この発明の発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、この発明を完成した。この発明は、主鎖に脂環式ラクトン構造を有するレジスト用樹脂に基本的特徴があり、さらにこのレジスト用樹脂を含有する化学増幅型レジスト及びそれを用いたパターン形成方法に特徴がある。
  主鎖に脂環式ラクトン構造を有するレジスト用樹脂としては、一般式(15)〜(17)で表される構造単位を有する樹脂が挙げられる。
                                                          (15)
(式(15)において、Zは、ラクトン構造を有する脂環式炭化水素基の群の中から選択される任意の1つである。)
                                                          (16)
(式(16)において、Zは、ラクトン構造を有する脂環式炭化水素基の群の中から選択される任意の1つである。)
                                                          (17)
(式(17)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、wは1〜3の正の整数である。)
これら一般式(15)〜(17)で表される構造単位を有する樹脂の具体的な例としては、一般式(18)〜(21)で表される樹脂が挙げられる。
                                                          (18)
(式(18)において、Zはラクトン構造を有する脂環式炭化水素基、R
1は水素原子、またはメチル基、R
2は酸により分解する基、または酸により分解する基を有する炭素数7〜13の有橋環式炭化水素基を表す。また、2つのユニット間の割合x、yはそれぞれ、x+y=1、0<x<1、0<y<1を満たす任意の数である。)
                                                          (19)
(式(19)において、Zはラクトン構造を有する脂環式炭化水素基、R
3は水素原子、またはメチル基、R
4は酸により分解する基を表す。また、2つのユニット間の割合a、bはそれぞれ、a+b=1、0<a<1、0<b<1を満たす任意の数である。またcは0または1である。)
                                                          (20)
(式(20)において、kは0または1から3の正の整数、mは0または1または2、n、fはそれぞれ0または1、R
5は水素原子、またはメチル基、R
6は酸により分解する基を表す。また、2つのユニット間の割合d、eはそれぞれ、d+e=1、0<d<1、0<e<1を満たす任意の数である。)
                                                          (21)
(式(21)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基、wは1〜3の正の整数、w1は0または1、R
10は水素原子またはメチル基、R
11は酸により分解する基を表す。また、2つのユニット間の割合x1、y1はそれぞれ、x1+y1=1、0<x1<1、0<y1<1を満たす任意の数である。)
しかしながら、一般式(18)〜(21)で表される樹脂だけに限定されるものではない。また、一般式(18)〜(21)で表される樹脂に、さらに共重合し得る構造単位を含んでも良く、他の共重合し得るビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸の脂肪族エステル、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の脂環式エステル、特許文献2記載のラクトン構造を有する(メタ)アクリレート誘導体、カルボキシル基やヒドロキシル基等を含有するノルボルネン誘導体(例えば、5−ノルボルネン−2−オール、5−ノルボルネン―2―メタノール、5−ノルボルネン−2−カルボン酸等)、カルボキシル基やヒドロキシル基等を含有するテトラシクロドデシル誘導体(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデセン―8―カルボン酸、3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデセン―8―オール、3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデセン―8―メタノール)、無水イタコン酸等が挙げられるがこれらだけに限定されるものではない。
また、樹脂の重量平均分子量は2000〜200000、好ましくは3000〜100000である。
  なお、発明のレジスト用樹脂には、主鎖にラクトン構造を有する脂環式炭化水素基を有するが、その特徴は、ラクトン構造にある。一般に、ラクトン構造は、エステル構造やエーテル構造、アルコール構造に比べ比誘電率が高い(例えば、炭素数4の化合物で比較すると、γ−ブチロラクトンの比誘電率:39、酢酸エチル:6.02、ジエチルエーテル:4.335、1−ブタノール:17.51  化学便覧、基礎編2、改訂3版等に記載)。その結果、主鎖に脂環式ラクトン骨格を有する樹脂は極性が高くなり、この発明の樹脂を用いたレジストは基板に対する密着性も非常に良いという特徴を有する。
