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Megurecaのブログ

『成瀬は都を駆け抜ける』  by 宮島未奈

成瀬は都を駆け抜ける
宮島未奈
新潮社
2025年12月1日発行
2025年12月5日 2刷

 

「成瀬」の第3弾!!
広告で見かけたので、即買い。

『成瀬は天下を取りに行く』、『成瀬は信じた道を行く』の主人公・成瀬あかりシリーズ3作目。

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装丁には、振袖姿の成瀬。前作で京大合格まで行ったんだっけ?

帯には
”最高の主人公とどこまでも前へ!
2024年本屋大賞受賞。『成瀬は天下を取りに行く』シリーズ。堂々完結。
180万部突破!
一世一代の恋に敗れた同級生、達磨研究会なるサークル、簿記YOuTuber‥‥。京大生となった成瀬は新しい仲間たちと出会い、次なる目標に向かって京都の街を走る。一方、東京の大学に進学した島崎のもとには、成瀬から突然ある知らせが、、、”
とある。

そうか、完結編か‥‥。
残念だけど、著者には他の作品でもっと頑張ってもらおう。

 

目次
やすらぎハムエッグ
実家が北白川
ぼきののか
そういう子なので
親愛なるあなたへ
琵琶湖の水は、絶えずして

 

感想。
やっぱり最高に面白かった。

封を切ってから、いっき読み。
特に前作を読み返してみたりしないまま、すぐに成瀬あかりの世界に没入。

あ、そうそう、この成瀬の口調だ!!

 

本書は、成瀬が京大生となってから出会う京都の人びととの交流。それぞれの章に、それぞれの主人公がいて、その人の人生に成瀬がどう影響してきたのかが語られている風。最後は、成瀬の母、父、そして幼なじみの島崎も登場してしめくくり。

あぁ、、、成瀬のこの人格は、両親に愛され、自由にのびのびと育ってきたからこそなんだ、と家族愛に胸が熱くなる。

 

全編にわたって、やはり笑い!笑い!なのだけれど、なぜか最後はじ~~んと来てしまう。こんなに読後感が爽快な物語はなかなかない。成瀬のキャラも最高だけれど、周囲の人たちが正直にまっすぐ生きているのもまた良い味なんだな。

 

以下、ネタバレあり。

 

やすらぎハムエッグ:主人公?登場人物は、坪井さくら。京大の入学式へ向かう途中、転んでいたところで成瀬と出会う。さくらは、小学校の時からの片思いの早田君が京大を受験すると聞いて京大めざして頑張ったのに、蓋を開けてみれば早田君は東大へ…。嬉しくもない京大入学式だった。入学式の後にも、線形代数の授業で一緒になり、一緒に過ごすようになる成瀬とさくら。落ち込んでいるさくらに、成瀬は「ほかのことに打ち込んで気をまぎらわすほかないだろうな」といった。そして、「料理はどうだ」とすすめられ、さくらは料理をするようになる。教えてもらったハムエッグ丼をご馳走しようと成瀬を自宅に呼んだ日に、携帯のアルバムから早田君の写真がなくなっていることに気が付いて動転。成瀬は、準備が整っていないさくらを責めることはせず、であればと自分で台所に立つ。そして、さくらを今ここまで生きてこさせたのが「きっと、それが彼の役目だったんだ」と。そういわれて、なんだか早田君のことをふっきれたきになるさくら。その日は、成瀬の誕生日だった。二人は鴨川を一緒にあるいた。蛍が飛んでいた。


実家が北白川:主人公は、梅谷誠、農学部の一回生。新入生のサークルへの勧誘で「達磨研究会」とやらに入る。森見登美彦の作品をこよなく愛する3人のサークルだった。森見登美彦の作品では『太陽の塔』のように度々北白川(京大北部キャンパスから銀閣寺方面に広がる地域)がでてくる。誠の家は、父の代から北白川に住んでいた。そして、達磨研究会のメンバーの一人が男子校育ちで女の子に疎いのだが、森見作品にでてくる黒髪の乙女に憧れているというので、イメージの女の子を探すことに。そんな時、さくらに教えられて自転車に乗る練習中の成瀬が、危うく誠とぶつかりそうになる。そして誠は成瀬を一目見て「黒髪の乙女!」と直感し、達磨研究会へ案内し、出会いが始まる。盛り上がる男性生徒たちと、淡々とした成瀬。そして、成瀬の友達の輪はさらに広がっていく。

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ぼきののか:主人公は、田中ののか。簿記一級合格を目指すYouTubeチャンネルを運営している。北野天満宮ライブ配信をしているときに、「びわ湖大津観光大使」のタスキをかけた成瀬が北野天満宮に来ていて、写り込んだ成瀬にコメントが殺到し、主役を奪われる形に。そして、「京都を極めようと思っているんだ」という成瀬との交流が始まる。ネット上では、ののかが実は簿記二級に合格していないことが暴露され、嘘つき呼ばわりされる。成瀬は冷静に「嘘をついたことは誤った方がいい」といいつつ、城山という成瀬の同級生YouTuber にも手伝ってもらい、謝罪配信をする。そして、ライブ配信中、成瀬は「田中が一刻も早く簿記二級に合格して、嘘を本当にするしかない。わたしも一緒に受ける。」と予定シナリオになかったことを口走り、話はべつの方向へ進む。そして、ののか、成瀬、さくらも一緒に受験し、見事に合格。

 

そういう子なので:主人公は、成瀬の母・美貴子。「ぐるりんワイド」に出演することが決まった娘のあかりの思い出話を提供するとともに、母としてあかりを見守り続けるやさしさのものがたり。小学校のとき、学校でも喜怒哀楽が薄く可愛げがないという教師にむかって「そういう子なので」と、ありのままのあかりを受け入れ続けた母・美貴子。この母あって、成瀬あかり、あり!

