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高周波回路で世界をリード、半導体研究者の開発力の源泉

半導体再興へー大学の最先端研究 #17
2024年07月21日テクノロジー
高周波回路で世界をリード、半導体研究者の開発力の源泉

オールCMOSの300ギガヘルツ帯フェーズドアレイ送信機(チップ実装部、東工大提供)

東京工業大学の岡田健一教授は、第6世代通信(6G)向けなど高周波の無線通信回路分野で世界をリードする研究者だ。厳しい採択率で知られる半導体の国際固体素子回路会議(ISSCC)や、トップジャーナル(JSSC)の採択論文の常連ながら、産業界と組み、多くの技術を民間へ移転してきた。

最近、すべて相補型金属酸化膜半導体(CMOS)で構成した300ギガヘルツ(ギガは10億分の1)帯向けのテラヘルツ送信機を開発したほか、CMOS製の送受信ICで世界最速となる毎秒640ギガビットの伝送速度を達成。従来の化合物半導体製に比べ、安価で量産可能なCMOSを使って実用性能を持たせた。

その研究開発力の強さの源泉について、岡田教授は「長年にわたる企業との共同研究を通じ、産業界の技術者に育ててもらった」と語る。今では研究プロジェクトの発足時から企業が参画し、論文を共同発表するだけでなく、「開発した技術を随時持ち帰ってもらう」ことに努める。

岡田教授

日本企業は通信用半導体でもかつての勢いを失い、5Gでは世界に後れを取った。一方、大学では海外に比べて研究費が見劣りする中でもこつこつと技術を磨き、「ようやくビジネスに乗せられる段階になった」と手応えを感じている。岡田教授は衛星通信向けICなど宇宙向けにも力を注ぐ。

研究室メンバーのうち、博士課程学生の半数以上が留学生で、企業からの派遣研究員を含め60人以上が在籍。卒業生は米半導体メーカーなどから引っ張りだこだ。それでも岡田教授は人材育成の観点からも、日本企業との連携を重視し「常に技術移転を行いながら、日本の半導体設計技術をけん引していきたい」と考えている。


【関連記事】 パワー半導体の規模拡大に消極的だった富士電機が攻めに転じたワケ
日刊工業新聞 2024年7月18日

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半導体再興へー大学の最先端研究
半導体再興へー大学の最先端研究
日本の半導体が再興の波に乗り、大学への期待感が強まっている。先端デバイスの研究開発は一時期、大学でも下火となった。だが、半導体分野の教育・研究を通じた人材育成や、最先端技術の開発はこれから大学の大きな使命となる。専門家はどのような未来図を描くのか。注目研究者のテクノロジー展望に迫る。

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