換アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、オキサアラルキル、オキサヘテロアラルキル、置換アラルキル、置換ヘテロアラルキル、置換オキサアラルキル、または置換オキサヘテロアラルキルである。
    ・R7が置換されていてもよいアリールまたはアラルキルである。
      ・R7が置換されていてもよいアリールである。
      ・R7がp-トリルである。
    ・かつR6およびR6'が独立に水素または置換されていてもよい低級アルキルである。
      ・かつTおよびUが独立に置換されていてもよいC1〜C4アルキレンまたは共有結合である。
        ・かつR5が置換されていてもよいアラルキルである。
          ・かつR1、R2、R3およびR4が独立に水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから選ばれる。
            ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
          ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
        ・かつR1、R2、R3およびR4が独立に水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから選ばれる。
        ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
      ・かつR5が置換されていてもよいアラルキルである。
      ・かつR1、R2、R3およびR4が独立に水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから選ばれる。
      ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
    ・かつTおよびUが独立に置換されていてもよいC1〜C4アルキレンまたは共有結合である。
    ・かつR5が置換されていてもよいアラルキルである。
    ・かつR1、R2、R3およびR4が独立に水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから選ばれる。
    ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
  ・nが1であり;Rが水素または低級アルキルであり;R6およびR6'が独立に水素または置換されていてもよい低級アルキルである。
    ・かつTおよびUが独立に置換されていてもよいC1〜C4アルキレンまたは共有結合である。
      ・かつR5が置換されていてもよいアラルキルである。
        ・かつR1、R2、R3およびR4が独立に水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから選ばれる。
          ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
        ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
      ・かつR1、R2、R3およびR4が独立に水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから選ばれる。
      ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
    ・かつR5が置換されていてもよいアラルキルである。
    ・かつR1、R2、R3およびR4が独立に水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから選ばれる。
    ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
  ・nが1であり;R8が水素または低級アルキルであり;TおよびUが独立に置換されていてもよいC1〜C4アルキレンまたは共有結合である。
    ・TおよびUはいずれも共有結合である。
    ・かつR5が置換されていてもよいアラルキルである。
      ・かつR1、R2、R3およびR4が独立に水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから選ばれる。
        ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
      ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
    ・かつR1、R2、R3およびR4が独立に水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから選ばれ。
    ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
  ・nが1であり;R8が水素または低級アルキルであり;R5が置換されていてもよいアラルキルである。
    ・R5がベンジルである。
    ・かつR1、R2、R3およびR4が独立に水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから選ばれる。
      ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
    ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
