【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表示装置に係わり、
特に、階調表示の改良技術に関わる。
【0002】
【従来の技術】薄膜トランジスタ(TFT)により駆動
制御されるエレクトロルミネッセンス素子(ELD)を
備えた薄膜トランジスタ駆動エレクトロルミネッセンス
表示装置(TFT−ELD)は軽量、小型、高精細、広
視角、低消費電力等を実現する表示装置として、将来的
に有望視されている。
【0003】ここで、図4に従来のTFT−ELDの回
路図を、図5に同TFT−ELDの断面図を示す。図4
において、符号11はTFT−ELDの単位画素、12
は走査線、13は信号線、14はアナログ信号供給線、
15は保持容量、16は選択トランジスタ、17は駆動
トランジスタ、18はELDである。図5に示すよう
に、ガラス基板10上にはELD18の発光強度(階
調)を調整するための駆動トランジスタ17が形成され
ており、駆動トランジスタ17のドレイン電極はELD
18の陽極(透明電極)21に接続し、ソース電極はア
ナログ信号供給線14に接続している。ELD18は陽
極21、発光層22及び陰極23から構成されており、
ELD18としては、無機エレクトロルミネセンス素
子、低分子系有機エレクトロルミネセンス素子、高分子
系有機エレクトロルミネセンス素子の何れでもよい。
【0004】また、選択トランジスタ16のゲート電極
は走査線12に、ソース電極は信号線13に、ドレイン
電極は駆動トランジスタ17のゲート電極に接続してい
る。また、アナログ信号供給線14と選択トランジスタ
16のソース電極の間には保持容量15が介在してい
る。
【0005】上記の構成において、ELD18を発光さ
せるには、走査線12及び信号線13を「H」レベルに
し、選択トランジスタ16のドレイン・ソース間を導通
して駆動トランジスタ17をオンにする。この状態でア
ナログ信号供給線14からアナログ信号が供給される
と、当該アナログ信号は保持容量15に伝達されるとと
もに、駆動トランジスタ17のコンダクタンスを変化さ
せる。すると、ELD18はアナログ信号に対応した強
度で発光し、発光強度の階調を実現することができる。
【0006】しかし、上記の構成では、特に中間階調に
おいて、駆動トランジスタ17のトランジスタ特性のバ
ラツキによって各画素のELD18の発光強度が不均一
になり、画質が低下するという問題が生じていた。
【0007】そこで、かかる問題を解決するべく、本出
願人は特開平11−73158号公報において、ELD
の発光をオン/オフ制御し、階調に対応して発光面積を
変えることで階調表示を実現する技術を提案した。同公
報に開示したTFT−ELDの回路図を図6に示す。同
図において、ELD18−1及びELD18−2によっ
て1画素当たりのELDが構成される。本構成では信号
線13−1及び信号線13−2から成る2ビットの信号
線によってELD18−1及びELD18−2のそれぞ
れについてオン/オフ制御することで、4階調表示を実
現する。ELD18−1及びELD18−2が共に非発
光の状態のときを第0階調、ELD18−1のみが発光
している状態を第1階調、ELD18−2のみが発光し
ている状態を第2階調、ELD18−1及びELD18
−2が共に発光している状態を第3階調とし、ELD1
8−1及びELD18−2の発光面積を1:2とする。
【0008】上記の構成において、走査線12、信号線
13−1及び信号線13−2には図7に示すように、そ
れぞれ信号S、D1及びD2が供給される。信号Sが
「H」レベルのとき、選択トランジスタ16−1及び1
6−2のそれぞれのドレイン・ソース間は導通状態とな
る。同図において、第1階調を実現するときは、信号S
を「H」レベルにし、信号D1を「H」レベル、信号D
2を「L」レベルにする。すると、駆動トランジスタ1
7−1はオン状態となり、駆動トランジスタ17−2は
オフ状態となるため、ELD18−1のみが発光する。
さらに、第2階調を実現するときは、信号Sを「H」レ
ベルにし、信号D1を「L」レベル、信号D2を「H」
レベルにする。すると、駆動トランジスタ17−2はオ
ン状態となり、駆動トランジスタ17−1はオフ状態と
なるため、ELD18−2のみが発光する。
【0009】この方式では、駆動トランジスタ17−
1、17−2は近似的に完全なオン状態或いはオフ状態
の何れかの状態をとる。オン状態では、駆動トランジス
タ17−1、17−2の抵抗はELD18−1、18−
2の抵抗に比べて無視できるほど小さく、駆動トランジ
スタ17−1、17−2及びELD18−1、18−2
を流れる電流量は、ほぼELD18−1、18−2の抵
抗のみで決まる。故に、駆動トランジスタ17−1、1
7−2のトランジスタ特性のバラツキによってELD1
8−1、18−2の発光強度が不均一になることはな
い。また、駆動トランジスタ17−1、17−2がオフ
