【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器の防滴構造、特に電子機器の筐体の分割面に設けるパッキンの構造等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子機器では、分割構造の筐体の内部に回路基板や電源等を収納した構造のものがあるが、かかる筐体では当該電子機器の用途や想定される使用状況に応じ、その分割面に何らかの防滴構造が採用される場合がある。
【0003】
防滴構造とは、日本工業規格の防水の種類及び意味(JIS  C  0920)やIEC529において定められており、鉛直から落ちてくる水滴や鉛直から15度の範囲で落ちてくる水滴によって有害な影響がないものを意味し、具体的な構造としては、例えば筐体の分割面にゴム製等のパッキンを設けたものが知られている。
【0004】
具体的には、図7(a)に示すように、分割された上ケース100と下ケース101からなる筐体の分割面に、断面H形のパッキン102を設ける。上下の両ケース100,101の端縁はパッキンの上下の溝部102a,102aに挿入され、両ケース100,101同士は図示しない結合部で連結一体化させる。
【0005】
また、図7(b)に示すように、分割された上ケース200と下ケース201からなる筐体の分割面に、断面コ字形のパッキン202を設ける。下ケース201の端縁はパッキン202の溝部202aに挿入され、上ケース200の端縁はパッキン202の上面202bに当接させ、両ケース200,201同士は図示しない結合部で連結一体化させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図7(a)に示す構造では、筐体の外面よりもパッキン102が外方に突出してしまうため、電子機器全体としての外形が大きくなり、携帯性に問題があった。
【0007】
また、図7(b)に示す構造では、下ケース201の端縁をパッキン202の溝部202aに確実に挿入保持させるためには、パッキン202は上面202bの全面で押えた方が好ましく、そのためには上ケース200の端縁の厚さを大きくする必要があるが、筐体の分割面のみ一方のケース200の端縁が肉厚になっているのは外観上好ましくなく、製造上もコストが上昇することから不都合である。
【0008】
さらに、このような筐体の分割面にパッキン102,202を挟む構造は、筐体の一部に内部へ貫通するコネクタ部などを設けた場合、当該コネクタ部分を不使用時に一時的に防滴構造で被覆する目的では適用しにくい。
【0009】
本発明は、これらの問題点を解決するために案出されたものであり、組み立て性が良好であり、安定性に優れ、一般的な筐体の肉厚範囲内で実現可能な電子機器の防滴構造を実現することを第1の目的としている。さらに、本発明は、かかる電子機器の筐体において、外部機器やコネクタを着脱可能に接続する等の目的で筐体に貫通して設けられた外部との連絡部等を防滴状態で確実に保護できるとともに、当該保護に用いたパッキン等がコネクタ等の接続時に不使用となる場合でも紛失しにくくすることを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された電子機器の防滴構造は、着脱可能に嵌合される第1のケース及び第2のケースからなる電子機器の筐体に適用されるものであり、まず、少なくとも前記第1のケースの開口端面に周溝が形成されている。そして、前記周溝に係合する第1の凸部と、前記凸部から延設されて前記第1のケースの開口端面と前記第2のケースの開口端面の間に挟持される支持部と、前記支持部を挟んで前記第1の凸部とは反対側に設けられて前記第2のケースの開口端面により押圧される第2の凸部とを有する周状のパッキンを、前記第1のケースと第2のケースの各開口端面の間に設けて、両ケースを互いに固定したことを特徴としている。
【0011】
この構造によれば、第1のケースの開口した端縁の全周にわたって周溝があるので、第1の凸部を周溝に挿入した場合にパッキンが第1のケースに確実に取り付けられ、第1の凸部から両側に伸びる断面形状の支持部が第1のケースの端面に載るので、安定性に優れ、組み立て性が良好である。また、第2のケースの端縁が第2の凸部を押すことにより、防滴性能が一層確実になる。
【0012】
請求項2に記載された電子機器の防滴構造は、請求項1記載の電子機器の防滴構造において、前記第1のケースと第2のケースの少なくとも何れか一方に貫通孔が形成されており、該貫通孔を防滴状態で閉止する孔用パッキンを前記周状のパッキンに連結部を介して一体に設けて、該孔用パッキンを前記筐体の外に配置したことを特徴としている。
【0013】
この構造によれば、孔用パッキンが第1及び第2のケースの分割面を防滴する周状のパッキンに連結されて一体になっているので、ケースの貫通孔に孔用パッキンを取り付けない場合でも、該孔用パッキンが紛失しにくい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1〜図6を参照して説明する。
図1は電子機器としての本例の携帯型多チャンネルデータ収録装置1 (以下、データ収録装置1とも呼ぶ)の外観図、図2はデータ収録装置1の筐体を分解した分解拡散斜視図、図3はパッキンの平面図、図4はパッキンの側面図、図5は本データ収録装置1の筐体の分割面における断面図、図6は本データ収録装置1の筐体のセンサ取り付け部付近の断面図である。
【0015】
図1に示すデータ収録装置1の筐体2は、表示部3と操作部4が設けられた表側となる略箱状の上ケースAと、筐体2の裏蓋となる略板状の下ケースBからなる。筐体2の分割面、即ち両ケースA,Bの間には防滴機能を実現するための防滴部材として周状のパッキン5が設けられている。
【0016】
図3及び図4に示すように、このパッキン5は、前記上下ケースA,Bの開口した端縁の形状に相当する角隅部にカーブが付けられた略矩形の周状部6と、この周状部6の一短辺に連結部8を介して一体に設けた孔用パッキン7とを有している。パッキン5は可撓性で防滴性能のある材料、例えばゴムからなる。
