バナナを食べる方が「頑張って塩分を減らす」より血圧が下がるかもしれない
2025.04.19 11:30:16 Saturday
健康診断で血圧を指摘されてから、減塩に励んでいる人も多いかもしれません。
スーパーでも「減塩〇〇」と書かれた商品が並び、塩分控えめな食生活を意識するのが今や当たり前になっています。
しかし、塩を減らすことばかりに気を取られていませんか?
実は最近の研究で、「無理に減塩をする」より「カリウムを摂る方が有効」という意外な事実が示されました。
しかもカリウムを摂るために特別なサプリや高価な食材を用意する必要はありません。身近にある「バナナ」でもいいと言うのです。
ただし、カリウムと聞いて不安になる方もいるでしょう。実際、カリウムは尿管結石のリスクと関係する場合があるため、結石の経験者は注意が必要です。
その点にも配慮しながら、この記事では誰でも実践できる血圧ケアの最新知識をご紹介します。
この研究は、カナダ・ウォータールー大学のMadeline M. Stadt氏とAnita T. Layton氏によって行われ、2025年3月に米国の学術誌『American Journal of Physiology – Renal Physiology』に掲載されています。
目次
無理して減塩しなくてもいい?カギはカリウム

「カリウムを多く摂ると血圧が下がる」という説は、実は今に始まった話ではありません。
1970年代以降、疫学調査や動物実験などを通じて、カリウム摂取と血圧低下の関連は科学的に指摘されてきました。
塩分(ナトリウム)を多く摂ると血圧が上がる一方で、カリウムを多く摂るとこの影響を和らげるということ自体には、以前から観察報告があったのです。
しかし、これまでの研究の多くはあくまで観察的な結果にとどまり、カリウムが具体的にどのような生理的メカニズムで血圧を下げるのか、あるいは男女間でその効果に違いがあるのか、といった点については十分に解明されていませんでした。
特に男女間の性差の影響については、これまでの多くの医学研究で、男性は女性に比べて高血圧のリスクが高く、また塩分摂取による血圧上昇にも敏感であることが知られているため重要なポイントでした。
実際、周囲を見回しても男性のほうが血圧の問題を抱えているケースが多いと感じる人は多いかもしれません。
このように昔からよく聞く説や問題であっても、中身には謎が多いというケースは多々あります。
そのため、この課題に対してカナダのウォータールー大学(University of Waterloo)の研究チームは、より踏み込んだ科学的検証を試みました。
彼らは、腎臓、心臓、血管、自律神経、ホルモン系(RAAS)といった血圧調整に関わる主要な生体システムを網羅した数理モデルを構築し、さらに男性と女性それぞれの生理的特性を反映させた個別モデルを作成して、カリウム摂取が血圧に与える影響を高精度にシミュレーションしたのです。
特に注目したのは、男女間でカリウムの効果に違いが生じるかどうか、またその違いがどの生理機構によって説明できるか、という点でした。
今回の研究では、既存の生理学研究から示唆されていた、閉経前の女性は男性に比べて、腎臓におけるナトリウム再吸収の抑制、血管拡張作用を持つ一酸化窒素(NO)の豊富さ、さらにレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の働き方の違いによって、塩分負荷や血圧変動に対して耐性が高い可能性がある、という仮説を取り入れ、このモデルに組み込んで検証を行いました。
シミュレーションの結果は、興味深いものでした。
カリウム摂取を増やすと、男女ともに血圧は低下しましたが、男性の方がその効果は大きく、女性ではもともと血圧変動に耐性があるため、低下幅はやや小さいことが示されましたのです。
この成果の意義は、単なる経験則や観察に基づく推測を超えて、血圧調整に関わる生理メカニズムを数理的に再現し、科学的な裏付けを持って「なぜカリウムが血圧に良いのか」を初めて体系的に示した点にあります。
しかも性差を考慮することで、男性と女性で推奨されるアプローチが微妙に異なる可能性も見えてきました。
そのため研究チームはこの研究成果を、一般の人にもわかりやすく伝えるために、「バナナやブロッコリーをもっと食べたほうが、減塩を頑張るより効果があるかもしれません」と語っています。
この発言に、海外のネット上では「バナナ業者から資金提供を受けたの?」と冗談交じりにツッコまれていますが、こうした身近なカリウムの多い食品を意識的に摂ることは、特に男性にとって有効となる可能性がありそうです。
この提案にはきちんとした科学的根拠があり、高血圧に悩む人は特に意識して取り言える価値が十分にあると言えるでしょう。
カテゴリー覧
人気記事ランキング
- TODAY
- WEEK
- MONTH

