守田です(20251119 14:30) 明日に向けて(2540)
今回より三田茂医師の講演「ヒバクと遺伝についての新しい知見に学ぼう~被曝医療の新たな可能性にも触れながら~」の解説を連載します。
すでに以下の記事で紹介した講演動画です。
https://moritasccrc.hatenablog.com/entry/2025/10/31/230539
この時は解説を行う余裕がなかったので、にょきにょきプロジェクトで一緒に三田さんのお話を聞いた下澤陽子さんのノートを掲載させていただきました。
今回、内容の重要さを考えて、あらためて3回に分けて紹介することにしました。
● ヒバクと遺伝に関する新しい知見に触れてください
これは今年(2025年)の夏に、にょきにょきプロジェクトのオンラインサロンで行ったもの。
三田さんはこれまで、福島原発事故の被災者を「新ヒバクシャ」と命名し、そこで起きている苦しみを「能力減退症」と捉えて治療されてきましたが、今回はそれらを前提にその先の歩みについて話てくださいました。以下、動画をご紹介します。
この「オンラインサロン」は、にょきにょきプロジェクトの「ご寄付7000円コース」にご参加いただいた方を対象に、クローズドに行っているもの。
でもこのお話は、多くの方に伝える必要があると考えて、講演部分の公開を決めました。その後の参加者の討論も見応えがあるのですがそこはクローズド。興味のある方は以下にご連絡ください。⇒ http://nyoki2pj@gmail.com

なおここでは前提となっている点を知りたい方は以下の動画をご覧ください。
福島原発事故による被曝の現実を見すえよう~被曝医療の可能性、三田茂医師の実践にも学びつつ~明石講演(20250921)より
● 三つの単元にわけて話されています
さて、三田さんはこの日の内容を三つの単元に分けて話してくださいました。
1 ヒバクするとは? ヒバクシャとは?
2 ミトコンドリア・・・ATP CoQ10(コエンザイムキューテン)
3 《ヒバク》は《遺伝》するのか
「1」で打ち出されたのは福島原発事故によるヒバクの鋭敏なマーカーとして小児の甲状腺のう胞が挙げられるのではないか?という点。さらにさまざまな核災害をふまえたヒバクシャとは何かの問い直しです。
「2」では昨今、注目が集まっているミトコンドリアを取り上げ、その被曝影響を論じています。またこれに対する治療の可能性としてAPTCoQ10の投与のことなどが説かれています。
「3」でいま、ものすごい規模で激変しつつある「遺伝学」の今が取り上げられています。端的に言ってDNAによる遺伝情報の伝達とは違った形で、世代間をまたいだ影響がみられることが明らかになってきている。この新しい知見に切り込んでいただきました。
今回の記事ではこのうち「1」について解説しますが、ご興味のある方は動画をどんどん先までご覧ください。

● 「1」ヒバクするとは? ヒバクシャとは?(「1」は5分から25分40秒まで)
この項目で三田さんが話して下さったのは甲状腺のう胞ひついてです。三田さんは東京で4000人を診察されましたが甲状腺がんの子は一人もおらず、まれな病いだと言えます。これに対してのう胞は多くの子どもにみられだした。三田さんはこれに着目されました。三田さんは福島における「県民健康調査」ののう胞の報告をグラフ化してみた。すると2011年3月以降、のう胞の発症が右肩上がりで増えていることが分かりました。事故前は20%ぐらい、それが2013年末に60%に至っていた。

さらに三田さんは2012年11月から2013年1月に環境省が行った「甲状腺結節性疾患所見率調査事業」にも着目。これはのう胞だけでなくがんなども対象にした調査で、福島と青森、山梨、長崎で行われました。1300人以上の大きな調査でした。
福島と他の三県と甲状腺がんについて比較されたわけですが、結論はちゃんとでなかった。そもそも国は福島でも甲状腺がんの発症を認めてないので比べようがなかった。しかしここには甲状腺のう胞についての記載もあったのです。
三田さんはこのそれぞれの地域の甲状腺のう胞の発症頻度のデータと、それぞれの放射性物質の月間降下を比較しました。すると同じような順番がついてくることが分かりました。同時に長崎でも、のう胞が出始めていることが分かる。


ここから三田さんは「小児甲状腺のう胞がヒバクの鋭敏なマーカー」ではと捉えた。そしてそれを踏まえて岡山の子どもたちを見てみると、2024年で68%も出ていることが分かる。ここから三田さんは岡山でも被曝影響が出ていることを指摘されています。
さらに三田さんは、原爆、核実験、核事故、核産業、原発運転、そして鉱業残渣としての放射性廃棄物によってもヒバクが起き続けていることを指摘されました。その点では私たちは誰もがヒバクしています。
ヒバク被害はこのように多様な形で私たちを襲っています。誰もが危険性に直面している。だからこそヒバクの実態、その影響と向き合い、命を守っていく必要があるのです。
続く
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