
画像が荒くて読み取りにくいかもしれないが、カヴァの「月影兵庫」の文字の下には“長編剣豪小説”とある。光文社時代小説文庫の<月影兵庫>シリーズは(『月影兵庫 極意飛竜剣』は未見なので判らないが)いずれもこの“長編剣豪小説”と印字してあった。これはいささか読者に誤解を与えかねないと以前指摘したが、本書は、独立した短篇としても読むことは可能だが、長篇と呼んで差し支えなかろうと思う。
本書は<月影兵庫>のデビュウ作品だから、“軽口酔っぱらい助平暴力探偵”の片鱗は覗かせるものの、後年に比べるとおとなしいものだ。それに、それぞれの章のトーンが統一されていないようで、作者も手探り状態で始動したように見受けられる。しかしながら、本書の、この明朗さはとても貴重で、人死にの多い本作でも、ずいぶん救われている。愉しいシリーズの幕開けだ。そしてわたくしにとっては、シリーズの幕切れ(読み終わり)でもある。ああ、面白かった。
最後に、本シリーズを未読の方で、いまから読まれようという方は、わたくしのように適当に読みはじめるのではなく、本書から作品発表年代順に読むことを、老婆心ながら、お勧めする。理由は、読みすすめていけば判るはずだ。
12月6日読了。
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