【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば体腔拡張
用カテーテルとして用いることができ、拡張および収縮
が可能なバルーン膜の軸方向長さを、体腔の内部で変化
させることを可能にした可変長バルーンカテーテルおよ
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば心臓血管内に狭窄部が形成され
ることがある。この狭窄部を拡張するための治療とし
て、バルーンカテーテルを用いた方法が提案されてい
る。バルーンカテーテルを血管の内部に通し、バルーン
カテーテルの遠位端部に装着してあるバルーン膜を、狭
窄部の位置まで案内し、その位置で、バルーン膜を拡張
して狭窄部を拡げるのである。
【0003】血管の内部に形成される狭窄部の軸方向長
さは、患者によって、まちまちであり、狭窄部を効率的
に拡張するためには、狭窄部の軸方向長さに合わせたバ
ルーン膜を持つバルーンカテーテルを、患者の血管内部
に通す必要がある。ところが、従来のバルーンカテーテ
ルは、バルーン膜の軸方向の長さを変化させることがで
きない。このために、複数種類の軸方向長さのバルーン
膜を持つバルーンカテーテルを準備しておき、狭窄部の
軸方向の長さに対応する適切なバルーンカテーテルを選
択する必要がある。
【0004】このような不都合を解消するために、たと
えば特許第3034184号公報、特表平10−511
283号公報および米国特許第5246421号公報に
示すように、一つのバルーンカテーテルで、バルーン膜
の軸方向長さを可変にしたバルーンカテーテルが提案さ
れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、特許第30
34184号公報に記載してあるバルーンカテーテルで
は、バルーン膜の軸方向長さを変えることはできるが、
バルーンカテーテルを患者の体内に入れる前に調節する
必要がある。そのため、患者の体内に入れた後は、調節
することができない。また、バルーン膜の軸方向長さを
変化させるための機構が複雑であり、使用者にとって使
いにくい。そのため、複数種類のバルーンカテーテルの
うちから、適切な長さのバルーン膜を持つバルーンカテ
ーテルを選んだ方が使いやすいという不都合を有する。
【0006】なお、特表平10−511283号公報お
よび米国特許第5246421号公報に示すバルーンカ
テーテルでは、患者の体内においても、バルーン膜の軸
方向長さを変えることはできる。しかしながら、膨らん
でいるバルーン膜をカテーテルシースの遠位端部で押し
付けながら、シースの内部に無理矢理に入れて、バルー
ン膜の軸方向の長さを短くすることは、現実的に無理で
ある。また、逆に、シースの中にバルーン膜を入れてお
き、バルーン膜を膨らませ、シースを軸方向に移動させ
てバルーン膜の長さを調節することは、摩擦が大きく、
バルーン膜の耐久性が低下するという課題を有する。ま
た、シースの内部に引き込まれるバルーン膜が皺に成り
やすいという課題も有する。
【0007】本発明は、このような実状に鑑みてなさ
れ、バルーン膜の耐久性を低下させることなく、しかも
低い摩擦抵抗で、体内においても、バルーン膜の軸方向
の長さを変化させることが可能であり、しかも狭窄部へ
の挿入特性にも優れた可変長バルーンカテーテルおよび
その製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係るバルーンカテーテルは、長手方向に細
長い筒形状を持つバルーン膜と、前記バルーン膜の遠位
端部が固着される遠位端部を持ち、前記バルーン膜の内
部を軸方向に延び、前記バルーン膜の近位端部から軸方
向に飛び出しているインナー部材と、前記バルーン膜の
近位端部が固着されるチューブ遠位端部を持ち、内部に
前記インナー部材を相対的に軸方向移動自在に収容し、
前記バルーン膜の内部に流体圧力を出し入れするルーメ
ンを前記インナー部材との間に形成し、前記バルーン膜
が拡張された状態で、前記バルーン膜の近位端部を前記
チューブ遠位端部と共に前記バルーン膜の内部に軸方向
に送り込むことが可能になっているカテーテルチューブ
と、前記カテーテルチューブの近位端部に接続され、前
記インナー部材に対して軸方向移動自在に装着されるコ
ネクタと、を有する。
【0009】好ましくは、前記インナー部材の近位端部