  さらに、この発明の樹脂には、ラクトン構造だけではなく、脂環式炭化水素基を有するため、樹脂のドライエッチング耐性が優れているという特徴も有している。
  そして樹脂の合成に用いる原料のひとつである、式(22)で表されるラクトン構造をもつノルボルネン誘導体は、例えば、以下の方法で合成される。
                                                          (22)
  すなわち、J.Org.Chem.35巻、3574−3576頁(1970年)に記載されているD.M.Baileyらの方法に準じて、5−ノルボルネン―endo―2,3−ジカルボン酸無水物、又は5−ノルボルネン―exo―2,3−ジカルボン酸無水物(W.Heitzら、Macromol.Chem.Phys.、200巻、338−347頁(1999年))を、テトラヒドロフラン中、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)で還元することにより合成される。下記に示す式(23)は、その反応式である。
  また、式(24)で表されるラクトン構造をもつノルボルネン誘導体は、例えば、以下の方法で合成される。
                                                          (24)
  すなわち、J.Org.Chem.35巻、3574−3576頁(1970年)に記載されているD.M.Baileyらの方法に準じて、メチル−5−ノルボルネン―endo―2,3−ジカルボン酸無水物、又はメチル−5−ノルボルネン―exo―2,3−ジカルボン酸無水物を、テトラヒドロフラン中、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)で還元することにより合成される。また他の方法としては、メチルシクロペンタジエン二量体の熱分解で得られるメチルシクロペンタジンと2(5H)−フラノンのディールス−アルダー(Diels−Alder)反応により合成される。
下記に示す式(25)は、その反応式である。
                                                          (25)
  また、一般式(18)で表される樹脂は、例えば以下の方法で合成される。
すなわち、無水マレイン酸とラクトン構造を有する脂環式オレフィン(例えば、式(22)で表されるラクトン構造をもつノルボルネン誘導体)、酸分解性基を有する(メタ)アクリレート誘導体(例えばt−ブトキシカルボニルテトラシクロドデシルアクリレート)を乾燥テトラヒドロフラン中、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤存在下、60〜65℃、2〜24時間反応させることにより合成される。
  また一般式(19)で表される樹脂は、例えば以下の方法で合成される。
すなわち、無水マレイン酸とラクトン構造を有する脂環式オレフィン(例えば、式(22)で表されるラクトン構造をもつノルボルネン誘導体)、酸分解性基を有する脂環式オレフィン誘導体(例えば5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチルエステル)を乾燥テトラヒドロフラン中、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤存在下、60〜65℃、2〜24時間反応させることにより合成される。
  また一般式(20)で表される樹脂は、例えば以下の方法で合成される。
  すなわち、ラクトン構造を有する脂環式オレフィン(例えば、式(22)で表されるラクトン構造をもつノルボルネン誘導体)と酸分解性基を有する脂環式オレフィン誘導体(例えば、3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデセン―8―カルボン酸t−ブチルエステル)をメタセシス触媒[例えば、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Re(レニウム)等の遷移金属のハロゲン化物等(例えば、WCl6、MoCl5、ReCl3等が挙げられるがこれらだけに限定されるものではない)]を用いて開環重合させ、さらにパラジウム等の貴金属触媒を用いて水素化することにより合成される。
  また一般式(21)で表される樹脂は、例えば以下の方法で合成される。
  すなわち、ラクトン構造を有する脂環式オレフィン(例えば、式(24)で表されるラクトン構造をもつノルボルネン誘導体)と3−テトラシクロドデセン―8―カルボン酸t−ブチルエステルを、Macromolecules、29巻、2755−2763頁(1996年)記載のJ.P.Mathewらの方法に準じ、パラジウム化合物(例えば、{(η3−allyl)Pd(BF4)}、[Pd(CH3CN)4][BF4]2等)を触媒として付加重合することにより合成される。
