【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、上部消化管用内視
鏡案内管に関し、特に、小腸内に内視鏡を挿入して観察
する際に、挿入の助けとなる上部消化管用内視鏡案内管
に関する。
【0002】
【従来の技術】図4に示すように上部消化管である食道
H1、胃H2、十二指腸H3を経由して小腸H4内に内
視鏡を挿入する場合には、一般的に、案内管を用いず内
視鏡単独で患者の体内に挿入される。このように患者の
体内に内視鏡単独で挿入する場合には、次のような操作
が行われる。まず、食道H1より胃H2内に挿入された
内視鏡は、胃H2の大湾H2aに沿つてさらに下流側に
誘導される。ここで、胃H2の大湾H2aに位置する内
視鏡をさらに押し進めると、内視鏡の先端は胃H2の大
湾H2aに沿いつつ幽門H5、十二指腸球部H3a、十
二指腸下行脚H3bの入り口まで到達させることができ
る。なお、図4中で、H2cは胃角、H3cは十二指腸
垂平脚、H3dは十二指腸乳頭、H6は回腸、H7はト
ライツ靭体である。
【0003】また、人体の上部消化管は胃H2から十二
指腸垂平脚H3cまでは略S字状に屈曲しているので、
内視鏡を十二指腸下行脚H3bの入り口からその先にさ
らに押し進めようとすると、手元側から内視鏡を押し込
んでも胃H2の大湾H2aを下方に押し下げるように内
視鏡挿入部が押されるだけで内視鏡の先端側には内視鏡
の押し込み力が伝わらない。このとき、場合によって
は、内視鏡の押し込み力によって胃H2の内部で内視鏡
の挿入部がループを描く状態に変形されてしまうおそれ
がある。
【0004】そこで、術者は十二指腸球部H3a及び十
二指腸下行脚H3bの入り口にある内視鏡の湾曲部を湾
曲させ、この内視鏡の先端部を十二指腸球部H3a、あ
るいは十二指腸下行脚H3bに引っかける。この状態
で、内視鏡挿入部を少し手元に引き戻しながら、内視鏡
挿入部をねじり回転させる。そうすると、大湾H2aに
位置する挿入部が小湾H2bに向かって移動し、内視鏡
の挿入部は小湾H2bに沿うように位置し、内視鏡挿入
部は食道H1から十二指腸下行脚H3bまで直線状に引
き伸ばされた形状(図2(B)参照)で配置される。
【0005】その後、術者は、この状態で、内視鏡の挿
入部を手元側から押し進めることにより、その力は内視
鏡先端に伝わり、内視鏡の挿入部を小腸H4に向けて挿
入することができる。しかしながら、このような手技
は、術者に負担をかけ、決して挿入性がよいとは言えな
い。
【0006】また、特開平10−262918号公報に
は、小腸用内視鏡をガイドする内視鏡挿入補助具である
案内管が示されている。そして、内視鏡単独で挿入する
場合の上記問題を解決するために上記公報の案内管を用
いることが行なわれている。
【0007】このような、案内管を用いる場合の内視鏡
の挿入操作は次の通りである。まず、予め内視鏡の挿入
部に案内管を装着し、挿入部の手元側に案内管を位置さ
せた状態で、内視鏡単独で内視鏡の先端を十二指腸球部
H3a、あるいは十二指腸下行脚H3bまで挿入する。
そして、内視鏡の挿入部をガイドとして案内管を挿入し
ていく。このとき、案内管の挿入にともない胃H2の大
湾H2aに弛んでいる内視鏡の挿入部を真っ直ぐに伸ば
す状態に変形させることにより、食道H1から十二指腸
下行脚H3bまで直線状に引き伸ばされた形状(図2
(B)参照)に整形することができる。
【0008】また、十二指腸H3から先は、胃H2と比
較して軟らかい器官であり、また、小腸H4がS字状に
屈曲していることから、硬い案内管であると小腸H4内
に内視鏡を挿入した際に生体組織を損傷させたり、案内
管自体が座屈を起こす可能性がある。そこで、特開平1
0−262918号公報では、案内管の先端側を柔軟に
形成することで、これらの問題の解決を図っている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、咽頭に
おいては、食道に向けて屈曲しているので、被検者はで
きるだけ咽頭から食道まで直線状になるように顎をあげ
た姿勢のままで長い時間保持されることになる。そのた
め、被検者に大きな負担がかかる問題がある。さらに、
堅めの案内管では座屈を起こすおそれがある。
