導入8カ月で業務時間約38万時間削減…LINEヤフー「独自AIアシスタント」の実力
社内情報検索を効率化
LINEヤフーが社内業務で生成AI(人工知能)を積極活用している。独自AIアシスタント「チャットAI」を2023年12月に作成し、ソースコードの生成・補完を行うコーディングの支援や情報収集、翻訳文書の作成などに利用。導入8カ月間で業務時間を累計約38万時間削減した。社内情報を効率的に検索してAIが案内する検索拡張生成(RAG)活用型の業務効率化ツール「Seek(シーク)AI」も24年7月に全社で導入し、さらなる業務効率化につなげている。(編集委員・水嶋真人)
「LINEとヤフーが個別にAIアシスタントを持っていたが、(23年10月の)両社の合併を機に、それらを統合する形で導入した」―。LINEヤフーAI推進本部推進2部の笹城戸裕記第2チームリーダーは、チャットAI導入の経緯をこう振り返る。
チャットAIは、米オープンAIの「チャットGPT」のようなチャット形式で生成AIが回答するシステムだ。例えばシステム技術者がソースコードのエラー原因を調べたり、プロジェクトマネジャーが課題の洗い出しや解決策を質問したりできる。
笹城戸リーダーは「生成AIの利用経験がない社員でも簡単・便利に安全に利用できるようにした」と説明し、続けて「生成AI活用コンテストも開いている。いろいろな使い方を社員が見つけながら(生成AI関連の)取り組みを広げたい」と話す。

SeekAIは、LINEヤフーの各部門が技術や人事関連などチャットGPTでは出てこない自部門の文書を入力して独自のアプリケーションを作成できるようにした。自部門の業務内容を短時間で把握して新入社員向けの研修資料やマニュアルを作成したり、取引先との最新情報からコミュニケーション履歴などを確認したりすることで「導入から2カ月で累計約9000時間相当の業務時間を削減できた」(LINEヤフー戦略企画本部の渡辺大輔氏)。
LINE、ヤフーそれぞれが持っていたシステム開発基盤の情報収集にもSeekAIが貢献した。旧LINE社員が旧ヤフーの開発基盤を学ぶ際にSeekAIを用いることで「用途やマニュアルの場所を簡単に調べられるようになった」(同)という。
生成AIにより仕事のやり方も変わり始めている。「AIと仕事をすることが当たり前という世界観をいち早く作るため、ツール群をうまく提供しながら全社員が進化できるようにする」(笹城戸リーダー)考えだ。