
今、アメリカのボードゲーム業界で何が起きているのか
お世話になっております。うちばこやの田中です。
本日は、特に米国を中心として、ボードゲーム業界全体が壊滅的なダメージを受けている「関税」問題についての記事です。
今年に入り、米国政府は、中国からの輸入物全てに20%の関税をかけました。
4月に入り、この関税は54%になり、1週間も経たないうちに145%まで増加しました。
この関税は、中国からアメリカに輸入する企業が支払う税金です。
もっとわかりやすく言えば、米国向けの荷物について、中国での製造コストが145%増加したことを意味します。
今まで製造費で1000万円払っていた場合、支払い総額が2450万円になります。
これがどれくらいヤバいことなのか、例を出します。
『Scythe』や『Wingspan』で知られるStonemaier Gamesの記事によると、彼らが2024に支払った製造費は約1000万ドル(14億3000万円)とのことです。
このまま2025年も同じペースで製造したと仮定すると、純粋に関税分の約1450万ドル(21億4600万円)がコストに追加されることになります。
彼らの2024年の売上は2370万ドルですから、関税だけで粗利益が消滅し、さらに赤字となります。
これがいかに大きい負担増か、想像に難くないと思います。
ボードゲーム業界は、技術的に製造を中国以外で行うのが現実的ではありません。
米国では、この関税により、利益率の高くない卸売を中心としたゲーム出版モデルが崩壊しました。
これにより、
・直接販売の方法を持たない出版社
・ディストリビューター(日本でいう仲卸のような立ち位置の会社)
・FLGS(近所のゲーム販売ショップ)
の3つが壊滅的な被害を受けています。
加えて、kickstarterを使用している出版社も大きな被害を受けることになります。
北米向けに荷物を輸送すると、製造原価の145%が追加でかかりますから、仮に3000万円の製造費だと仮定すると、追加で4350万円の製造費がかかります。
繰り返しますが、これは元の3000万円に加えて、追加でかかる費用です。
うちばこやのSweet Lands プロジェクトでも、米国中心の企業と比較するとかなり軽傷ですが、1500〜1700万円ほどの追加コストがかかる見込みです。
大変だ〜!
米国でボードゲームはどうなるか
概ね全ての中重量級ゲームが、15-20ドルは値上がりする可能性が高いです。
また、1ゲームあたりの販売個数は著しく減少し、多数の出版社、ディストリビューター、FLGSが倒産すると考えられます。
日本やそれ以外の国にどんな影響があるか
日本のボードゲーム市場にあるゲームは、ほぼ全て中国で生産され、そのまま日本に輸送されます。
米国の小売価格と合わせることがない限り、日本やそれ以外のボードゲーム業界に直接的な影響はありません。(むしろ、日本語版の出版は活況になるかもしれません。)
米アマゾン等、米国のオンラインショップからの輸入は現実的な選択肢ではなくなる可能性が高いです。
Kickstarter等でアメリカに向けて販売している出版社は、米国バッカーの割合にもよりますが、私たちと同じく大きなダメージを受けることになります。
また、米国のボードゲーム市場は、世界のボードゲーム市場の1/3程度を占めています。この市場は今回の関税によりかなりアクセスしづらくなりますので、実質的に市場規模がほぼ2/3になることを意味します。
ゲームを制作してもいままでよりずっと売れにくい世界になります。
米国やキックスターターでボードゲームを作る同志たちが、苦しい思いをしているこの状況に本当に心が痛みます。
この状況が早く改善され、面白いゲームを作ることだけに集中できる世界が帰ってくることを祈ります。
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