【0010】また、特開平10−262918号公報で
は、案内管の先端側に形成されている柔軟部と、それ以
外の硬質部との境界は、格別には特定されていない。こ
こでは、十二指腸下行脚H3に柔軟部が配置される程度
の長さであればよい程度である。
【0011】しかしながら、例えば小腸H4内に内視鏡
を挿入した際に、内視鏡の先端が小腸H4内の所定の位
置まで挿入された状態で、案内管の柔軟部の後端部が胃
H2の大湾H2aに達する程度に柔軟部の長さが長い案
内管を使用した場合には、次のような問題がある。すな
わち、内視鏡の挿入部に沿って案内管を挿入していく作
業時には、案内管を押し込む押圧力が案内管の先端側に
伝達される。このとき、案内管を押し込む押圧力は硬質
部の先端には伝わるが、柔軟部が大湾H2aの形状に沿
って変形している場合には、案内管の押圧力が大湾H2
aを下方に押し下げる方向に伝わり、案内管の先端には
この案内管の押圧力が充分には伝わらない問題がある。
【0012】また、上記公報では、内視鏡の挿入部と案
内管の長さとの関係も格別に特定されておらず、術者
や、患者にかかる負担を軽減することは、あまり注目さ
れていないのが実状である。
【0013】本発明は上記事情に着目してなされたもの
で、その目的は、咽頭や、十二指腸あたりで案内管が座
屈することを防止することができる上部消化管用内視鏡
案内管を提供することにある。
【0014】また、請求項2の発明の目的は、容易に十
二指腸内へ挿入することができる上部消化管用内視鏡案
内管を提供することにある。
【0015】また、請求項3の発明の目的は、予め内視
鏡単独で十二指腸付近まで挿入を可能とし、患者に対す
る負担の軽減、術者の操作性を向上することができる上
部消化管用内視鏡案内管を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は可撓性
を有し、内視鏡の挿入部が挿通されるチューブ体と、こ
のチューブ体の基端部に配設され、上記内視鏡の挿入部
の基端部側に連結される把持部とを備えた上部消化管用
内視鏡案内管において、上記チューブ体を上記把持部側
から順に軟らかい部分、硬い部分、軟らかい部分を順次
配置して構成したことを特徴とする上部消化管用内視鏡
案内管である。そして、本請求項1の発明では上部消化
管である食道、胃、十二指腸を経由して小腸内に内視鏡
を挿入した際に、チューブ体の基端部の把持部側の軟ら
かい部分が患者の喉元に配置されることにより、屈曲が
大きい喉頭の屈曲に沿って軟らかい部分を湾曲させ、座
屈が起こり難くするとともに、チューブ体の先端部の軟
らかい部分が患者の十二指腸あたりに配置されることに
より、十二指腸あたりの形状に合わせて軟らかい部分を
湾曲させ、座屈が起こり難くするようにしたものであ
る。
【0017】請求項2の発明は上記内視鏡案内管の基端
から上記チューブ体の硬い部分までの長さは、上記内視
鏡案内管全長に対して60〜90%程度に設定したこと
を特徴とする請求項1に記載の上部消化管用内視鏡案内
管である。そして、本請求項2の発明ではチューブ体の
硬い部分を患者の食道から十二指腸にかけて配置するこ
とができ、それによって食道から胃(小湾から胃角、幽
門にかけて)を経由して十二指腸まで直線化することが
でき、内視鏡の深部までの挿入性を向上させ、容易に十
二指腸内へ挿入することができるようにしたものであ
る。
【0018】請求項3の発明は上記内視鏡の挿入部の有
効長は、上記チューブ体の全長の1.9倍以上に設定し
たことを特徴とする請求項1に記載の上部消化管用内視
鏡案内管である。そして、本請求項3の発明では予め内
視鏡単独で十二指腸付近まで挿入を可能とし、患者に対
する負担の軽減、術者の操作性を向上するようにしたも
のである。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1の実施の形態
を図1(A)〜(E)および図2(A),(B)を参照
して説明する。図1(B)は本実施の形態の上部消化管
用内視鏡案内管(内視鏡用オーバーチューブ)1全体を
示すものである。
【0020】また、図1(A)は本実施の形態の上部消
化管用内視鏡案内管1が装着される適用内視鏡2を示す
ものである。この内視鏡2には細長い挿入部3と、この
挿入部3の基端部に連結された手元側の操作部4とが設
