Movatterモバイル変換


[0]ホーム

URL:


見出し画像

■「AIを使っていると、バカになりそう」問題

AIを使っていると、バカになりそう。
「最近、AIに何でも聞けばいい気がして、頭を使う時間が減った気がする。

そう感じたこと、ないでしょうか?

Chat GPT、Geminiを始めとする生成AIは非常に便利なものですが、使い方を間違えると、自分ではものがまったく考えられなくなり、なんでも生成AIに聞いて、そのとおりに行動する生成AIに操られる人になってしまいます。

今回はそうならないために、どのようにAIを使っていくのが良いのか考察していきたいと思います。

このブログが良いなと思ったら、noteXをフォローしてくれると嬉しいです。


■AIで無能になりやすい人の特徴

調べるのが面倒だからAIに聞き、出てきた回答を読んで「わかった気」になって終了してしまう…、これは自分自身もよくやってしまいがちです。

しかし無能になりやすい人の特徴は、生成AIに答えをもとめ、それをそのままアウトプットすることです。

無能になりやすい人の特徴

  1. 常に生成AIに「答え」を聞く

  2. 内容を理解せず、生成AIの出力をコピペする

  3. 生成AIの言うことは盲目的に正しいと考える

ここまで極端な人はなかなかいないと思いますが、依頼されたことを何も考えずそのまま生成AIに聞いて、出てきたものを返すだけであれば介在価値はゼロ(無能)です。「お前じゃなくてもいい、AIに聞くわ」と言われる日が来るでしょう。

思考するのは一定の知的体力を使う面倒な作業なので、基本的に人間は“思考をやめる理由”を探しがちです。そのため上記のような思考パターンだと、どんどん思考の外出しがふえ、自分で考えることが減っていきます。その典型なのが「AIは何でも知ってるから考えるだけ無駄」という思考です。

そういった習慣が定着してしまうと、思考することが減り、筋トレとおなじように考えることをサボることで知的体力が失われ、やがて無能で怠惰な人間になってしまいます。これが「AIを使っていると、バカになりそう」問題の本質です。

■でも今の時代、何でもAIに聞けばいいからそれで困らないのでは?

とはいえ、今の時代は何でもAIに聞けばほとんどのことは答えてくれるので、自分で考える必要はあるのでしょうか?
過去にも下記に示したようなテクノロジーの進化により、既存のスキルが不要になる事例は多数あります。

  • 電卓が登場し、暗算・そろばんスキルが不要になった

  • デジカメが登場し、フィルム現像スキルが不要になった

  • プログラミングも高級言語(C言語やJava、Python)が登場し、機械語やアセンブラの理解が不要になった

人は常に新しいテクノロジーにより、そろばんから電卓へ、アセンブラからPythonへというように、考えたり理解する領域の抽象度を高めてきました。

これらと同じように、これからは何でも生成AIが考えてくれるので、もう考えるスキルや、知識と理解は不要なのではないかと思う人もいるかと思います。生成AIによって高いスキルが手に入り、能力の差が埋まるのではないかと考える人もいるかもしれません。

しかしこれはかなり危険な考え方です。

電卓は暗算・そろばんスキルがなくても正解が出せる道具でしたが、生成AIは知識と理解を前提とする道具だからです。

■AIが奪うのは「知識と理解」

生成AIは次に続く文章を統計確率的に予測するモデルであり、生成AIのアウトプットの精度は、その原理上、何を聞くのか大きく依存します。

ベクトル空間のイメージ
手前の文章の延長線上にある確率の高いものを生成AIは出力する

「日本の首都は」と聞かれたら、それに続く文章として確率的に高い「東京です。」などと答えます。逆説的になりますが、良い回答を得たいのであれば、その確率が最も高くなるように質問を設計する必要があります。

自分が知らないことを生成AIに聞くためには、自分が何を知らないのかを認知できている必要があります。わからないから聞くわけですが、何がわからないかを認知していなければ質問することすら出来ないからです。