 

親愛なるあなたへ:主人公は 競技かるたの高校選手権で成瀬と出会い、 琵琶湖の観光船 ミシガンに乗って親睦を深めた西浦航一郎。航一郎は、いまでも成瀬のことを思い続けている。そして、文通をしている二人。携帯をもたない成瀬との連絡は手紙だった。そして、成瀬への熱い思いを語った手紙を一度は封したものの、思い直して別の手紙を書き直した航一郎だったが、うっかり、元の手紙を投函したことに気が付く。そして、取り戻すべく、直接成瀬に会いに行く。電話で待ち合わせを決めた二人。『善の研究』を片手に待ち合わせの場所に現れた成瀬は忙しそうで、未開封の手紙を航一郎に渡すと、次の予定があると言って即座に航一郎を残して帰っていってしまった。ひとり京都の町をさまよっていた航一郎だったが、途中で成瀬が友人たちと一緒にいるところに遭遇。そして、なぜか、達磨研究会のメンバ―と共に過ごすのだった。成瀬は、航一路が送ってくれる手紙の便せんが美しいといって、鳩居堂に連れていってもらい、美しい便せんを選ぶ。ひょんなことから出会った達磨研究会のひとたち。成瀬へ出した手紙を追いかけてここまで来なければ出会わなかった人たち。航一郎の未来は、まだまだこれから。がんばれ、青春!

 

琵琶湖の水は、絶えずして:主人公は成瀬と島崎みゆき。タイトルは「ゆく川の水は絶えずして・・・」『方丈記』のもじりだろう。観光大使としての最後の仕事の直前、盲腸で入院してしまった成瀬。島崎のもとに理由はともかく「すぐにきてくれ」との連絡が成瀬から入る。何かあったに違いない。かけつけた島崎は、成瀬にたのまれ、代行として観光大使の仕事を引き受ける。当日、琵琶湖疎水から船で大津港へ向かう島崎ともう一人の観光大使・篠原さん。加えて、成瀬の最後の観光大使の仕事と思っていた面々が駆けつける。なかにはみらいちゃん、成瀬の両親、さくら、達磨研究会の面々・・・。
そして、当日の朝なんとか退院した成瀬も現場にやってくる。一緒に船に乗り込んだ成瀬だった。病み上がりのくせに、航行途中で突然スイッチが入ったかのようにマイクを握った成瀬。
「このあたりは、天智天皇陵があることから、みささぎ、という地名になっています。天智天皇百人一首の一番目の歌人としても知られているのだが、実は本人が読んだかどうかは不詳と言われている。その歌というのが、『 秋の田のかりほの庵の苫をあらみ わが衣手は露にぬれつつ』だ。競技かるたでは三字決まりと言って『あきの』まで読まれたらその札であることが確定するわけだが・・・・・ああっ、田中と西浦じゃないか」と、生放送中に口走る。

相変わらず、むちゃくちゃなんだけれど、どこまでもまっすな成瀬。そして成瀬を愛する人々。

 

京都を極めるといった成瀬は、ガイドブックにはった100の付箋を一か所ずつ制覇していく。そして、99か所を周りつくし、最後が「琵琶湖疎水」だったのだ。琵琶湖の水を京都にひくために作られた琵琶湖疎水。成瀬は、琵琶湖をみんなのもとのと伝えたくて、最後の観光大使の仕事にかけていた。

 

最後は、小さい頃から200歳まで生きると言っていた成瀬に、島崎が「わたしも200歳まで生きようと思うの」といい、成瀬が「最近は200年では足りないとおもいはじめているところだ。』と答える。そして、

”「うん、いいよ。三百年でも四百年でも生きよう」

わたしたちには400万年を生きる琵琶湖がついている。成瀬はわたしの目を見つめ、何も言わずにうなずいた。”

 

おしまい。

 

よみ終わって、なんだかじんわり涙がでちゃう。

観光大使の仕事が終わったことで、成瀬あかりの一つの役割は達成された。でも、きっと次につながる。

 

あぁ、成瀬あかり、永遠に!!いつまでも、我が道を行ってくれ!!

 

主人公が色々と変わりながらも、やはり成瀬あかりが主人公になっている絶妙なつくりの小説。楽しい。

こういうの好きだ。

成瀬は、200歳まで生きるために、一口30回咀嚼するから、みんなより食べるのが遅い。そんな成瀬が、私は好きだ。

 

やはり、元気になる小説って、いいね。

 

 

 

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