【0017】
図5に示すように、上ケースAの開口端面には、前記パッキン5の周状部6を取り付けるための周溝9が形成されている。周溝9の断面は略矩形である。パッキンの周状部6は、周溝9に係合する断面略矩形の第1の凸部10を有している。この第1の凸部10からは、両側に向けて支持部11が延設されている。支持部11は、上ケースAの開口端面と下ケースBの開口端面の間に挟持される部分である。そして、支持部11を挟んで第1の凸部10と反対側には、下ケースBの開口端面に押圧される第2の凸部12が設けられている。第2の凸部12は、断面略半円形であるため、下ケースBの開口端面との接触状態が良好である。
【0018】
上ケースAと下ケースBの各開口端面の間にパッキンの周状部6を設けて両ケースA,Bを互いに固定する。詳細は図示しないが、両ケースA,Bの一方に設けたねじ孔におねじを通し、両ケースA,Bの他方にねじ孔に対応して設けられためねじ部に該おねじをねじ込むことによって両ケースA,Bを組み立て、固定することができる。図3に示すように、前記パッキンの周状部6には、かかるおねじが挿通する孔が形成された片部13が要所に設けられている。
【0019】
このような防滴構造によれば、上ケースAの開口した端縁の全周にわたって周溝9があるので、第1の凸部10を周溝9に挿入してパッキン5を確実に取り付けられる。また、第1の凸部10から両側に伸びる支持部11が上ケースAの端面に載るので、組み立て時の安定性に優れ、組み立て性が良好である。また、下ケースBの端縁が第2の凸部12を安定した接触状態で押すことにより、両ケースA,Bとパッキン5が密着して防滴性能が一層確実になる。
【0020】
また、従来用いられていたH形パッキンと異なり、パッキンの部分が筐体2の外に突出する不都合がなく、また従来のコ字形パッキンと異なり、筐体2を構成する一部のケースの分割面の肉厚を大きくする必要も無く、外観上の問題が生じない。即ち、電子機器における一般的な筐体の肉厚範囲内で防滴構造が実現できる。
【0021】
次に、図6に示すように、上ケースAの上端部には、外部にあるセンサのコンタクト15が差し込まれるコネクタ部16が形成されている。即ち、上ケースAの上端面に形成された凹部17の底には、筐体2内に連通する貫通孔18が形成されており、外部のセンサのコンタクト15はこの貫通孔18を介して筐体2内の受け金具19に挿入保持される。なお、受け金具19は、筐体2内に設けられた端子基板20に取り付けられ、端子基板20に接続された回路基板21に接続導通されている。また、本例では、外部センサは4つであり、これに対応して筐体2に設けられるコネクタ部も4箇所である。
【0022】
図1に示すように、パッキンの周状部6に一体とされた孔用パッキン7は4つあり、図6に示すように結合された上下ケースA,Bの間から筐体2の外に導かれ、図1に示すように筐体2の外に突出して並んだ状態となっている。各孔用パッキン7の連結部8は周状部6及び孔用パッキン7と同材質のゴムであり自由に曲がるので、必要に応じて上ケースAの各凹部17に対応する孔用パッキン7を差し込んで防滴状態で封止し、貫通孔18から筐体2内に水分が浸入するのを防止することができる。このコネクタ部16にセンサのコンタクト15を差し込む場合には、孔用パッキン7を外せばよい。
【0023】
この構造によれば、孔用パッキン7が上下ケースA,Bの分割面に設けられた周状部6に連結されて一体になっているので、上ケースAのコネクタ部16の凹部17に孔用パッキン7を取り付けない場合には、該孔用パッキン7は筐体2からぶら下がった状態となり、紛失しにくい。
【0024】
以上説明した例では、電子機器として携帯型多チャンネルデータ収録装置を挙げたが、本発明の防滴構造が適用される電子機器はこれに限定されないことは当然であり、着脱可能に嵌合される少なくとも2つのケースからなる筐体を備えた電子機器に適用可能であり、さらに当該ケースの少なくとも一部に貫通孔が形成されており、これを防滴構造で着脱可能に封止するために適用可能である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る電子機器の防滴構造によれば、ケースの分割面の溝部に、一対の凸部の間に支持部が張り出した断面略十字形の周状パッキンを設けた構造なので、組み立て性が良好であり、安定性に優れ、一般的な筐体の肉厚範囲内で実現可能な電子機器の防滴構造を実現することが可能となる。
【0026】
さらに、本発明は、周状のパッキンに一体で孔用パッキンを設けて筐体外に配置したので、コネクタ等を着脱可能に接続するために筐体に設けた連絡孔等を防滴状態で確実に封止して内部機器を水分から保護できる。また、当該保護に用いた孔用パッキンがコネクタ等の接続時に不使用となる場合でも、筐体と連結されているので孔用パッキンが紛失しにくいという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本例のデータ収録装置の外観図である。
【図2】本例のデータ収録装置の筐体を分解した分解拡散斜視図である。
【図3】本例のデータ収録装置に用いられるパッキンの平面図である。
【図4】本例のデータ収録装置に用いられるパッキンの側面図である。
【図5】本例のデータ収録装置の筐体の分割面における断面図である。
【図6】本例のデータ収録装置の筐体のセンサ取り付け部付近の断面図である。
【図7】従来の電子機器の筐体の分割面における防滴構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1…電子機器としてのデータ収録装置、2…筐体、5…パッキン、6…周状部、7…孔用パッキン、8…連結部、9…周溝、10…第1の凸部、11…支持部、12…第2の凸部、15…コンタクト、16…コネクタ部、18…貫通孔。