
世の中の大半の人は別に成功も成長もしたくないという話
Xを見ていたら、とある経営系のアカウントがプチ炎上していた。
喧嘩を売りたいわけではないので(というかそのポストの内容自体も否定するようなものでもないし)、直接引用はしないけれど、そのポストではこんなことを言っていた。
「言われたことさえやっていれば、勝手に給料がもらえると思っている人がいる。しかし、会社に売上があって、利益が出ないと、もらえるものももらえない」
ニュアンスで要約しているので、正しく気になる方は給料だの、利益だの、炎上だのと検索にかければいずれヒットすると思うので、探してもらえればと思うが、上記の文章を読んであなたはどう感じただろうか。
俺が最初にこのポストを見かけたのは、このポストを引用している漫画家さんのポストからだった。
その漫画家さんはこのポストに対し、引用でこのようなことを言った(これもニュアンスで要約する)。
「人を雇った以上は赤字だろうと給料を払わなければならない。言われたことだけやって、利益が出ないのならそれは経営者の責任だ」
さて、これについてもみなさんはどう感じただろうか。
要約してみると、そもそも論点がズレているような気もするのだが、まあそこはどうでもよくて、ここでこの二人のやりとりにどうこう言うつもりはない。
この二つの意見については、異なる視点で、どちらの主張も一理あると思うからだ。
このやりとりを「経営者目線と労働者目線」と表現していた人がいたが、まさにその通りだろう。
ただ俺が気になったのは、この発端となったポスト(言われたことさえ〜)に賛同していた人たちの声だ。
当然ながらこの元ポストに賛同している人の多くは自営の人や、経営者がほとんどだった。
彼らは引用ポストで「これを炎上させているような人たちが日本を停滞させる」とか「テイカー気質の人は成功しない」とか「能動的に動けない人は成長しない」なんてことを言っている(この引用も全部ニュアンスで要約)。
労働者側のポストも言いたい放題な一方で、擁護している経営者側のポストもかなり言いたい放題である。
正直なところ、経営者と労働者、五十歩百歩、どんぐりの背比べである。
まず大前提として、経営者目線、労働者目線、俺がよりどちらの目線を持っているか、と言われれば、圧倒的に労働者目線だ。
それを明確にした上で、これらの経営者たちの賛同ポストを見て、俺が強烈に感じたのは「世の中の人、そんなに成功も成長もしたくないと思うよ?」ということである。
正直、このnoteで言いたいことはその一言に尽きるのだが、まるで世の中の人が全員成功したくて、成長したくて仕方がないという前提でなければあり得ない言い草で賛同しているのを見ると、そりゃ経営者と労働者、わかりあえないわな、と思うわけである。
そもそもその会社をやりたくて始めたのもお前で、会社を成長させるために人を雇ったのもお前、という視点がすっぽり抜け落ちてやいないだろうか?
大前提として、お前がやりたいことを実現させるのに、お前だけの、たった一人の力でそれを達成することは無理なのだろうか?
例えば「年商一億を突破したい!」という目標を立てた場合、年商一億をたった一人で実現させている人間はこの世に確かに存在しているわけである。
だからテイカーがどうとか、成長がどうとかポストすることに時間を使ってないで、お前一人でやればいいじゃん、という話である。
…というのが極端な意見であることはわかっている。
現実的には、自分のやりたいことを実現するためには、人に頼らざるを得ないということがほとんどだろう。
ならば、そうして人を雇う時には「成功したくて、成長したい人材」を雇えばいい。はい、論破。ひろゆきも呂布カルマも出る幕なし。
…となるはずなのに、なぜ経営者たちは、そんなに不満たらたらの賛同ポストをするのだろう?
さぞ能動的で、日本に貢献していて、ギバーなはずの彼らが、一体どうして。
金がかかるからである。
「成功したくて、成長したい人材」は金がかかるのだ。
金がかかるから、そんなに多くは雇えない。
多くは雇えないし、雇ってみないと本当に「成功したくて、成長したい人材」かどうかもわからない。
そして、雇ってみて「成功したくて成長したい人材」だった場合、その人は引っ張りだこである。優秀だから。
だから仮に入ってきても、気がついたらもっと評価してくれる会社に消えていく。なぜなら、優秀だから。
「成功したくて、成長したくて、一度入ったら辞めない人材」を見極める力ももちろんあるわけがない。
さらに「成功したくて成長したい人材」が報酬面を犠牲にしてでも、転職したいと思える魅力が会社にあるわけでもない。
採っても消えていく。採っても消えていく。採っても採っても消えていく。
採用広末涼子である。
するとどうなるか。
成功も成長もしたいわけではない従業員を「成長」という実態なき報酬を担保に、働かせようとし始めるわけである。
「成長したくないの?」って、俺に言ってるお前はなんなの?という矛盾を抱え始めるのだ。
成長なんてものは、それこそ能動的に起こるべきものであって「成長できるから」などという理由で、それを報酬代わりに働かせる理由にはならない。
なのに「実態なき成長」以外に従業員に提供できる価値が会社にはなく、八方塞がりになった彼らは、炎上ポストに不満を垂れ流す、という行動に行き着く。
なんというかカッコつけすぎてやいないだろうか?