知らないことは質問できない

生成AIが持っている知識から最も欲しい情報を引き出すためには、質問の内容やコンテキストが最も重要になります。なんかいい感じの回答が欲しい、という曖昧な希望によって雑に書かれたプロンプトでは、ぼんやりとした回答しか得られません。

また生成AIは、質問者のすべての状況を把握して回答しているわけでなく、あくまでプロンプトに対して、統計確率的に高い内容を多少のランダム性を伴って出しているため、内容が適切かどうかは質問者側が判断する必要があります。

■人は自分が何を知らないかを知らない

生成AIの登場によって、何でも聞けばすぐそれらしい答えが出てくるようになったため、物事を分かった気になることが簡単にできるようになりました

しかし自分が知らないことを知り、欲しいものをクリアに描けなければ生成AIは使いこなせないのです。そうでなければ、何となくそれらしいものを出しているにすぎず、その価値は限りなく低いということです。

「日本の首都」の例で言えば、京都が首都だった時代があることを知ってれば「京都が首都だった時代はいつ?」だったのかと問えます。また時代によって首都が変わったことと室町時代を知っていれば「室町時代の日本の首都はどこ?」と問うこともできます。

時代によって首都は異なる

しかし、「日本の首都は東京である」ことで、すべてを知っていると考えている場合には「京都が首都だった時代はいつ?」「室町時代の日本の首都はどこ?」と問うことは出来ません。

こういった、自分が知らないことを知るためには、知識の幅を広げると同時に、その知識に対しての理解を深める必要があります。

■能力の四段階モデル

「能力の四段階モデル(Four Stages of Competence)」は、人が新しいスキルや知識を学ぶとき、どのように“知らない”から“できる(今回の文脈では理解し考えられる)”へ移行するかを説明する心理学的モデルです。

Gordon Training International に所属していたノエル・バーチ(Noel Burch)という方が1970年代提唱したとされ、教育やコーチング、最近ではAIリテラシー論でもよく引用されます。

この四段階モデルで整理をしてみましょう。

  1. 無意識的無能(Unconscious Incompetence)
    知らないことを知らない →なんでも分かっていると思っている

  2. 意識的無能(Conscious Incompetence)
    なにを知らないが知っている →ここの領域は知らないと認知している

  3. 意識的有能(Conscious Competence)
    知っていて、意識すれば使える →知識はあるが理解は浅い

  4. 無意識的有能(Unconscious Competence)
    知っていて、無意識に使える →知識を理解していて、それを使って考えられる

先程の例で言えば、「日本の首都」が時代によって異なったことを知らないのは「1.無意識的無能」です。そこから時代によって首都が違ったと知ったのが「2.意識的無能」、さらに時代ごとの首都を知ることで「3.意識的有能」になり、その知識を使って東京と京都の比較説明ができるようになるのが「4.無意識的有能」といった感じです。

■知識を広げ、理解を深めるAIの使い方

ではどのように生成AIを使うと「1.無意識的無能」から「4.無意識的有能」にレベルを上げること(自分の知識を広げ、理解を深めること)ができるのでしょうか。

これにはファインマン・テクニックが適しています。「人に教えるようにして説明文を書き、足りない部分を学習・経験し、また説明文へと落とし込んでいく」というものです。それを応用し生成AIを使ったプロセスが下記になります。

🔁 理解のスパイラル

  1. 🧩 まず自分で考え説明する
     ↓

  2. 🔍 曖昧な箇所を生成AIに聞く
     ↓

  3. 💡 回答を咀嚼したうえで再び説明する
     ↓

  4. 🤔 AIに「この理解でズレていないか指摘して」と依頼
     ↓

  5. すべて矛盾なく説明できたら理解完了

あまり深く考えないと知りたいことをまず生成AIに聞いてしまいそれで満足してしまうのですが、アウトプットを先に自分でしてみて、よく分かってない点を明らかにする、というのがポイントです。