状態のときは、ELD18−1、18−2に印加される
電圧が閾値電圧以下になるため、ELD18−1、18
−2は全く発光せず、やはり、駆動トランジスタ17−
1、17−2のトランジスタ特性のバラツキによってE
LD18−1、18−2の発光強度が不均一になること
はない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の構成で
は各階調毎に発光重心(発光部分の平均発光位置)が移
動するため、視認性が低下する不都合が生じていた。こ
の点を図8を参照して説明する。同図において、単位画
素11の発光重心を符号40で表し、ハッチングが付さ
れたELDは非発光状態、白塗りのELDは発光状態を
示す。同図(A)は非発光状態、同図(B)はELD1
8−1のみが発光している状態、同図(C)はELD1
8−2のみが発光している状態、同図(D)は両者が発
光している状態である。これらの図を見てわかるよう
に、各階調毎に発光重心40の位置が異なる。このよう
な場合、表示画像の明るさが変わると、その表示されて
いる位置(発光位置)が変わるという好ましくない現象
が現れる。また、このようなとき、実際に表示画像を見
ると、画像がちらつき、不自然な表示であるように感じ
たり、疲労を感じたりする。
【0011】そこで、本発明はこのような問題点を解決
し、発光強度の各階調毎に発光重心位置が変化しない表
示装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するべ
く、本発明では各階調に対応した発光部分の位置が特定
の位置を中心にして点対称になるよう配置することで複
数の発光素子から成る単位画素を構成する。本構成によ
り、各階調毎に発光重心の位置が変化しない表示装置を
提供することができる。ここで、上記特定の位置とは、
例えば、最小輝度の階調を実現するときの発光素子の発
光重心位置である。
【0013】また、複数の発光素子の各々は各階調に対
応して発光状態と非発光状態のうち何れかの状態をとる
ように構成することが好ましい。複数の発光素子の発光
状態をオン/オフ制御することで、発光素子の特性のバ
ラツキによる発光輝度の不均一を防止でき、階調表示を
容易に実現できる。本構成を実現するべく、例えば、発
光素子としてエレクトロルミネッセンス素子を用い、当
該素子の発光状態を薄膜トランジスタによってオン/オ
フ制御する。
【0014】
【発明の実施の形態】発明の実施の形態1.図1におい
て符号11は表示装置の単位画素を示している。単位画
素当たりのELDは、ELD18−10、18−21及
び18−22から構成され、2ビット4階調表示となっ
ている。ここで、ELD18−10は0ビット表示用の
ELDである。ELD18−21、18−22は同一の
駆動トランジスタによって同時にオン/オフ制御され、
LD18−21は1ビット表示用の第1ELD、ELD
18−22は1ビット表示用の第2ELDである。各E
LDは図示しない2本の走査線(0ビット、1ビット表
示用の走査線)によって駆動制御される。
【0015】尚、同図においては単位画素11のみが表
示されているが、実際には表示装置の画面全体に単位画
素11がマトリクス状に配置されている。
【0016】同図(A)は非発光状態(第0階調)、同
図(B)はELD18−10のみが発光している状態
(第1階調)、同図(C)はELD18−21,18−
22のみが発光している状態(第2階調)、同図(D)
はELD18−10,18−21及び18−22が発光
している状態(第3階調)である。
【0017】同図に示すように、各階調における発光重
心40の位置は第1階調に対応した発光部分(ELD1
8−10)の中心点と同じ位置であり、各階調において
変化しないように構成されている。即ち、第2階調に対
応した発光部分は第1階調に対応した発光部分に対して
点対称となり、第3階調に対応した発光部分は第1階調
に対応した発光部分に対して点対称となる。このよう
に、各階調におけるELDの発光部分を特定の一点を中
心として点対称に配置することで、発光重心40の位置
が変化しないという構造が容易に得られる。このため、
表示画像の明るさが変化したときに、その表示されてい
る位置が変化するという好ましくない現象が現れること
はない。故に、画像がちらついたり、不自然な表示であ
るように感じたり、或いは疲労感を感じるといった画質
課題を解決することができる。
【0018】尚、同図において、各ELDの形状は四角
形(正方形)としたが、これを円形、楕円形等で構成し
てもよい。また、各ELD18−10、18−21及び
18−22の面積を等しくすることで、各階調毎の発光
強度を線形的に増減することができる。 発明の実施の形態2.図2において符号11は表示装置
の単位画素を示している。単位画素当たりのELDは、
ELD18−10、18−21、18−22、18−3
1、18−32、18−33及び18−34から構成さ
