【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は基板吸着方法および
基板吸着機構に係わり、特に不都合に反っているガラス
エポキシ基板等の基板を安定に吸着することができる基
板吸着方法および基板吸着機構に関する。
【0002】
【従来の技術】図8は従来技術の基板吸着方法を示す一
部断面を含む側面図である。ガラスエポキシ基体10の
表面14の複数の領域のそれぞれに半導体素子を搭載
し、ワイヤーボンディング等による配線処理を行った
後、表面全体をエポキシ樹脂等のモールド樹脂11によ
りモールドされることによりガラスエポキシ基板1を構
成している。
【0003】このガラスエポキシ基板1を個々の領域に
切断するためにダイシング装置にセットした場合を図8
に示す。
【0004】水平方向(X方向)に延在する平坦上面を
有する軟質製の吸着板60上に、表面14を下側、ダイ
シングブレードが入り込む裏面15を上にして、搬送さ
れてきたガラスエポキシ基板1を裁置する。
【0005】吸着板60には複数個の真空用の穴61が
形成されており、ここから真空引き62をすることによ
りガラスエポキシ基板1を吸着板60に真空圧により吸
着する。
【0006】ここでガラスエポキシ基板1は図8や後か
ら説明する図2に示すように中央が吸着板60から凸状
態になるように反っているので隙間63が生じている。
【0007】このように従来技術では吸着板60と基板
1との間に隙間が生じるから、真空圧のリークが生じ基
板を安定に吸着固定することができない。
【0008】また、中央が凹状態になるように図8とは
逆に反っている場合も、同様の不具合が生じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したように従
来の技術では、基板が反っていた場合に吸着板に安定し
た真空吸着ができないという問題点があった。
【0010】したがって本発明の目的は、基板の反り状
態に関わらず、安定した基板の吸着を可能にする基板吸
着方法を提供することである。
【0011】本発明の他の目的は、基板の反り状態に関
わらず、安定した基板の吸着を可能にする基板吸着機構
を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴は、個々に
摺動可能な複数の吸着ノズルを有し、基板の反り量に見
合った場所に前記吸着ノズルのそれぞれを位置させて前
記基板を吸着する基板吸着方法にある。
【0013】ここで、前記複数の吸着ノズルは吸着固定
部材の平坦上面から突出しており、この突出量は中央の
前記吸着ノズルが一番大きいように前記基板が反ってい
ることができる。
【0014】あるいは、前記複数の吸着ノズルは吸着固
定部材の平坦上面から突出しており、この突出量は中央
の前記吸着ノズルが一番小さいように前記基板が反って
いることができる。
【0015】さらに、基板のそれぞれの部分の位置を測
定する複数のセンサーを裁置した吸着固定部材を有し、
複数の前記吸着ノズルは吸着固定部材から個々に摺動可
能に突出していることが好ましい。
【0016】また、個々の前記吸着ノズルは、円筒棒と
その先端に設けられた吸着パッドとを具備して構成され
ていることができる。また、個々の前記吸着ノズルの摺
動は、パルスモータ、偏心カム、アーム、前記アームの
回転軸および前記偏心カムの回転軸を具備する駆動装置
により行われることができる。
【0017】ここで、前記基板は、例えばガラスエポキ
シによる基体のそれぞれの表面領域に素子を搭載し、必
要な配線処理を行った後、表面領域を全体的に樹脂モー
ルドをした基板あることができる。
【0018】さらに、前記吸着は、前記基板を加工する
装置、例えば基板をダイシングするダイシング装置に装
着する際に行われることができる。
【0019】あるいは、前記吸着は、前記基板を搬送す
る際に行われることができる。また、前記基板を前記吸
着ノズルに押しつけて前記吸着を行うことができる。
【0020】本発明の他の特徴は、上記したいずれかに
記載の基板吸着方法を行う基板吸着機構にある。
【0021】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明を説明
する。図1は本発明の第1の実施の形態を示す側面図で
あり、図2は基板の反り方向を示す斜視図であり、図3
は本発明の実施の形態が対象とする基板を示す断面図で
ある。
【0022】先ず図3を参照して、ガラスエポキシ基板
1は、ガラスエポキシ基体10の配線パターンが形成さ
れた表面14の区画された複数領域のそれぞれに半導体
素子12を搭載し、ボンディングワイヤ13の接続等の
配線処理を行った後、表面の全体をエポキシ樹脂等のモ
ールド樹脂11によりモールドされることによりガラス