けられている。なお、本実施の形態の内視鏡2の挿入部
3の有効長はL1、外径寸法はD1(図1(C)参照)
とする。
【0021】また、本実施の形態の内視鏡案内管1に
は、可撓性を有し、内視鏡2の挿入部3が挿通される細
長いチューブ体5と、このチューブ体5の基端部に配設
され、内視鏡2の挿入部3の基端部側に連結される把持
部6とが設けられている。さらに、チューブ体5は把持
部6側から順に軟性部(軟らかい部分)7、硬性部(硬
い部分)8、軟性部7を順次配置して構成されている。
ここで、チューブ体5の軟性部7は軟らかめの可撓性チ
ューブによって、また硬性部8は硬めの可撓性チューブ
によってそれぞれ形成されている。なお、チューブ体5
の最先端部には弾性ゴム部材のゴムフード9が設けられ
ている。
【0022】また、ゴムフード9と先端側の軟性部7の
先端部との間、先端側の軟性部7の後端部と硬性部8の
先端部との間、硬性部8の後端部と後端側の軟性部7の
先端部との間はそれぞれ円筒状のリング部材10によっ
て連結されている。ここで、それぞれのリング部材10
はX線透視下でも陰影が確認できるX線不透過性を有し
ている。
【0023】そして、ゴムフード9と先端側の軟性部7
の先端部との間の連結部では図1(C)に示すようにリ
ング部材10の先端部外周面にゴムフード9の後端部が
外嵌されるとともに、このリング部材10の後端部外周
面に先端側の軟性部7の先端部が外嵌された状態で、こ
れらの外嵌部の外周面に糸が巻き付けられた糸が巻き付
け部11が形成され、さらに、この糸が巻き付け部11
の外周面に接着剤12が塗布されて固定されている。ま
た、先端側の軟性部7の後端部と硬性部8の先端部との
間の連結部(図1(D)参照)や、硬性部8の後端部と
後端側の軟性部7の先端部との間の連結部でも同様の構
成の固定部が形成されている。
【0024】また、ゴムフード9の外周面および内周面
にはそれぞれ先端側に向かうにしたがって径が小さくな
る先細状のテーパ面が形成されている。さらに、ゴムフ
ード9の内径寸法D2はチューブ体5の内径寸法D3よ
りは小さいが、適用内視鏡2の挿入部3の外径寸法D1
よりは大きい状態に設定されている。
【0025】また、内視鏡案内管1の把持部6には図1
(E)に示すように把持部本体13と、この把持部本体
13の先端部に螺着された締め付けリング14とが設け
られている。ここで、把持部本体13の先端部には雄ね
じ部13aと、この雄ねじ部13aの先端側に突設され
た先細テーパ状のチューブ受部13bとが設けられてい
る。さらに、締め付けリング14には把持部本体13の
雄ねじ部13aと螺合するねじ穴部14aと、把持部本
体13のチューブ受部13bと対応する形状のチューブ
固定部14bとが設けられている。そして、把持部本体
13のチューブ受部13bにチューブ体5における後端
側の軟性部7の後端部が外嵌された状態で、締め付けリ
ング14のねじ穴部14aと把持部本体13の雄ねじ部
13aとが螺着されるようになっている。このとき、締
め付けリング14のねじ込みにともない締め付けリング
14のチューブ固定部14bと把持部本体13のチュー
ブ受部13bとの間でチューブ体5の軟性部7の後端部
を挟み込んで固定するようになっている。
【0026】また、把持部本体13の外周面にはルアー
口金15が設けられている。さらに、把持部本体13の
基端部には弾性ゴム部材のゴムパッキン16が設けられ
ている。このゴムパッキン16は適用内視鏡2の挿入部
3の外径寸法D1とほぼ同径の内視鏡挿入孔16aが設
けられている。
【0027】また、本実施の形態の内視鏡案内管1の長
さは次の通り設定されている。すなわち、内視鏡案内管
1の全長L2は例えば100cmである。さらに、チュ
ーブ体5の硬性部8の先端は内視鏡案内管1の基端部か
ら75cmの位置に配置されている。なお、把持部6の
長さは4cmとしている。
【0028】ここで、硬性部8の先端の望ましい位置
は、図1(B)の案内管1を直線状態にしたとき、十二
指腸乳頭H3d付近に配置されることが望ましい。な
お、通常、大人の十二指腸乳頭H3dの位置は切歯から
60cmから65cm程度であると言われている。そし
て、本実施の形態の内視鏡案内管1では、十二指腸球部
H3aから十二指腸乳頭H3dの位置する十二指腸下行
