JAEA・筑波大、燃料デブリの形成過程一部解明 液滴現象を可視化
日本原子力研究開発機構(JAEA)は筑波大学と共同で、液体が大量の細かな液滴に分裂する現象を3次元で可視化する手法を開発した。原子炉の過酷事故において燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)が形成される過程の一部を理解できるようにした。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉や原子炉の安全性向上への貢献が期待される。
原子炉の過酷事故では炉内の燃料が溶けて下部の冷却材プールに落下した際、大量の液滴に分裂して広がる。溶けた燃料や分裂した液滴が冷えて固まると燃料デブリになる。特にプールの水が浅い場合、溶けた燃料が床に衝突しながら液滴に分裂するため、複雑な状況になる。一方、大量の液滴が発生する現象は実験による可視化計測が難しく、燃料デブリの形成過程の詳細な理解が難しかった。

JAEAなどは、溶けた燃料と水という異なる二つの液体による現象を模擬実験により3次元で可視化する手法を開発した。生じる多数の液滴一つひとつの大きさや速さを高精度に計測できるようにした。その結果、二つの液体の速度差や、液体の運動による遠心力や重力が液滴の発生に影響を与えていることを明らかにした。
日刊工業新聞 2025年03月28日
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