例えば、一般的な内燃機関用の吸音型マフラーは、ハウジングと、このハウジング内を貫通して設けれたインナパイプと、ハウジングとインナパイプにより囲まれた消音室と、この消音室に充填された吸音材とにより構成され、インナパイプに複数の小孔を形成している(例えば、特許文献1、2など参照)。
  特許文献1に記載の消音器は、図5に示すように、ハウジング101内に、複数の小孔102を形成したインナパイプ103を貫通して設け、このインナパイプ103の周りを取り囲むように吸音材104を設けた構造としている。
  特許文献2に記載の排気消音装置は、図6に示すように、側面に多数の小孔105が形成された内管106と、この内管106の外周を覆う外管107との間にグラスウールからなる吸音材108を充填させた構造としている。
  例えば、特許文献1に記載の消音器(吸音型マフラー)では、インナパイプ103内に導入された排気騒音の音波は、複数の小孔102を介して消音室内に伝搬され、吸音材104との摩擦によって音響エネルギーが減衰されて騒音が消音される。特許文献2に記載の排気消音装置も同様に、内管106に形成された小孔105を介して消音室内の跫音材108で騒音が消音される。インナパイプ103及び内管106に形成された小孔102、105は、一般的な乗用車の場合、通常その直径が3mm(3Φ)または4mm(4Φ)とされている。
  また、マフラーではないが、下流部に配置した触媒コンバータへ到達する排気ガスの温度低下を防止するために、排気管を二重構造にしたものが提案されている(例えば、特許文献3など参照)。
  特許文献3に記載の排気二重管は、図7に示すように、外管109と、この外管109に対して所定隙間を持って略同心状に配置された内管110とを有した構造とされている。
特開2002−47910号公報(第2頁及び第3頁、第1図及び第2図)特開2003−41924号公報(第3頁及び第4頁、第2図及び第3図)特開2003−184548号公報(第2頁及び第3頁、第1図)  以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
  [排気装置の構成]
  図1は燃料電池自動車用の排気装置の全体斜視図、図2は二重管構造のチューブ部材の要部拡大断面図、図3(a)は小孔が形成された内管を一部破断して示す要部拡大斜視図、図3(b)は小孔が形成された内管を一部破断して示す要部拡大平面図、図4は消音部材が取り付けられた内管の斜視図である。
  本実施の形態の燃料電池自動車用の排気装置1は、図1に示すように、排気音を消音するマフラー2と、このマフラー2の前方に接続されたチューブ部材3とから構成されている。
  マフラー2は、内燃機関にも使用されている、部分的に吸音材を用いたマフラーである。このマフラー2は、シェルとエンドプレート及び空気配管とで囲まれた部分空間に、グラスウール、ロックウール、ステンレスウール、カーボンファイバなどの吸音材を充填した構造である。
  空気配管には、排気音を吸音材へと導く小さな孔が複数形成されている。この孔は、従来のガソリンなどを燃料とする内燃機関用のマフラーでは、カーボンの発生およびオイル成分の混在によりカーボンが孔に固着して当該孔を塞いでしまう可能性があったため、孔径は直径3mm(Φ3)以上とすることが多かった。しかしながら、燃料電池自動車では、排気空気には不純物が含まれないので、例えばその孔の直径を0.1mm(Φ0.1)〜1mm(Φ1)とする。これにより、仮にマフラー2に凝縮水が流入したとしても、凝縮水がこの孔を介して吸音材へと流れ難くなる。
  チューブ部材3は、マフラー2の前方に取り付けられた断面円形状のパイプからなる。このチューブ部材3には、燃料電池スタックより排出される空気系で発生した空気排気と、例えば酸素(O2)、窒素(N2)、水(含水蒸気)(H2O)などが流入する。また、このチューブ部材3には、燃料電池スタックで化学反応して生じた水分の他、配管系温度差により生じる凝縮水が流れる。
  本実施の形態では、チューブ部材3の全体のうち、マフラー2と接続される近傍部分のチューブ部材3Aを、図2に示すように、外管4と、この外管4に対して所定の空間部5を有して内部に設けられる内管6とからなる二重構造としている。この二重構造とされたチューブ部材3の両端には、図1に示すように、接続用のフランジ部7が形成されている。
  外管4及び内管6は、何れも断面略円形状とされたパイプとして形成されている。内管6は、外管4よりも若干その全長が短くされており、その両端部において外管4をかしめることにより外管4に固定されている。また、内管6は、外管4に対して所定の空間部5を形成するように当該外管4よりもその直径が小さくされている。
  内管6には、図2に示すように、凝縮水を排出させるための小孔8が複数形成されている。これら小孔8は、内管6の底面側であって、二重管構造部分において排気が流れる上流側に形成されている。同様に、外管4にも凝縮水を排出させるための小孔9が複数形成され、これら小孔9は、外管4の底面側であって二重管構造部分において排気が流れる下流側に設けられている。
  内管6に形成された小孔8は、図3に示すように、所定間隔を置いて排気流出方向に沿って一列に配列されている。本実施の形態では、4つの小孔8を1列として、3列形成してある。同じく、外管4に形成された小孔9も同様に、所定間隔を置いて排気流出方向に沿って一列に配列されている。本実施の形態では、2つの小孔9を1列として3列形成してある。
