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 不動産の価格上昇が続く昨今の状況下においては、身近でも「20年程前に新築で購入した4000万円のマンションが5000万円で売れた」なんていう話を耳にすることも多く、不動産を所有する方にとっては嬉しい限りの状況ではあるかと思いますが、税金面で考える譲渡所得が生じるケースが増加していることとなります。

 この点、ネットで少し調べれば”居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例”(以下3000万円控除という)があることが分かるため、「自宅を売却する場合は3000万円控除があるから、その範囲内なら税金は発生しないから大丈夫だ」と考えている方も多いかと思います。

 しかし、この3000万円控除の特例の適用誤りは多く、金額が金額なだけに誤りによって税金が最大1000万円程追加で発生する場合もあるため、注意が必要です。

3,000万円控除とは

 まず、簡単にこの特例をご紹介すると、通常不動産を売却するとその所得(売却代金−住宅の取得価額の減価償却考慮後の額−売却諸費用)に対して最大39.36%の税金がかかりますが、自分が住んでいた住宅を売却する際に生じる所得に対しては3000万円を控除し、その残額に税率を乗じることができる制度です。
 
 適用要件については、以下の国税庁HPを参照いただければと思いますが、適用誤りのパターンとしては裁決事例や国税当局時代に見ていた調査事例から思うところ、この「自分が住んでいたと言えるか否か」という点が多いように思えます。

生活の本拠でないと適用できない

 裁決や調査事例においては、「自分が住んでいる」という点を形式的に「週に何度か寝泊まりしてれば良いのでは?」「住民票を移しておけば良いのでは?」と考え、適用したところ、税務署の調査を受け多額の税額を支払うこととなっている事案が多々見受けられます。

 この「自分が住んでいる」というのは、”生活の本拠”であることが必要です。

もっとも、この生活の本拠は画一的に定義することができない概念なので、個別判断にはなるのですが、審判所で争われた裁決事例を見ると、住民票の異動の有無に関係なく以下の点を踏まえて総合的にを判断しています。

月々の水道光熱費利用料

 一人暮らしの女性で2ヶ月の水道使用量が7〜9立方メートルであることについて、「家庭用ユニットバスの一回あたり利用量が1立方メートル」であることを考えると極めて少ない使用量である点を、生活の本拠ではないという判断要素の一つに採用している事例があります(平成10年3月20日裁決)

近隣住民・商店からの聞き取り情報

 3000万控除の適用住宅に母と二人で住んでいたという主張に対して、近隣住民から聴取した、「たまにおかずのお裾分けをしに訪問するが居住者は母一人だった」「買い物や通院は母一人で行き来していた」といった情報を、生活の本拠ではないという判断要素の一つに採用している事例があります(平成10年9月30日裁決)

家財道具の所在

 仏壇は、生活の本拠である家屋に置き、先祖を供養するのが一般的であるということから対象住居には仏壇が所在しない(もう片方の住居には仏壇がある)という事実をもって、生活の本拠である判断要素の一つに採用している事例があります(平成11年3月15日裁決)

建物の状況

 家屋の窓ガラスが割れたまま放置され、複数の近隣住民が人の住める建物ではなかったと評している情報を、生活の本拠ではないという判断要素の一つに採用している事例があります(平成28年3月16日裁決)

家族の居住状況

 家族と住んでいた社宅がある事実を、生活の本拠ではないという判断要素の一つに採用している事例があります(昭和56年1月29日裁決)
 

通勤手当の支給状況

 会社から支給されている通勤手当は、複数所有する居宅のうち、3000万円控除の適用を受けた居宅から会社までの通勤手当相当額ではないという点を、生活の本拠ではないという判断要素の一つに採用している事例があります(平成10年9月30日裁決)


判断は総合的に行う

 それぞれの要素を断片的にご紹介していますが、どの事例もこれらいくつもの要素を組み合わせて総合的に判断しているので、「この中の一つでも当てはまれば生活の本拠に当たる、当たらない」といった話ではないということを、まず頭に入れておいていただいたうえで、これら要素を判断材料に活用いただければと思います。

 ちなみに、こういった要素を考慮せず住民票だけ異動させて「自分が住んでいる住宅」としてこの3000万円控除を適用すると、場合によっては住民票を異動させることによって”その住宅に自分が住んでいる”という外形を作り出す「隠蔽仮装行為」として、通常の税額に35%加算される重加算税が賦課されてしまうこともあるので要注意です。

 
 最後まで読んでいただきありがとうございました^ ^


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アラフォー独身の国税局出身新米税理士です^ ^令和5年に某税理士法人で所属税理士として勤務を開始し、将来の独立に向けてNOTEを始めました。税務に関する情報のほか、趣味に関する記事まで諸々アップしていくので、色々な分野で興味を持っていただければありがたいです!

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