漫画家に限らずですが、若く忙しく仕事をしてた時代がいつだったら
幸せだったのかというのは簡単に言い切れるもんではないですね。
私の場合で言いますとピークで仕事をしていたのが1990年代だったことは結構な幸運であったと思います。
とにかく本が出る。紙の本が当たり前の時代、自作が単行本化されるというのは職業漫画家にとって収入はもちろんですがそれ以上の多幸感があったことは確かです。
漫画というのは他者に読まれてなんぼ、つまり印刷されてなんぼ。前回の生原稿絡みでも書きましたが、原稿というのは不完全な状態なんです。
90年代、私はまだキャリアも浅い身でありながら自作の単行本化に恵まれました。それが当たり前くらいの気持ちでしたし部数もそれなりの数が出ていました。すでにバブル崩壊と言われた時代になってましたが出版界はまだ好景気の余韻が残っていた印象でした。
そして単行本が発行されると作家に献本として何冊か送られて来ます。
人にもよると思いますが部数が多い時代は献本も多く20冊以上は普通に送られてきました。
近年久々に単行本が出た時はは5冊くらい。発行部数の少なさ以上に寂しさを感じました。
好景気時代、単行本は最低8000部は出さないと逆に採算が合わないとか
言われてましたが最近は3000くらい当たり前で印税率は10%が当たり前な感じでしたが今はそれ以下になってます。元々出るだけでもありがたいと思っていたわけですが、よくよく考えてみればそういった景気のいい話は私の漫画家生活の初期5年くらいのみのことえしたね。最初に無駄に苦労しなかったぶん30年以上続けられたとも考えられます。
さて、すっかり減った部数、そして印税率、いやそもそも出ないとなった現在、残されたのが献本の山です。
献本というのは周りのお世話になった方々にお配りくださいという出版社側の配慮なのですが、自分としては結構配ったつもりですが残ってますねー。
こういうとこが現在仕事が激減してる原因のひとつだとも思えますが,
年月も経てば仕事も減るのも当たり前ですし仕事が減る前に人生が終わってしまう作家さんも多く、よくもこんな世界で30年以上も仕事が続けてしまったものだ、潰しが利かなくなってる現実に直面する還暦漫画家がこの私です。
献本の話に戻りますがそれなりに単行本が出てその都度20冊くらい送られていた本の量がなかなか馬鹿にならないのですよ。
これ単行本出て当たり前の人気作家さんは確かに倉庫が必要ですよね。
献本以上の大量の売れなかった本は出版社の倉庫にあるわけで一定期間が過ぎれば裁断廃棄処分されるわけで動物の殺処分並みに見たくない光景です。
しかし今目の前の問題は自著の山だ。

割と買取で悪くない値で買い取ってくれる有名な店だと自著は買い取らないと明記されてたりします。売れそうもない同じ本を大量に送ろうとする私のような作家さんが結構いるのでしょうか。
普通に縛って資源ゴミの日に出すことにしました。
前日にマンションの集積所に置いて外に晒されてる状態は見ていません。
よくゴミで出されてる縛られてる本に魅力的に見えるのありますよね。
拾われなくてもいいですが「なんか変なのある」くらい思われたら本たちも少しは報われたかもしれません。
それが今から半年前ぐらいのこと。
まだ終活は始まったばかりなのであった。