息子の家を片付けに行った。
孫から頼まれたから行くことになった。
戸が開けられない・・・玄関の戸の前まで段ボール箱の山で入れないのだ。
嫁さんは、猫とともにどこに暮らしていたのだろうか?
こんなところに置いておけない!
私は、必死でそれらの段ボール箱を全部外に出すように孫と息子に言う。
段ボール箱に詰まっていたのは、孫たちがアパートを引っ越すたびにふえていた荷物たちだった。
三日間をかけて何とか居る場所を確保。
2トン車に詰め込まれた荷物の箱は、我が家の周りを取り巻くように置かれた。
大切なものはないか?
要らないものはどれか?
一つ一つの箱を開けてみて夫と二人でわけ、不要だろうと思うものは捨てることにした。
箱の中から現れた孫が書いた絵や日記、旅行に行った時の思い出のおみやげ、孫の幼いころのぬいぐるみ、嫁さんが作った木目込みのお人形・・・
息子と嫁さんと二人で、それなりに孫たち二人を一生懸命育てたという証拠のようなものばかりが目に付く。
それを姑に捨てられてしまうなんて・・・
なんて悲しいことだろう・・・
嫁さんの気持ちを思うといたたまれなかった。
きれいになった部屋で夜ご飯、鰹の刺身に嫁さんがネギを切ってきてのせてくれた。
ああ・・こういうことが自然にできるようになったんだ・・・泣きそうになった。
一人目の孫が生まれたばかりのころ、嫁さんに真夜中までいろいろ責め立てられて寝かせてもらえないと息子が「助けてくれ!」と電話してきたことがあり、嫁さんを連れて精神科受診をと勧めたことがあった。
嫁さんは発達障害だという診断であった。
息子は未熟児で生まれたが、大学も出て、一応のところに就職もできた。
優しい息子だった。私は、やさしさしか見ていなかった。
だが、今思えば息子も部屋の片づけは苦手だったと思う。
それでも二人の子供を育てることにはとても一生懸命だったと思う。
二人の孫を大学まで卒業させた。
一人の孫は大学院まで卒業させた。
女の子の孫にはピアノも習わせた。
私は息子を褒めてやりたいと思う。
嫁さんも、息子とともに暮らしてゆく中で、少しづつ大人としてのやり方を覚えて、派手な買い物をすることもなく、つましくつましく暮らして、子供たちをかわいがった。
嫁さんも頑張ったと思う。
息子は趣味は釣りとか山登りくらいだった。
それなりに、それなりに一所懸命だったんだと・・・
そして、今、孫が双極障害・・・
部屋が汚いことがトラウマ
私が傍にいてやれたら、もっと片付けられただろうが、それでは、日々嫁さんは心苦しい暮らしになっただろう。
息子も嫁さんも孫たち二人を精一杯愛して育てた。
力が足りなかったんだ。
いろいろな人の支援の力を借りて、孫の望む部屋になれたらと祈る
人は生まれてくる場所を選べない
どの家族?どんな地方?どの国?
何もかもを選ぶことは出来ない
与えられた中でなんとかして生きていくしかない。
きっと、これからも三人で乗り越えてゆくだろうと祈っている。