  ・nが1であり;R8が水素または低級アルキルであり;R1、R2、R3およびR4が独立に水素、ハロ、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、およびシアノから選ばれる。
    ・R1、R2、R3およびR4が水素であるか、またはR1、R2、R3およびR4のうちの3つが水素であり、4つ目がハロ、メトキシ、メチル、またはシアノである。
    ・かつW、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
  ・nが1であり;R8が水素または低級アルキルであり;W、X、YおよびZが独立に-C=および-N=から選ばれる。
    ・W、X、YおよびZが-C=である。
  このように、上記で述べた置換基を個々におよび/または一緒に分類化したものおよび下位群化したものにより説明したものを含めて、nが1である化合物は、本発明を実施するのに特に好適である。
  本発明の化合物、その医薬的に許容される塩および溶媒和物、医薬製剤を含めた組成物、ならびに製造方法および使用の1つの集団では、式 IまたはIIの化合物は以下から選択される:
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(2-p-トリル-ピペラジン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・(±)-3-ベンジル-7-クロロ-2-[2-メチル-1-(2-p-トリル-ピペラジン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(7-フェニル-[1,4]ジアゼパン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・(±)-3-ベンジル-7-クロロ-2-[2-メチル-1-(7-フェニル-[1,4]ジアゼパン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-2-[1-(2-p-トリル-ピペラジン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・(±)-3-ベンジル-2-[2-メチル-1-(2-p-トリル-ピペラジン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-2-[1-(7-フェニル-[1,4]ジアゼパン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン;および
・(±)-3-ベンジル-2-[2-メチル-1-(7-フェニル-[1,4]ジアゼパン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン。
  本発明の化合物、その医薬的に許容される塩および溶媒和物、医薬製剤を含めた組成物、ならびに製造方法および使用の1つの好ましい集団では、式 IまたはIIの化合物は以下から選択される:
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(2-p-トリル-ピペラジン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・(±)-3-ベンジル-7-クロロ-2-[2-メチル-1-(2-p-トリル-ピペラジン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン;
・3-ベンジル-2-[1-(2-p-トリル-ピペラジン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン;および
・(±)-3-ベンジル-2-[2-メチル-1-(2-p-トリル-ピペラジン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン;
特にこれらの(R)-鏡像異性体(適宜に)。
  本発明の化合物、その医薬的に許容される塩および溶媒和物、医薬製剤を含めた組成物、ならびに製造方法および使用のもう1つの好ましい集団では、式 IまたはIIの化合物は以下から選択される:
・3-ベンジル-7-クロロ-2-[1-(2-p-トリル-ピペラジン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン;おおび
・3-ベンジル-2-[1-(2-p-トリル-ピペラジン-1-イル)-プロピル]-3H-キナゾリン-4-オン。
用途、試験、投与について
一般的用途について
  本発明の化合物は、治療用作用薬として、治療法の実施において、組成物特に医薬製剤において、医薬製剤の製造方法において、またそのような治療用作用薬の合成における中間体としてなど色々な用途に使用される。
  当業者なら解ると思われるが、有糸分裂は色々な方法で変調することができる。すなわち、有糸分裂の経路にある1つの成分の活性を増大させたり減少させたりするか、あるいはそれと干渉させたりすることで有糸分裂に影響を与えることができる。別の言い方をすると、一部の有糸分裂成分を阻害するか活性化することにより平衡を乱すことで有糸分裂に影響を与える(例えば混乱させる)ことができる。同じようなやり方を用いて、減数分裂を変調することもできる。
