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宇多丸 小山田圭吾問題を語る

宇多丸 小山田圭吾問題を語るアフター6ジャンクション
2021.07.19

宇多丸さんが2021年7月19日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で東京五輪の開会式の音楽制作担当である小山田圭吾さんの過去のインタビュー記事が問題視されている件について話していました。

(宇多丸)ちょっと今日もね、しかもあんまり愉快じゃない感じの話題が多いんですけども。まずはこのメールからご紹介させてください。「オリンピックで起用されたCorneliusこと小山田圭吾さんの過去の雑誌記事によるいじめ発言問題について、(記事を掲載した雑誌の発刊元である)ロッキング・オン・ジャパン編集長も謝罪文を公表したようです。この件について、TwitterなどのSNSにて様々な意見が交わされていますが、宇多丸さんはどうお考えでしょうか?」というメールでございます。

あの、SNSに限らず、ワイドショーでも今週は割とガッと一色になった感じがありますけども。Corneliusこと小山田圭吾さん。元フリッパーズ・ギターということで。この掲載されたいじめ記事みたいなものは2つとも、95年かな? 90年代半ばに載っているんだけども。山本さんはこの件、もちろんご存知なかった?

(山本匠晃)そうですね。認識はなかったですね。

(宇多丸)世代によってね、そこは差があると思うんですけども。僕は小山田さん、同い年だし。90年代のカルチャースター。90年代、2000年代から今に至るまで結構なカルチャースターでいらっしゃるから、この問題っていうのは実は結構繰り返し……掲載当時もそこそこ問題になったし。ネットとかでも何年かに一度はかならず話題になる。特にネットが浸透してから、かなり重大に問題視されるというのがあって。だから、割とある程度の世代の音楽好きであれば「ああ、あの件か」っていうことがあったりするんですよね。

で、僕自身も知っているから。たとえば「Cornelius」っていうクレジットを見ると「あっ」って思う。「あの人だな」っていう風に思うところはあって。ちなみに僕は面識は直接はなくて。フェスで同じフェスに出たことが1回、あるのかな? ワールドハピネスでご一緒をしていたかな?っていうぐらいの感じで。あまり直接は関係がないんだけども。でも、ご活躍というのはもちろんわかっているし。音楽的な功績っていうものももちろん認めた上でなんだけども。まあ、「あっ」って思ってりはしていて。

でも、何回か問題になるたびに……もちろん、大前提として小山田さんが過去、やったことそのものの事実。記事に載っていることが事実であれば……ご本人は「ちょっと誇張がある」というようなこともおっしゃっているようだけども。でも、とにかくご自身の許可のもとに載った記事。本当におぞましいというか。本当にひどいの一語に尽きる。これは大前提ね。大前提。そして、これを載せる……これは今から考えれば非常識で。当時ですら、多少は問題になったけども。

まあ90年代半ばから後半以降のなんというか、いわゆる「鬼畜系ブーム」みたいな。それも今から聞くと「なんだ?」ってことになるかもしれないけども。なんかこう、世紀末に向けていろいろと露悪的なものがおもしろい、かっこいいというような文化の風潮が一部にはあった。だからといって、許されることではないんだよ。だから許されると言っているわけではない。

(山本匠晃)もちろん、もちろん。

(宇多丸)だから僕は当時からして……僕だけじゃなくてね。「これは……?」って思った人はいっぱいいるわけ。だけど、やっぱり僕の考えはもちろん、やられたこと自体が許されないのは当然。で、オリンピックというのは国民的行事で、なおかつパラリンピックもあるわけだから。障害をお持ちになっている方に対するいやがらせなんてものは一番許されないものだから。ここに来て問題となるのはある種、当然というか。

で、「知らなかった」なんて言っているみたいだけども、「いや、その『知らなかった』はどうなんだ?」っていうか。これ、結構有名な話だし。僕は逆に、今まで小山田さんがオリンピックのこの仕事のオファーが来るに至るまで、いろんなきちんとしたことが要求される場でのお仕事を小山田さん、されているわけですよ。NHKとかでもすごくいっぱいお仕事をされているしね。

で、もちろんそのお仕事そのものはいいわけです。すごく。なんだけど、そこで、その時点で、たとえばその起用をする側が……そして、やっぱり最大の問題は小山田さんがそうやって問題になるたびにそこをちゃんとクリアするというか。その時点で謝罪をするとか、被害者の方になにかしらの贖いをするとか。それはわかんないけども。そういうことをしないまま……だから、ご本人も何もしていない。スルー。周りもなんというか、スルー。

で、もっと言えばその外側にいる僕みたいに知ってはいるけど。それで「うっ……」とかは思うけども。まあ、別にそれに対してワーッと言うわけでもないというような。その、彼をここに至るまでスルーで来させてしまったという。やっぱりなんというか、僕らも含めた時代の全員にある程度……僕は自分が全く責任がないとは思えなくて。その、僕だって知っていたのに声を上げてなかったわけだから。

自分自身も全く無責任とは言えない

(宇多丸)で、やっぱりそのラインナップに上がっている時に「Cornelius」っていう名前を見れば「あっ、あの人だ……」って思うけども。それについて特に言うわけでもなかったわけだから。ということは、「スルーして流してきた」という事象の僕は一部だし。だから、許されないことだと思う。だから今からでも超反省をすべき……もう遅いけどね。相当遅いけど。でも、なんでここに至ってしまったのか?っていうその責任の一部は僕にもないとは言えないというか。知っていたし。もっと言っちゃえば、音楽業界だし。みたいなところでね。

