
【有料級】耳コピ20年やってるワイが本気で教える耳コピのやり方
今回は有料級の内容です。長年耳コピをやっている私の方法や考え方、耳コピしやすい環境の整え方などについてかなり詳しく書きたいと思います。
最近だと専門学校の授業で使う資料用に「ザナルカンドにて」のオーケストラバージョンを聴き取りました。聴き取り元音源も合わせて貼っておきます。
ちょっと音がぼやけていて聴き取りづらい部分も多かったのですが、70%くらいは聴き取れていると思います。
「ザナルカンドにて」オーケストラverを耳コピしようとした結果pic.twitter.com/5qcr130Clp
— OzaShin おざしん/書籍2冊目出ます (@OzaShin_Music)September 13, 2024
その他にも、音ゲーに収録されるアニソンカバー音源を耳コピで作ったりしています。
耳コピは突き詰めていけば仕事になるスキルです。
なぜ耳コピをするのか
耳コピをする目的や理由は人それぞれだと思います。好きな曲を分析したい、アレンジの引き出しを増やしたい、気になるコードを知りたい、MIDIデータを作りたい、仕事で耳コピしなくてはいけない、ただ楽しいから、などいろいろありますね。
目的に応じた耳コピの仕方を選びましょう。
たとえば、メロディやコードを知りたいだけであれば詳細なアレンジまで聴き取らなくてもいいです。
反対に、アレンジをしっかり分析したい場合は細かな楽器編成まで聴いていく必要がありますが、サビだけやるといった方法でも十分効果があります。
私の場合、最近は他作家のアレンジのやり方を参考にすることが多いので、気になる部分の16小節だけ詳細にやる、といった耳コピをすることが多くなっています。
完璧を目指さない
基本的に、完璧に耳コピをすることは無理です。
和音楽器の構成音まで全て正確に聴き取ることができるのはもう神の領域です。
市販のバンドスコアは耳コピで作られているものもあるのですが、けっこう採譜はいい加減です。ですがその通りに演奏すると確かにそれっぽく聴こえる、という絶妙な採譜になっています。
「完璧でなくていい」という気持ちがないと、かなり疲れてしまうと思います。軽い気持ちで進めましょう。
「何か足りない気がする、でも何かは分からない」みたいな状況に陥ったら、自分なりの解釈で独自の楽器を追加してもOKです。
手段は問わない
耳コピのためにはあらゆる手段やツールを用いて構いません。
音源にエフェクトをかけて聴き取りやすくしたり、場合によっては演奏動画の演奏者の動きなどを参考にしてもいいと思います。
この辺りは賛否分かれると思いますが、ツールなどを使って耳コピをやっていても間違いなく耳は鍛えられていきます。だんだん何も使わなくてもできるようになっていくので、はじめのうちはガンガン使ってください。
また、耳コピをする際は自由に鳴らせる鍵盤楽器があると非常に便利です。
手元で音を鳴らすことができれば、音源を流しながら弾いて正誤判定をすることができます。
止まっているものは聴き取りづらい
草むらの中でじっとしている鳥と、草むらの中を動き回っている鳥、どちらが見つかりやすいでしょうか?当然、後者ですね。
音楽でも同じで、同じくらいの音量であっても、動いているもののほうが意識されやすいです(編曲でも生かせそうなテクですね)。
耳コピでは、ここで言うところの「じっとしている鳥」を見つけ出す技術が必要になります。
草むらをどけるようなエフェクトをかけたり、鳥を強調したりして耳コピを進めていくと良いでしょう。このあたりのツールやエフェクトについては後で解説します。
音源を用意し、DAWに貼り付け
まずは聴き取りたい音源を用意します。最近はYouTubeなど、Web上で音源を聴ける場所が増えていますが、可能であればwaveやmp3などで音源データを用意してください。
用意した音源をDAWに貼り付けます。頭出しをしてBPMが合うように貼ります。タップテンポなどを使うと素早くBPMを探せるので便利です。
古い音源にありがちですが、小数点以下のBPMが設定されている場合があります。マジでクソです。 小数点以下を合わせるのはけっこう面倒なので、どうしても上手くいかない場合はオーディオストレッチで整数テンポに無理やり合わせてしまってもいいと思います。テンポがいくつなのか、という情報は耳コピにおいてそれほど重要でないので問題ないでしょう。
音源を貼り付けたら、音源トラックを複製して、以下の4バージョンの音源を用意してください。それぞれの説明は後でします。
①通常の音源
②1オクターブ上にし、ローパスフィルターをかけた音源
③センターをキャンセルした音源
④サイドをキャンセルした音源(←これは無理に用意しなくてもいいです)
①通常の音源
そのままの音源です。今回は私の制作した以下の曲の例でやってみましょう。
②1オクターブ上にし、ローパスフィルターをかけた音源
