ピート・ブティジェッジ Pete Buttigieg、2028大統領選に出馬する可能性がある。もちろん確定ではないけれど。
先日、ピート市長(懐かしい愛称)自身が、検討していた2026年のミシガン州知事選にも、上院選にも出ないことをはっきりと表明した。その先はもちろん不確定ながら、2028大統領選を考えていることは確か。
トランプに限らず誰が大統領であってもアメリカの政権4年間はなにが起こるか分からず、それによって次期に立候補するかしないか(したくても出来ないか)が変わってくる。 "タイミング" の問題なのだ。ブティジェッジも可能性とタイミングを計っているのだと思われる。
そもそもバイデン政権の運輸長官時代、それ以前の2020大統領選に立候補した時点から「次期大統領はピートに!」という声はたくさんあった。理由はブティジェッジがインタビューやディベートで話している姿を見れば一目瞭然。スーパー頭脳明晰&常に沈着冷静、かつフレンドリー。敵対ではなく、相手の考えを聞く姿勢。「オバマの再来」と言われた。ちなみに当時37歳。
とはいえ、2020民主党の予備選はバイデンが勝ち、さらに本選でもバイデンがトランプを負かし(そしてクーデター未遂が起こった)、ブティジェッジはバイデン政権の運輸長官となったのだった。
↓ 2024民主党大会でカマラ・ハリス応援演説をするピート・ブティジェッジ
■「ピートは同性愛者だから」
そして昨年。バイデン大統領に対して「もう限界や、2024大統領選から身を引いて若手を立たせてや!」の声が盛んに上がり、「では誰が?」となった時にも「ピートを!」の声はあった。と同時に、ブティジェッジを支持する人たち自身から「いや、しかし...」が出た。
逡巡の理由は、ブティジェッジが同性愛者であることだった。
マイノリティの台頭を「ポリティカル・コレクトネス」「WOKE」、そして「DEI」と攻撃し続ける保守派に対し、白人とはいえゲイで同性婚をし、幼い双子を育てているブティジェッジで勝てるのか?????????
結局、副大統領だったカマラ・ハリス(女性、インド系+ジャマイカ系黒人、移民の子)が立ち、結果は言うまでもなく。ただしハリスの敗因が彼女の属性なのか、大統領候補としての何らかの弱さだったのか、もしくはそのコンボだったのかは意見が分かれるところだと思う。
■「白人男性以外はいらん」
いずれにせよ、トランプとMAGA、そこからのファシズムの台頭もいくつもの理由が重なってのことなのだろうけれど、発端は「オバマ」だった。バラク・オバマが2008大統領選に立候補した時、保守派の有権者はオバマの政治家としての経歴や資質は語らず、「黒人が俺の国の大統領とか、ありえん!」だった(実際にインタビューでそう答えた者たちがいた)。建国以来、アメリカは白人が治めてきた国であり、これからもずっとそうなのだと信じていたのだ。急に「黒人が大統領」と言われても事態が飲み込めず、次に怒り出す、のパターンだった。
その反動もあり、オバマ2期8年終了後の2016年、トランプがヒラリー・クリントンを打ち負かしたのだった(得票数ではヒラリーが300万票多かったが、選挙人制ゆえにトランプが勝った)。ヒラリーは白人だが、女性というマイノリティ。つまり、「白人男性以外はいらん」なのだ。
大統領選においてヒラリーやハリスを「嫌い!」と言った人は、その理由を改めて考えてみるのもいいかもしれない。彼女たちが男性であれば、あれほどの「嫌い!」(←生理的な感情)が起こっただろうか
■「白人・男性・キリスト教徒・異性愛者」の壁
ヒラリー敗退およびトランプ当選は猛烈なショックだったものの、「マイノリティの台頭に慣れていない国のプロセスなのだろう」と思った。ヒラリーには非常に気の毒で、トランプに治められる私も非常に可哀相だけれど、変化は徐々にしか起こらないのだろうと思った。オバマの当選は今後の長い長い長い長い長い変化の始まりであり、道のりは平坦ではないのだ。「何度かこれを繰り返すうちに、マイノリティの存在が当たり前になっていくのだろう」と思った。
けれどトランプは別の意味でどんどん進化ならぬ激化し、世界中にファシズムを撒き散らす存在となった。
2028大統領選にブティジェッジが出馬したら、いったいどうなるのだろうか。保守派/極右はブティジェッジの経歴も資質も人格も気にもかけず、「ゲイ」「同性婚」のみを攻撃するはず。アメリカはキリスト教国であり、極右は宗教右派なのだ。そもそもこれから選挙までの4年間でアメリカと世界はどう変化するのだろうか。まかり間違ってピート・ブティジェッジが法的に立候補すらできないデストピアにアメリカはなってしまうのではないか。そんなことまで、ふと考えてしまうのであった。(k.d.)