が、前記コネクタの後端から外方に飛び出してあり、前
記インナー部材の近位端部には、操作用把手が装着して
ある。
【0010】本発明において、インナーチューブは、ル
ーメンを持たないロッド材でも良いが、好ましくは、イ
ンナーチューブであり、内部にガイドワイヤを挿通可能
なルーメンを持つ。好ましくは、前記バルーン膜の内面
には、摩擦低減コーティングが施してある。
【0011】本発明に係る可変長バルーンカテーテルの
製造方法は、長手方向に細長い筒形状を持つバルーン膜
を製造する工程と、前記バルーン膜の外周面に摩擦低減
コーティングを施す工程と、前記バルーン膜を裏返しに
する工程と、裏返しにされたバルーン膜の内部にインナ
ー部材を挿入し、インナー部材の遠位端部に、前記バル
ーン膜の遠位端部を固着する工程と、前記バルーン膜の
近位端部から軸方向に延びているインナー部材をカテー
テルチューブの内部に軸方向移動自在に通し、前記バル
ーン膜の近位端部が前記バルーン膜の内部に折り返して
入り込むことが可能なように、前記バルーン膜の近位端
部に、前記カテーテルチューブの遠位端部を固着する工
程と、前記インナー部材の近位端部に対して軸方向移動
自在に、前記カテーテルチューブの近位端部にコネクタ
を接続する工程と、を有する。
【0012】
【作用】本発明に係る可変長バルーンカテーテルでは、
バルーン膜が拡張された状態で、そのバルーン膜の近位
端部を、カテーテルチューブのチューブ遠位端部と共に
バルーン膜の内部に軸方向に送り込むことが可能になっ
ている。バルーン膜の近位端部を、カテーテルチューブ
のチューブ遠位端部と共にバルーン膜の内部に軸方向に
送り込むと、バルーン膜の近位端部は、折り返されてバ
ルーン膜の内部に入り込み、バルーン膜の全長が短くな
る。また、バルーン膜の近位端部を、カテーテルチュー
ブのチューブ遠位端部と共にバルーン膜の内部から軸方
向に引き抜くと、バルーン膜の近位端部は、折り返され
てバルーン膜の内部から送り出され、バルーン膜の全長
が長くなる。
【0013】カテーテルチューブのチューブ遠位端部を
バルーン膜に対して軸方向に移動させる操作は、患者の
体外に配置されるコネクタを、インナー部材に対して軸
方向に移動させるのみで、容易に行うことができる。こ
のため、バルーン膜を患者の体内に挿入した状態で、患
者の体外に配置されるコネクタを操作することで、バル
ーン膜の軸方向長さを自由に操作することができる。
【0014】このように本発明の可変長バルーンカテー
テルでは、シースなどの拡張制限部材によりバルーン膜
の拡張を強制的に制限することなく、バルーン膜自体の
裏表の折り返しにより、バルーン膜の軸方向長さを変化
させている。このため、低摩擦でバルーン膜の軸方向長
さを体内で自由に変化させることができ、たとえば血管
などの体腔内の狭窄部を拡張する際に、狭窄部の長さに
応じた適切な処置が可能になる。また、バルーン膜の軸
方向長さを変化させる際に、バルーン膜に対する摩擦が
少ないことから、バルーン膜の耐久性が向上する。
【0015】また、本発明の可変長バルーンカテーテル
では、以下に示すその他の使用方法も考えられる。すな
わち、カテーテルチューブの軸方向移動を近位端側で制
限しておき、インナー部材をカテーテルチューブの内部
で軸方向に移動自在とし、バルーン膜の内部の流体圧力
を高めるのである。そうすると、バルーン膜およびイン
ナー部材の遠位端部は、バルーン膜の内部圧力の増加に
より、カテーテルチューブの遠位端部から相対的に離れ
る方向に移動する。その結果、バルーン膜の遠位端部
は、カテーテルチューブの遠位端部から、より遠位端の
方向に自動的に送り出され、体腔内を低摩擦でバルーン
膜を遠位端側に送り出すことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、図面に示す実施
形態に基づき説明する。図1は本発明の一実施形態に係
る可変長バルーンカテーテルの概略断面図、図2(A)
〜図2(D)は図1に示す可変長バルーンカテーテルの
製造過程を示す断面図である。
【0017】図1に示すように、本発明の一実施形態に
係る可変長バルーンカテーテル2は、長手方向に細長い
筒形状を持ち、内部に出し入れされる流体圧力により半
径方向に拡張および収縮が可能なバルーン膜4を有す
る。図1は、バルーン膜4が、その内部の圧力流体によ
り、拡張している状態を示す。
