【8月30日追記】ナイジェリア政府の声明が出た日やタンザニアタイムズの記事についてなどを加筆修正
TICAD 9において国際協力機構(JICA)が発表した「JICAアフリカ・ホームタウン」について、いくつかのアフリカ国に関して日本の地方都市を「ホームタウン」に設定したというニュースが流れたのだが、この「ホームタウン」を日本語における文字通りの「故郷」という様に解釈にしたり、ナイジェリア側の特別なビザを発行するという発表やタンザイニアタイムズというネットメディアの現地報道よって該当地域に対する日本の移民促進政策であったり、アフリカの国に地方都市を与えるかの様な解釈をする人々が現れた。なお該当都市を「与える」という認知はタンザニアタイムズに起因するものであろうが、この記事については翻訳の仕方が悪いという投稿が存在するし、記事内では機械翻訳をしても「姉妹都市」という概念が書かれており、注意深く読めば「与える」といよりも都市間の「提携」であることが読み取れるだろう。とはいえタンザニアタイムズの記事の表現は現在こっそり修正(”dedicates”→”designates ”)されており、グーグルの機械翻訳だと当初「寄贈」と訳されていたものが「指定」に変化している。炎上騒ぎに反応して修正するくらいにはタンザニアタイムズの中の人間も表現の不味さを回避症と修正したのだろう。ただこれらが実質的に強い反移民、反外国人感情、日本政府(自公政権)への嫌悪などを刺激し、集団パニックかの様に誤情報・偽情報が拡散した。あまりの過熱ぶりにJICAは「「JICAアフリカ・ホームタウン」に関する報道について」で、外務省は「「JICAアフリカ・ホームタウン」に関するナイジェリア連邦共和国大統領府のプレス・リリースに関して」や外国語で「Facts Regarding the “JICA Africa Hometown”」で、いまSNSで流布している情報は誤りであるというリリースを出しているし、各自治体も流布している様な情報は事実ではないと否定している。この日本の抗議を受けてかナイジェリアは該当声明を削除、現在アクセスすると404と表示されている。
ナイジェリアの誤情報について少し補足情報を記しておくと、2022年10月にUAEからナイジェリアを含むアフリカ各国にビザ発給停止が行われるという処置が行われたのだが、2023年9月にナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領がUAEの大統領と会談の声明の中でビザ発給禁止措置の解除を発表したのだが、その様な事実はないという政府発のフェイクニュースが発生していた。今回の件とかなり酷似しており、現ナイジェリア政府はなぜすぐバレる嘘をつくのかは不明だが、こういったフェイクニュースを流す体質なのが窺える。なのでナイジェリア政府をソースとして日本側を批判するのはナイジェリア政府の偽情報をもとに批判しているに過ぎない。またナイジェリアでもフェイクニュース報道が配信されており、野党ADCのBolaji Abdullahiは日本の発表を受けてこの情報がフェイクニュースであると批判するなど、ナイジェリア国内でもこの件を事実として受け取っている人間はかなり少ないだろう。
ところでこの誤情報の拡散はどの様に発生したのか。リアルタイム検索で「ホームタウン」を検索すると8月23日頃から動きが見られ、25日に一挙に増えている事がわかる。しかしこの25日のピークそのものは誤情報であるという報道があった影響だろう。

ただリアルタイム検索ではわかりづらいが、8月18日のjapan timesのこの件に関する記事の時から日本語圏内で実はすでに「ホームタウン」という単語に引っ掛かりを覚えて「懸念」を表明している投稿の多少の拡散が見られる。

https://x.com/yanbenny/status/1957429103780675858

https://x.com/Shucolately/status/1958084630722351344

https://x.com/AmiHeartGlitter/status/1958345379789128099
上記は英語記事に対する反応だが、「ホームタウン=ふるさと」という認知がそこには見え、言外には移民を念頭に置いているであろう事が窺える。なおこの「ホームタウン(hometowns)」に起因する誤認知は20日時点で英語圏でも表れており、多少の拡散をしていたし、それに対してデマであるという指摘が21日時点で存在する。

https://x.com/Arin_Yumi/status/1958203761584910638
この様に21日ごろに既に日本でも外国でも拡散の予兆があったのだが、23日の投稿をきっかけに一気に拡散する。

https://x.com/politicalawake/status/1958878579543925108
まず22日に「ColonelOtakuGatekeeper 🇯🇵@politicalawake」という英語で主に発信する日本のナショナリストを自称するアカウントが上記の投稿を行い、それに対して参政党支持者の湯浅忠雄が絡み、そして続けざまにいくつかの投稿行う。

https://x.com/GrwaNnKqMn5nG68/status/1958918899673833541

https://x.com/GrwaNnKqMn5nG68/status/1958920914424537472
※画像は削除されたナイジェリア政府の声明。ナイジェリア政府声明自体は8月22日に行われ、英語圏で拡散をし始める。例えば初期の拡散ではナイジェリアのインフルエンサーによって拡散される。湯浅が何処でこのリンクを知ったのかは不明。

https://x.com/GrwaNnKqMn5nG68/status/1958921515342471464
※動画はNHK WORLDのもの

https://x.com/GrwaNnKqMn5nG68/status/1958929729945587730
日本におけるこの「ホームタウン」デマはこの湯浅忠雄による23日1時ごろからの一連の投稿から拡散していったと言えるだろう。この湯浅の投稿を経て数時間でいくつもの投稿がかなりの拡散を得ている。以下、特に目立つ投稿を貼っておく。

