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池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」は何が読まれているのだろう?
海外文学死亡かるたのまとめを作っているとき、ふとそんな疑問が頭をよぎった。
わたしにとって池澤夏樹の世界文学全集は、なんとも不可思議なポジションにある。持っていそうで持っていなそう。あるいは、持っていなそうで持っていそう。じゃあ実際のところはどうなんだということで、なっちゃん全集でどのタイトルを所有しているか、Twitterでアンケートをとってみた。
皆が買った作品は何か、そしてほとんど買われていない作品は何なのか?

巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)

わたしは英国王に給仕した (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

暗夜/戦争の悲しみ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-6)


というわけで、1位から5位までは、わりと納得のメンツだった。さて、次は票を最も集めなかった8作品。



アルトゥーロの島/モンテ・フェルモの丘の家 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-12)


ハワーズ・エンド (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-7)

アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)

フライデーあるいは太平洋の冥界/黄金探索者 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-9)

本当は1位から5位までつけたかったのだけど、1位と2位だけで8冊になってしまった。それぞれ1位=1票、2位が2票。意外だったのが、デュラス『太平洋の防波堤/愛人』/サガン『悲しみよこんにちは』が入っていないこと!(3位だった)。池澤夏樹がサガンをいれたことは、本全集・最大の謎である(新潮文庫でいつでも手にはいるものを、なぜわざわざハードカバーで読まねばならぬのか)。
ここにランクインしている作品のうちで規訳があるものは、熱心な読者なら「すでに持っている」、海外文学を読んでみたいと思う人は「いまいちおもしろくなさそう」というものが多いように思う。ジャン・ルオー『名誉の戦場』やエルサモランテ『アルトゥーロの島』、ジョゼフ・コンラッド『ロード・ジム』あたりは、作家の人気が最近それほどないうえ、あらすじが地味。E.M.フォースター『ハワーズエンド』は古典だが「あえてこれを?」という気もする。
アップダイク『クーデタ』やマッカーシー『アメリカの鳥』は、知らない作品だったので少し興味を持ったのだが、結局買わなかった。なんというか、すごくあらすじが微妙なのだ。あと一歩のところで、読みたいという気持ちにならなかった。こればっかりは人の趣味だと思うのだが、私が手をのばさなかった作品がこうしてランクインしているのを見ると、他の人はなぜこれを選ばなかったのか、聞いてみたくなる。
全ランキングは、下記URLの「Results」から見られるので、ここに掲載していない作品の順位が気になる人はどうぞ。
ちなみに、私が持っているタイトルはこんな感じ。カプシチンスキ『黒壇』はランキングに入っていなかったけれど、大変おもしろいのでおすすめ。

巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)

アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)

わたしは英国王に給仕した (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)



短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)
こうやって思い返してみると、買った作品はどれも楽しめた。ただ、これ以上はあまり買う気にはなれなかったのも確かで、「もう少し初訳が欲しい」「絶版を復刊するならこっちじゃなくてあっちがいい」「なぜこれを入れた」という感情がないまぜになっている。
とはいえ、なっちゃん全集はこれまで読まなかった人が読むきっかけを作ったし、書店の海外文学棚の棚幅を広げてくれたので、企画はやっぱりすごかったと思うのだ。なっちゃん全集の不可思議ポジションぶりを再確認した晩秋の一日。
※アンケートは、2012年11月1日時点で集まった160票をもとに集計した。
id:owl_man野生の文章書き。海外文学と海外ごはんが好き。ガイブン読書会 鈍器部をたまに主催。
雑誌『本の雑誌』で「新刊めったくたガイド」(海外文学)を月間連載中。筆名は藤ふくろう。
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