タイヤ生産主要拠点で水素24時間製造…住友ゴムの〝二刀流〟
安定供給と脱炭素加速
住友ゴム工業はタイヤ製造の主要拠点である白河工場(福島県白河市)で水素製造装置の稼働を開始した。山梨県や民間企業が共同開発した装置を活用。24時間稼働させることで年間最大約100トンの水素を製造できる。内製した水素の活用を通じ、輸送を含むサプライチェーン(供給網)全体で同約1000トンの二酸化炭素(CO2)排出量削減を見込む。自社工場内で水素を製造することで安定的な水素供給を実現し、脱炭素化を一層加速させる。(間瀬はるか)
白河工場は乗用車用やトラック・バス用のタイヤを手がけ、月1万350トン(新ゴム消費量換算、2024年12月末時点)の生産能力を備える。タイヤ製造工程の最終段階に位置するのが、金型の中に成形した「生のタイヤ」を入れ、熱と圧力を加えて弾性を与える「加硫工程」だ。同工程では高温・高圧の蒸気を用いる。従来、天然ガスを蒸気製造の燃料としていたが、CO2排出の課題があった。
そこでCO2を排出しない水素への燃料転換を構想。福島県内の水素製造拠点から配達される水素を使用し、水素ボイラで発生させた蒸気を加硫工程で活用する実証実験を進めてきた。一方、水素の安定供給やコストの高さが新たな課題として浮上した。こうした中、24年5月、水素関連事業に力を入れる山梨県との連携に合意。同県などが開発した水素製造装置を活用し、白河工場で水素を内製するに至った。

同装置は太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用して水を電気分解し、環境負荷の少ない「グリーン水素」を製造する。40フィートのコンテナ形状で、毎時120立方メートルの水素製造が可能。この水素を水素ボイラに送り、燃焼させることでCO2を排出せずに蒸気を製造できる。
同装置を稼働し内製の水素で賄うことで、工場外から配達される水素トレーラーの運搬回数を1日1回から5日に1回程度に減らせると想定。輸送に伴う環境負荷の低減にもつながるとの見立てだ。
「水素を作る・使うの“二刀流”で持続可能な社会の実現に貢献していく」と意気込みを示すのは住友ゴムの山本悟社長。福島県の内堀雅雄知事も「福島県が目指す水素の地産地消を体現しており、水素社会実現を力強く後押しする」と期待を込める。
白河工場では内製した水素のほか、配達水素、系統電力、工場内の太陽光発電、既存燃料の五つのエネルギー源を活用している。環境対応で地域をリードする「脱炭素グランドマスター工場」として、複数のエネルギー源を最適に組み合わせ、安定した操業を維持しながら脱炭素化をさらに推進していく。将来は中部圏での水素活用の検討や、国内外の他工場への展開も見据えている。