EVバス走行中にワイヤレス給電、万博会場で実証…普及の足がかりになるか
ダイヘンは関西電力や大林組、大阪メトロと連携し、4月13日に開幕する大阪・関西万博の会場で電気自動車(EV)バスの走行中ワイヤレス給電の実証に半年間取り組む。走行中給電はEVが走りながら充電されるもので、道路に埋設する送電コイルから車両側の受電コイルへ磁界共鳴方式で電力を供給する。万博のコンセプト「未来社会の実験場」に基づき実証し、EVワイヤレス給電の普及へ足がかりを作る狙いだ。(大阪・広瀬友彦)
「走行中ワイヤレス給電の技術を世界で知ってもらうのに万博は最適だ」。ダイヘンでワイヤレス給電を手がけるキーマンの鶴田義範技術開発本部インバータ技術開発部長は強調する。2月、万博会場をバスが周回する道路の一部に、送電コイルを内蔵した箱状の白いコンクリート塊「プレキャストコイル」が埋め込まれた。プレキャストは、海を見渡せる万博会場西端の直線道路100メートル間に20個、東ゲートのバス停道路に1個を設置した。
プレキャスト1個には出力15キロワットのコイルが二つ並列で内蔵される。上をバスが通るたびに“ちょこっと”給電される。ダイヘンが関連機器を提供し、道路への施工は大林組が行い、関西電力は電力供給とエネルギーマネジメントを、バス運行は大阪メトロが担う。車両はEVモーターズ・ジャパン(北九州市)の小型EVバス6台が使われる。
万博での実証の狙いを鶴田氏は「技術を知ってもらう、半年間の耐久性を確認する、普及に向けた法整備の再確認―の三つある」と語る。万博後も実用化に向けて、東日本高速道路(NEXCO東日本)が加わる形で、高速道路での走行中給電を実証することを検討している。
ダイヘンはEVへのワイヤレス給電を走行中と停車時の2パターンで考える。両方とも一定技術は確立済み。ただ社会実装には、法制度や国際標準化の取り組みなど制度面の構築が必要と考え、多くの仲間を増やし産学官で構成する「EVワイヤレス給電協議会」の2024年設立にも動いた。鶴田氏は同協議会事務局長も務める。協議会は2月20日時点でオブザーバーも含め116者が加盟する。
ワイヤレス走行中給電は、イスラエルの新興企業エレクトレオンが欧州で実証試験を積極的に行っている。ただ実運用には至っていないとされる。ダイヘンは万博と同様に、他社と連携しながら市場形成を図る。