  一般式(15)及び一般式(16)おいて、Zはラクトン構造を有する脂環式炭化水素基であり、具体的な例は、表1及び表2に示すラクトン構造を有するノルボルナン誘導体、ラクトン構造を有するテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン誘導体、ラクトン構造を有するシクロペンタン誘導体、ラクトン構造を有するトリシクロデカン誘導体等が挙げられるが、それらだけに限定されるものではない。
  一般式(17)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基(具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基である。)、wは1〜3の正の整数である
  一般式(18)において、R
1は水素原子又はメチル基である。またR
2は酸により分解する基、又は酸により分解する基を有する炭素数7〜13の有橋環式炭化水素基であり、酸により分解する基の具体的な例は、t−ブチル基、テトラヒドロピラン−2―イル基、テトラヒドロフラン−2―イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4―イル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−プロポキシエチル基、3−オキソシクロヘキシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、或いは1,2,7,7−テトラメチル−2−ノルボルニル基、2−アセトキシメンチル基、2−ヒドロキシメンチル基、1−メチル−1−シクロヘキシルエチル基等が挙げられるがこれらだけに限定されるものではない。また酸により分解する基を有する炭素数7〜13の有橋環式炭化水素基の具体的な例は、表3に示すようなエステル基を有するトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシルメチル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基、イソボルニル基、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデシル基、メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデシル基等が挙げられるが、これらだけに限定されるものではない(ただし、表3中のR
9は酸により分解する基であり、具体的な例は、t−ブチル基、テトラヒドロピラン−2―イル基、テトラヒドロフラン−2―イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4―イル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−プロポキシエチル基、3−オキソシクロヘキシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシル基、或いは1,2,7,7−テトラメチル−2−ノルボルニル基、2−アセトキシメンチル基、2−ヒドロキシメンチル基、1−メチル−1−シクロヘキシルエチル基等が挙げられるがこれらだけに限定されるものではない。)。また、脂環式ラクトン構造を有するユニットの割合xは、0<x<1であるが、レジストの解像性、基板密着性等の点からは、0.1<x<0.8がより好ましい。
  また、一般式(19)において、cは0又は1、R3は水素原子又はメチル基である。また、R4は酸により分解する基であり、酸により分解する基の具体的な例は、t−ブチル基、テトラヒドロピラン−2―イル基、テトラヒドロフラン−2―イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4―イル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−プロポキシエチル基、3−オキソシクロヘキシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、或いは1,2,7,7−テトラメチル−2−ノルボルニル基、2−アセトキシメンチル基、2−ヒドロキシメンチル基、1−メチル−1−シクロヘキシルエチル基等が挙げられるがこれらだけに限定されるものではない。また、脂環式ラクトン構造を有するユニットの割合aは、0<a<1であるが、レジストの解像性、基板密着性等の点からは、0.1<a<0.8がより好ましい。
  また、一般式(19)で表される樹脂は、式中、cが0よりも1である樹脂の方が、樹脂の炭素密度が高くドライエッチング耐性の点からより好ましい。
  一般式(20)において、kは0又は1〜3の正の整数、mは0又は1又は2、n、fはそれぞれ0又は1、R5は水素原子、又はメチル基、R6は酸により分解する基であり、酸により分解する基の具体的な例は、t−ブチル基、テトラヒドロピラン−2―イル基、テトラヒドロフラン−2―イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4―イル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−プロポキシエチル基、3−オキソシクロヘキシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、或いは1,2,7,7−テトラメチル−2−ノルボルニル基、2−アセトキシメンチル基、2−ヒドロキシメンチル基、1−メチル−1−シクロヘキシルエチル基等が挙げられるがこれらだけに限定されるものではない。また、脂環式ラクトン構造を有するユニットの割合dは、0<d<1であるが、レジストの解像性、基板密着性等の点からは、0.1<d<0.8がより好ましい。
