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TOPホンネの投資教室山崎元、癌になってみて考えた。「どうでもいいこと」と「持ち時間」

山崎元、癌になってみて考えた。「どうでもいいこと」と「持ち時間」

2023/1/24 11:00

病気と療養の概要

 筆者は昨年、癌に罹った。食道癌である。本稿執筆の時点で(2023年1月下旬)、手術からの回復過程にあるが、再発防止目的の薬剤を投与するために一月に1、2度通院している。癌は全てが投資やお金と関係する訳ではないが、本人にとって不確実性下の意思決定問題である点が投資と似ている。

 今回は、自分で癌に罹り、治療に臨んでみて、何を感じ且つ考えたかについて率直に書いてみよう。今後に公開する動画で、筆者の風貌が少し変わっている(数キロ痩せて、髪の毛が減っている)理由の説明にもなるだろう。

 尚、投資の文章では末尾などに「投資判断はご自身で行って下さい」としばしば注記されているが、本稿の性質もそれに似ている。筆者の治療方針の選択や意思決定は一例であって、他人にも適合すると推奨するものではない。また本文中で病院名や医師名(筆者は両方に満足している)を伏せるが、これは不測の影響を避けるためだ(同病を治療したい等の事情で知りたい方は編集部に問い合わせて下さい。お答えします)。

 はじめに筆者の癌の経過を簡単に書く。

 昨年の7月頃から、自覚症状としては喉の具合が少々悪かった。軽く腫れているような気がして、細菌の感染を疑い、近所の内科、次には耳鼻科を訪ねた。耳鼻科では内視鏡で喉を見て貰ったが問題はなかった。

 8月に入ってから、念のため食道から下も診て貰おうと思い、自宅近所の胃腸病院で診察を受けたら、検査担当の医師が妙に張り切って写真を撮り始めた。「まず間違いなく食道癌です。食道は当病院では手に負えないので、大学病院を紹介します。どこがいいですか?」と言われて、会社のオフィスから便利な場所にある大学病院の名前を挙げたら、紹介状を書いてくれた。内視鏡で撮影した画像のCD−ROMが入った封書だ。

 まったくの当てずっぽうだったのだが、病院の選択は結果的に「当たり」だった。結果的に食道癌の症例が豊富で手術経験が豊富な医師がいる病院を選んでいた。当該病院が食道癌の治療で定評があることは、高校時代の同級生で医師の友人複数から「おそらくベストの選択だ」と評価を聞いた。友人の一人が、知り合いの医師経由で病院の近況を調べて、良い主治医を紹介してくれた。ここまでは、当てずっぽうが当たった「幸運」と、関係者に「知り合いのヤマザキという人物が行くのでよろしく」と一言伝えて貰ったレベルの「口利き」があるが、特別な調査をしたり、事前にコネがあったりしたわけではない。一般論として病院の選択は、同業者(医師)の評判を聞くといいと思う。知りたいのは、主に症例数と執刀医の評判・経歴だ。複数の意見を聞きたい。

 筆者の癌はステージⅢ(病巣が臓器の筋肉層に収まっていないが、遠隔転移はない)で、症状的には食物が通らなくなる寸前だった。

 食道癌の標準治療には、近年変化があり、先に抗がん剤(3剤を使う)の治療を2クール行って、その後に手術ないし放射線治療を行う。概ね2週間の間隔で、入院して第一回の抗癌剤投与、退院して休み、再び入院して2度目の抗癌剤投与、退院して休んで、手術のために入院、と治療は続く。筆者は、抗癌剤、手術共に経過が順調で入院日数の合計は40日程度だった。

 手術を受けたのは2022年10月27日だ。手術は、食道の大半と胃の上部の一部を切除して、胃を持ち上げて食道の位置につなぎ、胃部から喉に至るリンパ節を廓清する大がかりなものだが、手術ロボット「ダビンチ」や胸腔鏡を使う手術で、想像よりも身体へのダメージは小さい。手術の翌日には体に確か9本ほど管がつながっていたが、立ち上がって100mほど歩く事が出来た。退院は術後13日目だった。

 現在、術後3ヶ月近くになるが、一回当たりの食事の量が以前の三分の一程度なのと(今後増える予定だが元には戻らない)、手術の後遺症で空咳が出やすい(数ヶ月続くことがあるらしいが、ほぼ軽快した)ことを除いて術前と大きな変化はない。体力は7割くらい回復したと感じる。生活や仕事に大きな支障はない。

 再発予防のための投薬があと1年ほど続き、検査が3ヶ月に一度程度向こう数年続く予定だ。

 将来については、ごく大まかに言って、現状の延長線上で癌は問題にならずに一応「治った」と感じられるケースが半分、再発や転移が問題になるケースが半分くらいの見通しだ。食道癌は再発や転移が起こりやすい癌だとされている。再発は2年以内に起こることが多く、「安心」はできないのだが、さりとて「今」の段階で心配しても予防や治療上出来ることはない。従って、心配することに利益はない。ビジネスで言う「プランB」的な困った時の戦略を持っていればいいので、日頃は身体の将来について強く心配はしていない。後で説明するような「修正された時間感覚」を持ちつつ、本人なりの「普通どおり」で生活している。