ストレスを減らせば「白髪は元に戻る」のか?
2025/12/14川勝康弘
深海に棲む「新種の肉食スポンジ」を発見
2025/12/15千野 真吾
1日8缶のエナジードリンクを飲み続けた男性の症例報告
2025/12/14相川 葵
スキルの上達は練習中ではなく「頻繁な休憩」で起きる
2025/12/14川勝康弘
アルファベットはかつて「27個」あった?消えた「1文字」とは
2025/12/12千野 真吾
勃起を補助する細胞は「頻繁な勃起」で増加する
2025/12/14川勝康弘
時間は「解像度」だった――時間の始まりも境界の理論で扱えるかもしれない
2025/12/12川勝康弘
10年間ガラスを食べ続けた男性【異食症とは?】
2025/12/15矢黒尚人

実在した「ホビット族」が5万年前に絶滅した理由を解明
2025/12/10千野 真吾
アルファベットはかつて「27個」あった?消えた「1文字」とは
2025/12/12千野 真吾
時間は「解像度」だった――時間の始まりも境界の理論で扱えるかもしれない
2025/12/12川勝康弘
研究が示す「先延ばし癖を減らす」ための簡単な思考方法
2025/12/13大石航樹
ラマヌジャンのπ公式は数学的に「ブラックホール語」だった
2025/12/09川勝康弘
脳が集中モードに入ると「体のある動作」が少なくなると判明
2025/12/11千野 真吾
1400年前の「キューブ型の頭蓋骨」をメキシコで発見
2025/12/08千野 真吾
エイリアンのような「新種の深海生物」を発見
2025/12/08千野 真吾

猫は男性に2倍「ニャー」とお帰りの挨拶をすると判明――なぜなのか?
2025/11/28川勝康弘
恋人に“言わなくてもいい”2つのこと
2025/12/03矢黒尚人
恋人ができやすい「性格特性」は男女で真逆であると判明
2025/11/20千野 真吾
“あるトレーニング”で「FPSの反応速度」が大幅に向上すると判明
2025/12/04矢黒尚人
重度の奇形をもつ「中世騎士の頭蓋骨」を発見
2025/11/26千野 真吾
幻の鯨「イチョウハクジラ」の生存個体を初めて確認
2025/11/24千野 真吾
犬種の6割に「オオカミのDNA」が残っていると判明
2025/11/26千野 真吾
脳は「9歳・32歳・66歳・83歳」で配線パターンが大きく切り替わる
2025/11/26川勝康弘
































![[コロンブス] キレイな状態をキープ 長時間撥水 アメダス 防水・防汚スプレー420mL](/image.pl?url=https%3a%2f%2fm.media-amazon.com%2fimages%2fI%2f31-OcmTs2LL._SL500_.jpg&f=jpg&w=240)
![シルバーバック【カンタン!たのしい!水の生きもの砂絵セット】 幼稚園 小学校 入園 入学 お祝い プレゼント 準備 ([バラエティ])](/image.pl?url=https%3a%2f%2fm.media-amazon.com%2fimages%2fI%2f515gZ4F-QYL._SL500_.jpg&f=jpg&w=240)
![よーく聞いてね!3つのヒントで学ぶ!どうぶつカード ([バラエティ])](/image.pl?url=https%3a%2f%2fm.media-amazon.com%2fimages%2fI%2f51zT3OcliFL._SL500_.jpg&f=jpg&w=240)


