【0018】バルーン膜4における軸方向の先端部に
は、テーパ状に縮径された遠位端部4aが形成してあ
り、その遠位端部4aの内周部は、インナー部材として
のインナーチューブ6の遠位端部6aの外周に固着(接
着および融着を含む)してある。インナーチューブ6の
遠位端部6aは、バルーン膜4の遠位端部4aよりも幾
分遠位端側に突出してある。
【0019】バルーン膜4における軸方向の後端部に
は、テーパ状に縮径された近位端部4bが形成してあ
り、その近位端部4bは、バルーン膜4の近位端側で表
裏面が折り返され、その近位端部4bの内周部は、カテ
ーテルチューブ8のチューブ遠位端部8aの外周に固着
してある。
【0020】インナーチューブ6は、バルーン膜4およ
びカテーテルチューブ8の内部を軸方向に延び、カテー
テルチューブ8に対して軸方向移動自在に成っている。
カテーテルチューブ8の近位端部は、コネクタ20の先
端部に固着してある。インナーチューブ6の近位端部6
bは、カテーテルチューブ8の近位端部8bから飛び出
し、コネクタ20の後端部からも飛び出している。コネ
クタ20の後端部には、回転つまみ30が装着してあ
る。回転つまみ30は、インナーチューブ6の遠位端部
6bを、コネクタ20に対して軸方向に相対移動自在
に、しかも、コネクタ20に対する軸方向所定位置で、
インナーチューブ6のカテーテルチューブ8に対する相
対的な軸方向移動を停止および解除可能にするためのも
のである。
【0021】コネクタ20の内部には、カテーテルチュ
ーブ8とインナーチューブ6との間に形成されたルーメ
ン9に連通して軸方向に延びる流路22が形成してあ
る。流路22の後端部は、コネクタ20の内部に装着し
てあるシール部材により閉塞されるが、インナーチュー
ブ6の近位端部は、シール部材を通して、コネクタ20
の後端から飛び出ている。回転つまみ30は、インナー
チューブ6の外周部に対して締め付けおよび解除可能に
なっており、インナーチューブ6のカテーテルチューブ
8に対する相対的な軸方向移動を停止および許容可能に
する。
【0022】インナーチューブ6の内部には、軸方向に
沿ってルーメン7が形成してある。このルーメン7に
は、ガイドワイヤ40が挿通可能になっている。ガイド
ワイヤ40は、バルーンカテーテル2を血管の内部に案
内するためのものであり、最初にガイドワイヤ40を血
管の内部の目的とする部位に通しておき、このガイドワ
イヤ40に沿ってバルーンカテーテル2を血管の内部に
挿入する。ガイドワイヤ40の遠位端部は、インナーチ
ューブ6の遠位端部から飛び出しており、その近位端部
は、インナーチューブ6の近位端部6bに装着してある
把手32から飛び出している。把手32は、操作者の手
で掴み、インナーチューブ6をコネクタ20に対して軸
方向に相対移動させるためのものである。
【0023】バルーン膜4を拡張および収縮させるため
の圧力流体は、コネクタ20に形成してある分岐管24
の接続ポート28に接続してある圧力流体供給装置か
ら、分岐流路26、流路22およびルーメン9を通し
て、バルーン膜4の内部に導入される。バルーン膜4の
内部に導入される圧力流体は、たとえば生理食塩水、ヨ
ウ素系造影剤が用いられる。バルーン膜4で構成される
バルーンの長さを変化させるためにバルーン膜4の内部
に導入される圧力流体の圧力は、好ましくは、約0.0
5〜0.1MPaであり、その圧力下で、後述するよう
に、バルーンの軸方向長さを変化させる。その後、血管
などの狭窄部を拡張するためにバルーン膜4の内部に導
入される圧力流体の圧力は、好ましくは、約0.8〜
1.5MPaである。
【0024】バルーン膜4の内面には、摩擦低減コーテ
ィングが施してある。摩擦低減コーティングとしては、
具体的には、親水潤滑化コーティングが例示される。親
水潤滑化コーティングを行うための潤滑剤としては、特
に限定されないが、具体的には、ポリビニルアルコール
(PVA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリ
ビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミドなど
が例示される。
【0025】バルーン膜4は、拡張および収縮に耐え得
る柔軟性および耐久性に優れた材質で構成され、特に限
定されないが、たとえばポリエチレン、ポリアミド、ポ