「成長」とか「成功」とか聞こえはいいけれど、そんなものは人に押し付けるものではなく、お前が勝手に目指せば良いだけのものだ。
誤解なきよう言っておきたいのだが、俺はその「めっちゃ成長したい!」という気持ちを否定したいわけではない。
成長したい人は、成長すればいい。切磋して琢磨したらいい。
だが、世の中の大半の人は、成功も成長もほどほどで良いと思っている。
そりゃ金なんてあればあるほどいいし、能力だって高けりゃ高いほどいいだろうけど、ある程度のラインでみんな、現実を見ている。
だってそんなの言い出したら、キリがないから。
入ってくるお金と、それに対して発生する労働と、そして自分の人生が、うまいことバランスを取れるのが理想だと思っている人がほとんどのはずなのだ。
その比率が、ちょっと人によって違うだけだ。
こっちは草野球で楽しいって言ってんだから、みんなで大谷目指そうや!じゃないんだよ。目指さないだろ手取り20万で大谷は。
百歩譲って、読売巨人軍がそれ言うならまだしも、うちら西日暮里ゴールデンタイガースやないですか、と。
だからどうしても働いてほしいなら「今は会社にお金はないけど、やりたい夢がたくさんあるから、俺に力貸してよ〜〜〜!!!きっと将来、楽しいことになるからさ〜〜〜!!!ついてきてくれないかな〜〜〜!!!」と泣きつけばいい。成長だの、テイカーだのとカッコつけてないで。切磋して琢磨してないで。
「社長がそこまで言うなら、力貸しますよ」って人、俺は結構普通にいると思う。
主語デカで恐縮だけど、日本人ってやっぱりクソ真面目だし、情に厚いもん。
だから、そういう人普通にいると思うし、こういうスタンスの社長も実際にいると思う。
なぜなら、そういう社長の人柄こそが働く理由になりうるから。成長とか報酬とかじゃなくて。
誰が炎上ポストに賛同して「そんな人は成長しない!」って言ってるやつの会社で働きたいんだマジで。冷静になれ。働いてないでまず寝ろ。変になってる。寝ろ。落ち着け。寝ろ。成長したいとしても、そんな人の下ではしたくねえ。寝てくれ。
…などと炎上していたポストに持論を述べてみたところで、ついでに思っていることを書き留めて終わりたいと思うのだけれど、こういう「実態なき成長」に押しつぶされている人、社会にめちゃくちゃ多いんじゃないか。
そして、会社に取り立てて魅力がないことの隠れ蓑として「成長」を使っている企業って、世の中めちゃくちゃ多いんじゃないか。
「成長」とか「一人一人が経営者」とか言っておけば、やってる感が出るから。
noteを徘徊していると、こういう社会に押しつぶされてしまった人をよく見かける。
そういう「やってる感」みたいなものを真正面から受け止めて、潰れてしまった人たち。
noteというSNSの性質上、ここには特にそういう人が多いかもしれない。
そのような人の中には、器用が故に消費され尽くしてしまった人もいるだろうし、逆に不器用が故に孤立して、心が疲弊してしまった人もいるだろう。
だが、俺はそんな人たちにこそ伝えたい。そんなに肩肘を張る必要はないんだと。
そんなものは要領が良いかどうかの違いでしかなくて、世の中の大半の人たちは社会に対して本気なんて出していない。
みんなが成長したいという顔をしているから、仲間はずれにならないよう、それに合わせて成長したい顔をしているだけで、実際のところはみんな、それっぽい顔で、やってる感を出しながら、それなりの力加減で生きている。
それなりの力加減で生きてるけど「マジ頑張りました!」みたいな顔してる。これは本当。
だってそうじゃなきゃ、どうぶつの森にあんなに人はあつまらないし、トモダチコレクションの復活もあんなに盛り上がらない。
成長したくて成長したくてたまらない人は、自分のマンションに嵐のメンバーを入居させない。
どうぶつの森もトモダチコレクションも、やってる感と表裏一体。
だから、大丈夫。
成長なんか生きてるだけで十分してる。
俺を信じるんだなも。
それでは、また。
(追記:これに関連する記事を書きましたので、こちらもよろしければ是非)
いいなと思ったら応援しよう!
お読みいただきありがとうございました。いただいたサポートは新たな初体験に活用させていただきます。