脚H3b付近に硬性部8の先端を配置できる長さに設定
されている。
【0029】なお、人体によるばらつきからチューブ体
5の硬性部8の先端は60cmから90cmの範囲に設
定する必要がある。そこで、内視鏡案内管1の全長をL
2とし、内視鏡案内管1の基端から硬性部8の先端まで
の長さをL3としたとき、60≦L3/L2×100≦
90の範囲に設定した。
【0030】さらに、本実施の形態では一般の大人を対
象として考え、内視鏡案内管1の全長L2を100cm
にしたものを標準として設定しているが、標準から外れ
た体型の対象、例えば子供や、体格の良い人を対象とし
て考えた場合、内視鏡案内管1の全長L2は全長100
cmに限定されるものではなく、80cmから110c
mの範囲の長さであってもよい。そのため、内視鏡案内
管1の全長L2は80cm≦L2≦110cmとした。
【0031】なお、内視鏡案内管1の硬性部8の基端側
の境界部の位置は、本実施の形態では内視鏡案内管1の
基端から30cmに設定されている。この硬性部8の基
端側の境界部の位置の設定範囲の幅は25〜35cm程
度である。
【0032】また、本実施の形態の100cmの内視鏡
案内管1に適用される内視鏡2の挿入部3の有効長L1
は190cmに設定されている。ここで、内視鏡2の挿
入部3の有効長L1は、挿入部3と操作部4との間に介
在する折れ止め部材より、先端側の長さである。そし
て、内視鏡2の挿入部3の有効長L1と案内管1の全長
L2との比は、案内管1を挿入しないで、内視鏡2の挿
入部3が単独で十二指腸H3付近まで挿入できる程度の
長さに設定されている。なお、本実施の形態では1.9
≦L1/L2に設定されている。
【0033】また、案内管1の基端部から硬性部8の先
端側と軟性部7との境界までの長さL3は、案内管1の
全長L2に対して60〜90%程度の長さに設定されて
いる。なお、内視鏡案内管1の全長L2と内視鏡案内管
1の基端から硬性部8の先端までの長さL3との比率と
しては本実施の形態に記載されているように、約75%
が特に好ましい。すなわち、通常の人に適した数値であ
る。
【0034】次に、上記構成の作用について説明する。
ここでは、図2(A),(B)を参照して本実施の形態
の上部消化管用内視鏡案内管1を使用して上部消化管で
ある患者の咽頭H0、食道H1、胃H2、十二指腸H3
を経由して小腸H4内に内視鏡2の挿入部3を挿入する
手順を説明する。まず、本実施の形態の上部消化管用内
視鏡案内管1は図2(A)に示すように内視鏡2の挿入
部3の基端部側に内視鏡案内管1を寄せた状態で内視鏡
案内管1を内視鏡2の挿入部3にセットする。
【0035】この状態で、内視鏡案内管1の先端部から
出ている内視鏡挿入部3を体腔内に挿入する。このと
き、内視鏡挿入部3は患者の咽頭H0、食道H1、胃H
2、十二指腸H3の順に順次導びかれる。そして、図2
(A)に示すように内視鏡1の挿入部3の先端部を十二
指腸球部H3aから十二指腸下行脚H3bに引っかける
ようにセットする。
【0036】その後、内視鏡案内管1を内視鏡挿入部3
に沿って体腔内に挿入する。このとき、図2(B)に示
すように内視鏡案内管1の硬性部8が食道H1から十二
指腸H3までに配置されるように内視鏡案内管1を体内
に挿入する。
【0037】図2(B)は内視鏡案内管1が人体の所定
の位置に配置され、内視鏡挿入部3が回腸H6の深部ま
で挿入された状態を示している。ここで、内視鏡挿入部
3は胃H2の大湾H2aに沿って挿入されるので、内視
鏡挿入部3の先端部は少なくとも内視鏡案内管1の先端
から最低限90cm以上は突出している必要がある。
【0038】したがって、内視鏡2の挿入部3の有効長
をL1としたとき、内視鏡案内管1の全長L2との関係
を1.9≦L1/L2としたので、子供等への適用で8
0cmの内視鏡案内管1を用いる場合は内視鏡2の挿入
部3の有効長L1は152cm以上となる。
【0039】そこで、上記構成のものにあっては次の効
果を奏する。すなわち、本実施の形態では内視鏡案内管
1のチューブ体5を把持部6側から順に軟性部7、硬性
部8、軟性部7を順次配置して構成したものである。そ
して、本実施の形態の内視鏡案内管1の先端には軟性部
7が配置されているので、内視鏡案内管1の先端付近で
