Movatterモバイル変換


[0]ホーム

URL:


見出し画像

1. 概要


「アメリカ人はなぜDIYをするのか」という問いに対し、日本における一般的な説明はほぼ定型化している。すなわち、アメリカでは「まず自分でやってみる」ことが当たり前であり、巨大なホームセンターやプロ仕様の設備が整っているため、DIYが文化として根付いているというものだ。また、「家は資産であり、修繕は価値維持の手段である」といった経済合理性の説明も頻繁に用いられる。そして最終的には、「できるかどうかではなく、まず挑戦する」という精神主義的結論に帰着することが多い。

しかしながら、これらの説明はいずれも「なぜDIYをやらなければならないのか」という根源的な問いを回避している。この欠落こそ、アメリカ社会におけるDIY文化の実像を理解するうえでの重要な手がかりとなる。筆者はアメリカで生活した経験から、DIYが必ずしも「嗜好」や「文化的価値」として広く内面化されているわけではないことを実感している。確かに一部の人々はDIYを趣味的に楽しむが、多くの家庭にとってそれは「余暇活動」ではなく、「必要に迫られた労働」に近い。週末に家族や友人と過ごしたい、あるいはスポーツ観戦やレジャーを楽しみたいという欲求のなかで、DIYはしばしば望まぬ義務として登場する。

ここから先は

12,438字 / 2画像

¥300

PayPay決済で追加チャンス!12/28まで

この記事は noteマネーにピックアップされました

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?

コラムやエッセイ書いてます

[8]ページ先頭

©2009-2025 Movatter.jp