ベース聴き取り用です。ピッチシフトや移調機能でオクターブ上(12半音上)に設定し、その後ローパスフィルターをかけて音をモコモコした状態にします。
フィルターがなければ以下のような形のEQでも構いません。だいたい500Hzくらいから上をカットすればOK。レゾナンスは上げないように。

この処理を行うと↓こんな感じの音になります(音声のみの動画です)。下のほうでプリプリしている音がベースです。余計なものが無くなり、ベースが聴き取りやすくなっていますね。
https://www.youtube.com/watch?v=2ZsvJ_1EnVc
キックがデカかったり、長かったりする音源の場合、少しキックの音程感が邪魔になることもあります。当然、MIDIに入力する場合は聴こえている高さの1オクターブ下で入力しましょう。
③センターをキャンセルした音源
真ん中の音をオフにした音源です。ボーカル、キック、スネア、ベースなどの中央に置かれた音が消えます(音源によっては少し残ることもあります)。主にハモリやサイドに置かれた音を聴き取るときに便利です。
ほとんどのDAWのオーディオ処理機能でできるはずですが、面倒な場合はエフェクトプラグインや外部ツールを使いましょう。
Cubaseの場合は、「オーディオ」→「処理」→「左右チャンネルを入れ替え」内の「引く」でできます。
ちなみに「聞々ハヤえもん」というツールの「エフェクト」→「ボーカルキャンセル」でセンターキャンセルができます。
書き出しも可能なのでこれを利用してもいいと思います。
いま知ったんですがMac版もあるんですね。
④サイドをキャンセルした音源
先ほどとは逆に、サイドの音をキャンセルし、中央の音だけにした音源です。
こちらはセンターキャンセルほど役立つ場面が多くないので、無理に用意しなくてもいいかも。ボーカルが極端に小さい曲や、ハモリが大きくてメインのボーカルが聴き取りにくい曲とかで役立つかも?
Cubaseの場合は、「オーディオ」→「処理」→「左右チャンネルを入れ替え」内の「マージ」でできます。
②のベース聴き取り用の音源でもサイドの音は不要なことが多いので、キャンセルしてもいいと思います。
音源が用意できたら、いよいよ耳コピを進めていきます。
耳コピの進め方
進め方は、①メロディ ②ドラム ③ベース ④その他の楽器 の順でやっていくといいでしょう。
ただし先ほども言った通り、耳コピの目的によってはドラムパートは別に聴き取らなくてもいい……という場合もあるので、そのあたりはやりやすいようにやってください。
また、さっさとサビやりたいな~とか、イントロのブラスカッコいいから先にやりたいんだよな〜とか思う場合などもあると思います。その場合はやりたいところから進めていって大丈夫です。そのほうがモチベが下がりにくいと思います。
メロディの聴き取り
①メロディを最初にやったほうがいい理由は、単純に音が目立って誰でも聴き取りやすいのと、曲の現在地点がわかりやすくなるためです。ベースやコード楽器を先にやってしまうと、いきなり挫折してしまったり、「あれ、ここサビ?Bメロ?」のようになり、間違ったところに入力してしまうことがあります。
また、メロディをある程度聴き取ると、曲のスケールやキーが予測しやすくなります。
例えば、シだけに♭が付いていることが分かったのであれば、その曲のキーはFやDmである可能性が高いです。
ただし、スケールの7音すべてがメロディに登場しない曲もあります。その場合は曲の終止している音に注目するといいと思います。
ドでメロディが終わっている曲の場合はCメジャーかCマイナーであることが多いです。必ずそうとは言い切れませんが……
この辺のスケール判定も慣れれば数秒でできるようになるので、最初は間違えながら慣れていってください。大丈夫です、並の音感であってもキーの選択は誰でもできるようになります。
キーの判定がどうしても難しい場合はツールを使ってみましょう。
TONICというツールを使えば、キーを自動で判定してくれます。コードを判定してくれるツールだと思ってうっかり購入してしまったのは内緒
他にも類似ツールはあると思います。
先ほどの曲を分析にかけたところ、少し時間はかかりましたが無事にFmと認識してくれました。ノンダイアトニックコードが多かったり、何度も部分転調する曲の結果はちょっと怪しいと思います。

ドラムの聴き取り
②ドラムを次にやる理由も、比較的聴き取りやすいのと、曲の勢いなどがわかりやすくなりモチベが上がりやすいためです。
ドラムの聴き取りは楽しいです。生演奏のドラムの場合、演奏者の気分でハイハットのパターンをコロコロ変えたりするので、正確にやると結構疲れます。手間の割に得られるものが少ないので、適度に手を抜きましょう。
超初心者の方だと、キックをフロアタムで入れてしまっているのとかをよく見るので、ドラムの構造やマッピングをよく確認して!