の座屈が起こりにくくなる。ここで、十二指腸H3を含
め、十二指腸H3から先の小腸H4の空腸、回腸H6は
比較的軟らかく屈曲も大きいが、十二指腸H3、小腸H
4の空腸、回腸H6の走行に従って内視鏡案内管1が挿
入できるので、挿入性が向上する。
【0040】さらに、内視鏡案内管1のチューブ体5の
基端側の軟性部7は患者の喉元に配置されるので、喉頭
H0は屈曲が大きいがこの喉頭H0の屈曲形状に沿って
軟性部7を湾曲させることができる。そのため、内視鏡
案内管1のチューブ体5の基端側の軟性部7で座屈が起
こりにくくすることができるので、内視鏡2の挿入性が
向上するうえ、内視鏡案内管1のチューブ体5が直線化
されることがないので、患者への侵襲が少ない。
【0041】また、内視鏡案内管1の最先端にはゴムフ
ード9が付いているため、内視鏡2の挿入部3と内視鏡
案内管1との間に粘膜を巻き込みにくくなるので、患者
に対する安全性が向上する。さらに、このゴムフード9
は先端に向かってテーパ状に形成されているので、内径
寸法が狭い幽門H5を通過させやすく、内視鏡案内管1
の挿入性を向上させることができる。
【0042】さらに、本実施の形態では内視鏡案内管1
の全長L2及び、内視鏡案内管1の基端部から硬性部8
の先端までの長さをL3とした時、80cm≦L2≦1
10cm、60%≦L3/L2×100≦90%に設定
したので、内視鏡案内管1の硬性部8を患者の食道H1
から十二指腸H3にかけて配置することができる。その
ため、食道H1から胃H2(小湾H2bから胃角H2
c、幽門H5にかけて)を経由して十二指腸H3まで直
線化することができるので、上部消化管の深部までの内
視鏡2の挿入性を一層向上させることができる。
【0043】また、本実施の形態の内視鏡案内管1に適
用する内視鏡2の有効長をL1としたとき、1.9≦L
1/L2に設定したので、内視鏡案内管1の先端から突
出する内視鏡2の挿入部3の長さを十分に確保すること
ができる。そのため、図2(A)に示す通り、内視鏡2
の挿入部3の先端を容易に十二指腸H3に引っかけるこ
とができるので、内視鏡2の挿入部3をガイドに内視鏡
案内管1を所望の位置に配置する作業が容易となり、挿
入時の作業性を向上させることができる。
【0044】また、把持部6の基端部にゴムパッキン1
6が付いているため、内視鏡案内管1のチューブ体5内
を流れて出てくる汚物が術者側に流出することを防止す
ることができ、衛生的である。
【0045】さらに、把持部6の外周面にルアー口金1
5を設け、把持部6の基端部にゴムパッキン16を設け
たので、ルアー口金15から内視鏡案内管1のチューブ
体5と内視鏡2の挿入部3の外周面との間に潤滑剤を注
入することができる。そのため、内視鏡案内管1のチュ
ーブ体5と内視鏡2の挿入部3の外周面との間の摩擦抵
抗を軽減できるので、内視鏡2の挿入性をさらに向上さ
せることができる効果もある。
【0046】また、図3は本発明の第2の実施の形態を
示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図
1(A)〜(E)および図2(A),(B)参照)の上
部消化管用内視鏡案内管1におけるチューブ体5の最先
端部の構成を次の通り変更したものである。
【0047】すなわち、本実施の形態では第1の実施の
形態のゴムフード9とリング部材10に相当する部材2
1とを一体的にインサート成形した先端ゴムフードユニ
ット22を設けたものである。本実施の形態でも第1の
実施の形態と同様の効果が得られる。
【0048】さらに、本発明は上記実施の形態に限定さ
れるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種
々変形実施できることは勿論である。次に、本出願の他
の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。 記 (付記項1) 可撓性を有し、硬い部分と軟らかい部分
より構成されるチューブ体と把持部を有する内視鏡用オ
ーバーチューブにおいて、適用となる内視鏡の有効長を
C、このオーバーチューブの全長をB、このオーバーチ
ューブの手元側からチューブの硬い部分の先端までの長
さをAとしたとき、60≦A/B×100≦90、1.
