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この記事は2025年11月15日〜12月7日に開催された、展示「あの職員室」の解説記事です。

「あの職員室」公式サイトはこちら

本展示は、現在のところ再演を予定しておりません。そのため、体験いただけなかった方に向けて、こちらの記事で本イベントの全容をご紹介できればと思います。
※イベントの内容に関するネタバレを含みますのでご留意ください。



15年前から時が止まった「あの職員室」の中に何があったのか、
実際に訪れたような気分でお楽しみください。

「あの職員室」の中へ

会場は、東京・飯田橋駅の近くにある廃校。
校舎に入り、誰もいない廊下を通ると、突き当たりに「あの職員室」があります。

貼られている手順に従い、中に入ります。

当時のまますべてが残った職員室
コーヒーの匂いがする


受付でリーフレットを渡されました。
この職員室では、2010年当時12人の先生が仕事をしていたそうです。


先生たちの机を物色する

リーフレットを手に、先生たちの机を自由に物色していきます。

山本先生(保健体育)の机

まず正面にあったのは、山本先生の机。

整然としています
リーフレットには、保健体育の先生で、生徒指導を担当していたと書いてあります
生徒からもらったであろう似顔絵がたくさん
引き出しには、大量のお菓子が入っていました
机の端には、生徒から没収したものを集めたボックスが
あの香水もありました
 ガラケーも没収されています
プロフ帳
授業中にまわしていた手紙でしょうか
引き出しの中には、生徒の反省文がありました
あの香水を持ち込んだことを反省しています
「サリ」さんの前略プロフィール
ここだけの話
バレてしまったようです
あんまり反省はしていなさそう
生徒指導の個人カードというファイルがありました
個人ノートの中身
犬塚くんがラジコンを持ち込んで指導されています
ほかの引き出しには、異装届などが入っていました


島根先生(数学)の机

隣の机に移ります。隣の机は、数学を教えていた島根先生のものでした。

島根先生の机
生徒会も担当していたみたいです
引き出しの中には大量の赤ペンが
犬塚くんがまた呼び出されています
机の上の引き出しには、試験の順位表が入っていました
星野慶子さんと斉藤智くんが一位を争っています
一個下の段には、生徒会の議事録が入っていました
「あいさつ運動」
「100日祭」というイベントが企画されています
「100日祭」のポスターが貼ってありました
「100日祭」の企画書もありました
生徒会の木村さんという生徒がリーダーのようです
100日祭は「閉校まであと100日の日に開催する文化祭」
別の引き出しには、校内回覧表が
別の引き出しを開けると
「100日祭 中止のお知らせ」が入っていました
机の下の引き出しには
七橋中の存続を求める署名用紙がありました
貼ってあった壁新聞には
七橋中「最後の生徒会長」一ノ瀬さんの記事が


森先生(社会)の机

隣の机に映ります。社会の森先生の机です。

「戦国武将とバスケにかなりの熱意」
机の上には戦国武将の名言が
新しい社会「歴史」・中学校社会科地図
昔のバスケ部員からの色紙もありました
引き出しの中には、バスケ部のノートが
「あいりと池田が付き合い出してから、部の雰囲気が変わってしまった(女バス部長・澤田)」
没収された原愛里さんのエンジェルハート
没収された池田くんのライオンハート
「あいりと池田」はこのふたりのことでしょう


渡辺先生(音楽)の机

つづいて、隣にあるのは音楽の渡辺先生の机です。

綺麗で落ち着きのある机
合唱コンクールに出ていたらしいです
コンクールまでのカウントダウン
加藤さんの合唱ノート
熱量を感じます
生徒からの手紙もありました
審査員特別賞を受賞したようです
コンクール後に生徒たちからもらった色紙もありました
渡辺先生の机にも署名用紙が
先生同士もメモを回していたようです
引き出しの中には大量のカップ麺が
生徒が書いた恋愛相関図なるものも
壁新聞にも、合唱コンクールの話題が
長期間休んでいた生徒会長の一ノ瀬さんの復帰が転機になったそうです
隣に貼ってあった七橋中学校最後のクラス、3年1組の似顔絵
その横のキャビネットには、生徒会の目安箱
さまざまな意見が寄せられています
「100日祭」もここから始まったようです
その横には、紛失物のボードがありました
印鑑をなくした宮西先生
大量の落としものが入った落とし物ボックス
消しゴムのスリーブを外すと
あの二人です
ソックタッチも忘れられています
黒板には、学校からの手紙が貼られています


