洗練・上質重点に“深化”、三菱自動車が「アウトランダーPHEV」改良で得た思わぬ成果
【商品戦略本部チーフ・プロダクト・スペシャリスト 五味淳史氏】
威厳があり堂々として立派なさまを現す「威風堂堂」がコンセプトのクロスオーバースポーツ多目的車(SUV)「アウトランダー」のプラグインハイブリッド車(PHV)。従来車で高い評価を得ていた外観の変更は最小限にし、内面をしっかりと鍛え上げた。今回の改良を「威風堂堂フェーズII」と位置付け、洗練と上質を重点項目に“深化”を目指したモデルだ。
内装の質感について、従来車でプレミアムブランドと比較検討する顧客から「もう少し上質感があると良い」という声を反映した。
具体的にはセンターディスプレーの画面サイズを12・3インチに大型化。メーターやセンターディスプレーのグラフィックを上質なタイプに変更した。ヤマハと共同開発した2種類のオーディオシステムを採用。最上級グレードは計12個のスピーカーで楽器やボーカルが目の前の高い位置に定位するような臨場感を味わえる。徹底的な音質チューニングやスピーカーの加飾による内装の質感の向上で、快適な室内空間を演出した。
外観もグリルやホイールの細部変更、ターンランプとバックランプの発光ダイオード(LED)化などで洗練されたイメージに刷新。力強さと洗練さを兼ね備えた商品に仕上がった。
走行性能もポイントだ。車両運動統合制御システム「S―AWC」による制御やPHVの特徴を生かし、雪上でも違和感なく走行できる。電子的に制御するため機械的な反応よりも制御が速く、車が滑り出したり、トラクション(けん引力)がかからないという状況を瞬時に判断し最適化できる。雪道でステアリングを切ったとき、タイヤがグリップして地面に食いつき、きちんと曲がるのも特徴だ。
駆動用バッテリーの大型化などで電気自動車(EV)航続距離を向上させつつ、電池出力の向上や制御の改良により、加速力を大幅に改善した。EV航続距離は従来比約20キロメートル増の100キロメートル超。日常はEV仕様、遠出はHVで充電の心配なく電動ドライブを楽しめるPHVとして自信を持って提案できる。
その上質感から、従来車ではあまりなかった欧州のプレミアムカーと比較検討される顧客が出てきたのは思わぬ成果だ。ディーラーから「これまで下取りしたことのない車がたくさん来ている」と困惑の声をもらったこともある。新規ユーザーも、キャビンに乗ってもらえれば一層上質になった室内空間を感じていただけるはずと自負している。
【記者の目/移動体験 オーディオも注力】
内外装や電動性能など、随所に欧州のプレミアムカーで求められる要素を取り込み、三菱自動車として最も高価格のモデルとなる。移動体験の提案としてオーディオにも注力し、曲に応じて好きなトーンでサウンドを楽しめる工夫も特徴的だ。プレミアムカーと競合するなど“意外な顧客層”へのリーチが今後の車種展開にどう生きるか注目される。(大原佑美子)
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