9≦C/Bなる関係となる内視鏡用オーバーチューブ。
【0049】(付記項2) 前記オーバーチューブの全
長をBとしたとき80cm≦B≦110cmである付記
項1に記載の内視鏡用オーバーチューブ。
【0050】(付記項3) 上記内視鏡用オーバーチュ
ーブのチューブ体は軟らかい部分、硬い部分、軟らかい
部分の順に連結されている付記項1に記載の内視鏡用オ
ーバーチューブ。
【0051】(付記項1、2の従来技術) 従来、内視
鏡用オーバーチューブは特開平10−262918号公
報に記載してあるように、可撓性を有し硬い部分と軟ら
かい部分より構成されるチューブ体と把持部を有する内
視鏡用オーバーチューブが知られている。しかしなが
ら、従来の内視鏡用オーバーチューブは、その内視鏡用
オーバーチューブに適用される内視鏡の有効長と内視鏡
用オーバーチューブの全長との関係を示すものが無かっ
た。それによって、オーバーチューブを所望の位置に配
置できずに、挿入性が損なわれることがあった。
【0052】また、従来の内視鏡用オーバーチューブ
は、チューブ体の硬めの部分の先端部が明確ではなかっ
た。そのため内視鏡挿入部に沿って内視鏡用オーバーチ
ューブを挿入したとしても、内視鏡用オーバーチューブ
のチューブ体の硬い部分が十二指腸球部または十二指腸
下行脚に引っかからず、内視鏡用オーバーチューブ先端
が、胃の中に落ちてしまい、食道から十二指腸までを直
線化できず、挿入性が損なわれることがあった。
【0053】(付記項1、2が解決しようとする課題)
内視鏡用オーバーチューブは図2(A)に示すよう
に、適用される内視鏡の挿入部に内視鏡用オーバーチュ
ーブを通しておき、内視鏡挿入部の基端側に内視鏡用オ
ーバーチューブを寄せてホールドしておく。それから内
視鏡用オーバーチューブ先端から突出している内視鏡の
挿入部を体腔内に挿入し、十二指腸球部から十二指腸下
行脚にかけて内視鏡挿入部先端を挿入する。それから、
内視鏡用オーバーチューブを内視鏡挿入部に沿わせて内
視鏡用オーバーチューブをスライドさせ、内視鏡用オー
バーチューブのチューブ体の硬めの部分の先端が十二指
腸に十分挿入されたところで、十二指腸以降の内視鏡の
挿入を進めていく。
【0054】従来は内視鏡用オーバーチューブに対する
適用内視鏡の挿入部の有効長と内視鏡用オーバーチュー
ブの全長との長さ関係が明確となっていなかったため
に、次のような問題があった。
【0055】適用する内視鏡の挿入部有効長が内視鏡用
オーバーチューブの全長に対して短すぎて、内視鏡用オ
ーバーチューブを内視鏡挿入部の基端部にホールドした
状態で内視鏡の挿入部を十二指腸球部あるいは十二指腸
に引っかけることができず、それによってオーバーチュ
ーブを所望の位置に配置できずに、挿入性が損なわれる
ことがあった。
【0056】また、従来は内視鏡用オーバーチューブに
対して、チューブ体の硬めの部分の先端部が明確ではな
かった。そのため内視鏡挿入部に沿って内視鏡用オーバ
ーチューブを挿入したとしても、内視鏡用オーバーチュ
ーブのチューブ体の硬い部分が十二指腸球部または十二
指腸下行脚に引っかからず、内視鏡用オーバーチューブ
先端が、胃の中に落ちてしまうことがあった。そのた
め、食道から十二指腸までを直線化できず、挿入性が損
なわれることがあった。
【0057】(付記項1、2の目的) 本願は上記問題
点を鑑みて考案されたものであり、内視鏡の挿入性を向
上させることを目的とする。
【0058】(付記項1の課題を解決するための手段)
可撓性を有し、硬い部分と軟らかい部分より構成され
るチューブ体と把持部を有する内視鏡用オーバーチュー
ブにおいて、適用となる内視鏡の有効長をC、このオー
バーチューブの全長をB、このオーバーチューブの手元
側からチューブの硬い部分の先端までの長さをAとした