  本発明の化合物は有糸分裂紡錘体の形成を阻害するのに用いることができる。そのような阻害は、有糸分裂キネシンが微小管を二極構造体に組織化するのを少なくする形態、紡錘体の極分離を増大させるか減少させる形態、および/または有糸分裂紡錘体の機能障害を誘発させる形態をとることができる。特に、本発明の化合物は、有糸分裂キネシンであるKSP特にヒトKSPに結合させるのに、および/またはその活性を阻害するのに有用であるが、他の生物のKSPキネシンに対しても用いることができる。このため用語「KSP」の定義には、KSPの変形体および/または断片も含まれる。米国特許第6,437,115号を参照されたい。本発明においては他の有糸分裂キネシンに対して用いることもできるが、本発明の化合物はKSPに対して特異性をもつことが示された。本発明の化合物と、KSPキネシン特にヒトKSPキネシンを接触させると、KSP介在ATP加水分解活性の消失、および/またはKSP介在有糸分裂紡錘体形成活性の消失に至らしめることができる。減数分裂紡錘体も同様に撹乱することができる。
  もう1つの実施形態では、本発明の化合物を用いて、KSPの阻害に加えて以下に掲げるその他のヒト有糸分裂キネシンの1種以上を変調させることができる:HSET(米国特許第6,361,993号を参照されたい);MCAK(米国特許第6,331,424号を参照されたい);CENP-E(PCT公開第WO 99/13061号を参照されたい);Kif4(米国特許第6,440,684号を参照されたい);MKLP1(米国特許第6,448,025号を参照されたい);Kif15(米国特許第6,355,466号を参照されたい);Kid(米国特許第6,387,644号を参照されたい);Mpp1、CMKrp、Kinl-3(米国特許第6,461,855号を参照されたい);Kip3a(PCT公開第WO 01/96593号を参照されたい);Kip3d(米国特許第6,492,151号を参照されたい);およびRabK6。
  本発明の化合物の有糸分裂キネシン阻害性作用から勧められる治療用途には細胞増殖と関連する障害の治療がある。本明細書で提供される方法、医薬製剤、および化合物により治療することができる好ましい疾患としては、限定するものではないが、癌(さらに以下で述べる)、自己免疫疾患、関節炎、移殖拒絶反応、炎症性腸疾患、[限定するものではないが手術や血管形成などの医療処置の後に誘発される]増殖が挙げられる。1つの実施形態では、本発明には上記の障害または病態のどれか1つで冒されたあるいは近い将来冒されるかも知れない細胞または個体に対して適用することが含まれる。
  本明細書で提供される化合物、医薬製剤、および方法は特に、皮膚癌、乳癌、脳腫瘍などの充実性腫瘍;子宮頚癌;精巣癌などの治療に有用であると思われる。より詳細には、治療を行うことができる癌は、限定するものではないが、以下のものが挙げられる。
・心臓関係では:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫、および奇形腫;
・肺関係では:気管支原性癌(扁平上皮細胞癌、未分化小細胞癌、未分化大細胞癌、腺癌)、肺胞性(気管支)癌、気管支腺腫、気管支肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;
・胃腸関係では:食道関係(扁平細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃関係(胃癌、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓関係(腺管性腺癌、インスリノーマ、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸関係(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポージ癌、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸関係(腺癌、管腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);
・尿生殖路関係では:腎臓関係(腺癌、ウイルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道関係(扁平細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺関係(腺癌、肉腫)、精巣関係(精上皮腫、奇形腫、胎児性癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、精巣細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);
・肝臓関係では:肝腫(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;
・骨関係では:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性筋肉腫、悪性巨細胞脊索腫、骨軟骨肉腫(骨軟骨外骨腫症)、良性軟骨腫、軟骨肉芽腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、および巨細胞腫瘍;
・神経系では:頭蓋骨関係(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜関係(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳関係(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫(松果体細胞腫)、多形性膠芽腫、乏突起膠腫、シュワン細胞種、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、神経肉腫);
・産婦人科関係では:子宮関係(子宮内膜癌)、子宮頚部(子宮頚癌、前腫瘍子宮頚管形成異常症)、卵巣関係(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類癌]、卵胞膜細胞腫、セルトーリ・ライディヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性顆粒膜)、外陰関係(扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣関係(明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状癌(胚性横紋筋癌)、ファロピウス管癌);