なので、いわゆる「#MeToo」以降、世の中で価値観が変わってきて。なにが一番変わったのか?っていうと「#MeToo」も然り、「#BlackLivesMatter」も然りだけど。今までなあなあにされてきたこと。「悪いけど、まあこういうもんだよね」とか「悪いけど、正しきれないものだよね」みたいな。なんか、そういうスルーされてきたものをスルーしないようにしようとする、前進する運動だと思うから。だからその中で僕らが90年代からここに至るまで。僕の世代を中心とした何かだと思うけど。やっぱりなあなあにしてきた何かが、それをなあなあにしてきたからより悪い状況というか、悪い形でクローズアップされて糾弾されるという形になっている。もっと手前でなんとかできたのにっていう。

なんかだから、小山田さんはすごく激しく反省を……まあ、表明をされていますけどね。反省をすべきだし、何らかの贖いは今からでもするべきで。それはご本人の問題なのであれですけども。なんかこう、「我が身を正せ」っていうか。そう思いましたっていうことですね。僕らの世代が僕らの世代の「あの時代はああいうもんだったよね」でスルーをしちゃっていたみたいなところが「いやいやいや、『そういうもんだったよね』じゃねえだろ?」って。「別にそういう時代があったのは事実としても、ちゃんとそれに対してお前はどういう風に総括しているわけ?」みたいなのがあったりするべきかなって思いますね。

もちろん、特にいじめとかに関しては被害者の方がいらっしゃることだからね。ということで、一番はもちろん小山田圭吾さんがここに至るまで、何度も問題が炎上とかはしていたのにスルーしてきちゃったっていうことがなにしろ……あと、その次は周りの人。やっぱり一緒に仕事をするような人はどこかの時点で「お前、ちょっとケジメをつけるべきじゃないの?」って誰か、言わなかったのかとも思うし。

そして出版社。ロッキング・オン・ジャパンの山崎洋一郎さんが声明を発表されていましたけども。まあ、ここで問題視されて出すって、それはもうメディアとして……そのぐらい、なんというかずっと続いてきたものとして気が緩んでいるところがあるのかわからないけども。やっぱりその、ロッキンとクイック・ジャパンの太田出版はめちゃくちゃそれは自己批判をしなければいけないところだと思うし。もう今さら遅すぎることだと思う。

そして、事ここに至るまでそれが放置されてきてしまったということにちょっとでもスルーを……僕も含めてね。という人は、やっぱりそこをこれからの文化状況というか、社会の状況のなにかプラスに役立てるような、自分への反省みたいなこともするべきかなとも思いますね。

(山本匠晃)結局、昔は……それこそ90年代なんてネットなんていうものもなかったから。現在、今ワーッと火がついて。各方面で議論がされてしまって。その広がりが収まらないというそのタイミングでの今回のっていうことですもんね。

(宇多丸)そうね。で、こんなに引っ張っちゃって。オリンピックという場だからドーン!って。みんな、オリンピックに対する不満や怒りも当然あるから。ドーン!ってなっちゃうっていうことで。それでさ、なんか息子さんとかにいやがらせが行っているとか、それは完全に行きすぎだし。それはその通りだと思うから。あと、それでオリンピックの音楽担当を続投というか、たぶん今さら変えられないレベルで関わってしまっているというものあるんでしょうからあれですけども。それに対する議論というものもあって当然だと思います。

ただ、僕はとにかくなぜ、このタイミングでこうなったかというと……って考えていくと、やっぱり1個1個、流されていっちゃったしっていうことだと思うんだよね。だから、流した本人が悪いんだよ。俺はちなみにそこには別に責任はないよ。流している方にはね。ただ、僕はそれを見て「ああ、そうか。そういうもんか。問題にされないんだ」で終わってしまっていたから。

だからそれに対しては「俺は悪くない。俺は最初から言っていたよ」とは言えないかなとは思いましたね。みたいなことですかね。はい。まあ、とにかく小山田さんの件に対する私の意見はこんな感じです。伝わりましたかね? どうですかね? まあ、いろいろとこれに対してもご意見があるとは思いますが。私の意見はこんなところでございます。

(中略)

小山田圭吾さん辞任報道を受けて……

(山本匠晃)ここでニュース速報です。東京オリンピック開会式の音楽制作を担当していたミュージシャンの小山田圭吾さんが今日、大会組織委員会に辞任を申し出たことをTwitterで明らかにしました。小山田さんは過去に雑誌のインタビューで学生時代に障害のある生徒へのいじめを告白していたことが問題となっていました。以上、ニュース速報でした。

BREAKING | Keigo Oyamada, the Japanese musician in charge of music at the opening ceremony of the Tokyo Olympic Games on July 23, has expressed his intention to resign, sources told Nikkei.https://t.co/wRsxlEgTtypic.twitter.com/tNqqtigATV

— Nikkei Asia (@NikkeiAsia)July 19, 2021

(宇多丸)まあ、番組の6時台、オープニングでね、これに関する僕の意見をお話しましたけども。そうですか。辞任ね。いよいよ東京オリンピックね、まだまだこれから開幕前ですけども。ちなみに近田春夫さんがね、Twitterで「俺の作ったオリパラ音頭に今からでも差し替えればいいじゃん」っていうすごい近田春夫さんらしい……猛烈に近田春夫イズム炸裂のツイートをしていて。「それも手かな?」なんて。

だからさ。俺のオリパラ音頭に差し替えなって!
一度聴いてたら、誰だって納得するから!https://t.co/64b7aUfmMh
ね!

— 近田春夫 (@ChikadaHaruo)July 17, 2021

<書き起こしおわり>

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