情報•判断•処理の能力とコスト

 癌患者になって、投資とよく似ていると思ったのは、情報収集と判断に関わるあれこれだ。

 情報は欲しいのだが、情報は判断とセットではじめて有益になり得るものであって、判断できない情報や判断に時間が掛かり過ぎる情報は却って邪魔になる。しかも、癌患者の時間は限られており、判断のタイミングを自分で自由に決められない場合が多い。

 理想を言うと、必要或いは有効で役に立つ情報だけを、信頼できる判断の根拠とセットで速やかに入手したい。

 しかし、自分の処理能力と持ち時間に対して、癌に関わる情報ははっきり言って過多だ。書店にもネット上にも、治療法の選択に関わる情報だけでも多くのものがあって、もちろんそれらの有効性を試してみて確認することなど出来ない。

 加えて、「私は癌になりました」と伝えると、多くの「親切な人」が群がってきて各種の情報をもたらしてくれる。治療に役立つ可能性があるものだけでも、身内や知り合いの名医、海外の富裕層が使う治療薬、癌が治る生活習慣、癌に有効だとされる各種のサプリメント、身体に良い水、良い治療法が書かれた書籍、癌が治った身内のエピソード、最近書かれた論文、マッサージの達人、など多くの情報の提供を受けた。

 大半が好意によるもので、感謝している。営利目的の混じるものは殆どなかったが、広く知らせたわけではないのに、多くの情報が集まる。

 しかし、集まった情報の全てについて判断する時間はないし、お礼を伝えることだけについても時間とエネルギーを要する。また、治療法について迷いが生じた精神状態に陥るのは良くない。こうした状況を考えて、筆者は、少なくとも治療の方針が固まるまで自分の癌について対外的に知らせないこととした。お見舞いへの対応や、SNS等を通じたメッセージに対する返信の時間と手間を節約したいという目的もあった。

 病気と治療方法に関する基本的な知識は、「食道癌診療ガイドライン」、「臨床・病理 食道癌取扱い規約」(共に金原出版株式会社)に頼ることにした。食道癌の「ガイドライン」と「規約」は2022年が改訂年に当たっていて、ガイドラインはネット上に検討用のドラフトが載っていたので、これを参照した。個々の論文までチェックする時間と能力は筆者にないが、論文に書かれたエビデンスが尊重された記述になっているので、医師に質問する時の予習にも具合がいい。「ガイドライン」の生存率のデータなどを調べて具体的に質問すると医師も答えやすいし、自分が治療方針を考えたり、将来の計画を考えたりする際の判断の参考にもなる。

 また、同年の秋にはちょうど食道学会が開かれていたので、医療に土地勘のある知人の紹介で発表の動画を見た。専門的な議論が分かるわけではないが、自分の執刀医の発表を見て納得したかった。

 世間には「標準治療ばかりが癌治療ではない」という意見があり、実際に標準治療以外の治療が奏功しているケースもあるのだろうが、判断の方法と時間がない情報については諦めることにした。また、世間に流通している治療の選択肢の中には、「上手く行ったケースが過剰に強調されているもの」や「楽に結果が得られそうで魅力的なもの」などがあり、これらの情報を検討していると迷いが生じる可能性がない訳ではない。この辺りの情報の価値と判断する側の心理の関係は投資の世界によく似ている。「素晴らしい実績のアクティブ・ファンド」や「容易に儲かる投資のノウハウ」のようなものが、つい魅力的に思える場合はあるのが生身の人間としては普通だろう。危ない、危ない。

 加えて、治療方針に関する相談相手を、「自分が直接知っていて直接利害関係がない医療のプロ」数人に絞り込んだ。科学者、放射線科医、内科医が一人ずつと彼らが紹介してくれた医師複数だ。この方針も正解だったように思うし、良い知人を持っていた筆者は幸運だった。投資の世界で言うと、ファイナンス学者、ファンドマネージャー、金融マン、FP、税理士、などの有能なプロだが商売の利害関係の一切ない相談相手が親しい友人にいたようなものだ。

 投資の世界の情報には、(1)知識やノウハウに関わる情報と(2)投資対象に関わる(直接損益につながり得る)情報とがある。

 先ず、何れの情報も、「判断できる自分の能力と時間」が無い場合は、情報収集自体に意味がないことを知って欲しい。あなた自身が理解できない情報を知っても意味がないのだという宣告は残酷かも知れないが、事実だ。

 加えて、情報が多量に集まった事実自体が、過信を生んだり、情報の量自体が処理と判断の時間を圧迫する弊害にも気づくべきだろう。

 また、特に悩ましいのが上記の(1)に類する情報だ。投資家が初期の段階で正しい知識とノウハウに接して理解するのか、誤った知識を先入観として持って回り道をするのかで「大差」が生じてしまい、時には回復不能の状態に陥ることもある。行政も含めて、いわゆる投資教育を提供する側も大いに気をつけて工夫する必要がある。

 何れにせよ、情報は多く得られる方がいいと言い切れるものではない。処理・判断の能力と時間を伴わない情報は無益だし、時には有害なのだ。この事情は、病気でも、投資でも一緒だ。

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著者プロフィール
山崎 元
山崎 元やまざき はじめ
経済評論家

1958年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業。三菱商事→野村投信→住友生命→同信託→シュローダー投信→バーラ→メリルリンチ証券→パリバ証券→山一證券→DKA→明治生命→UFJ総研と12回の転職を経て2005年に楽天証券経済研究所客員研究員、2023年3月から経済評論家。2024年1月1日永眠。

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