・血液関係では:血液関係(骨髄性白血病[急性および慢性])、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性筋腫、骨髄異形性症候群)、ホジキンス病、非ホジキンスリンパ腫(悪性リンパ腫);
・皮膚関係では:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポージ肉腫、異常形成母斑、リンパ腫、管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;および、
・副腎関係では:神経芽腫。
本明細書で用いられる場合、「癌の治療」には、上記で明らかにした病状のどれか1つにより冒された細胞も含めた癌性細胞の治療が含まれる。
  本発明のもう1つの有用な態様は、式 IまたはIIの化合物、塩または溶媒和物、および、本化合物、塩または溶媒和物の有効量を投与することによる細胞増殖性疾患の治療についての説明書きが含まれているパッケージ挿入物または他の標示物を含むキットである。本発明のキット中の式 IまたはIIの化合物、塩または溶媒和物は好ましくは細胞増殖性疾患の治療コース用に1以上の服用量で提供し、各服用は医薬的に許容される賦形剤および式 IまたはIIの化合物、塩または溶媒和物を含む医薬製剤とする。
試験について
  作用性をアッセイするには、一般にKSPか本発明による化合物を、孤立したサンプル受入領域を有する非溶解性の支持体に非拡散的に結合させる。この非溶解性支持体は、本化合物を結合させることができる材料ならどんなものからできていてもよく、溶解性の物質を容易に離し、ほかの点ではスクリーニング方法の全体と適合性があるもとする。そのような支持体の表面は固形質または多孔質であることができ、また都合のよいどのような形状であることもできる。好適な非溶解性支持体の例としては、微量滴定プレート、アレイ、メンブレン、ビーズなどが挙げられる。これらは、典型的には、ガラス、プラスチック(例えばポリスチレン)、ポリサッカリド、ナイロン、あるいはニトロセルロース、Teflon[商標]などからできている。微量滴定プレートおよびアレイは、少量の試薬およびサンプルを用いて多数のアッセイを同時に行うことができるので特に便利なものである。本化合物を結合させる好ましいやり方は、それが、試薬および本発明の全体方法と適合性があり、本化合物の活性を維持し、非拡散的である限り、臨界的なものではない。好ましい結合方法としては、抗体(これはタンパク質が支持体に結合されたとき、リガンド結合部位と活性化配列のどちらをも立体的にブロックしないもの)の使用、「粘着性[sticky]」またはイオン性支持体への直接結合、化学的架橋、支持体表面でのタンパク質または作用物質の合成などが挙げられる。タンパク質または作用物質を結合させた後、余剰の未結合物質は洗浄により除去する。サンプル受入領域は次に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインもしくは他の無害タンパク質またはその他の構造のものを用いたインキュベーションによりブロックすることができる。
  本発明の化合物はそれ自体、有糸分裂キネシン特にKSPの活性を変調することができる。1つの実施形態では、本発明の化合物はKSPと合せられ、KSPの活性がアッセイされる。測定可能なキネシン活性としては、ATP加水分解;微小管結束;摺り移動および重合/解重合(微小管運動力学に影響する);紡錘体の他のタンパク質への結合;細胞周期の調節に関与するタンパク質への結合;キナーゼあるいはプロテアーゼなどの他の酵素に対する基質としての役割;および、紡錘体極分離などの特異的キネシン細胞活性;に影響を及ぼす能力が挙げられる。
  運動性アッセイを行う方法は当業者には周知である[例えば、Hall, et al. (1996), Biophys. J., 71:3467-3476;Turner et al., 1996, Anal Biochem. 242 (1): 20-5;Gittes et al., 1996, Biophys. J. 70(1): 418-29;Shirakawa et al., 1995, J. Exp. Biol 198:1809-15;Winkelmann et al., 1995, Biophys. J. 68:2444-53;Winkelmann et al., 1995, Biophys. J. 68:72S;を参照されたい]。
  当技術分野で知られているATPアーゼ加水分解活性を測定するための方法を用いることもできる。溶液型アッセイは特に好適である(米国特許第6,410,254号を参照されたい)。別の方法としては、常法が用いられる。例えば、キネシン由来のPi放出を定量することができる。1つの実施形態において、上記ATPアーゼ加水分解活性アッセイでは、0.3M PCA(過塩素酸)およびマラカイトグリーン試薬(モリブデン酸IIナトリウム8.27mM、マラカイトグリーンオキサレート0.33mM、およびトリトンX-1 00 0.8mM )が用いられる。このアッセイを行うには、反応物10μLが冷0.3M PCA 90μL中にクエンチされる。データを放出された無機リン酸塩のmMに変換できるように、リン酸塩標準物質が使用される。全ての反応物および標準物質がPCA中にクエンチされたら、例えば微量滴定プレート中の適切なウェルにマラカイトグリーン試薬100μLを加える。この混合物を10〜15分間展開させ、プレートの650nmにおける吸収を測定する。リン酸塩標準物質を用いた場合は、吸収測定値はmM Piに変換することができ、時間に対してプロットすることができる。加えるに、当技術分野で知られているATPアーゼアッセイには、ルシフェラーゼアッセイも含まれる。