  このように、内管6及び外管4に形成した小孔8、9を所定間隔を置いて排気流出方向に沿って一列に配列させると、多くの凝縮水が生じた場合でも確実にこれら複数個の小孔8、9から凝縮水を順次排出(排水)させることができる。例えば、凝縮水の量が少ない場合は、排気流出方向の最も前方に設けられた小孔8、9から凝縮水を排出させることができ、凝縮水の量が増えた場合は、順次一列に配列された小孔8、9から次々と凝縮水を排出させることができる。つまり、凝縮水が増加しても一例に配列させたそれぞれの小孔8、9から凝縮水を排出させることができ、結果として排水性を大幅に向上させることができる。
  また、内管6に形成する小孔8は、直径1mm程度の円形孔(Φ1)から直径5mm程度の円形孔(Φ5)とすることが好ましい。孔径がΦ1未満であると、凝縮水を排出させることが困難となり、孔径がΦ5超であると、空気漏れ量が多くなる。一方、外管4に形成する小孔9は、直径3mm以下とすることが好ましい。この小孔9の孔径がΦ3を越えると、管内の音が漏洩し易くなり、小孔9から空気が管外へ排出される時の気流発生音が高くなる。
  なお、小孔9は、1個で大きな孔とするよりも小さな孔を複数個開けた方が気流音発生的には有利である。また、小孔8、9の開孔位置は、管周方向の底部分に開孔する方が好ましいが、この排気装置1を各車種共用で使用する場合は、レイアウトから座標的に最下位位置にくる位置の車両共用範囲で開孔しておいてもよい。
  そして、この二重管構造とされたチューブ部材3Aには、図2に示すように、外管4と内管6との空間部5に消音部材10が設けられている。消音部材10は、図4に示すように、円環状のリングとして形成されており、内管6の外周面に取り付けられている。この消音部材10は、外管4に対して少なくとも凝縮水を通過させる隙間を形成し得る大きさとされ、前記内管6の長手方向の2箇所に所定距離を置いて設けられている。また、この消音部材10の形成位置は、消音させたい周波数帯域に合わせてレイアウトする。
  このように、外管4と内管6の空間部5を消音部材10で仕切れば、この空間部5の中も消音構造となり、この空間部5に漏洩した音は特に低周波数を除いて消音させることができ、その結果、外管4より排出される音は小さな音であるから周囲へ与える騒音の影響を小さくできる。
  また、前記空間部5に消音部材10を設けたことで、この消音部材10が二重管構造部分の機械的強度を高めることになり、外力による二重管構造部分の潰れ防止を回避させることができる。
  [凝縮水の排出作用]
  以上のように構成された燃料電池自動車の排気装置1においては、チューブ部材3内に流入した凝縮水は、図2中矢印で示すように、二重管構造とされたチューブ部材3Aの入口から内管6に侵入した後、内管6に形成された小孔8から当該外管4と内管6とで形成された空間部5に流れ込む。
  このとき、凝縮水は、小孔8が排気流出方向に一列として所定間隔で複数形成されていることから、当該凝縮水が多く発生した場合でもこれら小孔8から確実に排出(排水)される。
  そして、空間部5に流れ込んだ凝縮水は、外管4の底部分を流れると共に消音部材10と外管4との隙間を流れて排気流出方向へと流出し、当該外管4に形成された小孔9から管外へと排出されることになる。
  この外管4には、やはり内管6と同様に小孔9が排気流出方向に一列として所定間隔で複数形成されていることから、これら小孔9より空間部5に流れ込んだ凝縮水を、この小孔9から確実に排出する。
  このように、本実施の形態の排気装置によれば、マフラー2の前方部分で凝縮水を排出させることができるので、当該凝縮水をマフラー2に流入させることを未然に防止することができる。したがって、凝縮水が多く発生した場合でも当該凝縮水はマフラー2の吸音材に含水することは無いので、吸音材の性能劣化がなく吸音作用を維持できる。
  また、本実施の形態の排気装置によれば、凝縮水をマフラー2内に蓄えないので、寒冷地において氷結による消音性能劣化及びマフラー2内異音の発生も無くなり、さらには、凝縮水の体積膨張によるマフラー2の亀裂等を防止することができる。
  また、本実施の形態の排気装置によれば、吸音材に凝縮水が侵入しないので、この凝縮水がマフラー2に溜まることによる当該マフラー2内部の腐食を防止することができる。
  [その他の実施の形態]
  上述の実施の形態では、チューブ部材3の一部を二重管構造としたが、重量およびコストの点を除けば、排水性及び消音性のより一層の向上を考えてチューブ部材3の全体を二重管構造としてもよい。その場合は、重量は増えるがマフラー2の前方にてより一層確実に凝縮水を排出することができると共に、排気音の低減を実現できる。
  また、本実施の形態では、通常はマフラー2内に凝縮水が流入することは無いが、仮に流入した場合は、マフラー2内に凝縮水が溜まってしまうことを防止するために、マフラー2外へ凝縮水を排出するための排水孔をシェルまたはエンドプレートに形成してもよい。排水の設計は、吸音材の吸音性能の劣化が生じないように、吸音材の中に4%以上の凝縮水が蓄えられないようにコントロールすることが好ましい。