中山先生(英語)の机

つづいて、向かいの机を使っているのは英語の中山先生です。

旅行先で集めたマグネットが
中山先生は図書委員の先生でもあったようで、
机の上には図書室関連の書類もありました
図書室貸出表
辞書らしきもの
中が鍵付きの箱になっています


この学校では何か不思議なことが起こっている

清水先生(理科)の机

続いて、その隣にあるのは理科の清水先生の机。

いまにも雪崩が起きそうです
書籍が山積みになっています
隣の席の中山先生から苦情が
「ラジコンの件」について宮西先生からのメモが
引き出しを開けると、オカルト研究会のレポートがありました
清水先生は、オカルト研究会という部活の顧問
なにやら、UFOを発見している様子
UFOの話題は、壁新聞にも書いてありました
UFOは当時の新聞にも取り上げられたようです
オカルト雑誌を開くと何かのメモが
別の引き出しを開けると、また別のオカルト研究会レポートが。
「ついに遭遇!!宇宙人!!!!」
「なぞのミステリーサークル出現!?」
こちらも当時の新聞に取り上げられています
ミステリーサークルを考察しています。「≠」とは何なのか?
壁新聞にも「≠」についての記事が
学校の掲示物に「≠」について触れているものがありました
最初のほうにみた生徒会の議事録にも
「≠」のことが書かれていました
100日祭が中止になったのも、「≠」の影響のようです
この一連の不思議な事件は何なのでしょうか
ほかにも清水先生の机には、
オカルト研究会が活動停止になりかけている記録もありました
オカ研女子のノートも
そばに置かれていたデジカメには
謎の写真が入っていました
宇宙人?


学級日誌

この学校の最後の一年に起きていたことをもっと調べるために、置かれていた学級日誌を読んでみることにします。

学級日誌は、職員室入口近くに置かれていました
学級日誌
毎日、日直がその日のできごとを一言書いています
4月24日 UFOが現れたと学校で話題に
4月27日 藤本くんが撮ったUFOの写真が新聞に載った
6月8日 ミステリーサークルについての言及が
そんな中、体育祭など平穏な中学校生活が行われているようですが
一連の事件について不安に思う生徒も
「≠」は幽霊のしわざだとする生徒も
やはり不安な生徒会長の一ノ瀬さん


宮西先生(国語・3年1組担任)の机

つづいて、彼ら3年1組の担任を務めている宮西先生の机へ。

宮西先生の机
卒業時に生徒から寄せられた色紙がありました
生徒のことをまめにメモしています
犬塚くん、石田くん、中島くんが補導されています
引き出しの中には
大量のメガネがありました
机の上には印鑑がありましたが
中身はありませんでした

生活ノート

宮西先生の机には、生徒の生活ノートが置かれていました。
生徒が毎日ひとことコメントを書く、学校生活の記録です。

木村さんの生活ノートを読んでみます
木村さんは「100日祭」の企画をしていた、生徒会のメンバー
木村さんが生徒会に入ったのは、一ノ瀬さんに誘われたことがきっかけのようです
4月23日 UFOの話で学校じゅうが大騒ぎ
5月26日 100日祭のリーダーに
7月6日 部活引退
9月2日 ときには一ノ瀬さんと喧嘩することも
9月29日 100日祭の一般開放が中止になってしまったそうです
10月6日 ポスターが完成したり、100日祭の計画は着々と進んでいる様子
ほかにも、生徒会長の一ノ瀬さんの生活ノートや
たびたび名前を目にする犬塚くんの生活ノートがありました


酒井先生(美術)の机

次にあったのは、美術の酒井先生の机。

引き出しの中に、添削中の100日祭ポスターがありました
机の上には、美術部の加藤優さんが描いたマンガが置かれていました
「宇宙船しみ号のヒミツ」
「犬塚 浸る」
「ノリがちがう」
加藤さんはキャラクターの絵もいっぱい描いています
卓上の引き出しには、
教頭の高橋先生に何かを報告している手紙がありました
七橋中で「謎の記号」のゴミが散乱したという新聞記事が
壁新聞でも、この事件が報じられています


竹内先生(技術)の机

つづいて、竹内先生の机を調べます。

竹内先生もまた、教頭の高橋先生に何かを報告しています
机の上には、インターネット掲示板を印刷したものがありました
校内で話題になっていた事件たちが、インターネットでも話題になっています
投稿者はwisteria21というハンドルネーム
wisteria:藤
「藤」がついている生徒がいます

