「希望」「格好いい」…建設「新4K」でイメージ刷新、減少危惧の若手獲得なるか
建設業界がイメージ刷新に向けた取り組みに一段と力を注いでいる。キーワードは「新4K(給与・休暇・希望・格好いい)」。若手の就労者の減少が危惧される中、新4Kの実現は将来の担い手確保の面で大きな意味を持つ。このうち、今後さらに具体的な対応が求められる「希望」と「格好いい」に焦点を当て、ゼネコン大手各社のトップの発言から業界の現状と将来展望を探る。(編集委員・古谷一樹)
希望/大手が賃上げ、波及期待
慢性的な人手不足に直面する建設業界。人材確保の重要性が高まっていることに対応し、賃上げや休日確保の動きが広がってきた。こうした処遇改善は将来の「希望」にもつながる取り組みとして重要性が増している。
「従業員が高い意欲を持って改善や工夫を重ね生産性を高めることや、優秀な人材が集うことは会社の成長にもつながり、従業員と会社の双方に利する」。鹿島の天野裕正社長は、賃上げがさまざまな効果をもたらすとみる。
「物価の上昇分を吸収できる程度の賃上げは必要。毎年少しずつ上げていく流れになるのではないか」(清水建設の井上和幸社長)、「利益を確保しバランスを取れる範囲において、きちんと賃金を上げていきたい」(竹中工務店の佐々木正人社長)。賃上げに関して、大手トップの考えは一様に前向きだ。
大手5社が2024年4月入社の大卒・院卒の初任給をそろって引き上げたように、人への投資を通じて“希望が持てる”業界としての魅力を訴求する取り組みはさらに広がっていく見通しだ。今後は、下請け事業者を含む業界全体への波及が注目される。
格好いい/中堅、ブランド確立狙う
かつての建設業界の3K(きつい・汚い・危険)イメージがだいぶ改善されてきたとはいえ、格好良さの浸透は継続的なテーマと言える。イメージ定着に向け何をするべきか。大成建設の相川善郎社長は「社会的な認知度を高めていくことが重要」と指摘する。そのためのツールの一つに位置付けるのが情報発信だ。

業界全体でもこうした意識が顕在化している。特にこの数年間は大手に加えて、これまで情報発信に力を注いでこなかった準大手や中堅のゼネコンも相次いでテレビCMの放送に乗り出すなど、認知度向上を狙った取り組みが増えてきた。
その先に狙うのは、ブランドイメージの確立を通じたリクルート効果だ。例えば、普段目にしている著名な建築物の設計・施工を手がけたことを一般の人や学生らに知ってもらうことで「格好良さの浸透につながる」(大成建設の相川社長)との期待がある。
一方、内面的な要素の重要性に言及するのは、大林組の蓮輪賢治社長。「外形的なこと以上に、モノを完成させた時の達成感やそこに至るまでの充実感、最終的に顧客に喜んでもらえることが格好良さではないか」と分析する。
建設の特徴は、一品ごとの受注生産。設計や施工などプロセスが多岐にわたり、数多くの関係者が携わりながらただ一つのモノを作りあげていく。モノづくりの楽しさやチームで仕事に取り組む喜び、完成時の達成感の大きさによって「誇りを得られる」(蓮輪社長)ことも事実だろう。そうした側面を的確に訴求し、建設業界に魅力を感じてくれる人を増やすことが望まれる。