これらのプロセスを経て理解度を高めてから、本当に知りたかったことを聞くとより精度が高く知ることができ、自分の理解度も上がります。

■具体例

首都の例で言うと最初に下記のような説明に対してのツッコミを生成AIに聞いてみるとよいでしょう。

「日本の首都は東京です。」という理解でズレていないか指摘をしてください。」

はい、その理解にズレはありません
ただし、歴史的・法制度的な観点からは、以下のような補足があります。

🏙️ 正確な整理
1. 現状の一般的理解日本の「首都」は事実上・慣例上、東京都です。
政府機関(内閣府、国会、最高裁判所など)の所在地が東京都千代田区(霞が関・永田町)に集中しており、行政・立法・司法の中心が東京にあるため、「首都=東京」とされています。

2. 法律上の位置づけ実は日本には「首都を東京とする」と明記した法律は存在しません
つまり、「首都=東京」は慣例的な概念であり、明文化された「首都法」はないというのが正確です。関連する法令としては、1956年制定の**「首都圏整備法」**があり、その第2条で次のように定義しています:
「首都圏」とは、東京都の区域及び政令で定めるその周辺の地域をいう。
ここで「首都圏」という語が使われており、法令上も東京が「首都」として扱われていることが読み取れます。

3. 歴史的経緯1869年(明治2年)に明治天皇が京都から東京に移った「東京奠都(とうきょうてんと)」により、江戸が「東京」と改称され、以降事実上の首都となりました。ただし、当時も「東京を首都と定める」といった明確な布告や法律は出ていません。

このような回答が出てきて、首都が時代によって移ったことを知らなくても、三番の説明で首都が京都から東京に移ったことを知ることができます。

「日本の首都」が時代によって異なったことを知らなかった「1.無意識的無能」から、時代によって首都が違ったと知り「2.意識的無能」にフェーズが移行できました。

「時代によって首都が違う」ということがわかると、「各時代の日本の首都を自分は知らない」という「無知の知」を得ることができます。

「各時代の日本の首都について教えて下さい」といえば各時代の首都を知ることができます。こうすることで「時代ごとの日本の首都」に関して、「2.意識的無能」から「3.意識的有能」にフェーズ移行ができます。

また、そうこうしているうちに、なんで首都は変わるのか?その背景については知らない、というような派生的に分かってないことも浮かび上がってきます。

それらを知ったうえで、日本の首都について説明を改めてしてみて、その理解について生成AIに突っ込んでもらう、ということをやっていくと物事の知識と理解が深まります。

今回この記事を書くに当たって『「日本の首都は東京です。」という理解でズレていないか指摘をしてください。』とChatGPTに聞いてみたのですが、「実は日本には首都を東京とすると明記した法律は存在しない」というのは自分も初めて知りました。

日本の首都は東京に定められているということ自体を全く疑いを持っていませんでしたが、改めてごく当たり前のことでも生成AIに聞いてその理解でズレがないか聞いてみることで、自分の無知について知ることが出来ました。

■まとめ

今日からみなさんも生成AIに「説明」をして、理解にズレがないか聞いてみましょう。ただ答えを聞くよりも、はるかに学びが多いはずです。

生成AIの知識量は膨大で様々な示唆をくれますが、それを引き出すのは使い手の知性レベルに大きく依存します。知識は外出しができても、理解の外出しはできません。だからこそ、「理解し、考える力」だけは手放してはいけないのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。この記事が良いなと思ったら、ぜひnoteXをフォローしてください。

ちなみに、paizaはITエンジニア向け国内最大の転職・就職・学習プラットフォームです(paiza.jp)。生成AI講座も無料で学べるので、よかったら使ってみてください。


いいなと思ったら応援しよう!

IT・AIエンジニア90万名登録、求人企業4,800社が利用する日本最大のIT・AIエンジニア転職、就職、学習プラットフォームpaiza(パイザ)の創業者&取締役会長。 生成AI、プログラミング、開発にについての記事を書いています。https://paiza.jp/

[8]ページ先頭

©2009-2025 Movatter.jp