リエステル、フッ素系ポリマー(FEP、ETFE)な
どで構成される。
【0026】カテーテルチューブ8は、曲がりくねった
血管の内部に追随して挿入可能なように可撓性を有する
と共に、カテーテルチューブ8の近位端からの操作力が
カテーテルチューブ8の遠位端まで良好に伝達可能な程
度の強さを有する材質で構成される。特に限定されない
が、具体的には、カテーテルチューブ8は、たとえばポ
リアミド、ポリエーテルアミド、ポリエチレン、ポリウ
レタン、ポリエステル、あるいはこれらの共重合体など
で構成される。カテーテルチューブ8は、圧力流体の通
り道になるために、その圧力に耐え得るように、ブレー
ド補強されているものが推奨される。
【0027】インナーチューブ6は、曲がりくねった血
管の内部に追随して挿入可能なように可撓性を有すると
共に、バルーン膜4の遠位端部がキンクすることなく狭
窄部に挿入可能な程度の強さを有する材質で構成され
る。インナーチューブ6は、カテーテルチューブ8と同
様な材質で構成されるが、カテーテルチューブ8よりも
少し高度が高いものを用いることが好ましい。押し込み
時のキンクに耐え得る特性を持たせるためである。コネ
クタ20は、カテーテルチューブ8よりも高硬度の材質
で構成され、特に限定されないが、たとえばナイロン樹
脂、ABS樹脂、PVC樹脂、AS樹脂などで構成され
る。
【0028】拡張された状態でのバルーン膜4の外径
は、バルーンカテーテルが使用される体腔の内径にもよ
るが、好ましくは1〜10mm、さらに好ましくは1.5
〜4.5mm程度であり、バルーン膜4の軸方向長さは、
最大伸長状態で、好ましくは20〜100mmである。バ
ルーン膜4の軸方向長さは、後述するように、カテーテ
ルチューブ8をインナーチューブ6に対して相対的に軸
方向に移動させることで可変であり、最小伸長長さは、
最大伸長さの1/2である。バルーン膜4の厚みは、好
ましくは10〜300μmである。
【0029】カテーテルチューブ8の外径は、好ましく
は、0.5〜2mm、その厚みは、好ましくは20〜20
0μmである。カテーテルチューブ8の軸方向長さは、
バルーンカテーテル2の用途によっても異なるが、好ま
しくは300〜1500mmである。また、インナーチュ
ーブ6の外径は、好ましくは0.3〜1.5mm、その厚
みは、好ましくは100〜200μmである。ガイドワ
イヤ40の外径は、好ましくは0.2〜0.6mmであ
る。ガイドワイヤ40は、たとえばステンレス鋼(SU
S304、SUS306、その他)、ニッケルチタン合
金、白金ニッケル合金、金、白金、その他の金属または
合金などで構成される。ガイドワイヤ40の表面は、コ
ーティング材で被覆してあることが好ましい。コーティ
ング材としては、特に限定されないが、ポリウレタン、
ナイロン、ポリエーテルポリアミド、ポリイミドなどが
例示される。
【0030】次に、図1に示すバルーンカテーテル2の
製造方法について説明する。図2(A)に示すように、
まずバルーン膜4を製造する。バルーン膜4は、たとえ
ばブロー成形、蒸着重合方法、ディッピング法などで製
造される。このバルーン膜4の外面に、親水潤滑化コー
ティング処理を行う。そのコーティング厚みは、たとえ
ば0.5〜3μm程度である。
【0031】次に、図2(B)に示すように、図2
(A)に示すバルーン膜4を裏返しにする。その結果、
内面に親水潤滑化コーティングが施されたバルーン膜4
を得ることができる。バルーン膜4の近位端部4bは、
バルーン膜4の内側に折り返される。
【0032】次に、図2(C)に示すように、バルーン
膜4の近位端部4bからインナーチューブ6の遠位端部
6aを通し、バルーン膜4の遠位端部4aの内周面を、
インナーチューブ6の遠位端部6aの外周面に固着す
る。その後、図2(D)に示すように、内側に折り返さ
れたバルーン膜4の近位端部4bにカテーテルチューブ
8の遠位端部8aを通して固着させる。インナーチュー
ブ6は、カテーテルチューブ8の内部に通され、軸方向
に移動自在である。
【0033】その後、図1に示すように、カテーテルチ
ューブ8の近位端部8bをコネクタ20に固着すると共
に、インナーチューブ6の近位端部6bに把手32を装
着し、可変長バルーンカテーテル2を得る。
【0034】本実施形態に係る可変長バルーンカテーテ
ル2では、バルーン膜4が拡張された状態で、そのバル