エポキシ基板1を構成している。この例では、基体サイ
ズが190mm×65mm×0.25mmであり、ここ
に187mm×60mm×0.6mmの樹脂が充填モー
ルドされている。
【0023】そして、このガラスエポキシ基板1をダイ
シング装置にセットし、ガラスエポキシ基体10の裏面
15の側から切断(ダイシング)箇所16に回転するダ
イシングブレードを入り込ませて、12mm×12mm
のサイズの個々の装置(混成IC)に分離切断する。
【0024】次に図1を参照して、ダイシング装置にお
けるガラスエポキシ基板1の裁置機構は吸着固定部材4
0と複数の吸着ノズル20とを具備している。
【0025】吸着固定部材40は、水平方向(X方向)
に延在する平坦面を有する軟質製の吸着用ラバー材であ
る吸着固定板41、その裏側に配置された支持板42お
よびこれらの板を貫通する複数のガイド筒43を有して
いる。またそれぞれの吸着ノズル20は、円筒棒21お
よびその先端の吸着パッド22を有している。
【0026】このガラスエポキシ基板1は、図1や図2
に示すように、中央が吸着固定板41の平坦面から凸状
態になるように反っている。尚、図2の斜視図の矢印の
方向を視た側面図が図1である。
【0027】本発明では、搬送されてきたガラスエポキ
シ基板1が表面14の側を吸着固定板41に向けて裁置
される際に、個々の吸着ノズル20の円筒棒21がガイ
ド筒43内を垂直方向(Y方向)に摺動することによ
り、吸着ノズルの突出量を中央部で高く、両端では低く
し、これによりガラスエポキシ基板1の反り量に見合っ
た場所に吸着ノズルの吸着パッド22をそれぞれを位置
させて真空吸着するから真空漏れが発生しないで確実な
吸着を可能にする。
【0028】このように確実の吸着が行われた後、全て
の吸着ノズルを吸着固定部材40に向けて引き下げ、吸
着固定板41の平坦面に裁置した状態でガラスエポキシ
基体10の裏面15の側から切断(ダイシング)箇所に
回転するダイシングブレードを入り込ませて、個々の装
置(混成IC)に分離切断する。
【0029】吸着ノズルは個片に切断されるPKGの部
位に合わせ、かつ、ダイシングブレードにより傷がつか
ないように配置されている。また、吸着ノズルが位置し
ない箇所であってそれぞれの個片に対応する吸着固定板
41の平坦面には吸着穴(図示省略)が設けられており
切断された個片をそれぞれ吸着するようになっている。
さらに、吸着用ラバーである吸着固定板41の平坦面に
は深さ0.5mm程度の回転ブレードの逃げ溝が予め形
成されている。
【0030】尚、図1乃至図3および後から説明する図
4乃至図6では、基板の下方向に吸着固定部材や複数の
吸着ノズルを設け、基板を上方向からダイシングをする
ように図示してあるがこれらの上下関係は図面と逆でも
よい。すなわち、基板の上方向に吸着固定部材や複数の
吸着ノズルを設け、基板を下方向からダイシングをする
ようにしてもよい。さらに、互いに左右位置関係にした
構成、すなわちこれらの図面を横にしたような構成とす
ることも考えられる。
【0031】次に図4は本発明の第2の実施の形態を示
す側面図である。尚、この図4および後で説明する図5
乃至図7において図1乃至図3と同一もしくは類似の機
能の箇所は同じ符号を付してあるから、重複する説明は
省略する。
【0032】この実施の形態では、搬送されてきたガラ
スエポキシ基板1が表面14の側を吸着固定板41に向
けて裁置される際に、個々の吸着ノズル20の円筒棒2
1がガイド筒43内を垂直方向(Y方向)に摺動するこ
とにより、吸着ノズルの突出量を中央部で低く、両端で
は高くする。
【0033】これにより、ガラスエポキシ基板1の反り
量に見合った場所に吸着ノズルの吸着パッド22をそれ
ぞれを位置させて真空吸着するから真空漏れ発生しない
で確実な吸着を可能にする。
【0034】図5は本発明の実施の形態の吸着方法を示
す図である。吸着固定部材40に複数のセンサー30、
例えばCCDレーザー変位センサー30を裁置して、こ
れらのセンサーにより吸着する基板(図示省略)のそれ
ぞれの部分の高さ方向の位置(吸着固定板の平坦面と基
板との距離)を測定し、その測定値によりそれぞれの吸
着ノズル20の吸着固定板の平坦面からの突出量を決定
する。
【0035】図6は本発明の実施の形態における吸着ノ
ズルの動作を示す図である。それぞれの吸着ノズル20
は、吸着固定部材40のガイド筒43を上下に動く円筒
棒21およびその先端に取り付けられた軟質材の吸盤で
ある吸着パッド22を具備して構成され、円筒棒21に
は真空用の穴23が貫通して形成され、この真空用の穴
23が真空系(図示省略)に接続されて真空引き29が
され、真空パッド22に当接する基板を真空吸着する。
【0036】具体的には基板吸着機構内にそれぞれの吸
着ノズルの真空用の穴に接続する真空バルブを設け、こ