  また、一般式(20)で表される樹脂は、式中、n、fが0よりも1である樹脂の方が、樹脂の炭素密度が高くドライエッチング耐性の点からより好ましい。
  一般式(21)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基(具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基である。)、wは1〜3の正の整数、w1は0又は1、R10は水素原子、又はメチル基、R11は酸により分解する基であり、酸により分解する基の具体的な例は、t−ブチル基、テトラヒドロピラン−2―イル基、テトラヒドロフラン−2―イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4―イル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−プロポキシエチル基、3−オキソシクロヘキシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、或いは1,2,7,7−テトラメチル−2−ノルボルニル基、2−アセトキシメンチル基、2−ヒドロキシメンチル基、1−メチル−1−シクロヘキシルエチル基等が挙げられるがこれらだけに限定されるものではない。また、脂環式ラクトン構造を有するユニットの割合x1は、0<x1<1であるが、レジストの解像性、基板密着性等の点からは、0.1<x1<0.8がより好ましい。
  また、一般式(21)で表される樹脂は、式中、Rで表されるアルキル基を有しているので、アルキル基を持たない樹脂に比べ、樹脂の炭素密度が高くなり、ドライエッチング耐性の点からより優れている。
  そして、この発明のレジスト用樹脂の重量平均分子量は2000〜200000、好ましくは3000〜100000である。それは、分子量が2000以上であると、レジスト膜の形成が容易であり、また、200000以下であると、樹脂の溶媒への溶解性に優れ、また解像特性にも優れているからである。また、この発明のポジ型化学増幅レジストは、樹脂、光酸発生剤、及びこれらを溶解する溶剤を主な構成成分とするものであり、溶剤を除く、全構成成分100重量部中、樹脂の含有率は通常60〜99.8重量部、好ましくは70〜99重量部とすると良い。また、この発明に用いる光酸発生剤は、400nm以下、好ましくは180nm〜220nmの範囲の光照射により酸を発生する光酸発生剤であることが望ましく、なおかつ先に示したこの発明における高分子化合物等との混合物が有機溶媒に十分に溶解し、かつその溶液がスピンコ−ト等の製膜法で均一な塗布膜が形成可能なものであれば、いかなる光酸発生剤でも良い。また、単独でも、2種以上を混合して用いても良い。
  使用可能な光酸発生剤の例としては、例えば、ジャ−ナル・オブ・ジ・オ−ガニック・ケミストリ−(Journal of the Organic Chemistry) 43巻、15号、3055頁〜3058頁(1978年)に記載されているJ.V.クリベロ(J.V.Crivello)らのトリフェニルスルホニウム塩誘導体、及びそれに代表される他のオニウム塩(例えば、スルホニウム塩、ヨ−ドニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩等の化合物)や、2、6−ジニトロベンジルエステル類[O.ナラマス(O.Nalamasu)ら、SPIEプロシ−ディング、1262巻、32頁(1990年)]、1、2、3−トリ(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン[タクミ ウエノら、プロシ−ディング・オブ・PME’89、講談社、413〜424頁(1990年)]、特許文献3で開示されたスルホサクシンイミド、特許文献4で開示されたアルキルスルホニウム塩等がある。
  光酸発生剤の含有率は、ポジ型化学増幅レジスト中に含まれる溶剤を除く、全構成成分100重量部中、通常0.2〜30重量部、好ましくは1〜15重量部である。この含有率が0.2重量部以上で十分な感度が得られ、パタ−ンの形成が容易となる。また30重量部以下であると、均一な塗布膜の形成が容易になり、さらに現像後には残さ(スカム)が発生しにくくなる。
  なお、この発明のポジ型化学増幅レジストには、樹脂や光酸発生剤等に加えて、適量の溶剤が含まれる。この溶剤は、樹脂と光酸発生剤からなる成分を均一に溶解し、またそのレジストを用いてスピンコ−ト法等の方法で均一な塗布膜が形成可能である限り、いかなる有機溶媒でも良い。また、溶剤には一種類の有機溶媒を単独で用いても良く、2種類以上を混合して用いても良い。具体的には、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸2−メトキシブチル、酢酸2−エトキシエチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル等のエステル類、N−メチル−2−ピロリジノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノール等の環状ケトン・アルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類等が、好ましい溶剤の一例として挙げられるが、もちろんこれらだけに限定されるものではない。