  キネシンモータードメインのATPアーゼ活性を用いて変調作用性物質の影響を追跡することもできる。1つの実施形態では、微小管の不存在下にキネシンのATPアーゼアッセイが行われる。もう1つの実施形態では、微小管の存在下にこのATPアーゼアッセイが行われる。上記のアッセイでは、異なるタイプの変調作用物質を検出することができる。1つの好ましい実施形態では、変調作用物質の影響は、微小管およびATPの濃度に依存しない。もう1つの実施形態では、キネシンATPアーゼに対するその作用物質の影響は、ATP、微小管またはこの両方の濃度を上げることで小さくすることができる。なおもう1つの実施形態では、この変調作用物質の影響は、ATP、微小管またはこの両方の濃度を上げることで大きくなる。
  インビトロでKSPの生物化学活性を変調する作用物質は次にインビボでスクリーニングされる。インビボでそのような作用物質を試験する方法としては、細胞周期分布アッセイ、細胞生育能力アッセイ、あるいは有糸分裂紡錘体の存在、形態、活動、分布、または量のアッセイが挙げられる。例えばフローサイトメトリーによりある細胞集団の細胞周期分布を追跡するための方法は、細胞生育能力の測定方法と同じように当業者には周知である。例えば、発明の名称「Methods of Screening for Modulators of Cell Proliferation and Methods of Diagnosing Cell Proliferation States」のWO 01/31335を参照されたい。
  上記したアッセイに加えて、紡錘体の形成および異常形成を追跡するための顕微鏡による方法も当業者には周知である(例えば、Whitehead and Rattner (1998), J. Cell Sci. 111:2551-61;Galgio et al, (1996) J. Cell Biol., 135:399-414を参照されたい)。
  本発明の化合物はKSPキネシンを阻害する。阻害の1つの尺度はIC50であり、これはKSPの活性が50パーセント下げられるときの化合物の濃度として定義される。特に好適な化合物のIC50は凡そ1mM未満であり、より好ましい好適な化合物のIC50は凡そ100μM未満である。より低いIC50が有利であると一般に考えられることは理解されるとして、一部の本発明の化合物ならびにその医薬的に許容される塩および溶媒和物により凡そ10nM未満のIC50を達成することができる。IC50の測定はATPアーゼアッセイを用いて行われる。
  もう1つの阻害の尺度はK
iである。IC
50が1μM未満である化合物にたいしては、K
iまたはK
dは、試験化合物とKSPとの相互作用についての解離速度定数と定義される。特に好適な化合物のK
iは凡そ100μM未満であり、より好ましい好適な化合物のK
iは凡そ10μ未満である。より低いK
iが有利であると一般に考えられることは理解されるとして、一部の本発明の化合物ならびにその医薬的に許容される塩および溶媒和物により凡そ10nM未満のK
iを達成することができる。ある化合物についてのK
iは、三つの仮定に基づいてこのIC
50から求められる。第1には、酵素には1つの化合物分子だけが結合し、協同性がない。第2には、活性酵素の濃度および試験される化合物の濃度が分っている(すなわち試料中には有意な量の不純物または不活性形態物がない)。第3には、酵素・阻害物質複合体の酵素反応速度はゼロである。得られた速度(すなわち化合物濃度)データは、次の式に対して近似が行われる。
ここで、Vは観測された速度であり、Vmaxは遊離酵素の速度であり、IOは阻害物質濃度であり、EOは酵素濃度であり、Kdは酵素・阻害物質複合体の解離定数である。
  もう1つの阻害の尺度はGI50であり、これは、50パーセントの細胞増殖速度の低下を生じる化合物の濃度と定義される。臨床で癌治療に対して用いてうまくいった抗増殖性の化合物(癌化学療法薬)のGI50は大きく変動している。例えばA549細胞において、パクリタキセルのGI50は4nMであり、ドキソルビシンのは63nMであり、5-フルオロウラシルのは1μMであり、ヒドロキシ尿素のは500μMである(データは、National Cancer InstituteのDevelopmental Therapeutic Program [http ://DTP. nci. nih. GOV/]により提供されているもの)。それゆえ、細胞増殖を事実上どのような濃度においても阻害する化合物は有用であり得る。好ましい好適な化合物のGI50は凡そ1mM未満であり、より好ましい好適な化合物のGI50は凡そ10μM未満である。より低いGI50が有利であると一般に考えられることは理解されるとして、一部の本発明の化合物ならびにその医薬的に許容される塩および溶媒和物により凡そ10nM未満のGI50を達成することができる。GI50の測定は細胞増殖アッセイを用いて行われる。
  パクリタキセルなどの他の化学療法薬に抵抗性をもたらすP-糖タンパク質(Multi-drug Resistance、またはMDR+とも呼ばれる)を発現する細胞株(例えばMCF-7/ADR-RESやHCT1 5)を用いた増殖阻害の試験により、細胞増殖を阻害しかつ薬物抵抗性腫瘍株によるMDR+の過剰発現による抵抗性を受けない抗有糸分裂性の作用物質を明らかにすることができる。
  小分子阻害物質のインビトロ薬効は、ヒト卵巣癌細胞(SKOV3)を化合物の9段階希釈列に72時間曝露したあと生育能力についてアッセイすることにより決定する。細胞の生育能力は、市販されている試薬であり、またMTS/PMSの生物的還元により生成される生成物であるフォルマゾンの吸収を測定することにより決定する。投与量・応答曲線上の各点は、72時間時点における未処理の参照用細胞引くバックグランド吸収(完全な細胞死)のパーセントとして計算される。