の真空バルブと外部の真空系とをフレクシブルなパイプ
で接続するが、このパイプと真空バルブとは取り外し可
能になっている。
【0037】また、それぞれの吸着ノズル20は、偏心
カム24、パルスモータ25、アーム26、アームの回
転軸27、偏心カムの回転軸28を具備する駆動機構に
より上下動の駆動がされる。
【0038】偏心カム24は、回転運動を上下運動に変
換する機能を有し、パルスモーター25は、回転運動の
駆動源である。さらにそれぞれの吸着ノズル20の近傍
には、図5で説明した、基板との隙間を検出する検出体
であるセンサー30(図6では図示省略)が設けられて
いる。
【0039】次に図6を参照して吸着方法の動作を説明
する。図6(A)の状態でセンサー30(図5)により
吸着固定板41上に搬送された基板と吸着固定板との隙
間を検知し、その距離をパルスモーター25にフィード
バックする。
【0040】そして、図6(B)に示すように、パルス
モーター25の回転運動を偏心カム24に伝達されて偏
心カム24が矢印に示すように回転し、ガイド筒43に
案内された吸着ノズル20が矢印に示すようにセンサー
30により検知された基板のそれぞれの部分の位置まで
上昇する。
【0041】そして上昇後、真空バルブ(図示省略)を
開にして、基板を吸着ノズル内の真空用の穴23を通し
真空引き29をすることにより真空吸着する。その後、
吸着した状態のまま、パルスモーター25を原点に戻し
吸着ノズル20を下降させ、吸着固定板41の平坦面に
裁置した状態で固定する。
【0042】図7は本発明の第3の実施の形態を示す図
である。搬送板50上に弾性板51を介して搭載され搬
送されてきた基板1を複数の吸着ノズル20により吸着
する。図7では反りが無い基板を図示しているが、反り
有する基板であっても複数の吸着ノズル20によって安
定に吸着することができることは先の実施の形態で示し
た通りである。
【0043】この実施の形態ではさらに、搬送板50を
矢印に示すように上昇させ基板1の裏面15に押しつけ
ることにより吸着ノズルとの密着性をさらに向上させよ
うとしている。ここで弾性板51を介して押圧するの
は、基板に反りが有ってそれぞれの吸着パッドの高さが
異なっていても、なるべく全てのパッドに力が加わるよ
うにするためである。
【0044】このように押圧により吸着ノズルとの密着
性が向上するが、図3に示すような基板の場合は、半導
体素子やボンディングワイヤが破損しない押圧力になる
ように制御をする必要がある。
【0045】したがってこの実施の形態は、例えば配線
パターンしか形成されていないような基板に用いるのが
好ましい。
【0046】以上の実施の形態ではダイシング装置等の
加工装置に基板を裁置する場合を説明した。しかしなが
ら本発明の基板吸着方法は加工装置間等の基板搬送にも
用いることができる。
【0047】この場合は、基板吸着機構内に設けられた
真空バルブを閉にして吸着ノズル内を真空状態に維持し
て、真空バルブと外部の真空系とを接続するフレクシブ
ルなパイプを切り離し、図1や図4のような状態あるい
はこれらから吸着ノズルを引っ込めて基板を吸着固定部
材に当接した状態にして搬送を行う。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、基
板の反り量に見合った吸着ノズル突き出し量にしている
ので、反りの方向に関わらず基板を吸着することができ
る。また、個々の吸着ノズルが上下に可動し、基板を直
接吸引するために安定した吸着ができる。
【図面の簡単な説明】【図1】本発明の第1の実施の形態を示す側面図であ
る。
【図2】基板の反り方向を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態が対象とする基板を示す断
面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す側面図であ
る。
【図5】本発明の実施の形態の吸着方法を示す図であ
る。
【図6】本発明の実施の形態における吸着ノズルの動作
を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を示す図である。
【図8】従来技術を示す図である。
【符号の説明】1 ガラスエポキシ基板10 ガラスエポキシ基体11 モールド樹脂12 半導体素子13 ボンディングワイヤ14 基板の表面15 基板の裏面16 切断(ダイシング)箇所20 吸着ノズル21 円筒棒22 吸着パッド23 真空用の穴24 偏心カム25 パルスモータ26 アーム27 アームの回転軸28 偏心カムの回転軸29 真空引き30 センサー40 吸着固定部材41 吸着固定板42 支持板43 ガイド筒50 搬送板51 弾性板60 吸着板61 真空用の穴62 真空引き63 隙間