  また、この発明のポジ型レジストの「基本的な」構成成分は、上記の樹脂と光酸発生剤、溶剤であるが、必要に応じて、溶解阻止剤、有機塩基、界面活性剤、色素、安定剤、塗布性改良剤、染料等の他の成分を添加しても構わない。
  また、この発明のパターン形成方法は、上記のこの発明のポジ型化学増幅レジストを利用して、レジストの露光に波長180〜220nmの範囲から選択する露光光を用いて、マスクパターンをレジスト塗布膜上に転写形成する方法である。この工程では、レジスト塗布、露光前のベーク処理、露光後のベーク処理、現像の各工程は、従来の化学増幅型レジストを用いるパターン形成と本質的に同じである。
  以下、上述の前提を基に、この発明の実施の形態について説明する。説明は、実施例を用いて具体的に行う。
◇第1合成例
  式(22)で表されるノルボルネン誘導体(Endo体)
  水素化ホウ素ナトリウム12.8gをテトラヒドロフラン(以下、THFと略す)100mlに加え、そこに5−ノルボルネン―endo―2,3−ジカルボン酸無水物(和光純薬製、製品番号146−03435)50gをTHF200mlに溶解したものを、氷冷下滴下する。室温で3時間撹拌した後、6N塩酸150mlを氷冷下加え、さらに室温で3時間撹拌する。析出している沈殿をろ別し、ろ液を減圧下濃縮する。残渣にクロロホルム300mlを加え、さらにシリカゲルを加え不純物を吸着除去する。そしてクロロホルムを減圧下留去することで、目的物を16.5g得た(収率36%)。1H−NMR(CDCl3):δ(ppm)1.47(1H, dd)、1.65(1H,d)、3.06−3.15(2H,m)、3.26−3.28(1H,m)、3.32−3.36(1H,m)、3.8(1H,dd)、4.29(1H,t)、6.3(2H,s)。
◇第2合成例
  式(22)で表されるノルボルネン誘導体(Exo体)
  5−ノルボルネン―endo―2,3−ジカルボン酸無水物100gを窒素雰囲気下で190−195℃で4時間反応させる。放冷後、反応物をトルエンで5回再結晶することで5−ノルボルネン―exo―2,3−ジカルボン酸無水物を28g得た(収率28%)。次に合成例1と同様の手順で、5−ノルボルネン―exo―2,3−ジカルボン酸無水物を還元することで、目的物を得た(収率49%)。1H−NMR(CDCl3):δ(ppm)1.39−1.58(2H, m)、2.47−2.71(2H,m)、2.89(1H,s)、3.25(1H,s)、3.95−4.03(1H,m)、4.42−4.53(1H,m)、6.1−6.35(2H,m)。
◇第3合成例
  式(26)で表されるノルボルネン誘導体(Endo体、Rはメチル基)
  合成例1と同様に、ただし、5−ノルボルネン―endo―2,3−ジカルボン酸無水物に代えて、メチル−5−ノルボルネン―endo―2,3−ジカルボン酸無水物(和光純薬製、製品番号136−05955)を用いて合成した(収率33%)。
                                                          (26)
◇第1実施例
  式(27)で表される樹脂(一般式(18)において、Zは表1に示されるラクトン構造を有するノルボルネン誘導体(1)、R
1は水素原子、R
2はt−ブトキシカルボニルテトラシクロドデシル基、x=0.5、y=0.5)
                                                          (27)
  還流管を付けた100mlナスフラスコ中、合成例2で得たノルボルネン誘導体2.26gと無水マレイン酸1.475gとt−ブトキシカルボニルテトラシクロドデシルアクリレート10gをTHF30mlに溶解し、そこにアゾビスイソブチロニトリル(以下AIBN略す)0.394gを加え、アルゴン雰囲気下、加熱還流させる。12時間後、放冷し、エーテル500mlに注ぎ、析出した沈殿を濾別する。更にもう一度再沈精製を行うことにより目的物を2.8g得た(収率20%)。またGPC分析により求めた重量平均分子量(Mw)は6800(ポリスチレン換算)、分散度(Mw/Mn)は2.24であった。
◇第2実施例
  式(28)で表される樹脂(一般式(18)において、Zは表1に示されるラクトン構造を有するノルボルネン誘導体(1)、R
1はメチル基、R
2は2−メチル−2−アダマンチル基、x=0.5、y=0.5)
                                                          (28)
  実施例1と同様に、ただし、t−ブトキシカルボニルテトラシクロドデシルアクリレートに代えて、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートを用いて合成した(収率30%)。Mw=5400、Mw/Mn=2.34。
◇第3実施例
  式(29)で表される樹脂(一般式(19)において、Zは表1に示されるラクトン構造を有するノルボルネン誘導体(1)、R