ーン膜4の近位端部4bを、カテーテルチューブ8のチ
ューブ遠位端部8aと共にバルーン膜4の内部に軸方向
に送り込むことが可能になっている。
【0035】回転つまみ30を緩め、インナーチューブ
6をコネクタ20に対して軸方向移動自在とし、カテー
テルチューブ8をインナーチューブ6に対して相対的に
軸方向に移動させる。その結果、バルーン膜4の近位端
部4bを、カテーテルチューブ8のチューブ遠位端部8
bと共にバルーン膜4の内部に軸方向に送り込むことが
できる。そのため、バルーン膜4の近位端部4bは、折
り返されてバルーン膜4の内部に入り込み、バルーン膜
4の全長が短くなる。
【0036】また、同様にして、バルーン膜4の近位端
部4bを、カテーテルチューブ8のチューブ遠位端部8
aと共にバルーン膜4の内部から軸方向に引き抜くと、
バルーン膜4の近位端部4bは、折り返されてバルーン
膜4の内部から送り出され、バルーン膜4の全長が長く
なる。このようにしてバルーン膜4の軸方向長さを、た
とえば血管内の狭窄部の軸方向長さに一致させることが
できる。いったん一致させた後は、回転つまみ30を操
作して、コネクタ20に対するインナーチューブ6の軸
方向移動を制限する。その結果、バルーン膜4は、所定
の軸方向長さで固定される。
【0037】このようにバルーン膜4を患者の体内に挿
入した状態で、患者の体外に配置されるコネクタ20を
操作することで、バルーン膜4の軸方向長さを自由に操
作することができる。
【0038】本実施形態の可変長バルーンカテーテル2
では、シースなどの拡張制限部材によりバルーン膜の拡
張を強制的に制限することなく、バルーン膜4自体の裏
表の折り返しにより、バルーン膜4の軸方向長さを変化
させている。このため、低摩擦でバルーン膜4の軸方向
長さを体内で自由に変化させることができ、たとえば血
管などの体腔内の狭窄部を拡張する際に、狭窄部の長さ
に応じた適切な処置が可能になる。また、バルーン膜4
の軸方向長さを変化させる際に、バルーン膜4に対する
摩擦が少ないことから、バルーン膜4の耐久性が向上す
る。
【0039】また、本実施形態の可変長バルーンカテー
テル2では、以下に示すその他の使用方法も考えられ
る。すなわち、コネクタ20を把持し、カテーテルチュ
ーブ8の軸方向移動を近位端側で制限しておき、回転つ
まみ30を緩めてインナーチューブ6をカテーテルチュ
ーブ8の内部で軸方向に移動自在とし、バルーン膜4の
内部の流体圧力を高めるのである。そうすると、バルー
ン膜4およびインナー部材6の遠位端部6aは、バルー
ン膜4の内部圧力の増加により、カテーテルチューブ8
の遠位端部から相対的に離れる方向に移動する。その結
果、バルーン膜4の遠位端部4aは、カテーテルチュー
ブ8の遠位端部8aから、より遠位端の方向に自動的に
送り出され、血管内を低摩擦でバルーン膜4を遠位端側
に送り出すことができる。
【0040】なお、本発明は、上述した実施形態に限定
されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変する
ことができる。たとえば、上述した実施形態では、本発
明に係る可変長バルーンカテーテルを、血管の狭窄部を
拡張するためのバルーンカテーテルとして用いている
が、本発明の可変長バルーンカテーテルは、それ以外の
用途のバルーンカテーテルとしても用いることができ
る。
【0041】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、バルーン膜の耐久性を低下させることなく、しかも
低い摩擦抵抗で、体内においても、バルーン膜の軸方向
の長さを変化させることが可能であり、しかも狭窄部へ
の挿入特性にも優れた可変長バルーンカテーテルおよび
その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】【図1】 図1は本発明の一実施形態に係る可変長バル
ーンカテーテルの概略断面図である。
【図2】 図2(A)〜図2(D)は図1に示す可変長
バルーンカテーテルの製造過程を示す断面図である。
【符号の説明】2… 可変長バルーンカテーテル4… バルーン膜4a… 遠位端部4b… 近位端部6… インナーチューブ(インナー部材)6a… 遠位端部6b… 近位端部8… カテーテルチューブ8a… チューブ遠位端部8b… 近位端部20… コネクタ30… 回転つまみ