ベースの聴き取り
③のベースは超重要です。なぜならベースの位置によってコードを推測しやすくなるためです。
たとえば①のメロディの聴き取りによってキーがCメジャーと分かっているとします。この曲で、ベースがファを鳴らしているのであれば、Fのコードが鳴っている可能性が高いです。
①のメロディでスケール、キーを確定し、ベースの位置でコードを予測していく、という流れですね。
はじめのうちはダイアトニックコード表などを見ながら進めていくといいと思います。
ベースの聴き取り方ですが、先ほど作ったベース聴き取り音源を使えば誰でもかなり正確なところまで聴き取れるはずです。
聴き取りが難しい場合は、↓こんなツールもあります。ちょっとズルっぽいですが……
下の方で明るくなっている音はベースラインであることが多いので、まずはその音を鳴らしてみましょう。
その他の楽器の聴き取り
コード楽器は正確に聴き取りづらいので、基本的にトライアンドエラーで作った方がいいです。③で聴き取ったベースによってコードを予測したら、ピアノやギターなどのコード楽器でそのコードをとりあえず入力してみましょう。
ここでコードが合っているのか間違っているのかの判定も自分でしなくてはいけません。明らかにおかしな雰囲気になってしまった場合は、メジャー↔マイナーを入れ替えてみたり、別の形を試したりしてみましょう。
また、意外とメロディの音もコード予測のヒントとなることがあります。ベースとメロディの音を両方とも含むコードをいろいろ鳴らしてみると、適切な音が見つかるかもしれません。
逆に、メロディに固執しすぎるとコード判定がしにくい場合もあります。たとえば、コードはCなのにメロディはコードに含まれないレ、といった場合、メロディのレに注目しすぎるとコードが確定できません。
とにかくいろいろなケースがあるので、たくさん間違えながら学習していきましょう。
その他、「何となくこの音が聴こえる気がする」というものを置いてみたりしてみてください。先ほども言ったとおり、完全に聴き取ろうとせずに気軽になってみましょう。
分からない部分があれば飛ばしておいて、後でやったら聴き取れることもあります。1番は聴き取りづらいけど、2番はなぜかよく聴こえる、という音源もあります。
聴き取れないときのテクニック
素早いアルペジオ、素早いフレーズなどはかなり聴き取りが難しいです。
私が人生で初めて「早すぎて無理」と思ったフレーズは初代ポケモンのバトルのイントロ部分でした。
こういったフレーズは、音源のテンポを落として対応します。
ポケモンのフレーズも、テンポをゆっくりにすれば中学生の私でも聴き取ることができました。
奥の手として、コードネームだけであればCubaseのコード機能で、ある程度予測することが可能です。
コードトラックに音源データをD&Dするとコードネームが表示されます。8割くらいは合っています。
先ほどの曲はこんな感じに分析されます(コードネームが階段状に重なってごちゃごちゃしていますが、プロジェクトを拡大すれば見やすくなります)。

転回形やテンションなどは少し怪しかったり、メジャーマイナーが入れ替わっていたりもしますが、ベースの位置を間違えることは少ないです。初心者にとってはかなり心強いはず。
耳コピにおすすめな曲
ファミコン、ゲームボーイ、スーファミの曲
ファミコン、ゲームボーイのゲーム曲は和音数が少ないので、各音が分離しており比較的聴き取りがしやすいです。
ただし和音数の少なさを補うような速いアルペジオや、対位法的に複雑に旋律が絡み合う場合もあるので曲によっては難しいこともあると思います。
先ほども紹介しましたが、私の耳コピデビューは初代ポケモンBGMでした。
今でもベースラインは口ずさめます。
スーファミの曲は、トラックが8トラックとやや多めになります。
しかし内部的にはMIDIのような打ち込みデータで鳴らしているので、DAWで再現しやすいはずです。
動画サイトで「名曲解剖」を検索すると、エミュレーターなどを利用して各チャンネルに分離した動画なども見つかります。プレステなどのBGMもいくつかありますね。各楽器に分解されているので、初心者でも挑戦しやすいはずです。
上の「Force Your Way」の動画を参考にさせていただき、以下の動画を制作しました。
終わりに
聴こえているはずなのに聴き取れなくてイライラすることもあると思いますが、正しいラインを見つけたときには何とも言い難い達成感があります。
好きな曲をイチから再構築していくような楽しさがあるので、ぜひ挑戦してみてください!