  KSPキネシンに結合する化合物をスクリーニングする方法において本発明の化合物を用いるには、KSPを支持体に結合させ、アッセイに本発明の化合物または組成物を加える。別の方法としては、固体の支持体に本発明の化合物の組成物を結合させたものをつくり、アッセイにKSPを加える。新規な結合性作用物質を見つけ出し得る化合物の群としては、特異的抗体、化学物質ライブラリーのスクリーンで明らかにされている非天然結合性作用物質、ペプチド類似体などが挙げられる。特に関心あるのは、ヒト細胞に対して毒性が低い候補作用物質のためのスクリーニングアッセイである。この目的のためには、色々なアッセイを用いることができ、標識化インビトロタンパク質・タンパク質結合アッセイ、電気泳動度シフトアッセイ、タンパク質結合免疫アッセイ、機能アッセイ(リン酸化アッセイなど)などが挙げられる。
  本発明の化合物のKSPへの結合の測定は、色々な方法で行うことができる。1つの好ましい実施形態では、本発明の化合物は、例えば蛍光性または放射性構造をもつもので標識化され、結合が直接測定される。例えばこれは、固形質支持体にKSPの全部または一部を付け、標識化された化合物(例えば少なくとも1個の原子が検出可能な放射性同位元素で置換された本発明の化合物)を加え、余剰試薬を洗い出し、固形質支持体上にどれだけの量の標識が存在するかを測定することにより行うことができる。当技術分野で知られている色々なブロッキング法および洗浄法を利用することができる。
  本明細書における「標識化」とは、化合物を、例えば放射性同位元素、蛍光性タグ、酵素、抗体、磁性粒子などの粒子、化学発光タグ、あるいは特異的結合性分子などの検出可能な信号を与える標識で直接的か間接的に標識化することを意味する。特異的結合性分子には、ビオチンとストレプトアビジンの対、ジゴキシンと抗ジゴキシンの対などが含まれる。特異的結合性物質に対して相補的な物質が通常、上記で概説した既知の方法により検出できる分子で標識化される。標識は、検出可能な信号を直接的または間接的に出す。
  一部の実施形態では、成分の1つだけが標識化される。例えばキネシンタンパク質が、125Iを用いて、あるいは蛍光分子[fluorophore]でチロシン位置に標識化される。別の方法としては、2つ以上の成分を異なる標識で、例えばタンパク質に対しては125Iを、抗有糸分裂作用物質に対しては蛍光分子を用いて標識化することができる。
  本発明の化合物は、さらなる薬物候補をスクリーニングするための競合体として用いることもできる。ここで用いる「候補作用物質」または「薬物候補」または文法的同等表現物は、生物活性について試験されることになる分子、例えばタンパク質、オリゴペプチド、小有機分子、ポリサッカリド、ポリヌクレオチドなどを表わす。これらは、核酸配列およびタンパク質配列の両方を含めた細胞増殖の表現型または細胞増殖配列の発現を直接的または間接的に変え得る。他のケースでは、細胞増殖タンパク質の結合および/または活性の変調がスクリーニングされる。この種のスクリーニングは、微小管の存在下または不存在下に行うことができる。タンパク質の結合または活性をスクリーニングする場合、好ましい実施形態では、その特定のタンパク質例えば微小管などのポリマー構造物やATPなどのエネルギー源に結合することが既に知られている分子は除外される。本明細書におけるアッセイの好ましい実施形態には、本明細書で「外因性」作用物質と呼ばれる、細胞増殖タンパク質にその内因性自然状態に拘束しない候補作用物質が含まれる。もう1つの好ましい実施形態では、KSPに対する抗体が外因性作用物質からさらに除外される。
  候補作用物質には多数の化学物質の郡が含まれ得るが、典型的にはそれらは生体分子であり、好ましくはそれらは分子量が100ダルトンより大きく2,500ダルトンより小さい小生体分子である。候補作用物質は、タンパク質との構造的相互作用特に水素結合や脂質親和性結合に必要な官能基を含んでおり、典型的には少なくとも1個のアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、エーテル基、あるいはカルボキシル基、好ましくはこれら官能化学基の少なくとも2つを含んでいる。候補作用物質は多くの場合、上記官能基の1つ以上で置換された環状炭素またはヘテロ環式構造および/または芳香族もしくはポリ芳香族構造を含んでいる。候補作用物質は、ペプチド、ポリサッカリド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、これらの誘導体、構造的類似体、あるいはこれらの組み合せを含めた生体分子中にも見られる。
  候補作用物質は、合成のあるいは天然の化合物のライブラリーを含めた各種の情報源から得られる。例えば、無作為化されたオリゴヌクレオチドの発現を含めて種々の有機化合物および生体分子のランダム合成および指定合成に対して多数の手段が利用可能である。別の方法としては、細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形態での天然化合物のライブラリーが利用可能であり、また容易につくられる。さらには、天然にまたは合成的につくられたライブラリーおよび化合物は、慣用の化学的、物理的、生物化学的手段により容易に変性される。既知の薬理作用物質を、アシル化、アルキル化、エステル化、および/またはアミド化などの指定のまたはランダムな化学変性を受けさせて、構造的類似体をつくり出すこともできる。