れ、3ビット8階調表示となっている。ここで、ELD
18−10は0ビット表示用のELDである。ELD1
8−21、18−22は同一の駆動トランジスタによっ
て同時にオン/オフ制御され、LD18−21は1ビッ
ト表示用の第1ELD、ELD18−22は1ビット表
示用の第2ELDである。また、ELD18−31、1
8−32、18−33及び18−34は同一の駆動トラ
ンジスタによって同時にオン/オフ制御され、LD18
−31は2ビット表示用の第1ELD、ELD18−3
2は2ビット表示用の第2ELD、LD18−33は2
ビット表示用の第3ELD、LD18−34は2ビット
表示用の第4ELDである。各ELDは図示しない3本
の走査線(0ビット〜2ビット表示用の走査線)によっ
て駆動制御される。
【0019】尚、同図においては単位画素11のみが表
示されているが、実際には表示装置の画面全体に単位画
素11がマトリクス状に配置されている。
【0020】図2(A)は非発光状態(第0階調)、同
図(B)は0ビット表示用のELDのみが発光している
状態(第1階調)、同図(C)は1ビット表示用のEL
Dのみが発光している状態(第2階調)、同図(D)は
0ビット及び1ビット表示用のELDのみが発光してい
る状態(第3階調)、図3(A)は2ビット表示用のE
LDのみが発光している状態(第4階調)、同図(B)
は0ビット及び2ビット表示用のELDのみが発光して
いる状態(第5階調)、同図(C)は1ビット及び2ビ
ット表示用のELDのみが発光している状態(第6階
調)、同図(D)は全てのELD(0ビット、1ビット
及び2ビット表示用のELD)が発光している状態(第
7階調)である。
【0021】同図に示すように、各階調における発光重
心40の位置は第1階調に対応した発光部分(ELD1
8−10)の中心点と同じ位置であり、各階調において
変化しないように構成されている。即ち、第2階調に対
応した発光部分は第1階調に対応した発光部分に対して
点対称となり、第3階調に対応した発光部分は第1階調
に対応した発光部分に対して点対称となり、…、第7階
調に対応した発光部分は第1階調に対応した発光部分に
対して点対称となっている。このように、各階調におけ
るELDの発光部分を特定の一点を中心にして点対称に
配置することで、発光重心40の位置が変化しないとい
う構造が容易に得られる。このため、表示画像の明るさ
が変化したときに、その表示されている位置が変化する
という好ましくない現象が現れることはない。故に、画
像がちらついたり、不自然な表示であるように感じた
り、或いは疲労感を感じるといった画質課題を解決する
ことができる。
【0022】尚、同図において、各ELDの形状は四角
形(正方形)としたが、これを円形、楕円形等で構成し
てもよい。また、各ELD18−10、18−21、1
8−22、18−31、…、18−34の面積を等しく
することで、各階調毎の発光強度を線形的に増減するこ
とができる。
【0023】また、本実施形態では8階調表示について
説明したが、単位画素当たりのELDの数を調整するこ
とで、任意の階調度を得ることができる。また、本発明
の表示装置はビデオカメラ、デジタルカメラ、カーオー
ディオ、ビデオCDプレーヤー、携帯端末、ノートパソ
コンなどに用いることができる。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、各階調における発光重
心の位置が変化しないため、表示画像の明るさが変化し
ても、発光位置が変わらない。従って、表示画像を見た
ときに、画像がちらついたり、不自然な表示であるよう
に感じたり、疲労を感じたりすることがない。
【図面の簡単な説明】【図1】実施形態1におけるTFT−ELDの単位画素
を構成する各ELDの発光状態の説明図である。
【図2】実施形態2におけるTFT−ELDの単位画素
を構成する各ELDの発光状態の説明図である。
【図3】実施形態2におけるTFT−ELDの単位画素
を構成する各ELDの発光状態の説明図である。
【図4】従来のTFT−ELDにおける単位画素の回路
図である。
【図5】従来のTFT−ELDにおける単位画素の断面
図である。
【図6】従来のTFT−ELDにおける単位画素の回路
図である。
【図7】従来のTFT−ELDにおける走査線及び信号
線のタイミングチャートである。
【図8】従来のTFT−ELDにおける単位画素を構成
するELDの発光状態の説明図である。
【符号の説明】 11 単位画素 40 発光重心 18−10 0ビット表示用ELD 18−21 1ビット表示用第1ELD 18−22 1ビット表示用第2ELD 18−31 2ビット表示用第1ELD 18−32 2ビット表示用第2ELD 18−33 2ビット表示用第3ELD 18−34 2ビット表示用第4ELD
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