とき、60≦A/B×100≦90、1.9≦C/Bな
る関係となる内視鏡用オーバーチューブ。
【0059】(付記項2の課題を解決するための手段)
可撓性を有し、硬い部分と軟らかい部分より構成され
るチューブ体と把持部を有する内視鏡用オーバーチュー
ブにおいて、適用となる内視鏡の有効長をC、このオー
バーチューブの全長をB、このオーバーチューブの手元
側からチューブの硬い部分の先端までの長さをAとした
とき、80cm≦B≦110cm、60≦A/B×10
0≦90、1.9≦C/Bなる関係となる内視鏡用オー
バーチューブ。
【0060】(付記項3の従来技術) 従来、内視鏡用
オーバーチューブは特開平10−262918号公報に
記載してあるように、可撓性を有し硬い部分と軟らかい
部分より構成されるチューブ体と把持部を有する内視鏡
用オーバーチューブが知られている。しかしながら、従
来の内視鏡用オーバーチューブはチューブ体の先端側が
軟らかく構成され手元側は硬めのチューブのままであっ
た。そのため、患者の喉元ではチューブが直線化されや
すく、患者の侵襲が大きかった。逆に無理に屈曲させる
とチューブ体が座屈しやすく、挿入性が損なわれること
があった。
【0061】(付記項3が解決しようとする課題) 従
来、内視鏡用オーバーチューブは特開平10−2629
18号公報に記載してあるように、可撓性を有し硬い部
分と軟らかい部分より構成されるチューブ体と把持部を
有する内視鏡用オーバーチューブが知られている。しか
しながら、従来の内視鏡用オーバーチューブはチューブ
体の先端側が軟らかく構成された手元側は硬めのチュー
ブのままであった。そのため、チューブ先端側が十二指
腸およびその先の回腸に挿入されるときは軟らかさによ
って腸の走行にそって挿入をすすめることができるが、
患者の喉元ではチューブが直線化されやすく、患者の侵
襲が大きかった。逆に無理に屈曲させるとチューブ体が
座屈しやすく、挿入性が損なわれることがあった。
【0062】(付記項3の目的) 本願は上記問題点を
鑑みて考案されたものであり、患者への侵襲を低減し、
内視鏡の挿入性を向上させることを目的とする。
【0063】(付記項3の課題を解決するための手段)
上記内視鏡用オーバーチューブのチューブ体は軟らか
い部分、硬い部分、軟らかい部分の順に連結されている
請求項1に記載の内視鏡用オーバーチューブ。
【0064】(付記項1〜3の効果) ・内視鏡用オー
バーチューブの全長B及び、内視鏡用オーバーチューブ
基端から硬性部先端までの長さをAとした時、80cm
≦B≦110cm、60%≦A/B×100≦90%と
することによって、内視鏡用オーバーチューブの硬性部
を患者の食道から十二指腸にかけて配置することがで
き、それによって食道から胃(小湾から胃角、幽門にか
けて)を経由して十二指腸まで直線化することができ、
内視鏡の深部までの挿入性を向上させることができる。
【0065】・このオーバーチューブに適用する内視鏡
の有効長をCとしたとき、1.9≦C/Bとすることに
よって、内視鏡用オーバーチューブの先端から突出する
内視鏡挿入部の長さを十分に確保することができるの
で、内視鏡挿入部先端を容易に十二指腸に引っかけるこ
とができる。従って、内視鏡の挿入部をガイドに内視鏡
用オーバーチューブを所望の位置に配置することが容易
となり、挿入時の作業性を向上させることができる。
【0066】・十二指腸を含め、十二指腸から先の空
腸、回腸は比較的軟らかく、屈曲も大きい。内視鏡用オ
ーバーチューブの先端には軟性部が付いているので十二
指腸、空腸、回腸の走行に従って内視鏡用オーバーチュ
ーブが挿入できるので、内視鏡用オーバーチューブの先
端付近での座屈が起こりにくくなり、挿入性が向上す
る。
【0067】・内視鏡用オーバーチューブのチューブ体
の基端側は軟性部が付いており、軟性部は患者の喉元に