  競合的スクリーニングアッセイは、KSPと薬物候補を第1のサンプル中に組み合せることにより行なうことができる。第2のサンプルを、本発明の化合物、KSP、および薬物候補を合わせることでつくることができる。これは、微小管の存在下か不存在下で行なうことができる。薬物候補の結合を両方のサンプルに対して測定し、2つのサンプル間における変化または結合の差があると、KSPに結合することができまたその活性を潜在的に変調することができる作用物質が存在していることを示す。すなわち、薬物候補の結合が、第1のサンプルと比較して第2のサンプルにおいて異なる場合は、その薬物候補はKSPに結合することができる。
  好ましい好適な実施形態では、候補作用物質の結合は競合的結合アッセイによって測定される。この実施形態では競合体は、抗体、ペプチド、結合性パートナー、リガンドなどのKSPに結合することが知られている結合性部分構造体である。一部の状況下では、候補作用物質と結合性部分構造との間で、結合性部分構造が候補作用物質を置き換えるという競合的結合があり得る。
  1つの実施形態では、候補作用物質が標識化されている。候補作用物質か競合体のどちらかまたは両方が、存在する場合は最初にKSPに加えられて十分な時間結合が行われる。インキュベーションは、最適な活性を促進する温度、典型的には4〜40℃で行なうことができる。インキュベーション時間は最適活性の点から選択されるが、迅速なハイスループットスクリーニングを促進するように最適化することもできる。典型的には0.1〜1時間が十分であると思われる。過剰の試薬は一般に除去されるか洗い流される。第2の成分がこの後加えられ、標識化合物の存在または不存在が追跡されて結合が明らかにされる。
  好ましい好適な実施形態では、競合体が最初に加えられ、その後に候補作用物質が加えられる。競合体の置き換えが、候補作用物質がKSPに結合しつつあるという、つまりKSPに結合する能力があり、KSPの活性を変調する可能性があるという指標である。この実施形態では、どちらかの成分を標識化することができる。つまり、例えば、競合体が標識化される場合は、洗浄液に標識が存在することは、作用物質による置き換えを意味する。あるいは、候補作用物質が標識化される場合は、標識が支持体上に存在することが置き換えを意味する。
  別の実施形態では、候補作用物質が最初に加えられてインキュベーションおよび洗浄が行なわれ、その後に競合体が加えられる。競合体による結合がないことは、候補作用物質がより大きな親和力でKSPに結合していることを意味し得る。つまり、候補作用物質が標識化される場合は、支持体上に標識が存在することは、競合体の結合がなかったことと合わせると、候補作用物質がKSPに結合することができることを意味し得る。
  KSPの結合部位を明らかにすることは意味あることであると思われる。これは色々な方法で行うことができる。1つの実施形態では、KSPが化合物に対して結合性であることが明らかにされると、KSPは断片化されるかまたは変性され、アッセイが繰り返されて結合に必要な成分が明らかにされる。
  上記した候補作用物質とKSPを合せるステップと、KSPの生物学的活性における変化を測定するステップを含んでなる、KSPの活性を変調することができる候補作用物質についてのスクリーニングにより、変調を試験する。つまりこの実施形態では、候補作用物質は、KSPに結合し(尤もこれは必要でない場合もあるが)且つ本明細書で定義されたその生物的または生化学的活性を変調すると考えられる。この方法には、上記で一般論として概説した細胞周期分布、細胞生育能力における変調についての、あるいは有糸分裂紡錘体の存在、形態、活性、分布、または量についてのインビトロのスクリーニング方法とインビボの細胞スクリーニング方法の両方が含まれる。
  別の方法として、微分スクリーニングを用いることで、天然KSPには結合するが変性KSPには結合することができない薬物候補を明らかにすることもできる。
  アッセイにおいては正の参照および負の参照を用いることができる。統計的に有意な結果を得るには、好ましくは、全ての参照サンプルおよび試験サンプルは少なくとも3つで行なわれる。全てのサンプルのインキュベーションは、作用物質がタンパク質に結合するのに十分な時間行なわれる。インキュベーションの後、全てのサンプルは、非特異的に結合している物質がなくなるまで洗われ、結合した量、一般には標識化された作用物質が測定される。例えば、放射線標識が用いられる場合、サンプルをシンチレーションカウンターでカウントして、結合された化合物の量を測定することができる。
  スクリーニングアッセイには各種の他の試薬を入れることもできる。それらには、塩などの試薬、中性タンパク質例えばアルブミンや洗浄薬などが挙げられ、これらは、最適なタンパク質・タンパク質結合を促進するのに、および/または非特異的相互作用またはバックグランド相互作用を減らすのに用いることができる。また、プロテアーゼ阻害物質、ヌクレアーゼ阻害物質、抗細菌剤などのアッセイの効率を逆に向上させる試薬を用いることもできる。混合物の成分については、必要な結合を与えるならいかなる順序ででも加えることができる。
製剤と投与について
  式 IおよびIIの化合物、医薬的に許容される塩、および溶媒和物は、治療的に有効な用量、例えば上記した疾患状態の治療を行うのに十分な量で投与される。ヒト用の用量レベルは、最新のFDAのGood Clinical Practiceや各地方におけるガイドラインに従って行われる用量範囲試験結果を延長することで決定される。投与される作用性成分の量は当然治療を受ける患者や疾患、疾患の重症度、投与の方法やスケジュール、担当の医師の判断に依存するものである。
  本発明の化合物および医薬製剤の投与は色々な方法で行なうことができ、投与は限定するものではないが経口、皮下、静脈内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、経膣、経直腸、眼内が挙げられる。例えば創傷および炎症の治療のような一部の例においては、本化合物または組成物は溶液またはスプレーとして直接適用することができる。