諏訪先生(家庭科)の机

教頭と校長の机をのぞいた先生の机で、
まだ見ていないのは家庭科の諏訪先生の机のみです。

諏訪先生は署名にとても協力していました
引き出しを開けると、応援しているアイドルらしき写真が
ここにも高橋教頭からのメッセージが
やはり高橋教頭が真相を知っていそうです


「事件」の真相

高橋教頭の机

高橋教頭の机を調べます。

机の上には、おびただしい数の付箋が
立て続けに電話がかかってきている様子
教頭は七橋中で起こった各事件について調べているようです
UFOの事件
ミステリーサークルの事件
校舎に宇宙人の影が出現した事件
「≠」の記号が描かれたゴミが飛散した事件
これらのできごとは、オカルト雑誌にも取り上げられています
職員会議の議事録を開きます
4月の職員会議
やはりUFOの目撃について触れられています
6月の職員会議
学校付近に現れる野次馬も増えている様子
ミステリーサークルが現れた日の朝には、臨時の職員会議を開いています
先生たちは、生徒のうちの誰かのイタズラだと考えている様子
8月の職員会議
深夜の影出現を受けて、調査が行われています
9月の職員会議
ステッカー貼付が問題視され、100日祭の一般開放中止が決定しています
10月の職員会議
主導者の名前が黒塗りに
机の上の引き出しを開けると、
犬塚くんのお母さんが謝罪しています
台風の日の事件に、犬塚くんが関与しているようです
犬塚くんの反省文は竹内先生が保管しているようです


竹内先生の机へ

竹内先生の机に反省文は見当たりませんでした
リーフレットに書かれていた、教科キャビネットを覗いてみます
竹内先生は、技術科の先生
ありました
犬塚くんの反省文
「一ノ瀬さん」の文字が
2枚目
3枚目

ほかにも、教科キャビネットを探ります。

生徒指導の山本先生の体育キャビネットには、
また別の反省文が隠されていました
斉藤智くんの反省文
彼も共犯なのでしょうか
そして、数学科のキャビネットには
一ノ瀬さんの反省文がありました


一ノ瀬さんの反省文のつづきは、ここにはありませんでした。
生徒会長の一ノ瀬さんが、どうしてこの事件に関与したのでしょうか。

一ノ瀬さんは署名活動を精力的に行なっていました
生徒会議事録にも、署名活動に関する記述があります


まだ見ていない場所がありました。

一ノ瀬さんが会長を務める生徒会関連資料が保管されている
生徒会キャビネットです。


生徒会キャビネット

キャビネットの扉を開けてみます。

一ノ瀬さんの生徒会長就任時のスピーチ原稿がありました
マル秘と描かれた資料 署名数の推移をまとめています
署名は順調に伸びているように見えます
キャビネット最上段には、さらに極秘と書かれたボックスがありました
中を開くと、「ガスト会議」と書かれたファイルが


「ガスト」という文字は、
これまでに様々なところで見かけていました。

渡辺先生の机に入っていた、中山先生からのメモ
教員会議の議事録にも
没収されていた回し手紙にも
ガスト会議とはいったい何なのでしょう
1枚目に入っていたのは
5月20日(水) 一ノ瀬・犬塚
署名を集めるアイデアを考えています
「UFO作戦セカンド」
そういえば、生徒会議事録に
UFO事件のあと、署名が増えたと書いてありました
5月29日(金) 一ノ瀬・犬塚・斉藤
斉藤くんが会議のメンバーに増え、会議が進んでいます
「枯山水を七中のグラウンドでやる」という斉藤くんの発案
そういえば、京都に行った時も犬塚くんは枯山水を眺めていました
「七中のグラウンドに、巨大なミステリーサークル」
6月5日(金) 一ノ瀬・犬塚・斉藤
計画が固まってきたようです。この形はあの
ミステリーサークルです
作戦名は、「ノットイコール作戦」
閉校(平行)を阻止するということで、この記号が選ばれているようです
そして犬塚くんは、
トンボで校庭をならすのが上手
没収されたカメラに入っていたこの写真も
その夜の写真なのでしょう
7月6日(月) 一ノ瀬・犬塚・斉藤・澤田
ガスト会議のメンバーに澤田さんが増えています
「七中から謎の声が聴こえてくる」
放送委員の澤田さんを巻き込み、計画が進んでいます
7月27日(月) 一ノ瀬・犬塚・斉藤・澤田・加藤
美術部の加藤さんがガスト会議メンバーに増えています
宇宙人の模型をつくっています
そういえば、この写真にも作り物の宇宙人が
このマンガも
制作中の宇宙人を描いたものなのでしょう

