
アメリカ人はDIYを本当はやりたくない:安直な異文化論に対しての警告
1. 概要
「アメリカ人はなぜDIYをするのか」という問いに対し、日本における一般的な説明はほぼ定型化している。すなわち、アメリカでは「まず自分でやってみる」ことが当たり前であり、巨大なホームセンターやプロ仕様の設備が整っているため、DIYが文化として根付いているというものだ。また、「家は資産であり、修繕は価値維持の手段である」といった経済合理性の説明も頻繁に用いられる。そして最終的には、「できるかどうかではなく、まず挑戦する」という精神主義的結論に帰着することが多い。
しかしながら、これらの説明はいずれも「なぜDIYをやらなければならないのか」という根源的な問いを回避している。この欠落こそ、アメリカ社会におけるDIY文化の実像を理解するうえでの重要な手がかりとなる。筆者はアメリカで生活した経験から、DIYが必ずしも「嗜好」や「文化的価値」として広く内面化されているわけではないことを実感している。確かに一部の人々はDIYを趣味的に楽しむが、多くの家庭にとってそれは「余暇活動」ではなく、「必要に迫られた労働」に近い。週末に家族や友人と過ごしたい、あるいはスポーツ観戦やレジャーを楽しみたいという欲求のなかで、DIYはしばしば望まぬ義務として登場する。
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