3は水素原子、R
4はt−ブチル基、cは0、a=0.4、b=0.6)
                                                          (29)
  還流管を付けた100mlナスフラスコ中、合成例2で得たノルボルネン誘導体3gと無水マレイン酸4.9gと5−ノルボルネン―2―カルボン酸t−ブチルエステル5.82gをTHF30mlに溶解し、そこにAIBN0.656gを加え、アルゴン雰囲気下、加熱還流させる。12時間後、放冷し、エーテル300mlに注ぎ、析出した沈殿を濾別する。更にもう一度再沈精製を行うことにより目的物を5.76g得た(収率42%)。Mw=4800、Mw/Mn=2.28。
◇第4実施例
  式(30)で表される樹脂(一般式(19)において、Zは表1に示されるラクトン構造を有するノルボルネン誘導体(1)、R
3は水素原子、R
4はt−ブチル基、cは1、a=0.4、b=0.6)
                                                          (30)
  実施例3と同様に、ただし、5−ノルボルネン―2―カルボン酸t−ブチルエステルに代えて、3−テトラシクロドデセン−8−カルボン酸t−ブチルエステルを用いて合成した(収率31%)。Mw=8400、Mw/Mn=2.41。
◇第5実施例
  式(31)で表される樹脂
                                                          (31)
  還流管を付けた100mlナスフラスコ中、合成例1で得たノルボルネン誘導体2.3gと無水マレイン酸5gと5−ノルボルネン―2―カルボン酸t−ブチルエステル7.63g、5−ノルボルネン―2―オール0.56gをTHF27mlに溶解し、そこにアゾイソブチロニトリル0.67gを加え、アルゴン雰囲気下、加熱還流させる。12時間後、放冷し、エーテル300mlに注ぎ、析出した沈殿を濾別する。更にもう一度再沈精製を行うことにより目的物を7.44g得た(収率48%)。Mw=7200、Mw/Mn=2.36。
◇第6実施例
  式(32)で表される樹脂
                                                          (32)
  還流管を付けた100mlナスフラスコ中、合成例2で得たノルボルネン誘導体2gと無水マレイン酸1.3gとt−ブトキシカルボニルテトラシクロドデシルアクリレート11.07g、5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン1.37gをTHF28mlに溶解し、そこにアゾイソブチロニトリル0.437gを加え、アルゴン雰囲気下、加熱還流させる。16時間後、放冷し、エーテル300mlに注ぎ、析出した沈殿を濾別する。更にもう一度再沈精製を行うことにより目的物を6.13g得た(収率39%)。Mw=10400、Mw/Mn=2.46。
◇第7実施例
  式(33)で表される樹脂
                                                          (33)
  実施例1と同様に、ただし、合成例2で得たノルボルネン誘導体に代えて、合成例3で得たノルボルネン誘導体を用いて合成した(収率24%)。Mw=4600、Mw/Mn=2.41。
◇第8実施例
  式(34)で表される樹脂(一般式(18)において、Zは表1に示されるラクトン構造を有するノルボルネン誘導体(3)、R
1は水素原子、R
2は、t−ブトキシカルボニルテトラシクロドデシル基、x=0.5、y=0.5)
                                                          (34)
  実施例1と同様に、ただし、合成例2で得たノルボルネン誘導体代えて、5,8−メタノ−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1H−2−ベンゾピラン−1−オン(J.Org.Chem.、50巻、No.25、5193−5199頁(1985年)に記載のT.Ikedaらの方法で合成)を用いて合成した(収率18%)。Mw=4200、Mw/Mn=2.41。
◇参考例
  式(35)で表される樹脂(一般式(26)において、qが1、rが1、pが0、R
7が水素原子、R
8がt−ブチル基、g=0.5.h=0.5)
                                                          (35)
  ジ−μ−クロロビス[(η−アリル)パラジウム(2)]0.262gとヘキサフルオロアンチモン酸銀0.488gをクロロベンゼン44mlに溶解し、室温で撹拌する。20分後、反応混合物をろ過し、ろ液を5,8−メタノ−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−3H−2−ベンゾピラン−3−オン(Tetrahedron  Lett.、No.45、4099−4102頁(1976年)に記載のH.Shimomuraらの方法で合成)11.87gと5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチルエステル14.05g、水0.2ml、クロロベンゼン170mlからなる混合液に加える。それをさらに室温で20時間撹拌した後、メタノール1200mlに加え、析出した樹脂をろ別する。次に樹脂をクロロベンゼン150mlに溶解し、そこにメタノール30mlと水素化ホウ素ナトリウム3.2gを加え、室温で3時間撹拌し、さらに室温で24時間放置する。析出したPd(0)の粒子をろ別し、ろ液をメタノール1000mlに注ぐ。析出した樹脂をろ別することにより、目的とする樹脂を16.58g得た(収率64%)。Mw=7100、Mw/Mn=2.34。