ミステリーサークルの出現、夜の学校から聴こえてくる謎の音、夜中に学校で目撃された宇宙人の影、学校中に増えた謎の記号のステッカー、すべてが一ノ瀬さんを中心とする「ガスト会議」のメンバーによって、閉校阻止の署名を増やすために行われていたようです。

一ノ瀬さんの反省文のつづき

はじめの方に見た紛失物ボードに、一ノ瀬さんの反省文の2枚目以降を紛失していると書かれていました。

よく見ると
諏訪先生が見つけています
諏訪先生の机へ
引き出しを開けてみると、
「経費関連」のところに挟んであるそうです
先ほど清水先生の机で見たメモに
経費ファイルは教頭デスクの奥にあると書いてありました
教頭デスクへ
経費ファイル
ありました
一ノ瀬さんの反省文 2枚目
一ノ瀬さんの反省文 3枚目
一ノ瀬さんの反省文 4枚目





「事件」のその後

台風の日の事件が起きたあと、学校ではどんな変化があったのでしょうか。一ノ瀬さんの生活ノートを開けてみます。

一ノ瀬さんの生活ノート
10月15日
翌日からは、欠席となっていました


その間の学級日誌を読んでみます

学級日誌
10月13日
10月14日
 10月15日 
10月16日
10月19日
10月20日


100日祭が中止になってしまったのも、この台風の事件がきっかけでした。

木村さんの生活ノート
10月13日
10月16日
 10月20日 一ノ瀬さんはまだ学校に来ていないようです 
10月23日
10月27日 100日祭の代わりに合唱コンクールに出ることを計画しています
合唱コンクールに出られることになったようです
歌う曲は「未来」


そういえば、音楽の渡辺先生の机に

渡辺先生の机
未来の楽譜がありました
木村さんからの手紙も
学級日誌を見ると、
10月28日 合唱コンクールに向けて、盛り上がり始めています
10月29日
10月30日
そして11月2日
一ノ瀬さんが帰ってきたそうです
11月9日 一ノ瀬さん


ふたたび、一ノ瀬さんの生活ノートを覗きます

11月2日 久しぶりに学校に来た一ノ瀬さん
11月16日
11月17日
11月25日
そして11月末
合唱コンクールは本番を迎えます
11月30日 審査員賞を受賞
序盤で見た合唱コンクールの賞状は、この時のものでした
審査員賞を受賞したことを報じる壁新聞
音楽の渡辺先生の机には、木村さんからの感謝の手紙も置かれていました
合唱コンクール出場を提案した木村さんは
11月30日
長文の生活ノートを書いていました
生徒から渡辺先生への色紙


そして、閉校へ

そんな熱狂も束の間、七橋中学校は12月末で最終授業日となり、
卒業・閉校に向かっていきます。

12月17日の学級日誌
12月18日の学級日誌
12月21日の学級日誌
12月22日の学級日誌
3月9日 卒業式前日の学級日誌
3月10日 卒業式の学級日誌







「あの職員室」を後に

七橋中学校最後の1年に何があったのか、その一部始終を見届けたところで、職員室を後に。

出口のドアを開けると
1冊の本が置かれていました
短編小説「あの職員室」

小説の内容は参加者限定コンテンツとなっていたため、本noteでも有料部分とさせていただきます。有料部分では短編小説の全文に加え、職員室内にいくかあった鍵付きの箱の中身や、「最後の一年に起こったこと」の裏にあった物語について考察しています。

終わりに

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
このnoteには、「あの職員室」の中にあったものの3割程度しか書ききれていません。職員室の中には、学級日誌や生活ノート、卒業文集やメモなどを通して、無数の「15年前の記憶」が詰まっていました。
その中には、皆さんの記憶の断片も入っていたかもしれません。

展示「あの職員室」の再演は予定しておりませんが、
「あの職員室」制作チームはまた違った「記憶」に出会うための準備を進めてまいります。
またどこかで、皆様とお会いできる日を楽しみにしています。

2025年12月7日 「あの職員室」制作チーム


短編小説 「あの職員室」

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