  医薬製剤中には、式 IまたはIIの化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物と、1種以上の医薬的に許容される賦形剤が含まれる。当技術分野で知られているように、医薬賦形剤は二次的な成分であって、これらは、色々な投与形態(例えば:タブレット、カプセル、液体などの経口用形態;皮膚用形態、眼用形態、耳用形態などの局所用形態;座剤;注射剤;吸入用形態など)にある薬物または医薬の送達を可能にするようまたは向上させるよう機能する。医薬賦形剤としては、本作用性成分の医療効果に実質的に寄与する不活性または非作用性成分、相乗作用剤、または化学物質が挙げられる。医薬賦形剤は例えば流動特性、製品均一性、安定性、味、外観を改善するよう、また使用の便宜のために投薬の取り扱いおよび投与を容易にするよう、あるいはバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)を調節するよう機能することができる。医薬賦形剤は不活性または非作用性であると一般的に述べたが、医薬賦形剤の特性と、医薬賦形剤を含有している投薬形体との間には、ある何らかの関係があることは当技術分野で解っている。
  担体または希釈剤として使用するのに適している医薬賦形剤は当技術分野で周知であり、各種の製剤に用いることができる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, A. R. Gennaro, Editor, Mack Publishing Company (1990);Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, A. R. Gennaro, Editor, Lippincott Williams & Wilkins (2000);Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd Edition, A. H. Kibbe, Editor, American Pharmaceutical Association, and Pharmaceutical Press (2000);および、Handbook of Pharmaceutical Additives, compiled by Michael and Irene Ash, Gower (1995) を参照されたい。製剤中の治療用作用性物質の濃度は製剤の性質に応じて約0.1〜99.9重量%と大きく変わり得る。
  タブレットなどの経口用固形投与形体は典型的には1つまたは複数の医薬賦形剤を含むことになると思われ、これらはタブレットに例えば満足のいく加工特性や圧縮特性を与えるうえで助けとなることができ、あるいはさらなる望ましい物理特性を与えることができる。そのような医薬賦形剤は、希釈剤、結合剤、滑択剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、芳香剤、甘味剤、ポリマー、ワックス、あるいは他の溶解度変調性物質から選択することができる。
  非経口投与用投薬形体は液、好ましくは静脈内用の液、すなわち容易に循環系によって運ばれ且つ吸収されることができる糖類、アミノ酸、電解質などの単純化学物質の滅菌溶液を一般に含む。そのような液はUSP(米国薬局方)注射用水で通常調製される。広く静脈内(IV)用途に使用される液は、Remington, the Science and Practice of Pharmacy[引用詳細は前に記載]に開示されており、この中には以下のものがある。
・アルコールで例えば5%アルコール[例えばデキストロースと水(「D/W」)中の、または食塩標準溶液(「NSS」)中のD/W中ので、例えばデキストロース5%と水(「D5/W」)中の、またはNSS中のD5/W中のが挙げられる];
・アミノシン[Aminosyn]、フレアミン[Freamine]、トラバソール[Travasol]などの合成アミノ酸で例えばそれぞれ3.5または7%;8.5%;3.5、5.5または8.5%;
・塩化アンモニウムで例えば2.14%;
・デキストラン40でNSS中例えば10%またはD5/W中例えば10%;
・デキストラン70でNSS中例えば6%またはD5/W中例えば6%;
・デキストロース(グルコース、D5/W)で例えば2.5〜50%;
・デキストロースおよび塩化ナトリウムで例えばデキストロース5〜20%とNaCl 0.22〜0.9%;
・乳酸化リンガー液(Hartmann's)で例えばNaCl 0.6%、KCl 0.03%、CaCl2 0.02%;
・乳酸0.3%;
・マンニトールで例えば5%、場合によりデキストロース例えば10%またはNaCl例えば15または20%との組み合せで;
・電解質、デキストロース、フルクトース、転化糖リンガー液の色々な組み合せをもつ多成分電解質溶液で、例えばNaCl 0.86%、KCl 0.03%、CaCl2 0.033%;
・炭酸水素ナトリウムで例えば5%;
・塩化ナトリウムで例えば0.45、0.9、3、または5%;
・乳酸ナトリウムで例えば1/6M;および、
・注射用滅菌水。
上記のIV液のpHは変わり得るが、当技術分野で知られているように典型的には3.5〜8である。
  本発明の化合物、医薬的に許容される塩、溶媒和物は単独で、あるいは他の治療すなわち放射線治療、あるいは他の治療薬例えば微小管形成に作用すると思われるタキサン系の作用薬あるいはカンプトテシン系のトポイソメラーゼI阻害薬と組み合せて投与することができる。そのように使用される場合他の治療薬は本発明の作用薬の投与の前、同時(別々の投薬形体でか合せた投薬形体で)、または後に投与することができる。