日本時間の2月19日深夜、Appleは新商品「iPhone 16e」を発表した。 Appleは通常、1〜2時間程度のライブ映像でニューモデルをじっくり宣伝することが多い。逆に、モデルチェンジの内容に花がない場合は、 大きなPRなしでラインナップを更新することもあり、こちらは俗に「サイレントアップデート」と呼ばれる。 ところが今回は、サイト上にプロモーション映像を公開するという折衷的な形となった。iPhone 16eはまぎれもない“新商品”であり、こっそりとラインナップに忍び込ませるわけにはいかないが、かといって世間をあっと驚かせるような仕掛けもないため、どっちつかずの方法で公表したのだろう。 iPhone 16eはあくまで“廉価版”という位置付けであり、利益率の観点からも、あまり強くプッシュしていない商品だと推察できる。しかし日本人が待ち望んでいたのは当の“廉価版”なのだから、iPhone 16eの発表は大きな朗報になる……はずだった。

新発売のiPhone 16e。一定層から支持を受けるTouch ID(指紋認証)は搭載されず、上位モデルに似た外観となった
iPhone SEは「E」シリーズへ
手頃な価格で人気のiPhone SEが最初に発売されたのは、9年前にあたる2016年3月のことだ。当時は実勢8万円台の「iPhone 6s」がメインストリームの最新モデルだったが、その約半分ほどの価格で市場に投入されると、持ちやすいサイズも相まって好評を博した。

片手でホールドでき、コスパ面でも最高だったiPhone SE(第3世代)。Androidからの乗り換えにも最適な名機だった
当初は途上国〜中進国の市場を狙って企画されたSEシリーズは、iPhone志向が高い日本でも愛用されるようになる。伝統的な“新規0円”商法の終わる頃と重なったほか、モデルチェンジが春先にあるというのも、4月に新年度を迎える日本にとっては好都合だったからだ。 2020年春に第2世代、2022年春に第3世代のiPhone SEが発売されると、いずれも高い売上を記録する。それからは“2年おきのモデルチェンジ”が期待されていたが、2024年春の発売が予想されていた“第4世代iPhone SE”は結局登場せず、今回のiPhone 16eの登場をもって、SEシリーズ自体が手仕舞いとなった。 また、iPhone SEの筐体はメインストリームのモデルよりも小柄で、“持ちやすいiPhone”としての役割も担っていたが、 iPhone 16eの寸法はiPhone 16とほとんど同一になった。 ラインナップにminiシリーズがない今、“持ちやすいiPhone”は完全に姿を消したということになる。電車での通勤時など、片手で操作することが多いユーザーにとっては悲報というしかない。