https://x.com/_pplp_/status/1959025344150909203

https://x.com/sorapiyo11111/status/1959027677832290339
最終的にはjapannewsnaviというまとめサイトでも取り上げられ、その後は「いつものごとく」拡散を経ていったと言える。なおタンザニアタイムズのX上における「発見」はリンクを検索する限りは湯浅投稿への返信にある8月23日の投稿がX上の現存投稿が日本語圏、英語圏含めて初であるが何処から見つけてきたのかは不明。そらぴよが投稿し午前7時59分のjapannewsnaviの記事には既にタンザニアタイムズの記事があったものの、これは後の更新で追加された可能性もあるので誰が見つけたかまでは不明だ。また外国のSNS圏に目を向けると反移民投稿やデマも目立つインフルエンサーの「Asian Dawn」や「visegrad24」も23日このデマに加担してはいるものの投稿は湯浅よりも遅い。とはいえ「visegrad24」を引用した投稿のインプレッションは300万回を超えており、この影響もあまり馬鹿にできないだろう。

https://x.com/2022meimei3/status/1959404223252296076
なお24日~25日のグーグルトレンドの動きを見ることによって、その推移の「不自然な動き」から外国のbotの影響を推測する投稿が拡散していたが、このデマは23日から始まっているし、グーグルトレンドの動きだけで外国botを疑うのには無理がある。それと個人的にだがこの種のデマは別に日本国内の力だけでも拡散する様なネタなので、あまり外国botという存在を過大視しない方が良いと考える。日本のSNS圏の過熱の仕方は外国の介入がなくても普通にデマが蔓延るくらいのものだ。
該当機関らは今回の件を誤情報であると否定しているわけだが、とはいえこれがデマだと信じない人が一定数観測できる。

https://www.threads.com/@mmmakommm3/post/DNyFJuF5Mcl

https://www.threads.com/@essential_cat/post/DNx6hatwlXH
上記はスレッズでの投稿だが(なお軽く検索した限りデマはXの方が早く、スレッズは後追い)、この件の裏には何かあると感じ取っている投稿内容と言える。確かにナイジェリアに関しては何の根拠であのようなすぐバレる嘘を発表したのか謎だが(BBCピジンはナイジェリア声明を受けての誤報道だろう)、それ以上にこれらの投稿者は日本政府(自公、石破政権)を信用していないことが窺える。それとナイジェリアではビザ申請センターが増えるからデマではないという論調も一部に見えるが、この申請センターの変化はビザの申請を業務委託したことによる影響となり、外務省は今回の件とは関係は一切ないとしている。政府などの当事者発表を一から十まで信じれば良いというものではなく適度に疑うことも必要であるが、流石に今回の件すら疑うのは過剰だろう。日本国は外国人労働力は欲しいが外国人移民は極力ほしくないという政策傾向、またそもそも「地方都市を与える」レベルの政策はあり得なさすぎる。ただそのくらいにこれらのデマ拡散者は今現在の「日本政府を信用していない」のだろうが、そういう意味では格好のネット工作のターゲットになりやすく、日本政治や言説の不安定化要因になっている。またXやまとめサイトで煽ればこれが金にもなるのが今のネットでもある。
「ホームタウン」という名称が誤解を生んだのが発端だろうし、この名前はわかりにくいんだろうから下手すればこの手の話は今後も起きそう。
書き忘れてたので追記。ホームタウン騒動の最中でグーグルマップ上で各自治体の市役所の名前が変えられるイタズラが行われていた。最近、自治体と外国人という要素が絡まるとこういった動きも定番になってきているのだが、何故か地図が書き替えられた事をもって公的?なものと判断して不安に駆られる人間も見える。グーグルマップ上に表示されている名称は個人でも変更可能なので、ただの情勢に乗った質の悪いイタズラだろう。

https://x.com/sazanami560/status/1960309246610059442

https://x.com/momochan111888/status/1960220650163069335
【8月28日追記】
ナイジェリア政府が訂正した声明を出していたので追記しておく。当然ながらビザの件などはその声明には来ていない。NHKの取材によるナイジェリア側の担当者によれば”「木更津市をナイジェリアのふるさとだとする発表を行ったのはJICAだったが、私たちの発表は、要点を誤って解釈していたことが判明した」”との事である。
【9月13日追記】
https://x.com/AmiHeartGlitter/status/1961219190100222411
今更ながらだけどバズってた動画について記録しておく。この動画をもとにした投稿がその後にもバズってたりしているので今後も使用されるかもしれないので出所だけ。まずこの動画は「iamciti2」というインスタ、tiktokアカウントによるもので日本在住のDJ(?)などをしている黒人の様だ。実際にインスタに8月26日に挙げた動画は上記の様な内容の動画なのだが、その後に次の様な投稿を日を開けてだがしていた。

https://www.instagram.com/iamciti2/reel/DN63gQfAY5V/
MAGA JAPANというワードからどの様な人物たちから批判を受けているかを理解している節があり、そして最後に挑発的な文章を置いている。最初の動画を挙げたのが26日であり、この話がメディアなどで報道された後での動画という事を考えると動画はナイジェリアの件を真に受けたというよりも彼が言うところの「MAGA JAPAN」を挑発した内容である様に思える。実際にどの様な内心で作ったかまでは不明であるし、この動画そのものを真に受けて反発している層がいるので正直迷惑なのだが、いずれにしてもそういったストレートに内容を受け取らない方が良い動画であることは記しておく。
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