配置される。喉頭は屈曲が大きいが屈曲に沿って軟性部
が湾曲するので座屈が起こりにくい。従って内視鏡の挿
入性が向上するし、チューブが直線化されることがない
ので患者への侵襲が少ない。
【0068】・内視鏡用オーバーチューブの最先端には
ゴムフードが付いているため、内視鏡挿入部と内視鏡用
オーバーチューブとの間に粘膜を巻き込みにくくなるの
で患者に対する安全性が向上する。また、このゴムフー
ドは先端に向かってテーパ状に形成されているので、内
径の狭い幽門部を通過させやすく、内視鏡用オーバーチ
ューブの挿入性を向上させることができる。
【0069】・把持部基端にゴムパッキンが付いている
ためチューブ内を流れて出てくる汚物が術者側に出てく
るのを防止することができ、衛生的である。
【0070】・把持部外周にルアー口金を有し、把持部
基端に上記パッキンを有しているのでルアー口金から内
視鏡用オーバーチューブと内視鏡挿入部外周との間に潤
滑剤を注入することができ、摩擦抵抗を軽減できること
から、内視鏡の挿入性を向上させることができる。
【0071】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、チューブ体を
把持部側から順に軟らかい部分、硬い部分、軟らかい部
分を順次配置して構成したので、咽頭や、十二指腸あた
りで案内管が座屈することを防止することができる。
【0072】請求項2の発明によれば、内視鏡案内管の
基端からチューブ体の硬い部分までの長さは、内視鏡案
内管全長に対して60〜90%程度に設定したので、容
易に十二指腸内へ挿入することができる。
【0073】請求項3の発明によれば、内視鏡の挿入部
の有効長をチューブ体の全長の1.9倍以上に設定した
ので、予め内視鏡単独で十二指腸付近まで挿入を可能と
し、患者に対する負担の軽減、術者の操作性を向上する
ことができる。
【図面の簡単な説明】【図1】 本発明の第1の実施の形態を示すもので、
(A)は内視鏡全体の側面図、(B)は上部消化管用内
視鏡案内管全体の側面図、(C)は内視鏡案内管のチュ
ーブ体の先端部を示す縦断面図、(D)は内視鏡案内管
のチューブ体の中間部を示す縦断面図、(E)は内視鏡
案内管の把持部を示す縦断面図。
【図2】 第1の実施の形態の上部消化管用内視鏡案内
管の使用状態を示すもので、(A)は内視鏡案内管を体
内に挿入する前の状態を説明するための説明図、(B)
は内視鏡案内管を体内に挿入した状態を説明するための
説明図。
【図3】 本発明の第2の実施の形態の上部消化管用内
視鏡案内管における先端ゴムフードユニットを示す縦断
面図。
【図4】 人体の上部消化管内に内視鏡を挿入する手技
を説明するための説明図。
【符号の説明】 2 内視鏡 3 挿入部 5 チューブ体 6 把持部 7 軟性部(軟らかい部分) 8 硬性部(硬い部分)
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【手続補正書】
【提出日】平成11年5月25日(1999.5.2
5)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正内容】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内藤 観 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 海谷 晴彦 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 岸 孝浩 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 Fターム(参考) 4C061 AA03 BB00 CC00 DD03 FF24 GG24