◇第9実施例
  式(36)で表される樹脂(一般式(21)において、Rがメチル基、wが1、w1が1、R
10が水素原子、R
11がt−ブチル基、g=0.5、h=0.5)
                                                          (36)
  参考例と同様に、ただし、5,8−メタノ−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−3H−2−ベンゾピラン−3−オンに代えて、合成例3で得たモノマーを用い、また5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチルエステルに代えて、3−テトラシクロドデセン−8−カルボン酸t−ブチルエステルを用いて合成した。収率16%、Mw=4100、Mw/Mn=2.52。
(樹脂のエッチング耐性の評価)
  実施例1で得た樹脂2gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gに溶解し、次いで0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターを用いてろ過した。次に3インチシリコン基板上にスピンコート塗布し、90℃、60秒間ホットプレート上でベーキングを行い、膜厚0.7μmの薄膜を形成した。得られた膜を日電アネルバ製DEM451リアクティブイオンエッチング(RIE)装置を用いてCF4ガスに対するエッチング速度を測定した(エッチング条件:Power=100W、圧力=5Pa、ガス流量=30sccm)。その結果を表4に示す。同様にして、実施例3、及び実施例4、参考例、実施例9で得た樹脂についてもエッチング速度を測定した。比較例としてノボラックレジスト(住友化学社製PFI−15A)、KrFレジストのベース樹脂として使用されているポリ(p−ビニルフェノール)、及び分子構造に有橋環式炭化水素基も持たない樹脂であるポリ(メチルメタクリレート)塗布膜の結果も示す。なおエッチング速度はノボラックレジストに対して規格化した。
  上記の結果から、この発明で用いた樹脂はCF
4ガスに対するエッチング速度が遅く、ドライエッチング耐性に優れていることが示された。
(樹脂の透明性の評価)
  実施例1で得た樹脂2.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10gに溶解し、次いで0.2μmのテフロンフィルターを用い濾過した。次に3インチ石英基板上にスピンコート塗布し、90℃、60秒間ホットプレート上でベーキングを行い、膜厚1μmの薄膜を形成した。この薄膜について、紫外可視分光光度計(島津製作所製、UV−365)を用いてArFエキシマレーザ光の中心波長である193.4nmにおける透過率を測定した。同様にして、実施例3及び実施例4で得た樹脂についても測定した。この結果、透過率は実施例1で得た樹脂が72%/0.5μm、実施例3の樹脂が70%/0.5μm、実施例4の樹脂が69%/0.5μm、実施例9の樹脂が62%/0.5μmであった。この結果から、この発明の樹脂は、単層レジストとして利用可能な透明性を示すことを確認できた。
(レジストのパターニング評価)
  下記の組成からなるレジストを調製した。
(a)樹脂(実施例1):2g
(b)光酸発生剤(トリフェニルスルホニウムトリフレート(TPS)):0.02g
(c)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:11.5g
上記混合物を0.2μmのテフロンフィルターを用いてろ過し、レジストを調製した。4インチシリコン基板上に上記レジストをスピンコート塗布し、130℃1分間ホットプレート上でベークし、膜厚0.39μmの薄膜を形成した。そして窒素で充分パ−ジされた密着型露光実験機中に成膜したウェハ−を静置した。石英板上にクロムでパタ−ンを描いたマスクをレジスト膜上に密着させ、そのマスクを通してArFエキシマレ−ザ光を照射した。その後すぐさま120℃、60秒間ホットプレ−ト上でベ−クし、液温23℃の2.38%TMAH水溶液で60秒間浸漬法による現像をおこない、続けて60秒間純水でリンス処理をそれぞれ行った。この結果、レジスト膜の露光部分のみが現像液に溶解除去されポジ型のパタ−ンが得られた。同様にして、実施例3で得た樹脂、及び実施例4で得た樹脂を用いたレジストについても評価した。表5に感度、及び解像度の結果を示す。
  以上の結果から、この発明のポジ型化学増幅レジストは優れた解像特性を有することが分かった。またパタ−ン剥がれ等の現象がなかったことから、基板密着性にも優れていることが確認できた。
  以上、この発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。